買取王国が目指す循環型社会|モノを通じた新しい社会貢献の形

##リサイクル#SDGs目標12#サスティナブル#リユース#持続可能 2022.10.14

この記事をSNSでシェア!

 

現代の生活の中で使われなくなったモノを買い取り、必要とする人のもとへつないできた株式会社買取王国(以下、買取王国)。

衣料品やホビーを主体とした幅広い商品を取り扱う総合リユース小売業で、主力となる「買取王国」に加え近年では工具専門の「工具買取王国」など、東海地区・関西地区を中心に50店舗以上を運営している。

2021年からは、お金ではなくモノで寄付ができる新しい仕組み「モノドネ」を開始するなど、単なるリユース事業に留まらない注目の企業だ。

2015年にSDGsが採択されてからこれまで以上に環境問題への関心が高まっている昨今、人とモノをつなぎ不用品の再利用に貢献してきた買取王国は、どのような思いでSDGsに取り組んでいるのか。

今回は、買取王国取締役の壬生 順三氏に、具体的な取り組みや買取王国が目指すこれからの姿について伺った。

モノの価値を1度で終わらせない|「価値再生感動追求業」

ーー自己紹介をお願いします。

壬生:買取王国 取締役の壬生です。1987年に入社しました。現場での就業からはじまり、商品の部門長や営業職、開発職などの仕事を経て取締役となりました。

さまざまな仕事を経験し、周囲のメンバーからも刺激を受けながら、35年に渡り買取王国に勤めてきました。

 

ーー買取王国が掲げる理念やビジョンについて教えてください。

壬生:「夢ある商品とサービスを通して、喜びと心の満足を創りだしていきます。」という経営理念を掲げています。

ご来店されるお客さまや地域の特色に合わせて、どうすればお客さまに喜んでいただけるかを念頭に置いています。

例えば、男性のお客様比率が高い店舗では、メンズ衣料に特化した売場づくりを進めています。

今年9月に藤が丘店、昨年冬に高辻店をメンズ衣料特化型店舗としてリニューアルオープンしました。

ーー事業領域として定義している「価値再生感動追求業」について教えてください。

壬生:使われなくなったモノを必要としている人のもとへ届けることで、商品の価値を再度見出し、お客さまが新しいライフスタイルや商品との出会いに感動していただけるような業態です。

「もったいない」精神に基づき、モノの価値を1回で終わらせることなく次のお客さまに繋げていきます。

店舗で売れなかった場合も、業者様と提携して『ウエス*』や断熱材の材料にしたり、海外へ搬送して販売したりして再利用しています。

買い取ったモノが買取王国の手を離れたあとも、最後まで価値あるモノとして利用してもらえる仕組みは、13年ほど前から導入しています。(※マイシュウサガール業態)

▼買取王国公式サイト
https://www.okoku.jp/

*ウエス:機械の手入れ布のことで、主に機械器具や工具類のメンテナンスなどに利用されています。古着としての販売に適さないものは『ウエス』として加工し、再利用されています。

ーーリユース小売業という事業自体、SDGsと直接的な関わりが深いと思います。リユース小売業として、SDGsをどのように捉えていますか。

壬生:SDGsが提唱される以前から、要らなくなったモノの価値を再生することで、地球に優しい環境・社会づくりに貢献するという意識を持ってきました。

特にSDGs目標12番「つくる責任 つかう責任」は、弊社と関わりの深いテーマです。

ビジネスと社会貢献のバランスを取りながら、企業としても社会としても成長し続け、持続できるような仕組みを推進していけたらと思っています。

「モノドネ」で日本の寄付市場に新しい仕組みを

ーー昨年から取り組んでいる「モノドネ」について教えてください。

壬生:「モノドネ」は2021年から開始した、モノで寄付(ドネーション)ができる新しい仕組みです。

寄付したい団体を選び、身の回りの使わなくなったモノを発送、または買取王国系列店に持ち込んでいただくと買取王国がその団体に代わって査定金額をご提示し、団体に寄付される仕組みです。

30の寄付先と提携しており、お客さまのご希望に合わせて寄付先を選ぶことができます。

NPO・自治体・学校法人などの寄付先となる団体は、「モノドネ」を無料で登録・利用することができます。

今後さらに提携団体を増やし、お客さまが幅広い提携先から寄付したい団体をお選びいただけるようにしていきたいと思っています。

ーー「モノドネ」に取り組む意義とはなんでしょうか。

壬生:日本では、海外に比べて寄付文化が根付いていないと言われています。

例えば、日本ファンドレイジング協会調査研究(寄付白書2021)によると、2020年度の個人寄付総額は、日本が1兆2126億円であったのに対し、アメリカでは34兆5948億円だそうです。

GDPに対する個人寄付総額の割合を比較すると、日本は0.23%に対して、アメリカは1.55%となっており、経済規模を加味しても日本の寄付市場は大きいとは言えません。

さらに、日本の個人寄付総額には返礼品の贈呈が伴うことが多い「ふるさと納税」が約6700億円分含まれているため、実質的な寄付金額はさらに低いと言えます。

このような現状の中で、長年リユース事業に携わってきた経験を活かし、モノで寄付という新しい仕組みを通じて日本に寄付文化をより強く根付かせるきっかけになればと思っています。

SDGsの浸透が主体的な行動につながる

ーー今後の展望を教えてください。

壬生:リユース小売業という事業以外の部分でも、さまざまな取り組みを進めています。

まずは社内でSDGsの重要性を発信していくため、SDGs専門のチームを組み、社員向けにSDGsへの理解を深めるプロジェクトを始めました。

また、多様な人材を受け入れるという視点から、障がい者の方なども一緒に働ける職場づくりを進めています。

日常的な業務では、節電対策として店内の照明を順次LEDに変更しているほか、エアコンの温度設定を見直しました。

このような取り組みは形骸化してしまいがちですが、SDGsへの理解を深めることで、従業員1人ひとりが主体的に行動できると考えています。

社内でできることを少しずつ増やしていき、日常的な行動が社会貢献につながる意識を持って、これからもモノの価値を再発見する場を提供していきたいです。

さいごに

今回の取材を通して、買取王国がモノを最後の最後まで大事にしたいという強い気持ちで事業を発展させてきたことが伝わってきた。

事業自体がSDGsに繋がっていることに満足するのではなく、これまでの経験を活かして「モノドネ」という新しい仕組みを生みだす積極的な姿勢が印象的だった。

モノを通じて社会に貢献していく、買取王国のSDGsから目が離せない。

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    新着記事

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ

    アートを通じて社会に問いかけを|SIGNINGが発信する「SIGNAL」

    ステークホルダー主義を掲げる理由とは?|サガミホールディングスのCSV経営

    「グリーンウォッシュ排除」で測る|SDG Impact Japanの目指す未来

    【特別インタビュー前編】1年でESG、SDGsを全社に浸透|すべてのマテリアリティのKPI策定にも取り組むオートバックスセブン

    ”価格勝負からの脱却がSDGsにつながる”会社のインフラ化を目指すOWNDAYS 田中が語る持続的経営

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)