再生可能エネルギーである水力発電の特徴やメリット・デメリットとは

#SDGs目標7#エネルギー#サスティナブル#再生可能エネルギー#水力発電#脱炭素(カーボンニュートラル) 2023.05.08

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再生可能エネルギーの1つである水力発電は、起伏が多い日本に適していることから、長年活用されてきました。

大規模水力発電のほかに、近年は出力1,000kWの比較的小規模な水力発電設備「小水力発電」が注目されています。一般河川、農業用水、砂防ダム、上下水道などで水のエネルギーを利用でき、環境にやさしく安定してエネルギーを生み出すことができます。

この記事では、水力発電の概要や仕組み、メリット・デメリット、小水力発電の導入事例について分かりやすく解説します。

【この記事で分かること】

見出し

水力発電とは

水力発電は近年注目されている再生可能エネルギーの1つですが、日本では以前から活用されてきました。日本は土地の起伏や水資源が多く、水力発電に適しているからです。とはいえ、2021年度の日本のエネルギー供給構成比では、水力発電はわずか3.6%でした。火力発電と比較すると、水力によるエネルギー供給量は少ないのが現状です。

水力発電はその発電出力によって大・中・小規模に分類することができます。大規模水力発電所は、建設地が限られていることや、中・小規模水力発電で発電された電気が国のFIT制度(再生可能エネルギーで発電された電気の買取り価格を一定期間国が保証する制度)の対象になったことから、近年は中・小規模の水力発電所が多く作られています。

大規模水力発電の仕組み

大規模水力発電は、水が高いところから低いところに流れる力を利用して水車を回し、その回転を発電用モーターに伝えることにより発電する発電方法です。その発電方式により何種類かに分けられ、ダム式、水路式、揚水式などがあります。

水路式は川に流れる水の勢いをそのまま利用し発電する方法で、ダム式では川や湖を開発して建設したダムに水を蓄え、発電時には放水した水の勢いを利用して発電します。一方で、揚水式は少し運用方法が異なり、電力需要が低く原子力や火力発電による電気が余ってしまう時間帯にその電気で低地から水を汲み上げ、電力需要が高まる時間帯にその水を放出し発電しています。蓄電池のような役割を果たしているのです。

水力発電のメリット3選 

再生可能エネルギーの導入にあたっては、火力や原子力などの他の発電方法も含めた各種のエネルギーのメリット・デメリットを考慮するのが重要です。水力発電にはどのような特徴があるのでしょうか。

①電力需要の変動に対応して発電量を調整できる

水力発電は、電力需要に応じて水路に流す水量を調整することが可能なので、簡単に発電量を調整できます。発電方式によって異なりますが、日間・週間の電力需要から、季節感の電力需要の変動に対応できるものもあります。

今後、天候によって発電量が変動する風力発電や太陽光発電などを普及させるにあたって、柔軟に発電量の調整ができる水力発電は重要です。

②二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない

火力発電は当然のこと、他の再生可能エネルギーや原子力発電と比較しても、水力発電のCO2排出量は格段に少ないです。

ライフサイクル(発電時だけでなく、製造・建設から廃棄までのこと)CO2排出量を見ると、火力発電とは異なり発電時の排出が無いのはもちろんのこと、製造・建設から廃棄までに関わるCO2排出は、主要な発電方法の中でもっとも少なくなっています。

もちろん発電所の規模などにより排出量は上下しますし、CO2排出量以外の環境指標も考慮する必要がありますが、環境にやさしい発電方法の1つであると言えます。

③国内でエネルギーを発電できる

エネルギーを供給する上で、費用や環境負荷と同様に重要なのが、エネルギーの自給性です。外国から燃料を輸入する必要がある発電方法は、国際情勢の変化や燃料価格の高騰によって、安定的に発電できなくなったり、貿易赤字を引き起こしたりします。

一方で水力発電は、純国産のエネルギーであるため、エネルギーの自給率の向上に貢献します。現在の日本のエネルギー自給率は先進国の中でも低く、また化石燃料への依存度が高いことが問題となっています。水力発電を含む再生可能エネルギーを更に普及させることで、エネルギー自給率の向上と化石燃料依存度の低下を実現できます。

水力発電のデメリット3選

水力発電のメリットを見ると、一見夢の発電方法であると思ってしまいますが、メリットがあればデメリットもあります。デメリットについても見てみましょう。

①降水量によって発電量が左右される

水力発電は河川やダムの水を利用し発電するため、当然ですが雨が長く降らなければ発電に支障をきたすことがあります。その他の発電方法のメリット・デメリットも考慮し、どのような状況でも安定して電力需要に対応することができる電源構成(エネルギーミックス)を構築することが、今後の日本にとって重要です。

②ダムの新設には巨額の資金と長い時間を要する

大規模なダムを建設するためには、地質や河川の長期にわたる調査や莫大な資金が必要になります。ダムには莫大な量の水を貯めるため、完成後に決壊し、下流へ水が一気に流れると、大災害を引き起こす可能性があるからです。そのような事態を避けるため、ダムの建設には地質や地盤、河川の状況などの長期にわたる調査をしなければなりません。

③ダムを新設すると周辺の環境に影響を及ぼす

CO2排出の面では環境に優しい発電方法とみなされる水力発電ですが、大規模なダムの建設などは周囲の河川の状況を一変させたり、水生生物の移動を妨げるたりするため、生態系へ与える影響は少なくありません。

近年注目される小水力発電の特徴とは

水力発電というと、大規模なダムを利用した発電というイメージがありますが、近年は小水力発電の建設が盛んです。現在日本では、出力が1000kw以下の水力発電が「小水力発電」として扱われることが多いです。

小水力発電では、発電用大規模ダムなどに水を貯めることなく、川や水路に流れている水の勢いをそのまま利用するなどして水車を回し、発電します。近年建設が進んでいる理由としては、小水力発電がFIT制度の対象となったことや大規模水力発電の設置適地が枯渇したこと、地域既存の設備を用いた地域の電源として活用できることなどが考えられます。

小水力発電の発電方法|どのようなところで発電できる?

