LGBTに関する海外の取り組み事例-法律・教育・企業取り組みも解説

#LGBT#LGBTQ#ジェンダー 2023.04.12

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現在、性の多様性が少しずつ認められるようになり、LGBTに対する取り組みを行う企業が増えてきました。

一方で、学校や企業でどのような取り組みができるのか、分からないという人も少なくない現状です。

この記事では、海外の国や学校、企業のLGBTに対する取り組みについて、分かりやすく紹介します。事例を参考に、私たちにできることを考えてみましょう。

【この記事で分かること】

日本のLGBTに対する取り組みの現状

LGBTQIA+
日本では、LGBTに対する取り組みが進んでいますが、まだ不十分な状況が続いています。性同一性障害に関しては、日本ではまだ差別や偏見が残っていますが、LGBTの人々が直面する課題について、少しずつ明らかになってきました。

例えば、性同一性障害に関する情報がインターネット上で簡単に入手できるようになってきたことや、多様性に寛容な社会を目指す取り組みが進んでいることが挙げられます。

しかし、教育や医療においても、LGBTに対する理解を深める取り組みが進んでいますが、課題も多く存在しています。

日本のLGBT教育の課題|社会的な偏見や差別への対応

日本ではLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の人々が、一般的にはまだ社会的な偏見や差別に直面しています。そのため、LGBTに関する教育は重要な課題といえます。

日本の教育現場においては、LGBTに関する教育が不十分であるという指摘がされています。このため、学校での性教育や人権教育においてもLGBTについての取り扱いが不十分であり、結果としてLGBTの生徒たちがいじめの対象になりやすいという問題があるのです。

これに対し、日本政府は2020年に教員の研修や教材の整備などを進めることで、LGBTに関する教育を推進する方針を示しました。そして、2022年には学校における性的マイノリティへの対応に関する指針が公表しました。

しかし、まだまだ課題も残っています。例えば、LGBTに関する情報が不足していることや、教員の中にもLGBTについて理解が不十分な人がいることが指摘されています。また、LGBTについての教育は、一部の先進的な学校や自治体でしか行われていないことが多く、全国的な普及が進んでいるわけではありません。

LGBTに関する教育は、LGBT当事者が自分らしく生きるための理解と尊重を広めることが目的であり、社会全体の課題として取り組む必要があります。

LGBTに関する制度面での問題|法的な手続きを行うことが困難

性同一性障害(ジェンダー違和)を持つ人々が、自分の性別に合わせた法的な手続きを行えるようにすることも課題です。たとえば、戸籍や免許証などの身分証明書に記載される性別は、出生時に決定されたものがそのまま残ります。性同一性障害を持つ人々が、自分の性別に合わせた変更を行うには、煩雑な手続きが必要であり、また裁判所の判断によって許可される必要があります。

これらの問題に対して、LGBT団体や人権団体は、法律改正や制度の整備を求めて活動しています。最近では、同性婚の合法化や性同一性障害を持つ人々の法的な手続きの簡易化について、国会での議論が進んでいます。

関連記事:日本のLGBTへの取り組み事例-政府や自治体・企業の取り組みを紹介

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関連記事:LGBT教育に必要な取り組み5選-現在の問題点と海外の取り組みも紹介

海外のLGBTに対する取り組み6選

レインボーフラッグ

ここまでLGBTに関する制度面での問題について解説していきました。

続いて、海外のLGBTに対する取り組みについて6つ紹介していきます。

スウェーデン|同性愛の合法化を実現

スウェーデンはLGBTに対する先進的な取り組みを行っています。同性愛が合法化されたのは1944年であり、同性婚も2009年に法制化されました。性的指向やジェンダーに関する教育プログラムが展開され、差別を撤廃しLGBTの権利保護に向けた政策も進めています。

さらに、性的指向やジェンダーに関する研究や調査を積極的に行っており、LGBT当事者が安心して暮らせる社会を目指しています。スウェーデンはLGBTに対する包括的な人権保護を推進しており、多様な性的指向やジェンダーに対する理解と尊重を促進する取り組みを行っています。

