【更新日:2022年11月30日 by 田所莉沙】
食品ロスとは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品で、環境問題や世界の食料問題などにつながる課題です。
食品ロスが世界的な問題となる今日、削減に向けて企業、家庭、個人は具体的にどのような取り組みができるのでしょうか。
この記事では食品ロスの現状や原因、引き起こされる問題について考え、企業や家庭、個人、学校でできる取り組みについて分かりやすく解説します。
「食品ロスの解決策」について一緒に考えてみましょう。
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食品ロスの現状
世界では年間40億トンの食糧が生産されていますが、年間の食品ロス量はその3分の1に当たる13億トンに上ります。これほどまで食糧が捨てられている一方で、世界では9人に1人が十分な食事をとることができず、栄養不足に陥っています。
日本における「食品ロス」は年間で522万トン(令和2年度推計値)になりました。これは、世界の食料支援量(2020年で年間約420万トン)の1.2倍に相当します。毎日の食事で例えると、1人当たり茶碗1杯分のご飯を捨てていることになります。
関連記事:食品ロスは日本でどのくらい出ている?-原因から取り組みまで徹底解説
食品ロスが発生する原因
食品の販売時、購入後の保存環境、調理時など食品ロスが発生する場所は沢山あります。
生産者から消費者に渡る過程で食品ロスが発生する原因は、以下の通りです。
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食品ロスが引き起こす問題
食糧の生産から消費までの過程に、食糧を破棄する理由が多く見つかることから世界で年間13億トンもの食品ロスが発生しています。
これほどの廃棄量であれば単に「もったいない」ではすみません。では食品ロスはどのような問題や影響をもたらしているのでしょうか。
具体的に「破棄にかかるコスト」と「破棄による環境問題」という2つの問題を解説します。
食品ロスが引き起こす問題の1つ目は、食糧を廃棄する際に発生する膨大なコストです。環境省によると、一般廃棄物の処理にかかる費用は年間2兆885億円でした(令和元年度)。この費用を1人当たりで計算すると約1万6400円の廃棄コストになります。
費用がかかる理由には生ごみの燃焼効率の悪さが関係しています。生ごみには水分が多く含まれているため、焼却時には水分の蒸発に熱が使われてしまいます。そのため燃焼効率が低下し、費用を増加させてしまうのです。
そして2つ目は、食品ロスが引き起こす環境問題です。食品の保管・加工・運搬と、消費に至るまでの間には多くのエネルギーがかかります。同時に、二酸化炭素も排出されるため食品ロスが多いほど食品1つに費やされたエネルギーを無駄にしてしまうことになります。
さらに食品廃棄物を燃焼する際に排出される温室効果ガスは世界全体の排出量の約8.2%にあたります。燃焼せず埋め立てて処理する国もありますが、埋め立てから発生するメタンガスは二酸化炭素の約25倍の温室効果を与えるため、いずれにせよ発生する温室効果ガスは多く、温暖化を加速させています。
企業の解決策
食品ロスを減らすための工夫は個人のみならず、企業に対しても求められています。
続いて、飲食店や小売業者など、食品を取り扱う場面ごとによる対策を紹介します。
関連記事:企業の食品ロス削減への取り組み10選-食品ロスの現状や原因も解説
飲食店の取り組み
飲食店では料理を残さず食べきってもらうため、さまざまな取り組みが行われています。
1人で食べきれない量の注文や、想像よりも料理が多かったことによる「食べ残し」は食品ロスに繋がります。残さず食べてもらうための工夫としては、料理の小分けや取り分けが挙げられます。
他にも料理を出すタイミングを工夫する・小盛り対応が可能である旨を伝えるなどがあります。また、「持ち帰り」を希望する声に対応し、持ち帰り用の容器を用意する店舗もあります。ただし、持ち帰りを実施する際には食中毒などのリスクに注意しなければなりません。衛生管理や製造日時の表示、その他注意喚起を徹底する必要があります。