小水力発電は規模が小さいため、様々な場所に設置できます。例えば一般の河川や農業用水、上下水道施設やビルの循環水、工業用水などを利用した小水力発電が活用されています。これらの箇所はこれまでその水が流れるエネルギーを活用してこなかった場所であり、既存施設の方には大きな改変を伴うことがなく水車を設置できる場合が多いです。いままでただ流れるだけであった流水をエネルギー源に変換し、施設の電源として活用したり、電力会社に販売したりできる場合、既存の流水環境を生かした小水力発電は魅力的です。

小水力発電のメリット6選

①天候に左右されにくく、昼夜、年間を通じて安定した発電ができる

小水力発電は、水が流れる限り、昼夜・天候を問わず、発電することができます。日射量などを考慮する必要がないため、十分な流水がある場所では小水力発電のほうが太陽光発電より効率的に発電できる場合があります。

大規模な開発をせず、自然環境への影響が少ない

大規模水力発電とは異なり、新設に当たって大規模なダムの開発などの必要がないため、自然環境へ与える影響を最小限に抑えられることが、小水力発電の特徴です。大規模なダムの建設は、ダムの上流と下流の分断や水質の悪化、土砂堆積、流域形状の変化などによるによる流域の生物への悪影響が問題視されています。

②設備利用率が50〜90%と高く、太陽光発電と比較して5〜8倍の電力を発電できる

設備利用率とは、設備がフルで発電し続けた場合の理論上の最大発電量に対して、実際どれほど発電したかを表す割合です。太陽光発電と比較すると、小水力発電は天候や昼夜に左右されないため設置利用率が高く、5~8倍の電力を発電できます。

③発電時に燃料費がかからない

再生可能エネルギー全体の特徴といえますが、小水力発電は発電時に燃料を必要としません。火力発電は当然のこと、原子力発電ですら、1つの燃料で長期間発電できるとはいえ燃料を必要とします。燃料補給が要らず、燃料費が掛からないことは1つのメリットであると言えます。

④設置面積が小さい

太陽光発電と比較すると、小水力発電は比較的小さい面積で発電を行うことができます。設置面積が限られている場合や、周囲の景観をできるだけ損ねたくない場合にも、自然環境に合わせて設置することができます。

⑤エネルギーの地産地消に適している

小水力発電は設置面積に対して発電量が多く、大規模な開発工事や燃料購入の必要がありません。水さえあれば河川や農業用水の機能を損ねることなく発電することができるので、中山間地などでのエネルギーの地産地消や売電による地域の収入確保などに適しています。

小水力発電のデメリット3選

①水の利用に関する法的手続きが煩雑

小水力発電に必要な水の利用には水利権の問題が付きまとい、また河川法の許認可などの手続きが面倒であることがデメリットとして挙げることができます。東日本大震災以降、規制緩和が進みましたが、依然多くの手間と時間を必要とします。

②土砂や落ち葉などを取り除くメンテナンスが必要

流れる水を利用して水車を回すという発電方式であるため、水路が詰まったり水車にゴミが絡まったりすると発電ができません。そのため、定期的に土砂や落ち葉などを取り除くメンテナンスが必要になります。

③設置地点が限られる(落差と流量がある場所に限定される)

大規模水力発電と比較すると様々な流水環境で利用できる小水力発電ですが、発電の効率性を考慮するとやはり一定以上の落差と水の流量がある場所が適していることになります。適地ごとに異なる手続きや、地域の合意を得ることが必要になることもあり、手続きの煩雑さを助長させています。

小水力発電の導入事例3選

世間的にはあまり広く知られている用語ではありませんが、小水力発電は全国各地で導入事例があります。ここではそのうちいくつかの成功事例を紹介していきます。

ニコニコ水力発電所(静岡)|農業用水発電の地域密着型利用

静岡県長泉町では市街地を流れる農業用水を活用した小水力発電を行っています。平常時は売電して収益の一部を地域活性化資金として還元しているほか、災害発生・停電時には独立運転し、町への無償提供やバッテリーを活用した在宅医療機器への電源を宅配しています。さらに、防災用電源としての利用など、地域密着型の活用が行われています。

水の戸沢小水力発電所(東京)|自然地形を利用した中小企業の小水力発電

東京都檜原村を流れる「水の戸沢」の高落差を活かして2018年4月より発電をスタートしました。東京都において中小企業者が小水力発電所を設置する最初の事例です。小規模水力発電は自治体が設置する事例が多いため、珍しいタイプの発電所だといえます。設置者は建設業が本業であるため、他業種の企業が小水力発電を成功させた事例としても、注目に値します。

おおくら升玉水力発電所(山形)|砂防ダムを利用した小水力発電

山形県大蔵村では、砂防ダム(河川上流からの土砂を食い止めるためのダム)から流れ落ちる水を活かした小水力発電を行っています。貯水・発電が目的ではないダム・堰などでも小水力発電を行うことで、本来活用されなかったエネルギーを電力に変えることができます。

まとめ 

電球

本記事では水力発電、特に小水力発電について詳しく紹介してきました。

水力発電は再生可能エネルギーの1つでありながら、他の再生可能エネルギーとは異なった特徴を持ちます。政府目標としても水力発電の重要性が今後さらに増していくなかで、水力発電には多くのメリット・デメリットがあります。

さらなる普及には技術開発や規制改革、環境への配慮などが必要ですが、今後、ますます私たちの生活に水力発電が関わってくると考えられます。

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