【更新日:2022年10月5日 by かな】
現代の生活に欠かせないエネルギー事業を展開している東京ガス。
首都圏の都市ガス事業のほか、電力事業・将来的な都市ガスの脱炭素化につながる水素やメタネーションなどの技術開発にも取り組んでいる。
海外でも、北米や東南アジアを中心に資源開発事業、再生可能エネルギー事業、LNGインフラ事業などを展開しており、国内外で人々の暮らしを支えている。
そんな東京ガスは、2022年4月に「グループ経営理念」を策定した。
サステナブルな経営が求められる昨今、東京ガスはどのような思いで、どんな未来を見据えているのか。
今回は東京ガスのサステナビリティ推進部サステナビリティ企画グループの多久氏と、人事部人事勤労グループの齋藤氏を取材した。
新しいグループ経営理念から人事制度改革まで、SDGsに関わる取り組みについて伺う。
東京ガスが描く未来のビジョン|「Compass 2030」
ーー自己紹介をお願いします。
多久:サステナビリティ推進部サステナビリティ企画グループの多久です。
2009年に入社し、研究開発や新規事業開発に携わってきました。2022年4月からは、サステナビリティ推進部で非財務情報開示やマテリアリティの策定などの業務に携わっています。
これまでも、電気自動車の充電サービスの立ち上げなど、サステナビリティに関わる事業に取り組んできました。
齋藤:人事部人事勤労グループの齋藤です。
2008年に入社し、営業や財務の業務に携わってきました。2022年4月からは、人事部で人事制度の改革を担っています。
ーー東京ガスではどのような体制でサステナビリティ推進に取り組んでいるのですか。
多久:2019年に、広報部のCSR機能と、環境関連の各種業務を行っていた環境部が統合する形で、現在のサステナビリティ推進部ができました。
社長をトップとするサステナビリティ委員会も運営しており、各部署と連携を取りながらサステナビリティを推進しています。
ーー東京ガスのビジョンを教えてください。
多久:2019年、長期の経営ビジョンとして「Compass 2030」を策定しました。
3つの挑戦として
- 「CO2ネット・ゼロ」への移行をリード
- 「価値共創」のエコシステム構築
- LNGバリューチェーンの変革
を掲げており、これらはSDGsへの貢献に幅広く繋がる挑戦です。
さらに、「Compass 2030」を実現するための具体的な道筋として「Compass Action」を策定しました。
東京ガスは、国内のエネルギー事業者として初めて「CO2ネット・ゼロ*」を宣言した企業です。
天然ガスによる低炭素化、ガス・電力の脱炭素化という2つの取り組みを柱として、安定供給性や経済性を損なうことなく「CO2ネット・ゼロ」への移行を実現することを目指しています。
また、多様化するお客様のニーズに応えることが可能な価値共創のエコシステムの構築や、LNGバリューチェーンの変革による更なる成長により、いつまでも必要とされる企業であり続けたいと考えています。
*CO2ネット・ゼロ:CO2排出量から、CCS(二酸化炭素回収・貯蓄技術)や植林等により吸収する量を差し引きゼロにした状態
経営理念がグループの一体感を生み出す
ーー新たに策定された経営理念について教えて下さい。
多久:2022年4月1日に、新たな「グループ経営理念」を策定しました。
グループ経営理念は、”自分たちは何者か・何のために存在しているのか”を示した「存在意義」と、東京ガスグループ従業員が”何を大切にして行動するのか”を示した「価値観」から構成されています。
再策定のきっかけは「4つのD(脱炭素、デジタル化、価値観の多様化、規制緩和)」と言われる事業環境の変化です。
日々変化する現状に向き合い、企業の存在意義を社内外に改めて示すため、また、グループ員一人ひとりが持つべき判断・行動の拠り所を示すため、18年ぶりに見直しを行いました。
▼グループ経営理念
存在意義「人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。」
価値観「挑み続ける」「やり抜く」「尊重する」「誠意をもつ」
ーー社員の皆様の反応はいかがでしたか。
多久:前向きな反応が多かったです。「改めて東京ガスグループで働く意義を感じた」、「モチベーションが上がった」という意見が多く寄せられました。
齋藤:新しい経営理念を自分に当てはめ、従業員一人ひとりが自身の存在意義を捉え直すきっかけにもなったと感じます。
ーー存在意義や価値観を明確に示すメリットは感じましたか。
多久:日々の業務の拠り所になることがメリットですね。何か判断が求められる場面で、経営理念が指針となります。
齋藤:結果として、東京ガスグループの一体感にも繋がっていくと感じました。それぞれが主体的に、同じ方向へ進む道しるべになっています。
従業員に寄り添う人事制度を目指す|東京ガスの「3つの約束」
ーー人事制度の変革が求められる今、東京ガスはこれから、どのような人事戦略をしていくのでしょうか?