スーパー・小売業者の取り組み
小売業では商品の売り切りを意識した取り組みが行われています。
無駄な在庫を持たないよう需要に合う仕入れを意識するとともに、食べきりに配慮した商品のばら売りや小容量販売が工夫として挙げられます。
また、コンビニなどでは消費期限が迫る商品に値引きシールやポイントを付与し、購買意欲を高めることで、商品の売れ残り削減に取り組んでいます。
関連記事:スーパーの食品ロス削減への対策7選-食品ロスの原因や削減事例も解説
食材製造者の取り組み
発注の誤りにより商品在庫が余ってしまう・商習慣により商品が破棄されてしまうといった問題に対し、食品メーカーでは容器や包装の工夫による賞味・消費期限の延長および年月表示化が行われています。
容器包装の例としては、酸化を遅らせる包装により賞味期限を延長させる・最後まで中身を出せる構造により、容器に残る量を削減するというものがあります。
さらに、賞味期限の表示を年月日から年月に変更することで商品の在庫管理を効率化し、期限切れによる食品ロスを削減するという例もあります。
家庭・個人の解決策3選
ここまで食品ロスの問題や企業の取り組みについて詳しくみてきましたが、食品ロスの対策として私たちができることは何でしょうか。
続いて、家庭または個人単位での3つの取り組みを紹介します。
食品を買い過ぎない
買い物に出かける前に冷蔵庫を確認し、必要なものを整理しておくことで食品の買い過ぎを防ぐことができます。また、ばら売り商品や食べきりサイズの食品を購入すると「食べ残し」の削減に効果的です。必要な量を把握し、必要な分だけ買うことで食品ロス削減に貢献できます。
食材を使い切る
残っている食材や消費期限の近い食材から調理することで、食材を効率よく使い切ることができます。期限以内での消費が難しい場合には冷凍・茹でるなど適切な保存や加工を行うほか、作りすぎてしまった料理などは別の料理に利用しリメイクするなどの工夫が出来ます。
食べきれる量を意識する
調理時には作る量を調節し、なるべく食べきれる量の料理を作りましょう。外出時においても同様に、食べきれる量を考えた上で注文することが大切です。自分にとって適切な量の食事を心がけると家計にも健康面にも良いです。
学校での解決策3選
調理時の破棄や給食の食べ残しなど、学校から発生する食品ロスもあります。この章では学校での食品ロスへの取り組みを紹介します。
食品ロスを抑える調理
給食の調理施設では、過剰除去を削減し食材の可食部分を増やす・飾り切りを取り入れ食材に対する苦手意識を和らげる、といった取り組みが行われています。環境省によると、このように調理方法やメニューを工夫している市区町村は約7割にのぼりました。
食品廃棄物の肥料化
給食の食べ残しや調理くずは、「飼料」「肥料」として有効活用することができます。
また、食品ロスを活用した肥料で育てた農作物を学校給食に取り入れるといった、地域循環を意識した取り組み事例もあります。
食事の大切さを学ぶ
食事がどのようにして提供されるのかを学ぶことで、食べ物に対する認識を変えることができます。
環境省によると、約65%の市区町村が食べ残しの削減を目的とした食育・環境教育に取り組んでいます。給食が作られる工程や生産者の思いを伝える動画教材の利用、実際に野菜を育てる、栄養教諭による授業などが例として挙げられます。
食品ロス削減につながる活動・サービス
ここまで企業、家庭、学校と食品ロスへの対策例を紹介してきました。次に活動やサービスを利用した例を紹介します。
フードバンク
フードバンクとは、安全に食べられるのに包装の破損や過剰在庫、印字ミスなどの理由で、流通に出すことができない食品を企業などから寄贈していただき、必要としている施設や団体、困窮世帯に無償で提供する活動のことです。(認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン » コメントフィード より引用)
フードバンクでは食品を受け取る側と食品を届ける側、そして行政にメリットがあります。受け取り側としては食品の支援による食費の節約、心身の充足感、食育の面にメリットがあります。
また届ける側のメリットとしては食品の破棄コスト・環境負荷の削減、従業員のモティベーションアップ、社会貢献活動の実施が挙げられます。
