ESG投資とは?意味や市場規模、メリット、企業事例を紹介

#ESG#持続可能 2022.04.01

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【更新日:2023年8月1日 by 田所莉沙

「ESG投資」とは、投資家たちが企業へ投資する際に、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)という3つの要素も視野に入れる投資です。

皆さんはESG投資について、どのくらいご存知でしょうか。ESG投資には、いくつかの方法があり、投資商品もさまざまです。それぞれにメリット・デメリットが存在するため、しっかり理解したうえで、投資方法を決める必要があります。

この記事では、ESG投資の内容や、市場の現状、投資を行うためのポイントなどを解説していきます。また実際に企業が取り組んでいる、ESG政策も、いくつか紹介していきます。

【この記事で分かること】

 

ESG投資とは|意味や取り組みの意義をわかりやすく説明

ESG投資」とは、投資家たちが環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの要素に配慮しつつ、企業へ投資することです。

従来の投資方法では、投資家たちは企業の利益率や、キャッシュ・フローなどの財務情報のみで判断し、投資を行っていました。一方で「ESG投資」では、投資家はよりESGに積極的に取り組んでいる企業を選び、投資を行っており、投資に対するリターンも追求しています。

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責任投資原則(PRI)とは

責任投資原則(PRI)」とは、投資を行う際に環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの視点も踏まえたうえで、投資を行う投資原則のことです。

この原則は、2006年に国際連合によって提唱された原則であり、6つの原則から成り立っています。またPRIに賛同する投資機関は、この6つの原則に基づいて投資を行い、年に一度、報告をする必要があります。

ESG投資が注目されている理由

「ESG投資」は、なぜ近年注目され始めたのでしょうか。

もともと1920年からアメリカで、「社会的責任投資(SRI)」が始まったのがきっかけです。その後1990年代から、環境問題に対する関心が高まるようになりました。そこで始まったのが、「社会的責任投資(SRI)」です。近年では環境だけではなく、社会的な要素やガバナンスに対する取り組みが重要視され、「ESG投資」と変化しました。

近年は温室効果ガスの排出による地球温暖化や、労働者の劣悪な労働環境など、さまざまな分野で問題が生じています。これらの問題に対するリスクを軽減・改善するための手段として、ESG投資は世界中で注目を浴びています。現在は多くの企業がESG投資を行っており投資家にとっても重要です。

ESG投資の市場規模

続いて、世界や日本におけるESG投資の市場規模について、説明していきます。

世界の地域ごとで比較すると、ヨーロッパ諸国の国々が4,000億ドルと、世界の中でもより積極的にESG投資を行っています。続いてアジア太平洋地域北米地域と続きます。ヨーロッパ諸国がESG投資の市場を拡大しているのに対し、日本では市場の規模があまり大きくはありません。2021年における日本のESG投資額は、約800億ドルでした。

また日本はESGの中でも、環境(Environment)に関連する取り組みに力を入れており、最も大きい市場となっています。とくに日本の製造業やエネルギー業界において積極的な投資が行われています。

ESG投資のメリット4選|企業にとっての利点を紹介

ここまでESG投資の概要や、現状についてまとめていきました。続いてESG投資を行うメリットについて、説明していきます。

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企業のイメージが向上する

まずESG投資を行うことで、消費者や企業と取り引きをしている会社からのイメージが向上します。「ESG」は現在、世界各国で注目されている取り組みです。企業としても積極的に政策を実施することで高評価が得られます。

またESGの政策の中で社会(Social)に関する分野に取り組むことで、従業員が働きやすい職場づくりにもつながります。満足のいく環境が整うと離職する人が減ったり、優秀な人材が集まりやすくなったり、さまざまなメリットがあります

資金が集まりやすくなる

ESGへの積極的な取り組みは、資金調達の際にも役立ちます。現在多くの投資家たちは、企業の利益率キャッシュフローだけではなく、ESGの観点も視野に入れています。

ESGに対してあまり政策が実施されていない企業は、投資家たちにもあまり認められず、投資されにくくなってしまいます。そのため企業にとってESG政策を行うことは、とても重要なことです。

新しいビジネスを展開できる

ESG投資は今まで展開しなかった新しい事業につながる可能性もあります。ESGの取り組みは中・長期的に取り組みます。その取り組みを実施する期間の中で、何度もフィードバックを繰り返し、問題点を改善していきます。

このように繰り返し振り返ることで、問題解決につながる新たなビジネスが生まれる可能性も高まります。また企業が従来から展開している事業の拡大ができる場合もあります。

経営リスクを軽減できる

ESGの取り組みは、企業の印象があがったり、ビジネスが展開できたりするだけではなく、万が一のリスクに備えることもできます。現代は変化が著しい「VUCAの時代」と言われています。「VUCA」とは、変動性(Volatility)・不確実性(Uncertainty)・複雑性(Coplexity)・あいまい性(Ambiguity)の4つの単語の頭文字を組み合わせたものです。

