【特別インタビュー前編】1年でESG、SDGsを全社に浸透|すべてのマテリアリティのKPI策定にも取り組むオートバックスセブン

#ダイバーシティ#信頼できる#経営 2022.08.09

この記事をSNSでシェア!

 

【更新日:2022年8月15日 by 三浦莉奈

株式会社オートバックスセブン(以下、オートバックスセブン)は、カー用品の国内外の卸売・小売販売などを通じて私たちの豊かなカーライフに常に寄り添う企業です。

クルマは、長い歴史の中で社会の変化とともに変化し続けてきました。SDGsも常に柔軟な変化や新しい取り組みが求められるものだと思います。

今回は、オートバックスセブンの特別インタビュー前編として、取締役 執行役員の池田様にお越しいただき、オートバックスセブンのSDGsにかける想いや推進体制について具体的に伺いました。

▼後編はこちら

目指すは「プロフェッショナル&フレンドリー」

ーー自己紹介をお願いします。

池田:経理・財務・広報・IRを担当しております、池田です。

もともと、金融機関に12年ほど勤めており、その後20年ほどコンビニエンスストアの財務・広報・IRを担当していました。2019年にオートバックスセブンに入社し、2022年6月より現職になります。

ーー初めに、オートバックスセブンの理念について教えてください。

池田:オートバックスセブンは、「常にお客様に最適なカーライフを提案し、豊かで健全な車社会を創造することを使命とする」ことを経営理念としています。また、「人とクルマと環境が調和する安全・安心でやさしい社会」を実現したいと思っています。

この理念、目指す社会像のもと、私たちは「プロフェッショナル&フレンドリー」な会社でありたいと考えています。この言葉には、今後さまざまな取り組みでステークホルダーの皆様からプロフェッショナルとして認められ、フレンドリーで信頼される存在でありたいというオートバックスセブンの強い想いが込められています。結果的に、地域社会に貢献していく存在になれればと思います。

機関投資家との面談で味わった悔しさが、組織を変えるチャンスに

ーー2021年1月には、ESG・SDGs推進プロジェクトを立ち上げられたと伺いました。立ち上げのきっかけを教えてください。

池田:2020年11月に開催した、決算に関する機関投資家とのスモールミーティングがきっかけでした。

決算の数値について概要を説明した後、質疑応答の際に驚くべきことがありました。ESG投資家から、オートバックスセブンのESG・SDGsに関する質問が多く、長年、経理・財務・IRに携わってきた私ですが、「業績」に関するミーティングで、「ESG・SDGs」に関する専門的な質問を受けたことはありませんでした。初めての経験に非常に驚きましたし、正直十分な回答ができなかったと反省しました。

このままでは「機関投資家に見向きもされない存在になってしまう」と危機感を抱き、社長に直談判をし、プロジェクトを立ち上げました。

 

ーー「ESG・SDGs推進プロジェクト」の概要を教えてください。

池田:経営と一体化したESG・SDGsの取り組みを全社的に推進するために2021年1月に立ち上げたのが「ESG・SDGs推進プロジェクト」です。

【提供】:株式会社オートバックスセブン

池田:プロジェクト発足後は、まずマテリアリティの設定に取り組みました。

まずは、プロジェクトで社会課題について議論、さらには外部の有識者と意見交換を行いました。検討の結果、「社会課題を解決する事業の創出」・「環境・社会に配慮した取組の充実」・「成長し続ける組織・人財」・「持続可能かつ強固な経営基盤」といった4つのマテリアリティを選出し、最終的には取締役会のご承認を頂き設定しました。
その後、私たちの目指す社会像として「人とクルマと環境が調和する安全・安心でやさしい社会」同じく会社像として、「プロフェッショナルでフレンドリーな存在」を設定しました。
マテリアリティをもとにして全社的に目指す方向性が構築されたことで、従業員の中で「本気で取り組むんだ」といった共通認識が生まれたと感じています。

【提供】株式会社オートバックスセブン

1年でSDGsを全社に推進。スピード感の鍵は「リーダー力」と「双方向の議論」

ーーわずか1年でここまでの体制を作られたんですね。

池田:正確にはここまで8ヵ月です。当時の社長で現会長の小林自身がリーダーとなり、毎月行っているオンライン集会でこの取組みについての本気度を示したことがスピードの鍵かもしれません。リーダー自らがESG・SDGsの発信を行い、それに基づいた議論をメンバーと行うことで「全社的に取り組んでいくべきもの」という意識が会社全体に広がっていったことを感じました。

ーーその後、議論はどう展開しましたか?

