【更新日:2023年4月5日 by 大竹礼二】
近年、「食品ロス」という言葉を耳にすることが増えてきました。
現在日本では、612万トンの食品ロスが発生しています。
なぜ、これほど多くの食品ロスが発生しているのでしょうか。この記事では、食品ロスの現状、そして食品ロスを削減するための日本の取り組み、今からできる食品ロス対策について紹介します。
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【この記事でわかること】 |
見出し
食品ロス(フードロス)の現状と原因
世界の食品ロス量
FAO(国際連合食糧農業機関)の報告によると、世界中ではまだ食べられる食材が毎年約13億トン廃棄されています。
これは、食糧生産量の3分の1にあたる量です。生産された食料の3分の1が食べられる食材ですが、毎年捨てられてしまっているのです。
日本の食品ロス量
農林水産省によると、2020年に日本で捨てられた食品ロスの量は年間612万トンとなっています。
612トンという値は1年に1人当たり、約45㎏の量を廃棄していることになります。さらに1日に換算すると、約113g、つまりご飯茶碗一杯の食料を捨てていることになります。
ご飯茶碗一杯という身近なものに例えるとどれだけ食品を捨ててしまっているのかが分かります。
食品ロスの原因
食品ロスはどこから発生しているのでしょうか。
日本で発生している食品ロスは、事業系と家庭系に分けられます。
事業系では、規格外品、売れ残りが食品ロスになります。家庭系では、食べ残しや手つかずの食品が食品ロスの発生原因です。
家庭系で多い食品ロスは、「食べ残し」、「傷んでいた」、「期限切れ」の順で多いです。これらは、まだ食べられる食品ですが捨てられてしまいます。
私たちに出来る食品ロス削減は、食べ残しや期限切れの食品を減らすことです。
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食品ロスとSDGsの関係性
食品ロスは世界的な問題でもありますが、SDGsにも関係しています。
例えば、食品ロス対策はSDGs12の達成につながります。SDGs12「つくる責任つかう責任」は、食料やエネルギーなどの消費と生産を確保し、資源を効率よく利用する経済を目指す目標です。
またこのまま食品ロスを放置しておくと、食料が無駄になるだけでなく環境への悪影響も及ぼします。家庭や事業者から出る食品ロスは、可燃ごみとして焼却処分されます。焼却するために化石燃料の大量消費や、焼却することで二酸化炭素が発生し環境への負荷に繋がります。つまり食品ロスへの取り組みは、SDGs13「気候変動に具体的な対策を」、SDGs14「海の豊かさを守ろう」、SDGs15「陸の豊かさも守ろう」にもつながるのです。
さらに、発展途上国を中心に、約8億人以上が十分に食べることができていません。一方で、先進国では食品が余って捨てているのが現状です。SDGs2「飢餓をなくそう」達成のためにも食品ロスへの取り組みが必須になります。
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世界の取り組み事例3選
続いて、世界の食品ロスの取り組み事例を紹介します。
規格外野菜を格安で販売するサービス「Imperfect Foods」-アメリカ
アメリカにおいて食品ロス対策として行われているのは「Imperfect Foods」(インパーフェクト・フーズ)というサービスです。
これは、規格外になってしまいスーパーなどの店頭に置かれない野菜や果物を格安で販売するというものです。
はじかれた野菜や果物は形がきれいではなかったり、少し汚れている、一部が傷んでいるなどがありますがどれも食べられる食材です。
このサービスによって、規格外の野菜や果物を農家から買い取り、スーパーで売られている約30〜50%割り引きされて販売をします。
オンライン販売で注文をしてから自宅まで配達してくれるサービスもついています。
▼公式サイトはこちら
有機食品、生鮮食品などの食料品配達 (imperfectfoods.com)
余った食品をシェアする冷蔵庫-スペイン
スペインでは、地域ごとに共有できる「連帯冷蔵庫」が設置されました。
「連帯冷蔵庫」とは、自宅やレストランで余った食材や使わなかった食材を入れる冷蔵庫です。この冷蔵庫に入っている食品は、地域の人が利用できます。
今までは捨てられていた食品を、困窮者に届けるために考えられました。
この取り組みは食品ロスを減らす効果と、食品を必要としている人に食べ物を届けることができる仕組みになっています。
廃棄食材に罰金-フランス
フランスでは、2016年から「食品廃棄禁止法」という法律が施行されました。
この法律は、大型スーパーマーケットなどで、売れ残りや賞味期限切れの食品の廃棄を禁止するものです。さらに、廃棄量に合わせて罰金を払うことになっています。
法律で規制することによって廃棄量が減り、余った食品は生活困窮者に届けられるようになりました。
食品を廃棄するにも費用がかかっていたため、このような法律ができました。
