リスキリングについての関心が高まっている中で、どのような支援内容があるのか気になっている人は多いのではないでしょうか。
現代の急速なテクノロジー発展と労働環境の変化により、新たなスキルを身に付けることが求められています。また、転職を考えている人も多く、個人のスキルがかつてないほど重要になっています。
今回は、リスキリングに最適な資格や補助金に加え、従業員への支援内容も紹介します。
【この記事でわかること】 |
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リスキリングの意味とは
リスキリングの意味について、似ている言葉との違いを紹介します。
リスキリングとリカレントの違いを解説
リスキリングとリカレントは、どちらも現代社会の変化に対応するための教育手段ですが、その目的と目指す結果には大きな違いがあります。
リスキリングは、既存のスキルを新しいものに置き換えることを指しています。人々が新たな職業に適応したり、自身のキャリアを向上させたりするために行われます。
一方で、リカレントは既存のスキルをさらに高めることを表しています。人々が自分の現在の職業で成功するために行われます。リカレントの具体的な目的は以下のとおりです。
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リスキリングとアンラーニングの違いと解説
先ほども紹介したとおり、リスキリングは既存のスキルを新しいものに置き換えることを指しています。
一方で、アンラーニングとは既存の知識や概念を「忘れる」ことを目指す考え方です。これは、新しい視点やアイデアを得るために、古い情報や思考パターンから忘れることを意味しています。
リスキリング | アンラーニング | |
目的 | 新しい技術や知識の習得 | 古い知識や概念の解放 |
必要性 | 職場環境の変化・職種の転換 | 新しい視点・アイデアの取得 |
方法 | 教育・学習 | 忘却・再学習 |
どちらも新しい事を学ぶための方法ですが、そのアプローチは大きく異なります。リスキリングは新たなスキルを学ぶことに重点を置き、アンラーニングは既存の思考を捨てて新しい視点を持つことを重視しているのです。
リスキリングで取得すべき資格5選-何を学ぶべきか解説
リスキリングで取得すべき資格を5つ紹介します。
ビジネス統計スペシャリスト-データサイエンス分野
ビジネス統計スペシャリストとは、統計分析の基礎を理解し、ビジネス現場での問題解決に活用できるスキルを持つ人材を認定する資格です。
データサイエンス分野では大量のデータから有用な情報を見つけ出し、ビジネスの意思決定に活かす能力が求められています。そのため、ビジネス統計スペシャリストの資格取得はデータ分析の基礎知識を証明する上で非常に有用です。
ビジネス統計スペシャリストの資格取得には以下のメリットがあります。
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データ分析のスキルは、マーケティングリサーチや予測モデル作成など、さまざまな業務で活用することができます。ビジネス統計スペシャリストの資格取得をすることで、データ分析のスキルを身につけることができ、幅広い業務に対応できるようになります。
G検定-IT分野
DX検定は、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する知識や技能を証明するための資格試験です。試験範囲はデジタル技術の基礎知識、DXの戦略立案や実行に必要な能力、さらにはデータ分析やAIの活用方法など、幅広い範囲となっています。
DX検定を取得するメリットは、大きく分けて以下の2つが挙げられます。
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DX検定を取得することで、デジタルトランスフォーメーションに関する基礎的な知識やスキルを身につけることができます。デジタル技術の最新動向や、DXの戦略立案や実行に必要な考え方や手法などを学ぶことができます。
DX検定を取得することで、DX人材としてのスキルをアピールすることができ、就職や転職で有利になる可能性があります。
ITパスポート試験-IT分野
ITパスポート試験とは、ITに関する基礎的な知識を有することを証明する国家資格です。情報マネジメント能力を中心に、コンピュータ、ネットワーク、データベース、システム開発、プロジェクトマネジメントなど、幅広いIT知識が問われます。
ITパスポート試験の資格取得には以下のメリットがあります。
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ITパスポート試験の試験範囲は、ITに関する基礎的な知識を網羅しています。この資格を取得することで、ITに関する基礎知識を身につけることができます。
また、転職や就職活動の際に、企業へのアピールポイントとして活用することができます。
FP(ファイナンシャルプランナー)-法律分野
FP(ファイナンシャルプランナー)とは、金融に関する知識やスキルを活用して、個人や企業の資産運用やライフプランニングをサポートする専門家です。
FPの資格取得には以下のメリットがあります。
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FPの資格試験では、金融に関する幅広い知識やスキルが問われます。この資格を取得することで、金融に関する知識やスキルを身につけることができるため、金融業界で働く際に役立ちます。
金融業界は今後も成長が見込まれており、FPのスキルを身につけることで、キャリアアップや転職の可能性が広がります。
TOEIC-語学分野
グローバル化の進展に伴い、現代のビジネスシーンでは英語力に対するニーズが高まっています。その中で、TOEICは英語を母国語としない人々の英語能力を測る国際的な資格として、多くの企業や組織で採用されています。