フィンランド|同性パートナーシップによる子どもの養育が法律で認められている

フィンランドはLGBTに対する積極的な取り組みを行っており、同性愛の合法化は1981年に実現し、2002年には同性婚の法制化もされました。さらに、LGBTの権利保護や差別撤廃に向けた政策や教育プログラムが展開されており、性的指向やジェンダーに関する啓発キャンペーンも行われています。

また、同性パートナーシップによる子どもの養育も法律的に認められています。フィンランドはLGBTに対する包括的な人権保護を目指しており、多様な性的指向やジェンダーに対する理解と尊重を促進する取り組みが進んでいます。

デンマーク|性別適合手術やホルモン療法を無料で提供

デンマークでは、性同一性障害を理由とする性別適合手術や¹ホルモン療法が無料で提供されています。この制度は、1990年代から段階的に導入され、2006年に性自認と身体の性差異に苦しむ人々が、医療的な支援を受けることができるようになることを目的として法的に認められました。

具体的には、診断基準を満たした成年の患者が、性別適合手術やホルモン療法を受けることができます。また、未成年の患者に対しても、親や法定代理人の同意が得られれば、医療的な支援を受けることができます。この制度によって、性自認に合わせた医療的な支援が無料で受けられることで、LGBT当事者が自分らしく生きることができるようになっています。

¹ホルモン治療:身体的な性別と一致する性別ホルモンを投与することで、体の性的特徴を変化させること。

フランス|同性パートナーに対する養子縁組

フランスでは、2013年に同性婚が合法化され、同時に同性パートナーに対する養子縁組が認められるようになりました。この制度は、同性カップルが子どもを養子縁組することができるようにするもので、養子縁組によって子どもが法的に養子となり、養親と同等の権利と責任を持つことができます。

同性パートナーに対する養子縁組は、子どもの福祉や幸福を最優先に考えた上で、社会的な必要性がある場合に限られます。具体的には、同性カップルの一方が既に子どもを養子縁組していた場合や、その子どもと血縁関係にある場合、あるいは養子縁組によって子どもが非常に困難な状況に陥ることが明らかな場合などが該当します。

同性婚が合法化されたことで法的に認められ、これにより、同性カップルも異性カップルと同様に、家族として子どもを育てることができるようになりました。

イギリス|性的指向や性自認に関する教育

イギリスでは、学校においてLGBTに対する教育プログラムが導入されています。2019年には、すべての学校において、性的指向や性自認に関する教育を実施するようになりました

教育プログラムを通して、LGBTに対する差別やハラスメントの問題について学び、性的指向や性自認に関する理解を深め、LGBT当事者に対して配慮をすることができるようになります。具体的には、LGBT当事者が抱える問題や、彼らが社会で直面する差別やハラスメント、偏見やステレオタイプなどについて学ぶことができます。

このような教育プログラムは、学校のカリキュラムに組み込まれることが推奨され、LGBTの生徒や教員を支援するために、学校内にはLGBTの問題に精通したカウンセラーやアドバイザーが配置されることもあります。学校内での差別やハラスメントの撲滅が進められることで、LGBTの生徒たちが安心して学べることを目指しています。

アメリカ|差別やハラスメントが根深い問題

アメリカはLGBTに対する人権に関する先進的な取り組みを行っている国の一つです。同性婚が合法化されており、同性パートナーに対する養子縁組も認められています。さらに、多くの都市や州において、性的指向や性自認に基づく差別を禁止する法律が制定されています。

しかし、一方でLGBTに対する差別やハラスメントが根深い問題として残っています。特にトランスジェンダーの人々に対する暴力が深刻な問題となっており、トランスジェンダーの人々の人権を守るための法律改正や社会全体での意識改革が求められています。

また、学校においてLGBTに関する教育プログラムが導入されることがありますが、州や地域によっては、LGBT当事者に対する差別を正当化する内容の教育が行われている場合もあります。

LGBT当事者の権利を保障するためには、社会全体での意識改革が不可欠であり、法律や教育プログラムの改革だけでなく、メディアやエンターテインメント産業など、社会全体での取り組みが求められています。

