企業のフェアトレードへの取り組み事例6選-企業、ステークホルダーのメリットも紹介

#フェアトレード#安全#持続可能#環境#開発途上国 2022.10.05

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【更新日:2023年6月8日 by 上原 大

フェアトレードは公平な取引によって途上国の生産者を助けるために大切なとりくみであり、SDGsの多くの目標と関係しています。

フェアトレードに取り組む企業は増えているものの、日本での知名度は低く、店頭で見かけるフェアトレード商品の数は依然として少ないままです。

今回は、企業のフェアトレードへの取り組み事例に加えて、フェアトレードに取り組むメリットについて分かりやすく解説します。

フェアトレードとは

フェアトレードとは、発展途上国の原料や製品を適正な価格で購入することにより、その地域の生産者や労働者の生活改善を目指す貿易の仕組みを表しています。

生産者が品質の良いものを作り続けていくためには、生産者の労働環境や生活水準が保証されていることが重要なのです。

また、原料の生産から製品が完成するまで国際フェアトレード基準が守られている商品には、「国際フェアトレード認証ラベル」が付与されます。これは、フェアトレードの基準を守った製品にラベルを貼付して、フェアトレードを広めていくために始まった取り組みです。

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フェアトレードが求められる背景

第二次世界大戦以前、アメリカやイギリスなどの先進国に発展途上国は支配されており、安い賃金で働かせられたり、適切な価格で取り引きできないなど不当な扱いを受けていました。

しかし、現在も発展途上国でつくられた原材料や製品は正当な価格で取り引きされていない場合が多く、発展途上国への不平等な対応は労働環境の悪化や児童労働、貧困につながっています。

例えば、2020年において、世界で生きる5歳から17歳のうち1億6000万人が危険で健康を害する恐れのある労働をしています。この数は世界の子どものうち、10人に1人が児童労働をしていることに相当します。

発展途上国の生活改善を目指すにはフェアトレードの取り組みが必要不可欠です。

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フェアトレードに取り組むメリット4選

フェアトレードに取り組むメリットを「企業」「生産者」「消費者」「社会・環境」の4つの分野からそれぞれ紹介します。

【企業】フェアトレードに取り組むメリット

1つ目に紹介するメリットは企業のメリットです。企業のメリットとして、消費者から良い印象を持たれやすいことが挙げられます。

「国際フェアトレード認証ラベル」が与えられている商品は、原料の生産から製品が完成するまで国際フェアトレード基準が守られている必要があります。つまり、国際フェアトレード認証ラベルを得るためには、商品が製造される一連の過程の透明性が求められるのです。

商品ができるまでの過程をクリアにすることで、企業のイメージ向上に繋がります。

▼参考
フェアトレードジャパン|fairtrade japan|公式サイト

【生産者】フェアトレードによるメリット

2つ目に紹介するメリットは生産者のメリットです。生産者のメリットとして、収入が増加し、経済的に安定することが挙げられます。

フェアトレードは、発展途上国で暮らす生産者・労働者の生活改善や自立を目指して、長期的に公正な取り引きを行うものです。多くの発展途上国では収入が充分でないことから、一部の子どもはも学校に通わず働いています。

フェアトレードによる公正な取り引きによって生産者・労働者の収入は増加し、経済的に安定するようになります。これにより子どもたちは働くのではなく、学校に通うことができるようになります。

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フェアトレードで児童労働問題は解決する?問題の現状やできることを解説

【消費者】フェアトレード商品の購入によるメリット

3つ目に紹介するメリットは消費者のメリットです。消費者のメリットとして、安心・安全な製品を手に入れられることが挙げられます。

フェアトレード商品はイギリスやアメリカなどの先進国によって支援されて行われています。そのため原材料の栽培技術や加工技術を学び、高品質な製品の製造が可能です。

例えば、農薬をなるべく使わないオーガニック農法などで安心・安全なカカオを使用してフェアトレードのチョコレートを製造します。フェアトレード商品は安心・安全かつ高品質な商品であるため、プレゼントを贈る際にも最適です。

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フェアトレード食品を買う時のポイント3選-購入サイトや店舗も紹介

【社会・環境】フェアトレードによるメリット

4つ目に紹介するメリットは社会・環境のメリットです。社会・環境のメリットとして、開発途上国の生活環境が改善し、国全体として成長できることが挙げられます。

発展途上国で暮らす人々の収入が増えることで経済が回ったり、治安が良くなったりと国が安定していきます。また、国が安定するだけではなく、映画などの娯楽が誰にでもたしなめるようになり国民の幸福度が上がる、観光客が増加するなどのメリットもあります。

