再生可能エネルギー普及への日本の取り組み-政府・自治体・企業の取り組み

##エネルギー##再生可能エネルギー##持続可能#SDGs 2023.04.26

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再生可能エネルギーは、温室効果ガスを出さず、国内で生産できるため、エネルギー自給率を向上させたり、災害時のエネルギー確保などたくさんのメリットがあります。

しかし、コストや立地、原料などの問題などの理由から、日本では再生可能エネルギーの導入は遅れています。

この記事では、日本のエネルギー問題の現状から、解決策としての再生可能エネルギーの概要やメリット、普及させるための日本政府・自治体・企業の取り組みについて解説します。

【この記事で分かること】

見出し

日本のエネルギー問題の現状|エネルギー自給率が低い

エネルギー自給率とは、ある国が自国の消費するエネルギーのうちどれほどを自国内で供給できているかを示す指標です。食料自給率のエネルギー版ともいえるエネルギー自給率ですが、その低さは食料自給率の場合と同様に日本の大きな課題となっています。上のグラフの通り、日本のエネルギー自給率は非常に低く、韓国に次ぎ34位となっています。

自国で必要なエネルギーを自国で供給できないと、海外情勢によっては十分なエネルギーを輸入できず、燃料・電気・プラスチック製品の上昇などにより、国民生活と企業活動に大きな悪影響をもたらします。また、大量のエネルギーを輸入し続けるということで、海外へ毎年莫大な額のお金を払い続けなければならないという問題もあります。

エネルギー問題に対する解決策「再生可能エネルギー」とは?

とはいえ、日本は国内の利用可能なエネルギー資源が乏しく、エネルギー自給率を上げることは簡単なことではありません。そこで日本でも持続可能ななエネルギーとしてここ10年程注目されてきたのが、再生可能エネルギーです。

再生可能エネルギーは、発電量当たりのCO2排出量が火力発電などより低いため、エネルギー自給率向上に役立つだけでなく、温室効果ガス排出削減にも貢献します。そのため、2050年のカーボンニュートラル実現を目標とする日本にとって、今後ますます重要になっていくと考えられます。

日本の再生可能エネルギー導入の現状と割合

エネルギー自給率向上やCO2排出削減など、再生可能エネルギーには多くのメリットがあります。しかし、実際の日本の再生可能エネルギー導入状況はどうなのでしょうか。

グラフを見ると、2020年度の日本の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合は、水力が7.8%、その他の再生可能エネルギーが12%の合わせて約19.8%であり、他の主要国と比較すると導入が進んでいるとは言えない現状です。

再生可能エネルギーの種類

自然の力で半永久的に供給されるエネルギーを用いた発電が総称して「再生可能エネルギー」と呼ばれます。具体的には、太陽光パネルにより太陽光を受け発電する太陽光発電、風でプロペラを回し発電する風力発電、水が流れ落ちる力でタービンを回し発電する水力発電、地熱で熱せられた地下深くの上記や熱水の力によりタービンを回し発電する地熱発電、家畜の排泄物から出るガスや木くずなどを燃焼させ発電を行うバイオマス発電などがあります。

グラフを見てもわかる通り、一口に「再生可能エネルギー」といっても、様々な種類があり、その特性もそれぞれ異なります。そのため、再生可能エネルギーの普及には、地域特性にあった発電方法をバランスよく組み合わせて普及させることが重要です。

現在の日本の再生可能エネルギーの種別割合は、太陽光と水力が約40%ずつ、バイオマスが14.5%、陸上風力と地熱がそれぞれ4.5%、1.5%となっています。日本政府が2030年までに目標とする割合では、全体の発電容量を底上げしたうえで、陸上・洋上風力発電の割合が上昇しています。