齋藤:東京ガスは、「Compass2030」において、今と未来の従業員に対して「3つの約束」を掲げています。
- 社会に大きなインパクトを与える仕事を生み出します。
- 多様性がぶつかり合い、切磋琢磨する場をつくります。
- 一人ひとりの自己実現にこだわります。
人事制度を改革することでも、この約束を達成していきたいと考えています。
ーー1つ目の「社会に大きなインパクトを与える仕事を生み出します。」について教えてください。
齋藤:教育や目標設定のあり方を見直すことで、誰もがチャレンジできる場と環境を提供したいと考えています。
「価値観」のうちの「挑み続ける」にも通じる部分です。
「今までやってきたことが正しい」という考えではインパクトのある新しい考えは生まれません。
具体的には、目標設定の際にチャレンジングな目標を立て、実現に向けてサポートする制度の導入、プロジェクトの公募制度などが挙げられます。
ーー2つ目の「多様性がぶつかり合い、切磋琢磨する場をつくります。」ではどのような取り組みをしているのですか?
齋藤:多様な人材が活躍できるように、様々な取組みを進めています。例えば、ライフステージに合わせた勤務制度やリモートワークの整備など、多様な働き方をサポートする体制を整えています。
育休からの復職率は100%。育児休職を取得する男性社員も年々増加しています。
こうした制度を拡充させることに加え、一人ひとりの違いが認められ、能力が発揮できる状態をつくりだすために、上司と部下が一対一で対話する、1on1を実施しています。
定期的な双方向のコミュニケーションを通じて、相互理解を深める場となっています。
コミュニケーションを活性化し良好な関係を築くことは、シンプルながらも多様性の尊重につながる重要な取り組みだと考えています。
多久:実際に1on1をやってみると、一緒に仕事をするだけでは見えなかったその人の考え方を知ることができるので、新たな発見があります。
ーー3つ目の「一人ひとりの自己実現にこだわります。」について教えてください。
齋藤:前述した目標設定や1on1を通して、一人ひとりが何をしたいのか、明確に引き出せるようにする必要があります。
社内の育成制度やキャリアアップについても、自己啓発のプランを整えています。
ーーこれからの展望を教えて下さい。
多久:事業活動を通じて真摯に社会課題に取り組んでいきたいです。
2022年現在、国際情勢の不安定化により、エネルギーの安全保障の重要性が高まってきています。気候変動への対策とエネルギーの安全保障を両立させていくことが重要課題だと考えています。
また、特に個人的には、エネルギー・インフラに関わる、技術開発や事業開発に取り組んでいくことで、世の中にとって初めての新しい価値を生み出し、持続可能な社会に貢献していきたいです。
齋藤:新たな経営理念の策定に伴い、「存在意義」、「価値観」を人事制度を通してどう実現していくかが課題です。
これまでの経営理念のもとで培ってきた部分も引き継ぎながら、より多くの従業員に寄り添う人事制度を目指します。
さいごに
制度としてD&I推進や人事制度改革を進めながらも、コミュニケーションによって一人ひとりと向き合おうという姿勢が印象的だった。
顧客のニーズに合わせた、ガス事業に留まらないサービス展開に加え、誰もが働きやすい環境を整えることで、事業としての持続可能性を見据えていると感じた。
グループとして多くの従業員を抱え、国内外で展開する大企業だからこそ、グループ経営理念が大きな指針になる。
これからも、より良い企業へ、よりよい未来へ挑み続ける東京ガスの取り組みから目が離せない。