これにより、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」を達成することができます。

さらに、フェアトレードはオーガニック農薬を活用するため、農薬や化学肥料の使用料が減り、動植物の生態系の保全にも貢献できます。

フェアトレードに取り組む企業一覧

フェアトレードに取り組んでいる企業は国内外に多く存在しています。

今回はその中でも6つの企業の取り組み事例を紹介します。

フェアトレード×食品-|スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

1つ目に紹介する企業はスターバックスコーヒージャパン株式会社です。

スターバックスコーヒージャパン株式会社では、フェアトレードのコーヒーを「生産者の方と私たちの未来を守り、次世代の人までおいしいコーヒーが飲めることを実現するコーヒー」と考え、取り組みを行っています。

2004年に国際環境NGO コンサベーション・インターナショナルと連携して開始した「Coffee and Famer Equity(C.A.F.E)プラクティス」では、4つの軸と200以上の指標で構成されています。4つの軸と指標については以下の通りです。

1.経済的な透明性
  • サプライヤー(コーヒーの買い手)は、生産者へ支払った証拠を提出する
  • コーヒー豆がどの生産者からきているか、生産者の名前、いくら支払われたかがわかる
2.社会的責任
  • 農園主は働く労働者の権利を守り、安全かつ公正で、人道的な職場環境を促進するための対策を実践する
  • 最低賃金以上を定期的に支払う
  • いかなる形の児童労働も禁止する
3.環境面でのリーダーシップ
  • コーヒー栽培や加工において、水質や土壌、生物多様性の保護、化学農薬の利用削減、水やエネルギーの使用量削減など、持続可能な農業の実践を推奨する
  • 天然林の農地転換、使ってはいけない殺虫剤の使用を禁止する
  • 日陰をつくるための樹木(シェードツリー)や豪雨の際に土壌の侵食を防ぐ被羅植物の維持など、C.A.F.E.プラクティスに定められた方法を取り入れ、生産者が気候変動の影響に順応できるよう手助けする
4.品質基準
  • すべてのコーヒー豆は、スターバックスの品質基準を満たさなければならない
  • 最高品質のアラビカ種コーヒーのみを調達し、焙煎して販売する
  • 品質が高くC.A.F.Eプラクティスを満たすコーヒー豆について、生産者の採算性を上げるために商業的市場価格に加え、プレミアムを上乗せした価格を支払う

この軸と指標に基づいて定期的に発展途上国を訪問し、農園や加工施設などの労働環境について評価を行います。訪問後、評価を踏まえて、発展途上国におけるさらなる労働環境の改善を目指していきます。

さらに、各店舗でも次のような取り組みを取り組みを行っています。

  • 毎月20日にフェアトレードをテーマにしたクイズの実施
  • フェアトレードの認知を高めるためにコーヒーセミナーを開催

▼参考
スターバックス店舗での取り組み

フェアトレード×食品-株式会社良品計画

2つ目に紹介する企業は株式会社良品計画です。株式会社良品計画はフェアトレードについて多くのことに取り組んでいます。

無印良品を運営する株式会社良品計画の考えは、「美味しいコーヒーや紅茶が飲めるという幸せは作る人の幸せがあってこそ」というものです。これに基づき、商品を通して社会貢献することに重点を置き、フェアトレード商品を高品質かつ手頃な価格で販売できるよう、商品開発に取り組んでいます。

さらに、株式会社良品計画は2010年から始まった「フェアトレード100万アクションキャンペーン」に積極的に参加しています。「フェアトレード100万アクションキャンペーン」とは、毎年5月の第2土曜日に設定されている「世界フェアトレード・デー」に合わせて、日本国内で行われるキャンペーンです。

また、無印良品有楽町ではフェアトレードキャンペーンを開催しました。具体的な取り組みには次のようなものがあります。

  • 「ひとと、つながるフェアトレード展」の開催
  • フェアトレードのバラを使用したフラワーアレンジメント教室開催
  • フェアトレード紅茶を特別価格でご提供

▼参考
「知る!」「選ぶ!」「伝える!」無印良品はフェアトレード100万アクションキャンペーンを応援します

フェアトレード×食品-ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社

3つ目に紹介する企業はダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社です。

ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社は、1990年以降、有機農法やサステナブルな取り組みを先駆けて開始した、有機栽培のパイオニアです。果物やコーヒーだけでなく、食品やパーム油、加工物、砂糖などさまざまな製品を世界各国に届けています。

例えば、ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社が取り扱うパーム油は、レインフォレスト・アライアンスによる生物多様性・持続可能性の認証を得ています。

さらに、パーム油を生産する際に二酸化炭素の排出量の実質ゼロ化を目指し、パリ協定の目標を10年早く達成する「The Climate Pledge」という目標を掲げています。