▶関連記事|再生可能エネルギー一覧-それぞれの特徴や課題、導入事例を紹介! | SDGs CONNECT (sdgs-connect.com)>>

再生可能エネルギーの導入メリット5選

日本では十分に導入が進んでいるとは言えない再生可能エネルギーですが、導入には様々なメリットがあります。

①エネルギー自給率の向上

再生可能エネルギーの普及はエネルギー自給率の向上に繋がります。現在、日本は国内で使用する原油・液化天然ガス・石炭などの化石燃料のほぼ全てを海外からの輸入に頼っています。

海外からのエネルギーに依存してしまうと、例えば国外で戦争などが生じ輸入が滞った際に経済活動に重大な支障が生じたり、産油国が化石燃料の輸出禁止を匂わせることで圧力をかけ、日本の外交などに干渉してくる可能性があります。

エネルギー自給率を向上させ、化石燃料への依存度を下げることは、化石燃料輸入のために国外に支払われる膨大な額の資金の流出を抑制することにも繋がります。

②温室効果ガス削減

現在の日本の電源構成でメインとなっている火力発電は、温室効果ガスの排出が強く問題視されており、電力のグリーン化が求められています。再生可能エネルギーは火力発電と比較すると排出する温室効果ガスが格段に少なく、日本が脱炭素化を進めるうえで欠かせない存在であると言えます。

原子力発電も再生可能エネルギーと同様に排出する温室効果ガスが少ないですが、東日本大震災以降はその安全性が疑問視され、発電量が大きく減っている現状です。もちろん各種の再生可能エネルギーにもそれぞれメリット・デメリットがあるので、それらを効果的な割合で組合せて利用していくことが重要です。

③雇用創出と地域活性化

再生可能エネルギーの大規模な発電施設の整備や都市部への電気の売買が行われれば、地域の活性化や雇用創出に繋がります。国家間の場合と同様に、エネルギーを得るための他地域への資金流出を止めることも期待できます。

④災害時・非常時のエネルギー確保

少数の大規模な発電・配電施設に広い地域一帯の電力を任せる従来の集中型電力供給システムには、大きな災害時などに地域一帯の電力が全てストップしてしまう可能性があるという脆弱性があります。地域それぞれに独立した再生可能エネルギー発電設備が点在することで、災害時などでのリスク分散に繋がります。特に太陽光発電設備などで、大容量のバッテリーの設置を伴う場合には、バッテリーでの蓄電によって更に災害時の対応性が増します。

⑤環境負荷が少ない持続的なエネルギー

長期的に見ると、再生可能エネルギーは枯渇せず、半永久的に利用できることも強みです。化石燃料資源の枯渇が叫ばれているのをご存じの方は多いと思いますが、実は原子力発電の燃料となるウランも枯渇が懸念されています。原子力発電も技術開発はされていますが、災害時のリスクも大きく、半永久的に利用し続けることはできません。それに対して再生可能エネルギーは、半永久的に利用し続けることが出来るエネルギー源なので、枯渇の心配がいりません。

再生可能エネルギーの導入が遅れる理由

世界と日本の太陽光発電のコスト推移

再生可能エネルギーには多くのメリットがあることが分かりましたが、なぜ日本での導入はあまり進んでいないのでしょうか。そこには日本特有の理由が関係しています。

その理由の1つが、発電コストの高さです。近年大きく低下したものの、日本の再生可能エネルギーの設置コストは世界と比べると依然として高く、事業者と消費者への負担が大きい現状です。そのため、発電設備の設置場所が限られ、再生可能エネルギーの普及を妨げる大きな要因となっています。

また、日本は台風や大雨、地震といった災害が多く発生するため、再生可能エネルギーにも安全性が求められ、それも普及への大きな課題になっています。そのような状況の中で、官民ともに日本での再生可能エネルギーの更なる普及へ向けて試行錯誤しています。

日本のエネルギーに関する基本方針「3E+S」

再生可能エネルギー普及を進めるために日本政府が打ち出している基本方針が、「3E+S」です。「3E」は「自給率(Energy Security)」、「経済効率性(Economic Efficiency)」、「環境適合(Environment)」を指し、「S」は前提となる「安全性(Safety)」を指します。