食品を売る立場からも、残った商品を寄付する方が罰金を取られなくてお得です。寄付する方が有利になり、廃棄が減って廃棄にかかる費用も少なくなる徹底した法律です。
日本政府の取り組み3選
続いて、日本国内で食品ロス削減に取り組んでいる活動を紹介します。
食品ロス削減推進法の施行
食品ロス削減推進法とは、2019年に施行された法律です。日本の食品ロスを削減するため、食品ロスの定義や食品ロスの推進を表明しています。
地方自治体や事業者、消費者の役割が明記されています。
食品ロス削減推進法が施行され、食品ロスに興味を持ってイベントに参加する人が増加してきています。
食品リサイクル法の施行
食品リサイクル法は、2001年に施行され2007年に改正された法律です。
食品の売れ残りや食べ残しなどの廃棄物の量を減少させ、飼料や肥料に再生利用するという取り組みです。基本方針では廃棄物の再生利用すべき量の目標を、業種別に定められています。
食品の製造、加工、卸売、小売りなどを行うメーカーは食品リサイクル法を守らなければいけません。食品ロスの量は年々減ってきてはいますが、まだまだ多いのが現状です。
食品ロス削減月間の実施
食品ロス削減月間とは、環境省と消費者庁、農林水産省が連携して食品ロスの削減に向けた取り組みを啓発している月です。
毎年10月は「食品ロス削減月間」、10月30日は「食品ロス削減の日」です。
2023年のテーマは、「デジタルで快適、消費生活術~デジタル社会の進展と消費者のくらし〜 」です。
デジタルサービスの利用が主流になり、食品ロスの情報や食品の受け渡しを行うサービスも増えてきています。一方で、消費者トラブルも多く、適切な情報モラルを身に着けることが必要です。
普段、食品ロスに関わっていない方でも、今初めて知った方でも10月30日は食品ロス削減に興味を持つことができます。
自治体の取り組み事例3選
続いて、日本の自治体が取り組んでいる食品ロス削減について説明します。
フードバンクの設置-奈良市
奈良市では、家庭や事業所で余っている食品を受け取り生活困窮者に配布をする取り組みを行いました。
2020年に「フードバンクセンター」が開設され、500世帯を目標に市内5か所から集めた食品を配っていきます。
まだ食べられる食品を有効活用し、地域の中で孤立し生活困窮者になっている人を支える活動が広まっています。
スーパーと連携した食品ロス削減効果の検証-京都市
京都市では、食品スーパーと協力し食品ロス減少効果を実験で検証しました。
実施した内容は以下の通りです。
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ポップアップを設置した結果、前年と比べて青果、惣菜、パンの部門の廃棄量が減り、来訪者1000人当たり廃棄量が60%減りました。
さらに賞味期限と消費期限を延ばしたことで、食品廃棄をする前に買ってもらう割合が増え、廃棄量も減りました。
全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会-全国の都道府県
「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」とは、2018年から設立された自治体間のネットワークです。
食品ロスを減らすため、「食べきり運動」や「3R活動(リデュース・リユース・リサイクル)」を全国に推進します。2021年現在、全国で437自治体が参加しています。
各自治体で、フードバンクの設置や、食品ロス削減のノウハウを共有する「施策バンク」、クックパッドで「食材を食べきるレシピ」を公開しています。
日本の学校の取り組み事例3選
続いて、日本の学校が取り組んでいる食品ロス削減について説明します。
給食の時間を長くして食べ残し削減-京都府宇治市
食品ロスの原因の一つである「給食の食べ残し」には、食べる時間が短いことがあげられます。
食べる時間が短くなってしまう理由は、配膳など給食の準備に時間がかかってしまい、お昼ご飯に当てる時間が減ってしまうからです。
食事の時間を長くすることで、子どもたちが余裕をもって食事を楽しむことができ、食べ残しを減らすことができます。
京都府宇治市では、「給食準備時間の短縮の取り組み」が行われています。
目標は以下の通りです。
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目標を設定し、達成していくことで次へのモチベーションにもつながっていきます。この取り組みは、1日の1人あたり食べ残し量が65%減少しました。
野菜の切り方を変えて食品ロス削減-山梨県甲府市
食品ロス削減は1人1人が意識しなければ変わらない問題です。
山梨県甲府市では、教育委員会が主体となって給食の食べ残し削減や、資源の有効利用を行っています。
給食支援員の方が、給食で使われる野菜をハート型や花形にするアイデアを出しました。その結果、食べ残しの多かった学校において65%の食品ロス削減に成功しました。
さらに、食べ残しの堆肥化を小学校で実施しました。食べ残しが捨てられていることや有効活用する方法を指導し、食品ロスを減らす取り組みに繋がっています。