関連記事:LGBTの世界の現状を紹介-政府の取り組みや教育、日本との違いも解説

世界のLGBTに関する法律

ここからは、世界のLGBTに関する「同性婚法」「差別禁止法」「トランスジェンダー関連法」の3つの法律について紹介します。

名称 解説 国名
同性婚法 同性カップルが合法的に結婚できるようにする法律。徐々に世界中で法的に認められるようになってきたが、一部の国や地域では依然として、議論が進んでいない。 ・オランダ・ベルギー・スペイン・カナダ・南アフリカ・ノルウェー・スウェーデン・ポルトガル・アイスランド・アルゼンチン・デンマーク・ブラジル・フランス・ウルグアイ・ニュージーランド・イギリス・ルクセンブルク・メキシコ・アメリカ・アイルランド・コロンビア・フィンランド・マルタ・ドイツ・オーストラリア・オーストリア・台湾・エクアドル・コスタリカ・チリ・スイス・スロヴェニア・キューバ・アンドラ
差別禁止法 人種、宗教、性的指向、性自認、障害など、個人を特定する属性に基づく差別を禁止する法律。社会のあらゆる分野で適用され、LGBT当事者が同等な権利を持ち、差別を受けない社会の実現を目指している。 ・アイルランド・イギリス・オーストラリア・オランダ・カナダ・スウェーデン・スペイン・デンマーク・ドイツ・ニュージーランド・ノルウェー・フィンランド・メキシコ・欧州連合(EU)
トランスジェンダー関連法 トランスジェンダーの人々に対する法的保護を定めた法律。トランスジェンダーの人々が、自己認識に基づいた性別を法的に認められる「性別適合手術法」や「性同一性障害者に対する差別の禁止に関する法律」などがある。トランスジェンダーの人々が偏見や差別から自由になり、社会において平等な地位を得ることを目指している。 ・アイルランド・イギリス・オーストラリア・オランダ・カナダ・スウェーデン・スペイン・デンマーク・ドイツ・ニュージーランド・ノルウェー・フィンランド・メキシコ

世界のLGBT教育の取り組み事例4選

レインボーロード

ここまで、世界のLGBTに関する法律について紹介していきました。

次に、世界のLGBT教育の取り組み事例を4つ紹介していきます。

カナダ|若者に対するサポートを提供

カナダでは、LGBT教育を重要な問題と位置づけており、LGBTについて学ぶためのプログラムを、各省の教育カリキュラムに組み込んでいます。

オンタリオ州では、全ての学年においてLGBTに関する教育プログラムを導入しています。中学校と高校では、性的少数者に対するバイアスや差別を防ぐための取り組みについて学ぶ機会を提供しています。

また、カナダの多くの都市では、LGBTの若者に対するサポートを提供する、青少年向けのLGBTセンターが設置しています。LGBTセンターでは、カウンセリングやメンタルヘルスサポート、就職支援、さらにはLGBTに関するイベントやワークショップなどを開催しています。

イギリス|LGBT教育を推進する法律が導入

イギリスでは、LGBT教育を推進する法律が施行されており、全ての学校で性的指向とジェンダー・アイデンティティに関する教育プログラムの導入が義務付けられています。

2019年にイギリス政府は、LGBTの若者に対するバイアスや差別を防ぐための教育プログラムを、新たに導入することを発表しました。これにより、イギリスの全ての学校において、LGBT当事者に対する差別や偏見を撤廃するための、新しい教育プログラムが展開されることとなりました。

また、LGBTの若者をサポートする団体やセンターが設置されており、メンタルヘルスサポートやカウンセリング、電話相談などのサービスを提供しています。さらに、イギリス政府は、LGBTの若者に対する支援を拡大するため、各地方自治体に補助金を出しています。

オーストラリア|LGBTに関する教育プログラム

オーストラリアでは、州や地域によってはLGBTに関する教育を義務化しており、それぞれの学校において、LGBTの若者が自分自身を受け入れるための環境を整備しています。

