近年、SDGsが各国の義務教育で必修となっていることをご存知でしょうか。日本においても新教育指導要領などの全体の基盤となる理念として、持続可能な開発のための教育(ESD)が掲げられており、教育現場においてSDGsに取り組む必要性が日に日に増しています。
しかし、実際に学校でSDGsに取り組みたいけど、具体的に得られる効果や手順・方法がわからない方も多いのではないでしょうか。
今回は、教育現場でSDGsに取り組むことで得られる効果や、実際にSDGsに取り組む学校の事例、実際に授業で使用できるSDGs教材をご紹介します。
見出し
SDGsと教育の関係とは
目標4「質の高い教育をみんなに」の概要
SDGs目標4は「全ての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、障害学習の機会を促進する」というテーマのもと、10個のターゲットから構成されています。
目標4において、識字率の向上のみならず、教育におけるジェンダー格差をなくしたり、教育が受けられない子どもの数を0にすることも取り組みの1つとして掲げられています。
SDGs目標4について詳しくはこちら▼
教育現場でSDGsに取り組む必要性
現在、世界各国でさまざまな問題が生じています。中でも、地球温暖化や、気候変動、生物多様性の喪失は国際的な問題です。
現代に生きる私たちや、これからの社会を担っていく子どもたちはこれらの複雑な社会問題に対し、向き合っていく必要があります。
子どもたちが社会問題に対し、向き合うことができるようになるためにも、学校でSDGsについて学ぶことは、子どもたちの将来につながります。
SDGs目標達成に向けて、教育現場で推奨されているのがESD(Education for Sustainable Development)です。
ESDはSDGs目標4「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯教育の機会を促進する」のターゲットにも含まれています。
ESDを通じて、「他人の尊重・多様性の尊重・環境の尊重」などさまざまな価値観を理解し、子どもたちの思考力や分析力の向上を促します。
教育現場でSDGsに取り組むことで得られる力
①多様な視点から問題を解決する力
今まで、日本の教育は、個人を尊重すると言っているものの、過度に平等を求めたり、画一的であったため、あまり個人を尊重した教育とは言えませんでした。
しかし、画一的な成果を求めるのではなく、こども一人ひとりがそれぞれ目標を設定し、目標達成にむけて取り組んでいくのが今現在、求められている力です。
このような取り組みを行うことで、「教えられた」解決方法だけではなく、「自ら考えた」解決方法を見出すことができるようになり、子どもたちの視野の拡大につながります。
②互いの意見を尊重し、認め合う力
多くの人は他人を尊重することが出来ます。しかし、子どもの場合、相手の琴を理解するのが難しい子もいます。お互いが理解しあえないという理由で、悪気がなくても、相手を傷つけてしまうこともあります。
このようなことが続くと、「いじめ」や「不登校」へとつながってしまいます。
このようなことが起こらないようにするためにも、相手のことを「理解する」ということはとても大切です。
人の数だけ考え方はあります。だからこそ、小さなころから、自分の考えだけを貫くのではなく、他人の意見を理解し、認める力が必要です。
③能動的に行動する力
グローバル化が進み、今の社会では問題を見出し、解決することができない人はなかなか活躍することができない世の中になっています。
つまり、言われたことをただこなすだけでは今の社会ではまったく役に立たないのです。
自身で問題を発見、解決につなげていくためにもまず自分から行動することがとても大切です。
自分で調べ、自分で疑問を抱き、自分で解決策を見出す。このような行いを小さい頃から続けることで、自ら率先して行動できるようになります。
これらの力をSDGs教育を通じて身につけることで、「持続可能な社会の創り手」となる人材となり、SDGs目標達成につながっていきます。
小学校のSDGs取り組み事例
江東区立八名川小学校|「学びに火をつける」
八名川小学校では問題を自らで見つけ、調べ、解決策を考え、他人に伝える力を育むため、「子どもの学びに火をつける」指導法の開発に取り組んでいます。
この指導法を用いることで、一人ひとりに焦点をあてて問題解決の能力を育むことができます。
また、八名川小学校の児童は1月~2月に行われる「八名川まつり」に毎年参加しています。そこでは今までの自分たちのSDGsに関する取り組みを振り返り、学んだことや感じたことをプレゼンテーションしています。
こうすることで、自分を振り返るだけではなく、他の人の意見について知ることができ、他人を尊重する力、自分の意見を伝える力を育んでいます。
葛飾区立末広小学校|自然環境への取り組み
末広小学校は東京都教育委員会オリンピック・パラリンピック教育アワード校(環境部門)に選ばれており、環境問題を中心として、SDGsについて学習しています。これらの学習を続けることで、自分でできることをよく考え、能動的に行動し、たくましく粘り強く取り組む児童を育てています。