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「学食」の食品ロスゼロに挑戦-|聖心女子大学
聖心女子大学では、学生団体である「Earth in Mind」が学食の食品ロスゼロに挑戦しています。
学食の食品ロスゼロの取り組みは、2020年10月から2021年1月にかけて環境省と株式会社コークッキングが共同で開催した「“No-Foodloss!”Youth Action Project」から始まったプロジェクトです。
プロジェクトの取り組みとして、学食で発生している食品ロスの大半が「お米」であることを突き止めました。そして、お米を残さないようご飯の量を選択できるように仕組みを変更しました。
さらに、調理時に発生する野菜くずは、野菜の切り方で取り組み前から20%も減らすことに成功しました。
日本企業の取り組み事例3選
続いて、日本企業が取り組んでいる食品ロス削減について説明します。
食品ロスの再生利用-株式会社ファミリーマート
株式会社ファミリーマートでは、食品廃棄物の再生利用に取り組んでいます。
店舗から出る食品廃棄物をリサイクルによって飼料、肥料に再資源化しています。さらに、リサイクルした飼料で育った豚やニワトリなどを使った弁当を製造することで、食品リサイクルループに取り組んでいます。
そして、店舗で販売する揚げ物を揚げた廃油をリサイクルし、石鹸やハンドソープとして一部店舗でも販売しています。
副産物の有効活用-山崎製パン株式会社
山崎製パン株式会社では、食品ロスの取り組みとして商品を作る際に発生した切れ端を利用して新たな商品を開発しています。
山崎製パン株式会社では、パンを製造する過程で食パンの耳が副産物として発生します。その割合は全体の3分の2を占めています。そのため、これらをすべて捨ててしまうと大量の食品ロスが発生してしまうのです。
そこで、山崎製パン株式会社の食品ロスを減らす対策として、食パンの耳まで無駄なく有効活用する活動を行っています。
食パンの耳を別の製菓商品としてつくり、そこで食パンの耳が余ったら、パン粉に加工され別の商品に使われます。
最後に残った食パンの耳は飼料として再利用され、食品ロスが出ない仕組みになっています。
ショッピングサイトで食品ロス削減-株式会社クラダシ
株式会社クラダシは、賞味期限の近い食品を主に取り扱っている食品ロス削減通販サイト「Kuradashi(クラダシ)」を運営しています。
賞味期限が近づいた食品や、パッケージの印字ミス、少しの傷で店頭に並ぶことなく食品ロスになってしまう商品を購入することができます。
Kuradashiで食品を購入することで食品ロス削減に繋がります。
現在、Kuradashiの食品ロス削減量は、14384トン。それによるCO2の削減にも貢献しています。
▼Kuradashiのサイトはこちら
Kuradashi
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私たちにできること-今日から家庭でできる食品ロス対策4選
ここまで政府や企業による食品ロスの活動や取り組みを紹介しました。
ここでは、少し興味を持って始めてみようと思っている方に今日からできる食品ロス対策を紹介します。
必要なものだけ買う
食品ロスを減らすためにまず自分で食べきれる分だけ、必要な分だけ食品を買うようにしましょう。
スーパーに行くと、安い商品が目につきがちですが安いからと言って買いすぎては、余らせてしまう可能性があります。
「今日必要な分だけ」「今週必要な分だけ」をメモして買いに行くと、余分に商品を買うことを防ぎます。
賞味期限と消費期限を確認する
冷蔵庫に入れていたら、いつの間にか賞味期限や消費期限を過ぎてしまって仕方なく捨ててしまうことありませんか?
商品を購入する際も賞味期限と消費期限を確認することは重要です。
〇日の間に食べきる、と決めて料理を作ると期限を過ぎてしまうことも少なくなります。
余った食材をリメイク
どうしても料理を食べきれなかった場合、時間が経ってから食べると味が落ちてしまいがちです。
そんな時は、残ったものを別の料理にリメイクするのがおすすめです。
同じ料理ではなく別の料理を食べることで、飽きることなく温かい料理を美味しく食べきることができます。
冷蔵庫にあるもので調理をする
冷蔵庫や冷凍庫に使っていない食材、余っている食材はありませんか?
量が中途半端だから作るのが難しい、そう思っているうちに傷んでしまい食べられなくなった経験はありませんか?
使いきれなくて余った食材は、かしこくつかって美味しい料理に変身させましょう。
冷蔵庫にあるものでつくることで、余分に買い足すことも減り、食品ロスを防ぐことに繋がります。
まとめ
日本で行われている食品ロス対策を紹介しました。
世界や日本でも食品ロス対策が増えてきています。しかし、1人1人の意識も大切です。そのためには、身近なことから挑戦していくことが大切です。
食品ロスの少ない持続可能な社会にしていくため、少しでも意識して生活していきましょう。
大学ではAIについて学んでいます。趣味でイラストを描いています。
SDGsの知識を深めて、わかりやすくて面白い記事をお届けしたいと思います!