企業における万が一のリスクとしては、SNSなどによるバッシングや、不正取り引きなどの不祥事が挙げられます。企業が予期できないリスクに備えるためにも、ESGの取り組みは重要です。

ESG投資の代表的な7つの手法|表で解説

ここまで企業がESG投資を行うメリットについてまとめていきました。つぎにESG投資の方法を、紹介していきます。

ESG投資には、7つの手法があります。これらの手法は、サステナブル投資を普及するための国際団体であるGSIA(Global Sustaniable Investment Alliance)が分類しました。

たとえば「ポジティブ・スクリーニング」では、企業が取り組むESG課題に対して、高い評価を得た企業へ投資する方法です。具体的には、環境への負担を減らして、製品を生産することなどが、この手法に関わる取り組みとなります。そのほかの手法については、下記の表を参照してみてください。

ネガティブスクリーニング 環境や社会などに悪影響を与える可能性のある企業・業種を、投資先から除外する方法
ポジティブ・スクリーニング 環境や社会などにいい影響を与える可能性のある企業、業種へ投資する方法
規範に基づくスクリーニング 国際的に定められているESG規範の基準に基づいて、投資する企業を選ぶ方法
ESG統合 企業の利益率やキャッシュフローである財務情報以外に、ESGの要素を踏まえたうえで、投資する企業を選ぶ方法
サステナブル・テーマ投資 ESGの要素の中でも、とくに持続可能性(サステナビリティ)を重視して、投資する企業を選ぶ方法
インパクト投資 環境や社会への好影響と、投資に対するリターンをともに重視して企業を選ぶ方法
エンゲージメント・議決権行使 投資家が株主として、企業に対しESG経営の実施を促す方法

ESGに対する国内企業の具体的な取り組み事例5選

ESG投資には、7つの手法があるということがわかりました。続いて実際に日本の企業が、実施している取り組みを、紹介していきます。

関連記事:ESG経営に取り組む企業事例6選-メリットや注意点も網羅的に紹介

住友林業グループ|ESGへの取り組み一体化推進

住友林業グループは、山林経営や木材建材の製造・流通などに携わっているグループです。住友林業グループが取り組むESGの政策は、さまざまな種類ありますが、どれも「木」を軸に事業を行なっており、「ESGへの取り組み一体化推進」をどの事業も共通して取り組んでいます。

たとえば建築建材事業において、高品質な木材を持続可能なものにするため、適切に管理された森林から調達しています。また建具や階段部材を製造するときは、リサイクル可能な資源を活用し、製造を行っています。2022年度における製造事業のリサイクル率は、国内外ともに98%以上でした。

ライオン株式会社|LION Eco Challenge 2050

ライオン株式会社は、洗剤や石けん、トイレタリー用品など、さまざまな商品を取り扱っている会社です。「よりよい習慣づくりで、人々の毎日に貢献する」という企業理念のもとに、取り組みを行っています。現在は「地球環境への取り組み推進」と「健康な生活習慣づくり」の2つを最も重要な課題と捉え、積極的に活動を行っています。

重要課題のうちの一つである地球環境への取り組みに関わるのが、長期環境目標LION Eco Challenge 2050」です。この長期目標は2019年に定め、この目標を踏まえて水使用の削減に取り組んでいます。

ライオンが製品を生産し、消費者が使用する段階までのライフサイクルにおいて、消費者が製品を使用する際に用いる水の量が多いことがわかりました。そのためライオンでは、2020年より洗濯用洗剤をすすぎ一回で使用できるような、環境フレンドリー製品の提供をはじめました。

日本電気株式会社(NEC)|人権の尊重

日本電気株式会社(NEC)は、情報通信サービスの提供や、情報通信機器の製造・販売を行っているIT企業です。安全・安心・公平・効率という社会価値を構築し、すべての人が個々の価値を十分に発揮できる社会の実現を目指しています。

日本電気が取り組むESG政策の中で、社会(social)に関連した取り組みが、人権の尊重です。「NECグループ人権方針」にもとづいて、企業全体で人権の尊重に関する取り組みを推進していきます。

また2018年から人権デュー・デリジェンスを高めるために、人権影響評価を実施しています。この評価方法を導入することで、従業員の安全や、健康状態を確保しています。

人権デュー・デリジェンス
…企業に勤める従業員の人権に対して、適切な形で継続的に取り組みを行うこと。具体的な取り組み例としては、長時間労働の防止や、ハラスメント対策などが挙げられる。

伊藤忠商事株式会社|朝型勤務制度

伊藤忠商事株式会社は、金属製品や化学品、食品や金融など、複数の分野を取り扱っている大手総合商社です。企業に利益だけではなく、消費者や取引先の会社などとの信頼関係を築きつつ、社会が直面している課題の解決に貢献するため、取り組みを行っています。

