日本の学校における食品ロスへの対策はどのようなものがあるでしょうか。
生徒1人当たりの年間の食品廃棄物量は、17.2kgに及び、現状は深刻です。
SDGsの観点からも学校での食品ロス対策は急務となっています。
今回は、学校における食品ロスの原因から問題点、さらに具体的な対策事例や個人でできることを紹介します。
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学校での食品ロスの原因は「学校給食」-「学校給食」の現状とは?
食品ロスとは何か
食品ロス(フードロス)とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。
食品ロスは生産者の時間と労力や消費者のお金を無駄にしてしまいます。それだけでなく、環境にも悪影響を及ぼします。
食品ロス削減は、食料資源の有効利用や地球温暖の抑制につながり、持続可能な社会の実現に貢献につながるのです。
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学校給食における食品ロスの現状
環境省は、学校給食による食品廃棄物の発生等を把握するため、平成27年度に全国の市区町村に対してアンケートを実施しました。(回答率約80%)
調査の結果、児童1人当たりの年間の食品廃棄物の発生量は、推計で17.2kgでした。
その内訳は、食べ残しが7.1kg(約41%)と最も多く、次いで調理残渣が5.6kg(約33%)です。
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学校給食で食べ残しが発生する理由3選
なぜ学校給食で食品ロスが発生するのでしょうか。
上記から分かるように、学校給食による食品ロスの内訳は主に調理残渣と食べ残しによるものでした。
調理残渣には野菜の皮などがあります。これは給食を作るうえでどうしても発生してしまうものです。
一方、食べ残しによる食品ロスは特に問題です。食べ残しの原因としては主に以下の3つが挙げられます。
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ここでは、この3つの理由について紹介します。
給食の食べ残しの理由①-量が多いから
学校給食による食べ残しの理由の1つ目は「量が多いから」です。
当然のことですが、食べる量には個人差があります。
特に女子は男子に比べ、量が多すぎることを理由に残食する割合が2割高くなっています。
給食の食べ残しの理由②-喫食時間が短いから
理由2つ目は「喫食時間が短いから」です。喫食時間が短くなる要因として、
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などが挙げられます。
給食の食べ残しの理由③-嫌いな食べ物があるから
理由3つ目は「嫌いな食べ物があるから」です。
特に野菜、豆類、きのこ類が苦手な子どもが多く、残食量が多い傾向にあります。
学校給食による食品ロス対策に取り組む意義
学校給食で発生する食品ロスは、次のような点から問題視されます。
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学校給食による食品ロスへの対策は、以上の問題を解決することと同義です。
ここでは特にSDGsと関連させて、給食による食品ロスへの対策の意義について解説します。
食品ロスとSDGsの関係性
食品ロスと最も関係が深いSDGsは、目標12「つくる責任つかう責任」です。
特にSDGs12ターゲット3は、
「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンに置ける食料の損失を減少させる」です。
目標12だけでなく、食品ロス削減は他のSDGs目標とも関連します。
例えば、食品ロスの問題が食料不足と関係する点から目標2「飢餓をゼロに」とつながり、
食品ロスの問題が環境問題と関係する点から目標13「気候変動に具体的な対策を」ともつながります。
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学校での食品ロス対策事例5選
ここでは学校での食品ロス対策を地域での取り組み事例と共に紹介します。
1.調理残渣をなるべく減らす-切りくずとなる部位等を利用した献立
ある学校では、給食をつくるうえでどうしても出てしまう調理残渣をなるべく減らそうという取り組みが行われています。
野菜等のカット方法の変更や、廃棄時の調理残渣の水切りによる重量削減は調理残渣を減らすことが可能です。
野菜嫌いのこどもでも食べやすいように野菜をハート型や花型に調理することで、最大65%もの食べ残しが減ったという報告もあります。