TOEICはリーディングとリスニングの2つのセクションで構成されており、ビジネスにおける英語使用能力を総合的に評価する試験です。そのため、TOEICのスコアは、英語力を客観的に示す指標としてリスキリングやキャリアアップを目指す人に役立ちます。
多くの企業が採用基準や昇進の条件としてTOEICスコアを要求しており、高いスコアを取得することで転職や昇進を有利に進めやすくなります。
転職のためのリスキリングの補助金・助成金2選
リスキリングの際に利用できる補助金や助成金を2つ紹介します。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、企業が従業員のスキルアップやキャリアアップを支援するために活用できる制度です。従業員の能力向上やモチベーションの向上を図り、企業の生産性を向上させることが目的です。
助成対象となるのは、以下のいずれかに該当する事業主です。
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例えば、プログラミングのスキルを身につけたいエンジニアや英語力を向上させたい営業職などの従業員が、企業が実施する職業訓練を受講する場合、その訓練費用の一部が助成されます。
DX リスキリング助成金
東京都では、リスキリングを支援するために「DXリスキリング助成金」の制度を設けています。東京都の中小企業がデジタル化に向けた人材育成を行うためのリスキリング教育研修を計画し、その経費を一部補助するものです。
この制度は、要件を満たす都内の中小企業か個人事業主が利用することができます。
業種分類 | 資本金の額または出資の額 | 常時使用する従業員数 |
小売業・飲食店 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
上記以外の産業 | 3億円以下 | 300人以下 |
このような公的助成金を活用することでリスキリングにかかる負担を軽減し、円滑に転職ができるようになります。
企業のリスキリング支援内容4選-日本企業の事例を紹介
キヤノン株式会社
キヤノン株式会社では、非デジタル人材を対象としたリスキリングを推進しています。その一環として、2018年にソフトウェア技術者育成機関である「Canon Institute of Software Technology(CIST)」を設立しました。
CISTでは、職種転換を希望する従業員に教育を実施しています。例えば、販売推進の担当者がエンジニアとして部署転換し、新規事業の開発に携わっています。
また、CISTでの人材育成のほかに、工場の従業員を含む1,500人にクラウド研修やAI研修を実施しました。デジタル知識を習得できる講座を提供することで、デジタル技術の普及を図っています。
JFEスチール株式会社
JFEスチール株式会社では、データサイエンス技術の導入を促進するために社内人材のリスキリングを推進しています。事務系から技術系、エンジニア、研究所の研究員まで幅広い社員を対象としており、データサイエンティストとしてのスキルを身につけることが目的です。
データサイエンティストの人材確保が困難になっている現状を背景に、社内での育成体制を整える必要が生じています。この課題を解決するために、課題解決型教育やe-learningを通じてカリキュラムを提供しています。
リスキリングの結果、データサイエンティスト関連の案件数が2倍に増加し、製造工程での品質改善にも貢献しました。
ヤフー株式会社
ヤフー株式会社はテクノロジーの急速な進化に伴い、従業員のリスキリングに積極的に取り組んでいます。特に、プログラミング未経験者をエンジニアに転職させるリスキリングを支援する「Yahoo!テックアカデミー」というプログラムを実施しています。
このアカデミーでは短期間で集中的に学習を行い、実践的なスキルを身につけることができます。カリキュラムは、Webエンジニアとして必要な知識やスキルを幅広くカバーしています。また、受講生同士の交流会も開催されており、互いの経験や学習上の困難を共有し、励まし合う機会が提供されています。
Yahoo!テックアカデミーの取り組みは日本のIT業界における人材不足の問題を解決する一助となっており、社会全体にとっても価値のある試みです。このような取り組みは、企業が持続的な成長を遂げるために不可欠な要素となっています。
味の素株式会社
味の素株式会社は、デジタル変革(DX)の推進に合わせて従業員のリスキリングに注力しています。
2020年の中期経営計画において、味の素株式会社は「食と健康の課題解決企業として、社会変革をリードする存在になる」というビジョンを掲げました。このビジョンを実現するためには、デジタル技術を活用した新たな事業やサービスの創出が不可欠であると判断し、全従業員をDXビジネス人材に変革することを目標に掲げました。
例えば、全従業員を対象に2026年から2030年にかけてデジタル技術に関するリスキリング研修を実施しています。2021年には、約2,000人の社員がこの研修を受講しました。
このリスキリングの取り組みを通じて、従業員にDXに関する深い理解と競争力の向上を目指しています。また、業務や作業の効率化や自己成長文化の形成など、企業全体の生産性向上にも貢献しています。
まとめ
今回は、リスキリングの内容についてくわしく解説しました。デジタル化が進んでいるため、IT分野やデータサイエンス分野の資格を取得することで自分のスキルを証明することができます。また、昇進を目指す人にはTOEICでのスコア取得もおすすめです。
これらの学習には、多額のお金と時間がかかります。無理のない範囲で計画を立て、スキルアップを目指しましょう。紹介したリスキリングのための補助金や助成金の活用も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
大学では国際デザイン経営学科に所属し、解決が困難な問題をあらゆる角度から解決できるようにするため、日々勉学に努めている。