末広小学校ではさまざまな取り組みを行っています。
法務省「人権の花」協力校として花を育てる |
「緑のカーテン」を作り、地球温暖化対策について考える |
雨水貯蔵装置「ミニダム」を用いて植物の水やりに雨水を活用 |
太陽光発電の「ペットボタル」に取り組み、エネルギーについて考える |
小学生でもできるSDGsについて詳しくはこちら▼
中学校のSDGs取り組み事例
郁文館夢学園|SDGs教育を通じて夢を叶えられる人材を育成
郁文館夢学園ではSDGsを学ぶことは「生きる力を育むこと」、「未来の地球人を創る教育」という考えのもと、全科目・カリキュラム・学校行事などあらゆることにSDGs17項目を結びつけ、学ぶ目的を明確にし、問題意識と解決に向けた意欲向上を目指しています。
彼らは「出来ることから」、「身近なことから」をテーマに実践型SDGs教育を行っています。
郁文館夢学園のインタビュー記事はこちら▼
武田中学校|武田の「SDGs宣言」
広島市に創立された武田中学校は「世界的視野に立つ国際人の育成」を学校の精神として掲げています。このような人材の育成を行う上で、SDGsを学ぶことは武田中学校が目指す生徒像と一致することから、SDGsについて学ぶことを始めました。
武田中学校ではさまざまな学校行事にSDGsを関連付けることで、SDGsへの意識を高めています。
また、生徒が考案したSDGsに関わる独自のプロジェクトも行っています。
ペットボトルキャップの回収 |
クラスTシャツをフェアトレードの製品に変更 |
子ども服の回収 |
高校のSDGs取り組み事例
光ヶ丘女子高等学校|SDGsは「プリズム」
「プリズム」とは透明の多面体で、光を屈折・分散させるもののことを言います。
光ヶ丘女子高等学校では「SDGsの取り組みは、プリズムのように1つの課題に多彩な分析の視点と解決策を見出すこと」というように考えています。
そのため、1つの課題に対し、偏った見方をするのではなく、さまざまな方面から考察することができる人材を育成しています。
異文化理解という国際教養の授業科目をカリキュラムに組み込むことはもちろんのこと、クラブ活動もSDGsに結びつけています。
吹奏楽部では難病に苦しむ人や、医療に携わる人々へ音楽で希望を届ける演奏を行っています。
三輪田学園高等学校|SDGsを「他人事」から「自分事」に
三輪田学園高等学校はSDGsの目標達成は決して「他人事」ではなく、「自分事」であると考えています。いまある問題を「自分事」としてとらえることで、問題解決への態度は大きく変化します。
三輪田学園高等学校では法政大学との高大連携プロジェクト「SDGs実践講座」や、ブルーアースプロジェクト、模擬国連会議などの活動に参加しています。
高校生ができるSDGsの取り組みについて詳しくはこちら▼
大学のSDGs取り組み事例
大阪樟蔭女子大学|「美Beautiful」を兼ね備えたSDGs
大阪樟蔭女子大学では「高い知性と豊かな情操を兼ね備えた社会に貢献できる女性の育成」を目指し、グランドデザイン「美Beautiful」のもと、SDGsに取り組んでいます。
今もなお、立場が弱い傾向にある女性を少しでもなくすため、時代の進歩に対応することができる、自立した女性の育成を行っています。
また、ヘアドネーションや地域の親子と絵本の読み聞かせを行い、地域の方々と交流を深めるグリムプロジェクトのような、学生が主体となって行っている活動もあります。
神奈川大学|「神奈川大学ダイバーシティ宣言」
神奈川大学は「時代と社会の課題や使命を地球的視野から深く自覚する」ことを建学の精神としてきました。
2018年に公表された「神奈川大学ダイバーシティ宣言」では、世界の恒久平和と人類の幸福の実現に貢献できる人材を育成し、社会に存在する差別・偏見の根本的な解明と解決を目指すことを掲げています。
また、神奈川大学では、日常的に省エネルギー対策を行ったり、キャンパス内にシェアリングサービスを設置したりと環境を意識した取り組みを行っています。
大学のSDGsの取り組み事例について詳しくはこちら▼
学校でできる身近な取り組み|年齢別に紹介
【小学生】「もったいない」をなくす
身の回りのものを大切にすることはとても大切なことです。
汚くなったからすぐ捨てる、使えなくなったからすぐ捨てるのではなく、他の使い方がないか、考えてみましょう。
些細なものを有効活用するだけでSDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や目標12「つくる責任使う責任」につながります。
物に限らず、食べ物についても同じことが言えます。ご飯を好き嫌いしたり、残したりすることで無駄なエネルギーや資源を使ってしまうことになります。好き嫌いせず、食べ残しをしないことでSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」や、目標15「陸の豊かさも守ろう」につながります。
このものを大切にする取り組みは日頃から意識することで取り組むことができます。そのため、小学生にとってもとても取り組みやすいのではないでしょうか?