ESGに関連する取り組みの中で、社会(Social)に関する取り組みが、2013年から導入した「朝型勤務制度」です。「朝型勤務制度」では、夜は早く帰宅し、朝早くに出社して働く制度です。この制度を導入することで、長時間労働の削減に貢献しています。

また2021年から多様な働き方を推進していくため、「朝型フレックスタイム制度」や、「在宅勤務制度」を導入しました。さまざまな制度を導入することで、家事・育児に時間を費やす時間が増えたり、従業員のモチベーションが向上したりと、さまざまなメリットがあります。

ダイキン工業株式会社|TCFDフレームワークにもとづく情報開示

ダイキン工業株式会社は、冷媒開発や機器の生産・販売、その後のアフターサービスを展開する空調総合メーカーです。10項目に分類した企業理念をもとに、社会に貢献できるよう、取り組みを行っています。

ダイキンが取り組んでいるESGの中で挙げられるのが、ガバナンス(Governance)に関する政策です。とくにダイキンは2019年5月から気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同し、適切な情報開示をはじめました。「TCFD提言」とは気候関連財務情報タスクフォースが企業に対し、気候変動関連リスクなどに関する情報を、開示するよう推奨することです。

ダイキンもこれにもとづき、「ガバナンス」・「リスク管理」・「戦略」・「指標と目標」という4つの項目を情報開示しています。現在、気候変動に伴って電力不足によるエアコンの売上減少や、規制に反する既存製品が販売できないなどのリスクを予期しています。これらの問題に対し、ダイキンは対策を徹底し、ESGに関する取り組みを実施しています。

ESG投資を行う投資家にとって重要なポイント5選

ここまで日本の企業が、実際に取り組んでいるESGの取り組みを、紹介していきました。最後に投資家にとって、ESG投資を行う際に重要となる5つのポイントをまとめます。

1.ESG投資の目的を明確にする

まずESG投資を行う際に大切なのが、ESG投資を行う理由や、その目的を明確にすることが大切です。ESG投資は、中期・長期的に取り組む投資です。企業が取り組む政策に対して、自分がより共感できる政策に投資することが重要です。

また企業によって、取り組んでいるESGの政策は異なっています。社会が直面している課題の解決のために、企業への投資を通じて自分が貢献したい取り組みを明確にしましょう

2.企業のESGに関する情報を確認する

ESG投資の目的を定めた後は、実際に投資する企業を調べることが大切です。近年は企業が企業のイメージ向上や消費者からの信頼を向上させるために、ESGへ積極的に取り組んでいます。取り組みの内容も企業によって違うため、どのような活動を行っているのか、きちんと調べる必要があります。

またESG投資は、投資に対するリターンが不明瞭です。場合によっては、投資に見合うリターンが得られない可能性もあります。投資をするうえでリターンも大切となるため、しっかりと企業の情報を調べて投資先の企業を選びましょう。

3.目論見書など第三者のコンテンツをもとに情報を確認する

投資先の企業を調べるときには、企業が公式サイトで公開している情報だけではなく、目論見書などの、企業以外が公開している情報も参考にすることがおすすめです

「目論見書」とは、投資家が購入しようとしている証券について、事前に知っておくべき重要な情報がまとめられた書類です。この書類は投信会社が作成するため、企業ではない第三者の視点による企業の情報を知ることができます

4.GPIFが採用するESG指数のETFを参考にする

投資する企業に対しての情報を集める際には、GPFI(Government Pension Investment Fund)が定めるESG指数を参考にすることも、企業の取り組みを客観的にわかる情報のひとつです。

GPFIは、日本の年金・積立金を管理し、運用する団体であり、信ぴょう性の高いデータが得られます。またEFTを参考にすることで、上場する可能性のある企業が分かり、投資する企業を選ぶときに助けとなります。

EFT
…Exchange Traded Fundsの略であり、上場投資信託と言われるもの。日本だけではなく、世界中で拡大しており、さまざまな国への投資が簡単にできるもの。

5.投資商品の特徴を理解する

実際に投資する企業を確定した場合、どのような投資商品を用いて投資を行うか、決める必要があります。投資商品には株式や債券など、さまざまな種類があり、それぞれメリット・デメリットが存在します。

たとえば「株式」では値段の動きが比較的大きく、株価の値上がりが期待できます。一方で値段が下がった際に損をする場合もあるため、注意が必要です。ESG投資をするときは、それぞれの種類についてきちんと理解し、自分に合った投資商品を選ぶ必要があります。

まとめ

ESG投資」は投資家たちが環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素も視野に入れつつ、投資する企業を選んで投資するものです。近年世界各国で注目されており、多くの企業がESGに関する取り組みを取り入れています。

ESGの投資方法には主に7つの種類があり、それぞれ異なる方法を用いています。また投資をする際は、どのような投資商品で投資するか決める必要もあるため、しっかりと調べてESG投資を行うことが重要です。

情報を集めるときは企業が公開している情報だけではなく、第三者による情報も参考にすると客観的なデータが得られます。投資を行う際はぜひ参考にしてみてください。

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