オーストラリアでは、Safe Schools Coalition Australia(SSCA)というLGBTに関する教育プログラムが展開されています。このプログラムは、学校におけるLGBTの若者に対するバイアスや差別を防止することを目的としており、LGBTの若者やその家族、学校の教職員などを対象としたトレーニングやカウンセリング、情報提供などのサポートを提供しているのです。

スウェーデン|LGBTの観点を取り入れた性教育を必修科目に設定

LGBTに関する教育に積極的に取り組んでいる国の一つのスウェーデンでは、LGBTの若者が学校で健全な環境で学ぶことができるように、LGBTに関する教育プログラムを展開しています。

性教育にLGBTの観点が取り入れられており、全ての学校で必修科目となっています。また、教育省は、LGBTの若者が学校で健全な環境で学ぶことができるよう、学校の教職員に向けたトレーニングやガイダンスを提供しています。

世界の企業のLGBTに対する取り組み事例4選

レインボーフラッグ
ここまで、世界のLGBT教育の取り組み事例を4つ紹介していきました。

続いて、世界の企業のLGBTに対する取り組み事例を4つ紹介していきます。

Google|特別なメンタルヘルスプログラムの提供

Google

引用:Google

Googleの取り組みの一例としては、同性パートナーに対する保健福祉給付や、LGBTの従業員を支援するための特別なメンタルヘルスプログラムの提供です。

また、従業員に対するLGBTに関するトレーニングや、職場内での差別を防止するためのポリシーの策定や、LGBT当事者をサポートする取り組みを積極的に行っており、多様性を尊重し、平等な社会の実現に貢献しています。

Apple|LGBT従業員をサポートするため社内ネットワークや職場環境を整備

Apple

引用:Apple

Appleは、LGBTの多様性を尊重し、平等を追求する企業としても有名です。取り組みの一例は、LGBTの従業員をサポートするための社内ネットワークの設立や、LGBT当事者が安心して働ける職場環境を整備するための多数の取り組みを行っています。

また、LGBT当事者をサポートするための慈善団体への寄付や、LGBT当事者に関する広告キャンペーンなど、社会的な貢献も行っており多様性を尊重し、平等な社会の実現に貢献しています。

American Airlines|同性パートナーへ福利厚生の提供

American Airlinesは、LGBTに対する包括的な取り組みを行っています。同社は、LGBTコミュニティのメンバーに対して、アクセシビリティ、安全性、および包括性を確保するための政策、プログラム、リソースを提供しています。その中でも最も有名な取り組みは、同性パートナーへ福利厚生を提供することです。

また、2000年に同性パートナーの健康保険を導入しました。さらに、同社はLGBTコミュニティに対する啓蒙キャンペーンにも積極的に参加し、プライドマンスなどのイベントにもスポンサーとして参加しています。これらの取り組みにより、American AirlinesはLGBTコミュニティから高い評価を受けており、業界内でリーダーシップを発揮しています。

Adobe|働き方に関するポリシーを策定

Adobe

引用:Adobe

AdobeはLGBT当事者をサポートするために、様々な取り組みを行っています。その一例が、LGBT当事者にとって安心できる職場環境を整えるために、働き方に関するポリシーを策定したことです。

このポリシーには、性的指向や性自認に基づく差別やハラスメントを禁止するとともに、医療費の補助やパートナーの福利厚生、育児休暇の取得など、LGBT当事者に対する特別な支援も含まれています。

また、LGBT当事者を積極的にサポートするために、社内にLGBTのためのグループを設立し、社員が自由に参加できるようにしています。さらに、LGBT当事者を含め、多様性と包摂を推進するために、プライド月間やトランスジェンダーの日など、重要なイベントに積極的に参加しています。

関連記事:LGBTフレンドリーな企業の取り組み6選-業界別の取り組み事例も紹介

まとめ

今回は、海外の国や学校、企業のLGBTに対する取り組みについてまとめていきました。

最近では日本も徐々にLGBTに対する意識が変わってきていますが、海外に目を向けてみると更なる発見や気づきがあります。

海外の取り組みを参考にして、少しでも自分でできることを見つけ、包括的かつ理解のある社会を目指していきましょう。

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