最後に行政のメリットとしては食品廃棄物の削減に加え、福祉予算の削減などによる財政負担の軽減やフードバンクを利用した地域活性化があります。
引用:認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン » コメントフィード
食品ロス削減アプリ
破棄の危機にある商品を消費者に届ける食品ロス削減アプリの利用も、ロス削減に効果的です。
例えばロス削減アプリTABETEでは、パン屋を始めとする飲食店で「作りすぎ」や「予約キャンセル」等の理由から廃棄されてしまう食品をユーザに通知し、レスキュー(購入)に繋げます。
このように破棄寸前の商品を利用者に通知するものから、規格外品として店頭に並ぶ事のなかった訳アリ商品を消費者へ直接届けるアプリなどがあります。またアプリを通してのお買い物では、商品の価格が通常より値引かれていたりとお得な得点が付いていることが多いため、お店と利用者の双方にメリットがあります。
「TABETE」アプリはこちらから▼ App Store Google Play |
関連記事:食品ロス削減のおすすめアプリ5選-アプリ活用のメリットから特徴を徹底比較
余った食品を販売する通販サイト
食品ロス削減アプリ以外にも、破棄の危機に瀕している食品を届けるサイトがあります。
例えば、ロス削減サイトロスゼロではメーカー・流通から規格外品や過剰在庫として扱われる食品をネット販売しています。また、サイト食べチョクでは市場では出回らない食材などを生産者から直で届けています。
このように、市場に出ない食材を商品を取り扱うサイトの他にも、営業自粛・相場下落により買い手がつかない食品を扱うものなど、食品ロスが発生する地点によりさまざまな削減サイトがあります。
「ロスゼロ」サイトはこちらから▼ ロスゼロ |
「食べチョク」サイトはこちらから▼ 食べチョク |
関連記事:食品ロス削減のおすすめアプリ5選-アプリ活用のメリットから特徴を徹底比較
日本の対策3選
食品ロスに関する取り組みとして、最後に日本の対策を紹介します。
食品ロス削減推進法の施行
日本では2019年10月1日、「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」が施行されました。
この法律では食品ロスの定義や削減に向けた方針、施策などが制定されており、企業・自治体・個人が取り組むべき内容を具体的に示しています。
食品リサイクル法の施行
食品リサイクル法とは食品廃棄物の発生抑制と減量化とともに、飼料や肥料等としての再生利用を促進させることを目的とした法律です。
食品の売れ残りや製造・加工等で生じる食品廃棄物などの抑制、またその再生利用を目指すために食品関連事業者が取り組むべき事項がまとめられています。
地方公共団体ごとの取り組み
地方公共団体ごとに食品ロス削減に向けた対策も行われています。例えば、福岡県では食品ロスに関連する制度や取組の紹介、その他実践的な内容を教えることができる「食品ロス削減マイスター」を養成するという目的のもと、食品ロス削減に関する講座を全4回にわたって開催しました。
また、札幌市では「#お買い物でエコササイズ」と「#脱プラでエコササイズ」をテーマに掲げ、「食品ロスの削減」と「使い捨てプラスチック製品の削減」を啓発するキャンペーンを実施しました。
上記の取り組みは令和3年度における取り組み事例の1部になります。消費者庁では地方公共団体の取組事例についてまとめたpdfが公開されているので、あわせてチェックしてみてください。
サイトはこちらから▼ 地方公共団体の取組事例 | 消費者庁 |
引用:令和3年度地方公共団体における食品ロス削減の取組について<事例紹介>
まとめ
今回は食品ロスについて紹介しました。
昨今では食品ロス削減に向けた活用が企業から個人まで幅広く浸透してきています。一方で、飲食店での食べきり意識やお買い物時における商品選び、またその商品開発など。企業と個人が協力することで発揮される取り組みもあります。
日常生活の中でも、企業と個人それぞれが視点から食品ロスの取り組みを見つけてみると、新しい発見があるかもしれません。ぜひ日常の中でも取り入れてみてください!