池田:2021年9月からは、4つのマテリアリティ毎に執行役員・部課長からなるタスクフォースを組成し、非財務目標やそのKPIの検討を進めてきました。12項目の非財務目標は2022年5月に対外発表しました。

全ての非財務目標に具体的な数値目標を。KPIでFC加盟店と共通認識を図る

ーー現在、組織としてはどのようなことに取り組まれていますか?

ESG・SDGs推進プロジェクトは第2期としてメンバーの一部を入れ替え、現在は非財務目標について具体的なKPI*を検討するステージに入りました。2022年度中に具体的な目標を対外公表する予定です。

KPI: 重要業績評価指標のこと。最終目標であるKGIを達成するために、必要な要因を幾つか洗い出し、目標達成に向かって順調に進んでいるかを点検するために設ける中間指標。特に、具体的な数値等で表したもののことをいう。

【引用】SDGsもCSRも!活動推進に重要な「KPI」〜KPIってなに?

ーー多くの企業では、CO2の削減目標といった数値化しやすい課題に対してのみKPIを数値で設定していると思います。すべてのマテリアリティにKPIを設定するのは珍しいですよね。

池田:ご指摘の通り、やはり簡単ではない取り組みです。

今後はその一部においてFC加盟法人と共通の目標を設定したいと考えています。
オートバックスは約600店舗あり、そのうち7割はFC加盟店です。連結ベースで従業員が約4000人程になり、FC加盟法人を含めると約13000〜14000人が働いていることになります。これだけ多くの関係者がいる分、数値かつ具体的なKPIを設定することで、同じ目標と目線を持って取り組みを進めていけると考えています。

SX事業推進部で事業を通した価値創出

ーーマテリアリティの1つには「社会課題を解決する事業の創出」があると思います。具体的に、新規事業の部署などはあるのですか?

池田:2022年4月からSX事業推進部(サスティナビリティトランスフォーメーション推進部)を立ち上げ、ESG・SDGs推進プロジェクトと連携し活動しています。

※SXとは:

ーーSX事業推進部では具体的にどのような構想がありますか?

池田:SX事業推進部のミッションは3つあります。1つ目は事業活動におけるサスティナビリティです。CO2の排出量を減らしていくために、私たちが事業活動の中でどんなことができるのか、全社横断でグリップしていきます。
2つ目はEV化への対応です。自動車メーカーが供給するEVをメンテナンスしていくことは私たちの事業における重要なポイントです。
3つ目は、地域社会におけるクルマに関わる困りごとを解決することです。
特に高齢化が進んでいる過疎化地域、移動手段の中心はクルマといったエリアを対象としており、現在は大分県と連携して解決を目指しています。

「ともに」作り上げていきたい。コミュニケーションを大切にするからこその想い

ーーSDGsにおいて、今後の取り組みの展望を教えてください。

池田:今後は、今まで以上にFC加盟法人の皆様と一緒にSDGsに取り組んでいきたいと強く思っています。私たちのビジネスのパートナーがFC加盟法人の皆様だからこそ、SDGsの取り組みに関してもより本格的に「ともに」作り上げていけたらと思っています。

オートバックスセブンは、普段から双方向のコミュニケーションを大切にしています。だからこそ発揮できるスピード感や意識の共有の強さを、取り組みに繋げていきたいですね。

さいごに

機関投資家との面談でのお話が印象的でした。実際に、投資家やお客様・社会の視点を持って組織としてSDGsを推進しているオートバックスセブンだからこそ、常に新しい挑戦が進んでいるのだなと感じました。

今後もさらに、企業のSDGsの取り組みに対する投資家や市民の注目は高まっていくと思います。

だからこそ、企業はあらゆるアクターと「ともに」取り組みを進めていき、事業を通して価値を創造していくことが必要不可欠になると再認識したインタビューでした。

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    新着記事

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ

    デジタル捺染でアパレル変革を狙う|エプソンのサステナビリティ

    天然素材のセロテープ®でSDGsに貢献する。ユーザー目線の情報発信でサステナビリティの輪を広げるニチバン

    SDGsの胡散臭さから脱するには?同調圧力から逃れて企業の存在意義の見直しを

    グリーフサポートで感動葬儀を|命に向き合うティアの想い

    「労働力ではなく生活者」|外国人の受け入れは「生活者視点での制度づくりが鍵」