【更新日:2021年12月9日 by 鈴木 智絵】
近年、都市部への人口集中が加速し、日本の各地域での過疎化が課題となっています。
総務省のデータによると2016年時点で日本の市区町村の約47.5%が過疎地域として見なされています。
また併せて過疎地域における高齢化も大きな問題となっています。
このような現状から、政府は東京を初めとする大都市への一極集中を改善し、地方の人口減少を食い止めるために「地方創生」といわれる地方の活性化への取り組みを開始しました。
「地方創生」とは具体的には一体どのような取り組みなのでしょうか。
今回はそんな「地方創生」について詳しく解説し、またSDGsとの関わりについて紹介します。
見出し
地方創生とは
“地方創生”という言葉
政府は地方創生を以下のように定義しています。
人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生することを目指すもの
現在、日本の総人口の推移は年々減少しており、内閣府が公表する 平成24年版 高齢社会白書(全体版)では、2060年までに日本の総人口は約8674万人になると予想されています。
また、併せて高齢化も非常に深刻な問題となっており、国連の世界保健機関(WHO)で高齢者と定義される65歳以上の人口割合は39.9%になるとされています。
このような現状を踏まえ、第二次安倍政権では地方創生が掲げられ、平成26年に地方創生を実現する組織として「まち・ひと・しごと創生本部」が設置されることが閣議決定しました。
「まち・ひと・しごと創生本部」では、地方創生の長期ビジョンの制定、地方への新しいひとの流れをつくるための施策から魅力的な地域づくりに関する施策まで、多方面にわたってさまざまな活動を行っています。
このように、政府が各地域とタッグを組んで、持続可能な社会を創生しています。
SDGsと地方創生の関係
地方創生のためにSDGs達成をする理由
ここまでで地方創生の重要性は理解していただけかと思います。
では地方創生とSDGsはどのように関わっているのでしょうか。
内閣府が公開している『はじめよう地域の未来へ 自治体SDGs』では以下のように説明されています。
自治体においてSDGsを活用することで、客観的な自己分析による特に注力すべき政策課題の明確化や、経済・社会・環境の三側面の相互関連性の把握による政策推進の全体最適化が実現します。
また、自治体と各ステークホルダー間において。SDGsという共通言語を持つことにより、政策目標の共有と連係促進、パートナーシップの深化が実現します。
SDGsの達成に向けた取り組みを通じ、地域課題解決に向けた自律的好循環を生み出すことができ、地方創生の課題解決を一層促進することが可能になります。
つまり地方創生とSDGsを掛け合わせて考えることで、
- SDGsという1つの客観的な基準を元にして地方創生を実行できる
- 「経済縮小の克服→人口減少の抑止→地域社会の活性化」という好循環を生み出す原動力として期待できる
といったメリットが生み出されるのです。
またSDGsの17の各ゴールは独立したものではなく、包括的に達成されるべきゴールとなっています。従って、地方創生にSDGsを取り入れることで多方面から地域活性化へのアプローチが可能となるのです。
日本における地方創生への取り組み
SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業
地方創生SDGsが推進されるなか、政府は「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」という取り組みを行っています。
「SDGs未来都市」とは、SDGsの理念に沿った基本的・総合的取り組みを推進しようとする都市・地域の中から特に、経済・社会・環境の3側面における新しい価値創出を通して持続可能な開発を実現するポテンシャルが高いとして選定された都市・地域です。
また、その中でも特に先導的な10の取り組みは「自治体SDGsモデル事業」に選ばれます。
SDGs未来都市は33都市、34自治体が選定されており、その中でも特に優れた取り組みをする10の事業は自治体SDGsモデル事業として選定されました。
今後、これらの自治体の取り組みを支援するとともに、事業の成功例を広め、地方創生につなげていくことが目指されています。
地方創生SDGs官民連携プラットフォーム
地方創生は、政府の力だけで実現できるものではありません。政府だけでなく民間企業も連携して、地方経済を盛り上げていくことが重要です。
内閣府は民間企業など多岐にわたるステークホルダー(関係者)とのパートナーシップを深め、官民が連携して地方創生を実現していくために地方創生SDGs官民連携プラットフォームを設置しています。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームは多様なステークホルダーと連携してより一層の地方創生につなげることを目的として、内閣府により発足されたプラットフォームで、地方自治体や関係省庁、民間企業など、2021年8月末日時点で5,839団体の会員で構成されています。
地方創生SDGs官民連携プラットフォーム会員になることで以下の3つのメリットを得られます。
- イベント活動などの普及促進への貢献会員になることで、自身が主催するイベントなどの情報をメールマガジンなどを通じて、他の会員に発信できます。また他の会員が主催するイベント情報などを受け取れます。さらに会員が開催するセミナーなどには地方創生SDGs官民連携プラットフォームを後援名義などに使用できます。
- 会員同士のマッチング支援会員のなかには課題を抱える会員やさまざまなノウハウを持った団体います。