2030年度に向けた再エネに関する日本の方針

日本は2030年度までに年間の温室効果ガス排出の46%削減(2013年度比)を目標としています。上のグラフは、必要なエネルギー需給の見通しを示しています。

再生可能エネルギーの割合は、エネルギー供給と電源構成を約2倍にすること目標にしており、政府は風力発電や自家発電の導入強化を目指しています。また、安全性や景観・環境への影響もより配慮していきます。

2050年度に向けた再エネに関する日本の方針

2050年度までのカーボンニュートラル実現を目標としている日本。そのためには2030年度に向けて、より一層、再生可能エネルギーを普及しなければなりません。カーボンニュートラル実現には、原子力発電などの他の低排出電源とも組合せつつ、再生可能エネルギーを主力とした電力の低炭素化が必要不可欠であり、より一層の政策強化と技術開発が求められます。

再生可能エネルギーを普及させるための日本政府の取り組み

太陽光発電

再生可能エネルギーの導入を促進するために、日本政府は様々な取り組みを行っています。その1つがFIT制度・FIP制度です。再生可能エネルギー普及支援を目的として、政府は2012年にFIT制度を導入しました。

FIT制度は、再生可能エネルギーで発電された電力が、一定の価格で買い取られることを補償する制度です。制度が開始された当時、まだ普及しておらず、売電の先行きが不透明であった太陽光パネルなどの普及に貢献しました。一方、2022年にスタートするのがFIP制度で、電力の市場価格に一定の補助額を上乗せした価格で電力を買い取ることを保証するものです。

再生可能エネルギーはどうしても天候などに発電量が大きく左右され、電力の市場価格の先行きも見通しにくいため、FIT制度・FIP制度で売電の利益を保証することで事業者は再生可能エネルギーを導入しやすくなります。その半面、これらの制度で支払われる一定の補助額は賦課金として国民が支払っており、その負担は新たな問題となっています。

再生可能エネルギーを普及させるための自治体の取り組み

国ではなく地方自治体においても、再生可能エネルギーの導入を支援する動きがあります。再生可能エネルギー施設の設備費への補助金交付はもちろんのこと、発電施設の建設に必要な土地の提供などを行っています。東京都では、ほぼ全ての新築住宅に太陽光パネルの設置を義務化する制度が全国で初めてスタートします。

自治体にとっては、再生可能エネルギー導入を支援することで、市のエネルギー消費の低炭素化が実現できるだけでなく、域外資本の呼び込みや土地の活用、事業者からの支払い、売電収入などによる自治体の活性化が期待できます。

再生可能エネルギーを導入する企業の取り組み事例3選

続いて、再生可能エネルギーを導入する3つの企業について紹介します。

イオングループ|グループの幅広いサービスを活かした取り組み

日本の小売業界で最大手のイオングループ。これまでに、店舗での太陽光発電設備設置や再生可能エネルギーの買い取り、各地域での再エネ直接契約の推進などを進めてきました。

さらに、同グループが提供するクレジットカード会員に対し、脱炭素住宅と電気自動車購入資金の借入が同時に申込可能なサービスや、太陽光パネルや蓄電池など、住宅の脱炭素リフォームに必要なアイテムを定額制で販売するサービスなど、グループの幅広い形態を利用した様々なサービスを提供しています。

キリンホールディングス|PPAモデルを用いた国内最大規模の太陽光発電

キリンホールディングスは、日本全体に先駆けて、2040年までの再生可能エネルギー100%化実現を宣言しています。具体的な取り組みとしては、再生可能エネルギー電力の率先的な購入や、国内工場での大規模太陽光発電設備導入などを進めており、キリンビール国内9工場のうち4工場は、既に再生可能エネルギー100%を実現しています。大規模な工場を有する製造業では、その屋上で太陽光発電を行うことで再生可能エネルギーを導入する事例が多くみられます。