レインフォレスト・アライアンス
レインフォレスト・アライアンスとは、世界70カ国以上で活動している非政府組織(NGO)のことを指します。アメリカの環境活動家ダニエル・カッツによって創立され、「自然を保護し、農民と森林コミュニティの生活を改善するために社会的および市場の力を利用することにより、より持続可能な世界を創造すること」を使命として活動しています。
パリ協定
パリ協定とは、「京都議定書」の後継として結ばれたもので、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みを表しています。気候変動枠組条約に加盟する196カ国全ての国が目標達成のために努力することをルール化したものです。

▼関連記事
2050年カーボンニュートラルとは-2050年に設定された理由から取組事例まで解説

▼参考
会社概要 – ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社

フェアトレード×アパレル-フェアトレードカンパニー株式会社

4つ目に紹介する企業はフェアトレードカンパニー株式会社です。

フェアトレードカンパニー株式会社では、「People Tree」というフェアトレード専門ブランドを経営するなど、サステナブルな製品を約30年以上も生産・販売しています。

近年、コットンの原材料である綿花を生産する過程で必要となる水資源の過剰消費が問題となっています。この問題に対し、People Treeが取り組んでいるのが「ベターコットン・イニシアティブ(BCI)」です。

その他にも、コットンをはじめウール・麻・絹などの原料が加工や流通を通して消費者に届く過程において、環境面だけでなく社会面にも配慮されていることを保証する「GOTS認証」を取得しています。

ベターコットン・イニシアティブ(BCI)
「ベターコットン・イニシアティブ」とは、綿花を栽培する際に環境へかかる負担を軽減しながら、農家の生産性も維持するよう取り組むプログラムのことを指しています。
GOTS認証
「GOTS」は「Global Organic Textile Standard」の略称です。日本語では「オーガニックテキスタイル世界基準」と言います。GOTS認証を受けるためには、原料の70%以上がオーガニックであり、加工・製造・流通のすべての工程において環境的に配慮されていることが求められます。

▼関連記事
フェアトレードと服-課題やブランド紹介、サステナブルとの違いも解説

▼参考
GOTS認証とは マークの意味・基準を解説 オーガニックコットン選びの目印

フェアトレード×アパレル-Patagonia

5つ目に紹介する企業はPatagoniaです。

Patagoniaでは、世界で最も低い賃金で働いているアパレル労働者に対し、フェアトレードを通じてアパレル労働者の暮らしを向上させ、生活賃金を保証するための取り組みを行っています。

2014年以降、PatagoniaはフェアトレードUSA(アメリカのフェアトレード第三者認証機関)と協力して、フェアトレード認証された衣類を生産・販売しています。これにより世界10カ国にて、7万2000人以上もの労働者へ恩恵を与えています。

さらに、アパレル労働者が安定した生活が出来るよう、Patagoniaは解決策を模索し続けています。現在はフェアトレード製品を求める消費者の割合に対し、消費者の要望を叶える企業は数が少ない状況です。そのため、需要を満たす製品の開発に取り組んでいます。

フェアトレード×アパレル-Enter the E(エンター・ジ・イー)

6つ目に紹介する企業はEnter the E(エンター・ジ・イー)です。

Enter the Eでは、企業独自で設定した基準に基づいて原材料の仕入れを行っています。また、「洋服にも物語がある」というテーマの下、無駄のない生産・販売をしています。

Enter the Eが経営するブランドのうちの一つである「Thinking MU」ではデザイン性の高さを維持しながら、すべてGOTS認証された原材料を活用するなど持続可能な商品の生産・販売に取り組んでいます。

そのほかにも「LANIUS」という、「オーガニックを徹底すること」や「責任を持つこと」などをコンセプトとしたファッションブランドがあります。このブランドの特徴は、原材料の生産から商品の生産というすべての過程を開示することです。

また、インドに学校をつくるプロジェクトへの寄付や、海を守る団体「Healty Seas」に売り上げの10%を寄付するなどの取り組みを行っています。

まとめ

フェアトレードに取り組んでいる企業について新しく知ったことはありましたでしょうか。

国内外問わず多くの企業がフェアトレードに取り組んでいることを紹介しました。製品を製造する過程でのフェアトレード、商品を販売する際のフェアトレードなどその形も多岐にわたっています。

また、各ステークホルダーがフェアトレードに取り組むメリットも紹介しました。フェアトレードによって生産者の生活環境が改善されるだけでなく、開発途上国の経済にも良い影響を与えることができるのです。

みなさんの小さな一歩で社会は大きく変わることができます!

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