そこで地方創生SDGs官民連携プラットフォームは、そのような会員同士をマッチングし、課題解決に取り組めるようにマッチングを支援する仕組みを取り入れています。具体的には他の会員のデータベースを閲覧・利用できたり、マッチングシートや入会時アンケートなどをもとに、解決したい課題を持つ会員と、解決策やノウハウを持つ会員とのマッチングのサポートを受けることができます。 - 分科会開催地方創生SDGs官民連携プラットフォームでは会員の提案に基づいて分科会を設置しています。会員自ら提案するさまざまなテーマで分科会を実施しており、会員に共通する課題の検討、知見の共有、取組の具体化を進めています。会員自らの提案により、共通課題の検討や知見の共有、異分野連携等を目的に、様々なテーマの分科会を開催しております。
もちろん分科会設置のみならず他の会員が設置した分科会への参加も可能です。これにより、異分野同士の連携による地方創生を目指します。
参考:地方創生SDGs官民連携プラットフォーム |地方創生SDGs・地方創生SDGs官民連携プラットフォーム・「環境未来都市」構想(内閣府) (future-city.go.jp)
自治体の取り組み
取り組み① 宮城県石巻市
宮城県石巻市はSDGs未来都市にも選定され、国内でも先進的なSDGsの取り組みを行い、地方創生のモデルケースとなっている都市です。
2011年に東日本大震災で被災した石巻市は、災害に強いコミュニティの形成や高齢者の電気自動車などを活用した移動手段の確保などに取り組んでいます。
また、地方経済の活性化のために使わなくなったハイブリッド自動車の基幹ユニットをリユースして再利用する事業なども推進しており、新産業の形成にも注力をしています。
取り組み② 東京都豊島区
東京都豊島区はSDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業の両方に選定されています。
豊島区は2014年5月に東京23区で唯一の消滅可能性都市として指定されていました。
それをきっかけに区をあげて持続可能なまちづくりを目指すために改革をスタートさせ、SDGsに関する活動を加速させました。
豊島区は以前より文化を軸とした活動に取り組んでいたことから、改革では文化により焦点を当て「東アジア文化都市2019豊島」というような国際的な文化戦略の視点での活動にも取り組みました。
また女性と子供に優しい街づくりという目標を掲げ、現在では待機児童ゼロとなっています。
取り組み③ 福岡県北九州市
福岡県北九州市は2018年6月にSDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業の両方に選定されました。
北九州市は四大工業地域の1つであり、高度経済成長期には深刻な公害問題が発生していました。そのような歴史を踏まえ、現在では市の独自目標「北九州市SDGs未来都市計画」を策定するなど、環境問題や社会問題に対して意識の高い街として多くの取り組みを行っています。
「北九州市SDGs未来都市計画」で大きく分けて経済・社会・環境という3つの視点で目標を掲げており、再生可能エネルギー導入率や女性委員の参画率というような多岐にわたる目標を掲げています。
実際に街の商店街を盛り上げるような活動や、女性のキャリア支援に関する活動に取り組んでいます。
カードゲーム「SDGs de 地方創生」
「SDGs de 地方創生」とは
SDGsと地方創生をより身近に感じるために、株式会社プロジェクトデザインと特定非営利活動法人イシュープラスデザインはカードゲーム「SDGs de 地方創生」を共同で運営しています。
「SDGs de 地方創生」とは、SDGsの考え方を地域の活性化に活かし、地方創生を実現する方法について参加者全員で対話し考えるためのゲームです。
プレイヤーは行政担当と市民でわかれ、「人口」「経済」「環境」「暮らし」という4つの指標から自身の行動を決定し、よりよい街作りをしていくというゲームです。
自身の行動による効果や影響はプレイヤーには開示されないため、自身の行動が街作りにどう響いていくるのかを実践的に考えながらプレイすることができます。
移住スカウトサービス「SMOUT」
「SMOUT」とは
SMOUTは関係人口を増やすための地域と移住希望者のマッチングサービスです。
「関係人口」とは 移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉。 |
自治体や事業者、個人などの地域住民が、地域に興味がある人を募集し、直接スカウトすることで移住のサポートをしています。
ユーザーは会員登録してプロフィールを入れると、自分にマッチする地域の情報が届きます。
気になる地域の人とメッセージをして、訪問したり、移住することが可能です。
実際にSMOUTで生まれた関係人口は12,965人であり、706もの地域がSMOUTを利用しています。
地域に移住したい人はこちら▼
地域への移住と関係人口のマッチング SMOUT(スマウト)
スカウトしたい地域の人はこちら▼
SMOUTの使い方 | スカウト型移住マッチングサービス
SDGsとは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
▼各目標の詳細は以下の画像をクリック
▼SDGsについて詳しくはこちら
さいごに
今回は地方創生とSDGsの関係について紹介しました。
各地域が活性化していくことは日本全体の活性化にも繋がります。
また地方創生においては政府や自治体だけでなく、その町に住む住民や企業など民間の積極的な協力も必要不可欠です。
皆さんのお住まいの地域や地元の現状を改めて知ることも地方創生への第一歩です。
ぜひ関わりのある地域を地方創生の視点から振り返ってみてください。
SDGs CONNECTライター。マーケティングに興味があります。十人十色の社会を目指して、多様な情報・価値観を発信していきます。好きなキャラは綾波レイとヴァイオレット。