【中学生】マイバッグの持参
プラスチック袋の有料化により、マイバッグを持っている方は多くなりました。プラスチック袋に限らず、プラスチック製のストローやコップの
提供を廃止するお店も増えてきています。
しかし、学生のほとんどはプラスチック袋を購入する人が多く見られます。たしかにプラスチック袋は便利ですが、ごみは増加するばかりです。一回きりのスカイ捨て容器やストローを用いるのではなく、マイバッグや繰り返し使用することができる製品を使用するように心がけましょう。
マイバッグを持ち歩くことでプラスチック袋の削減につながるだけではなく、突然袋が必要になった時にも役立ちます。かばんに入れておくだけでいいため、だれでも簡単に取り組むことができます。
【高校生】SDGsについて視野を拡大
まず手軽にできることとして、1つ挙げられるとすれば、SDGsに関連する本を読んでみることです。
日本はSDGsに関する知識が非常に遅れています。このような状況では現在の深刻な課題や問題点を理解することも難しくなってしまいます。
SDGs目標達成に少しでも貢献するためにも、学生のころから世界に目を向ける必要があります。
現在、情報を集めるにあたってさまざまなツールがあります。本に限らず、まずは興味を持ち、調べるということをしてみてはいかがでしょうか?
高校の図書館はさまざまなジャンルの本が置いてあるため、自分が興味があることについて書かれている本を見つけやすくなっています。
一度、高校の図書館を覗いてみるのもいいかもしれません。
【大学生】ボランティア活動への参加
大学生になると、行動範囲が大きく広がり、高校生ではできなかったことができるようになります。また、大学では国際交流も盛んになるため、自分の視野も広がります。
大学が中心となって行っているボランティア活動は所属している大学であれば簡単に参加することができます。
また、募金活動や寄付活動も行っている大学は多くあるので、皆さんも自分の大学のホームページを調べてみてはいかがでしょうか?
授業で使用できるおすすめのSDGs教材3選
SDGsワークシート|unicef
unicefが公式ホームページにて掲載しているSDGsワークシートは中学校の社会の授業にて使用できるようになっています。
2030年、社会の主役になっている子どもたちへのミッションである、「持続可能な世界を築くためには、何をしたらいいのか。また、将来自分はどのように目標達成に貢献できるのか。」について考えます。
このワークシートでは1〜3ページでトピックが提供されており、4〜5ページで行動宣言につなげる4つのステージが設定されています。
学生向けのおすすめSDGsワークシートについて詳しくはこちら▼
SDGsのゲーム|SDGsババ抜き
授業でも使用できるSDGsゲームとして、お笑い芸人の「たかまつなな」さんが創業した笑下村塾から発表されたものが「SDGsババ抜き」をご紹介します。
「SDGsババ抜き」は、基本的に普通のババ抜きとルールは変わりません。しかし、数字がそろったカードを捨てる際、数字ごとに決められた指示に従わなければなりません。
決められている指示は「無駄になってしまっているおにぎりを体で表現する」というような、体をつかったアクションをとる指示もあるため、みんなで楽しみながらSDGsについて学ぶことができます。
SDGsのゲームについて詳しくはこちら▼
株式会社笑下村塾 たかまつななさんへのインタビュー記事はこちら▼
SDGsの書籍|世界がぐっと近くなるSDGsとボクらをつなぐ本
「世界がぐっと近くなるSDGsとボクらをつなぐ本」は、池上彰さんが監修しており、小学生でもわかりやすい表現でSDGsについて解説しいます。
重要なキーワードに関しては漫画にして掲載しているため、よりわかりやすく、楽しみながらSDGsについて学ぶことができます。
SDGsを学べる書籍について詳しくはこちら▼
まとめ
いかがだったでしょうか。
現在、教育現場ではSDGsについて学ぶため、さまざまな工夫が凝らされています。
いきなりSDGsについて意識することは難しいかもしれませんが、家族や友達と話し合ったり、ゲームを通じて学ぶことはできると思います。
まずは自分たちができることからはじめてみませんか?
SDGsコンパスについて詳しくはこちら▼
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SDGsCONNECT SEOライター。大学では文学を通じて、ジェンダーについて学んでいます。SDGsについて詳しくない人にとってもわかりやすく、かつ情報が正確な記事を書けるよう、心がけています。