【更新日:2022年10月25日 by 鈴木 智絵】
フランス発のオーガニック・スーパーマーケット、ビオセボン。
東京都・神奈川県でスーパーマーケット事業を展開するイオングループの企業であり、「オーガニックを日常に」をテーマに、28の店舗とオンラインストアを運営している。
2020年からは、国内初となる「ドネーション参加型ペットボトル回収機」を開発・設置したことでも話題となった。
創業当初から「地球環境にやさしいお店、会社」を目指してきたビオセボンは、どのようにサステナブルな社会づくりに貢献しているのか。
今回はビオセボン・ジャポン株式会社マーケティング部部長の枝川和佳子氏を取材し、顧客や他企業を巻き込みながらサステナブルな店舗経営を目指すビオセボンの、具体的な取り組みを伺った。
「地球環境に優しいお店」を目指して
ーー自己紹介をお願いします。
枝川:ビオセボン・ジャポン株式会社マーケティング部部長の枝川和佳子です。
以前は酒/食品卸商社でヘルス&ビューティ分野のMDを長年担当していました。
2018年にイオントップバリュ㈱に入社し、2020年より現職に就きました。主に、マーケティング・広報・サステナブルを担当しています。
ーービオセボンが掲げるビジョンについて教えてください。
枝川:当社は2016年の一号店開店以来、「地球環境にやさしいお店」をキーワードにサステナブルな取り組みを実施してきました。
マイバッグの推進や、バルクコーナー(量り売り)の設置など、主に資材の切り替えや「使わない化」を実施してきました。
また、直輸入商品を選定する際は、オーガニック認証を取得していることに加え、なんらかの方法でサステナブルな取り組みを実施している商品・企業であることを基準としています。
2022年6月にオープンした自由が丘店は、取り扱う商品はもちろん、店内の什器から床や壁といった細部までサステナブルにこだわった最新の店舗になっています。
ーーバルクコーナー(量り売り)について教えてください。
枝川:パリのビオセボンでも象徴的なバルクコーナー(量り売り)を日本の店舗でも展開しています。
1種類20gから購入することができ、ナッツやドライフルーツ、チョコレートなど100種類以上の素材が少量から揃う人気のコーナーです。
お客さまが必要な量だけを紙袋に詰めて手軽に購入できるほか、自由が丘店では持ち込んだ容器での販売も可能となっており、ごみの削減に取り組んでいます。
欲しいものを選んでハンドルを回すと、ガチャガチャのように商品が出てくる様子は「ちょっとアトラクション的で楽しい!」というお声もいただいています。
国内初!寄付先が選べるペットボトル回収機を導入
ーー「ドネーション参加型ペットボトル回収機」とはどのようなものですか。
枝川:ビオセボンでは、2020年11月に国内初となる寄付先が選べる「ドネーション参加型ペットボトル回収機」を導入しました。
ペットボトル1本につき1円を、公益財団法人日本ユニセフ協会、日本赤十字社、公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)のいずれかの団体から選んで寄付することができます。
回収したペットボトルは原料を作る工程でCO₂排出量が少ない「エコAPETⓇ」としてリサイクルされ、ビオセボンで販売する一部のデリカ容器や野菜のトレーに活用されます。
従来使用していた資材と比べ、約30%のCO₂排出量削減につながっています。
ーーペットボトルキャップも回収しているんですか。
枝川:2021年1月からは、ペットボトルキャップの回収ボックスも設置しました。
回収したペットボトルキャップは、再生材料を使用した「CirculeX(サーキュレックス)ごみ袋」の一部としてリサイクルされ、店頭で販売・利用されます。
ごみ袋1枚あたり、ペットボトルキャップ約3個を使用しており、従来品と比較して約45%のCO₂排出量削減に繋がります。
ーーペットボトル回収機設置のきっかけはなんですか。
枝川:お客さまからリサイクルやドネーション(寄付)への参加について多くの声が寄せられたことをきっかけに、長期戦略「サステナブル」の1つとしてスタートしました。
お客さまの「エコ意識」を寄付という形で実現するとともに、どこの団体に寄付するかまで自分の意志が込められるため、より前向きな寄付のアクションにつながります。
お客さまからは、「楽しく“エコ”ができるのは嬉しい」「ポイントではなく寄付の形で貢献できるのは素晴らしい」といった声をいただいており、導入店舗拡大を目指しています。
大切なのはSDGsへの貢献を「可視化」すること
ーーサステナブルな取り組みを行う際に意識していることはありますか。
枝川:サステナブルを推進していく上で大切なのが「可視化」です。
目に見える形にすることで、お客さま自身がSDGsにどのように貢献したのかをわかりやすくすることを意識しています。
例えば、回収したペットボトルをリサイクルして容器として店頭で利用することで、お客さまの目に留まるようにしています。
店舗を訪れるたびに、お客さまの行動がSDGsにつながっていると認識していただくことで、SDGsへの取り組みにより積極的に参加していただくという狙いがあります。
もう1つのポイントは「複数の企業と連携する」ことです。
複数の異なる企業が手を取り合って協力しなければ、サステナブルな社会の実現に向けた大きな変化を生み出すことはできません。
「ドネーション参加型ペットボトル回収機」は、回収機の開発を株式会社寺岡精工様と、回収した資材のリサイクルを株式会社エフピコ様と協力することで実現することができました。
細部まで環境負荷を考えた店舗づくり
ーー店内にもサステナブルな工夫が施されているんですか。
枝川:自由が丘店の内装は、①低環境負荷の素材導入、②余計なモノは付加しないという2つをテーマにしています。
例えば、陳列の際に使用する仕切板やスタンドといった什器は、特注した紙製のものを使っています。
商品の値段を表示するプライスレールや展示棚には国産間伐材を使用しており、プラスチック素材を極力使わないようにしています。
壁には火力発電所で発生する石炭灰の他、コーヒーショップで使用済みのコーヒー豆など多岐にわたる廃棄物を利用しているほか、床には亜麻仁油・木粉・石灰石など天然素材で作られた生分解性リノリウム素材を採用しており、環境に優しい店舗づくりを目指しています。
ーーマイバッグ推奨の取り組みを教えてください。
枝川:ビオセボンでは創業当初からレジ袋の販売は行わず、紙袋のみ販売していました。
さらにマイバッグ持参を推奨するために、オーガニックコットンを使用した「マルシェバッグ」を販売しています。
厳格な基準をクリアしたオーガニック製品の証であるGOTS認証を取得しています。
持ち手を作る際に切り抜いた部分もポーチとしてアップサイクルし、製作工程から環境に配慮しています。
ーー今後の展望を教えてください。
枝川:サステナビリティの推進は「終わりのない事業」とも言われ、これからも革新的な技術の誕生が期待できます。
新たな技術をその都度導入して、さらなるサステナブルな店舗を模索していきたいです。
また、ビオセボンではお客さまからのご意見を大切にしており、新しい取り組みを始めるきっかけにもなっています。
今すぐできるわたしたち一人ひとりの「小さな取組み」を大切にしながら、地域のお客さまと共に持続可能な社会に貢献できるサステナブルストアを目指していきます。
さいごに
今回の取材を通して、ビオセボンでは取り扱う商品から店舗の至るところまでサステナブルな工夫が施されていることがわかった。
顧客から1つでも意見があれば、すぐに反映させることができないか毎度検討しているという。
日常生活と関わりの深いスーパーマーケットだからこそ、顧客の目線に立ち、顧客を巻き込んだSDGsへの取り組みが可能になるのだ。
進化し続けるビオセボンの取り組みから、これからも目が離せない。