未来を創造するさりげない支え合いができるまちづくり|滋賀県湖南市 《SDGs未来都市特集》

#SDGs未来都市#環境 2021.11.02

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【更新日:2022年4月14日 by 三浦莉奈

SDGs未来都市。聞いたことはあるけれど実際にどのような取り組みをしているのか、どのような街なのか、知らない人も多いだろう。

この特集では、「SDGsで変わる街、変わらない想い」をテーマにSDGs未来都市に選定された自治体にインタビューを実施し、街の魅力やSDGsの取り組みについて紹介する。

今回は、湖南市地域エネルギー室の寺村さんに未来都市の取り組みについて伺った。

「工業のまち」でもあり、「福祉のまち」でもある。豊かな自然と伝統が魅力

 

ーー湖南市の概要について教えてください。

湖南市は滋賀県南部に位置し、大阪・名古屋から100㎞圏内、近畿圏と中部圏をつなぐ広域交流拠点にあります。南端に阿星山系、北端に岩根山系を望み、地域の中央を野洲川が流れています。古くは東海道五十三次の51番目の宿場が置かれ、近年は工業団地が立地し、製造業を中心とした産業集積を誇る県内屈指の「工業のまち」となっています。また、昭和40年代から県立の児童福祉施設である近江学園が移転してきたことにより福祉事業所が相次ぎ開設されたことから、先駆けて障がい福祉施策に取り組んできた「福祉のまち」でもあります。

ーー工業、福祉のまちで有名な湖南市ですが、担当者視点で感じる魅力は何ですか?

琵琶湖へと流れる雄大な野洲川一帯に開かれ、「湖南三山」と銘打つ3つの国宝寺院(常楽 寺・長寿寺・善水寺)に囲まれた豊かな自然に恵まれています。国の天然記念物に指定されている「平松のウツクシマツ自生地」は郷土の歴史を語る文化財として守られています。江戸時代には「石部」に東海道五十三次の51番目の宿場がおかれました。また、近江下田焼、近江 一閑張、近江木綿正藍染といった、県指定の伝統工芸品の伝承がなされています。鈴鹿山麓を源とする良質な伏流水をいかした酒づくりでは2つの酒蔵・蔵元に伝統が受け継がれています。

ーー今までに、湖南市ではどのような課題がありましたか?

エネルギー費用(石油・石炭製品、天然ガスなど)が年間約180億円の費用が市外へ流出しており、人口同規模の他自治体に比べて大きな金額となっているのが課題です。

また、人口は減少傾向にあり、国立社会保障・人口問題研究所推計によると、2060年の湖南市の人口は、2010年から約37%減少の34,442人になると推測されます。

地域の資源であるエネルギーを活用し、地域経済循環を作る

ーーSDGs未来都市では、どのような街に変わっていくのでしょうか?

自治体地域新電力会社である「こなんウルトラパワー株式会社」を核とした、官民連携の自然エネルギーの導入プロジェクトの実施、地域内経済循環の創出、多様な主体との連携により地域の活力を創出し、未来を創造するさりげない支えあいのまちづくりの実現をめざします。

ーーそのためにどのような取り組みをしていますか?

地域の資源であるエネルギーを活用した取り組みを進めています。エネルギーは私たちの生活に必要不可欠なものなので、我が国の電気料金への支出は年間約18兆円にのぼっています。この1割でも地域に還流できれば、地域での金融需要に繋がり、大きな地域経済好循環の実現のツールになり得るとされています。

そこで、本市においても、自治体地域新電力会社「こなんウルトラパワー株式会社」を官民連携で設立しました。小売電気事業を始めとして、この利益を次の事業実施として福祉事業者等の事業支援を行い、公共施設の省エネ調査・保育園への省エネ型エアコン寄付・公共施設の 設備更新(省エネ化・太陽光発電事業を行っています。

また自治体SDGsの推進に資する取り組みを展開するにあたって、こなんウルトラパワー株式会社が核となり、域外に流出していた資金を域内に還流させ、それらを原資として地域課題解決に資する事業へと展開・拡充させるとともに、湖南市版シュタットベルケ構想を地域外にも発信することにより2030年のあるべき姿を実現させていくことが重要であると考えています。

ーーSDGsの取り組みにかける想いを教えてください。

まちが抱える課題を解決し、持続可能なまちづくりに取り組むためにSDGsの視点は欠かせません。また、SDGsは地方創生にも関連するため、未来都市に選定されたまちとして、積極的に推進を行い続けます。行政だけでなく地域や企業と連携しながら「さりげない支えあいのまちづくり」に取り組みます。

ーーSDGs未来都市の取り組みの具体的な成果について教えてください。

市からの情報発信やメディアからの報道などより、SDGsへの興味関心は、日に日に高まってきていると実感します。SDGs出前講座の申込や講師依頼も増加傾向にあり、市民のみなさまの関心の高さが伺えます。令和3年度からは、国の地方創生推進交付金を活用し、市内中学・ 高校等と連携した「SDGs×地域資源等教育推進事業」に取り組んでいます。

小学生から高齢者の方まで、世代等を超えて、目標達成に向けて取り組んでいくことができればと感じています。

あらゆるステークホルダーとの連携でまちが一丸となって「さりげない 支えあいのまちづくり」に取り組む

ーーこれからのSDGs推進の戦略、展望について教えてください。

自治体地域新電力会社「こなんウルトラパワー株式会社」を核とした、地域自然エネルギーの活用による域内経済循環について、市内企業、金融機関等との連携による取組を進めていきます。

また、全庁的取組を促進するための職員向け研修等の開催や、地域や学校などと連携した講座の実施、積極的な情報発信の継続などを行い、「さりげない支えあいのまちづくり」に取り組んでまいります。

さいごに

あらゆるステークホルダーと協力しながら、持続可能なまちづくりを行う取り組みが印象的でした。

特に、現在の課題である「エネルギー費用」には地域資源のエネルギーを還元する取り組みを行う など地元を大切にする湖南市のまごころが伝わってきました。「さりげない支え合い」ができる街づくりはあらゆる人の当事者意識がないとなかなか難しいですが、世代を超えて取り組みを続ける湖南市だからこそ実現できるのではないでしょうか。

豊かな自然と伝統で「福祉のまち」・「工業のまち」を築く湖南市の取り組みに今後も期待です!

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