キリンホールディングスが導入した太陽光発電システムには、PPAモデルが用いられています。PPAモデルとは、太陽光発電を行いたい企業・自治体などが太陽光発電設備を自ら購入するのではなく、発電事業者が無償提供する設備を利用し、発電された電力を発電事業者から買い取る形で利用することで、費用を掛けずに再生可能エネルギーを導入するモデルです。

株式会社大川印刷|再生可能エネルギー100%の中小企業

株式会社大川印刷は自社工場敷地内での太陽光パネル設置や新電力会社からの再生可能エネルギー電力買取によって、中小企業でありながら自社で消費する電力の全てを再生可能エネルギー由来にすることに成功しました。災害時には発電した電力を自社で使用できる上、再生可能エネルギー導入による企業イメージ向上によって顧客が増えました。株式会社大川印刷もPPAモデルを用いて太陽光パネルを導入しました。

再生可能エネルギーを普及させるには?|今後の4つの課題

最後に、再生可能エネルギーを普及するための4つの課題について解説します。

風力発電

発電コストを安くすること

海外と比べて再生可能エネルギーの高い発電コストは、国内での再生可能エネルギーの普及の大きな障壁となっています。国や自治体が設置費用を補助することで再生可能エネルギー事業者の支援を行うことは可能ですが、やはりそもそもの低コスト化の実現は2050年カーボンニュートラル達成に重要であると言えます。

家庭用太陽光発電においては、太陽光パネルなどの発電設備だけではなく、蓄電のための大型バッテリーの設置にもコストがかかるため、バッテリーなどの周辺設備の低コスト化も欠かせません。

長期的に安定した電源とすること

再生可能エネルギーを国の主力の電源とするためには、電源としての安定性も重要です。普段私たちが使っている電気は「交流」の電気なのですが、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの多くが生み出すのは「直流」の電気です。「直流」と「交流」の変換には電子機器が必要なのですが、この電子機器は流れる電流の急な変化に弱いため、事故や災害などの突発的なトラブルにより発電機が故障すると、そこからの電力供給をストップしなければいけません。

この脆弱性を克服せず再生可能エネルギーの比率を増やすと、電力システム全体として事故や災害などに弱くなってしまいます。そのため、直流から交流に変換する機器の技術開発や、送電量の減少に対応するための蓄電池の普及などが重要となります。

すでにある電力系統を最大限活用すること

すでに使用されている配電システムに再生可能エネルギーを上手く組み込むことができれば、社会的により低いコストで再生可能エネルギーを導入することができます。従来の送電システムでは大規模発電所などと電力消費地を結ぶ形で整備されていますが、新しい電源である再生可能エネルギーが活用可能な場所は必ずしも従来の発電所とは一致しないため、発電した再生可能エネルギー電力を上手く従来の送電システムに組み込めない場合があります。

全く新しい送電網システムを1から建設するには莫大な時間とコストがかかるため、再生可能エネルギー電源と従来の送電システムを上手く適合させる仕組みが必要です。

柔軟で効率的な調整力を確保すること

現在の日本は電力会社の担当エリアごとに電力の需給が分断されており、エリア間での電力の融通は可能なものの、エリア間で送電できる電気量には制限があります。また、各エリア内では電力の需給をある程度均衡させる必要があります。

天候などにより発電量に大きな波がある再生可能エネルギーの大規模導入のためには、既存の送電網を活用することができる設備の整備や、ITなどを用いて電力需給を上手く調整するスマートグリットと呼ばれるシステムの導入が必要になります。

まとめ 

東日本大震災以降、ニュースなどでよく聞くことになった再生可能エネルギー。その多面的なメリットと普及への課題を正しく理解し導入することは、再生可能エネルギーの普及に欠かせません。

再生可能エネルギーは、世界的にもますます重要な存在になっていくと考えられ、日本も再生可能エネルギーの普及を中心とした政策や取り組みを行っていくことが必要です。

皆さんも自分がが始められることからチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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