加えて、計画的な食材の調達も調理残渣を減らすためには必要です。
また茨城県取手市では、本来切りくずとなる部位等を活用した献立を定期的に提供しています。
▼取手市の取り組みについてはこちら
学校給食の食品ロスを減らす取り組み – 取手市
2.給食の時間を長くする工夫-給食準備時間の短縮
給食時間が長ければ、子どもたちが余裕をもって食事ができ、食べ残しも減ります。
京都府宇治市の学校では、先生と取り組む「給食準備時間の短縮の取り組み」が行われています。
給食準備時間の短縮内容は以下の通りです。
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目標の設定による影響は大きく、取り組みの結果、1日1人当たりの食べ残し量が65%減少しました。
3.嫌いな食べ物への対処-残食量が多い献立を把握
独立行政法人日本スポーツ振興センターの調査によれば、小・中学生共に「野菜・サラダ・魚介類」が「給食で嫌いな食べ物トップ3」でした。
一方で、炭水化物や肉、デザートでは食べ残しがほとんどありません。
しかし、食品ロスを減らすためにこれらの割合を増やし、嫌いな食べ物を減らすのでは栄養バランス的に問題が生じます。
中には、「教員が食品ロスのために児童に完食を強要するのはおかしい」
という意見も存在します。
好き嫌いによる食べ残しへの改善策としては、栄養バランスを維持したうえで児童が好きな味付けや献立にするなど調理時の工夫が必要です。
そのために、どのメニューの残食量が多いのかを把握する必要があります。
4.食育活動で子どもたちの意識向上を図る
子どもたちに、「食の大切さ」を理解させることは給食による食べ残しを減らすことに直結します。
山梨県甲府市では、学校給食での食品ロス減量に関する啓発を行うために「ごみへらし隊」というプロジェクトが行われています。
このプロジェクトの内容を以下にまとめました。
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取り組みが行われる以前は、給食の食べ残しが捨てられていることを「知らなかった」児童は24%でした。
しかし、取り組みが定着すると6%まで減少し、ほとんどの児童が食べ残しの廃棄を意識するようになったのです。
5.学校給食による食品ロスを堆肥化・飼料化する
ここまでの対策は全て「リデュース(ロスを減らすこと)」に焦点を当てた対策を紹介しました。
しかし、食品ロスをゼロにすることは難しいでしょう。
減らしきれずに発生してしまった食品ロスは、リサイクル(再利用)することで有効活用することが重要です。
平成25年度の環境省の調査によると、学校給食のリサイクル率は約59%でした。
その内訳は、堆肥化が40%、飼料化が18%でした。
堆肥化の事例として渋谷区立加計塚小学校の「KAKEZUKA FARM」プロジェクトを紹介します。
このプロジェクトは、小学校と北海道のバイオベンチャー企業「komham」が共同で行っているものです。
同社は「komham菌」という独自の微生物を使い、堆肥化を高速化させる技術を持っています。
校内に「コンポストボックス」を設置し、給食残渣や落ち葉を入れ、微生物の力を借りて堆肥化します。
学校から出る食物残渣を100%校内で堆肥化し、全てを学校菜園に利用する循環型の仕組みを確立することが目標です。
また、子どもたちにコンポストについての授業を行い理解を深め、日々のコンポストボックスのかき混ぜも児童に任せています。
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家庭や個人でできること
学校での取り組みと並行して、家庭での対策も重要です。
家庭でも、こどもの好きな食べ物、よく食べる料理ばかりでなく、野菜、魚介類、豆類など幅広い食材を積極的に食卓にのせてみましょう。
また、子どもに苦手な理由を聞くことも有効な手段です。
「匂いが嫌い」、「味が嫌い」は調理法の工夫で解決可能です。
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まとめ
食品ロスを減らすためのさまざまな取り組みを紹介しました。
未来を担う子どもたちに「給食の重要さ」と「食品ロスの問題点」を伝え、根本的な
意識を変えることが一番重要に思えます。
そのために大人は工夫を凝らすことが必要です。
教育を受けた子どもたちが持続可能な社会を作っていくことを期待します。
SDGs CONNECT ディレクター。ポイ捨ては許さない。ポイ捨てを持ち帰る少年だった。
現在はCO2の約300倍もの温室効果をもつと言われている一酸化二窒素(N2O)を削減できる微生物について研究。将来は環境×ITの第一人者になりたい
▶https://www.instagram.com/reireireijinjin6