SDGs13達成への企業の取り組み3選|6つのメリットも解説

#エネルギー#再利用#持続可能#環境 2022.10.19

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近年、集中豪雨や熱波など世界各地で気候変動による被害が発生しており、政府や企業による取り組みが行われています。

「気候変動対策=企業負担」というイメージもありますが、企業はSDGsの取り組みを行うことでビジネスチャンスにもつながります。

今回はSDGs13「気候変動に具体的な対策を」について概要から世界の課題、SDGs上位国企業の取り組み、企業ができる取り組みまで詳しく解説します。

SDGs13「気候変動に具体的な対策を」とは

SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」は、気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じるというテーマのもと、5つのターゲットから構成されています。5つのターゲットは以下のとおりです。

13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靭性(レジリエンス)および適応の能力を強化する。
13.2 気候変動対策を国別の政策、戦略および計画に盛り込む。
13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減および早期警戒に関する教育、啓発、人的能力および制度機能を改善する。
13.a 重要な緩和行動の実施とその実施における透明性確保に関する発展途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同で動員するという、UNFCCの先進締約国によるコミットメントを実施するとともに、可能な限り速やかに資本を投入して緑の気候基金を本格始動させる。
13.b 後発開発途上国および小島嶼開発途上国において、女性や青年、地方および社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能力を向上するメカニズムを推進する。

SDGs13を取り巻く世界の課題4選

SDGs目標13を達成するに向けて、世界で起こっている問題とは一体何でしょうか。

世界で発生している課題点について4つ説明していきます。

気温上昇

年々、日本のみならず世界各国で気温が上昇しています。気象庁によると、2021年における世界の年平均気温偏差(1991年〜2020年の30年平均値からの偏差)は、約0.22℃高くなっており、1891年以降6番目に高い数値でした。

世界の年平均気温は100年あたり0.73℃の割合で上昇しており、日本においても2021年は0.61℃上昇しています。この数値は1898年以降3番目に高い数値です。

世界の年平均気温は、今後も変動を繰り返しながら上昇していくと推定されています。

年平均気温偏差
…各年の平均気温の基準値との差を示したもの。

海の温暖化と海面上昇

地球温暖化に伴って、海水温度や海面の上昇も問題になっています。気象庁の調査によると、2021年における世界全体の年平均海面水温平均は、約0.13℃高くなっており、1891年以降6番目に高い数値でした。

また全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)によると、世界の平均海面推移は1901年から2018年の間に約0.20メートル上昇しています。海面は今後も上昇すると推測されており、対策をとらなければ、2100年には最大1.01メートルも上昇すると予想されています。

集中豪雨の増加

世界では、集中豪雨などの異常気象も多く発生しています。2021年には、おもにアジア大陸やアメリカ大陸などの北半球にて、異常多雨が発生しました。とくに、7月に中国中部で起きた大雨や12月にフィリピン中部から南部で起きた台風は、多数の死者を出しました。

南アジア周辺の地域やヨーロッパ中部、北米中部から西部においても大雨が発生しており、世界各国で被害が出ています。

異常熱波の増加

「熱波」とは、地域の平均的な気温と比べて著しく高温な空気が波のように連続して押し寄せてくる現象のことです。

2022年7月上旬から、ヨーロッパ西部を中心に高温の日が続きました。とくにスペイン南部では最高気温43.6℃、フランス南部では最高気温39.4℃と、40℃近い気温の日がありました。

熱波の影響で多くの人が熱中症などによって死亡するだけではなく、イギリスのある空港では滑走路が溶けて、飛行機の離着陸ができないという被害も出ました。

気候変動に対して企業ができる取り組み3選

世界では、気温上昇や海水温度・海面水位の上昇などさまざまな問題が発生しています。

では、これらの課題に対して企業が出来ることとは何でしょうか。続いて、企業が気候変動に対して出来る取り組みを3つ紹介します。

関連記事:SDGs目標達成のためにできること-企業や学生ができることから個人でできることまで網羅

オフィスや工場へ省エネ設備の導入

企業のオフィスや工場に省エネ設備を導入することは、気温上昇などの気候変動を緩和させる対策の一つです。

たとえば日本において、日々使用されている電気のうち70%は企業のオフィスや工場で使用されています。インターネットやIT技術が発展している現代では、情報通信分野での電力消費量が増加すると想定されています。

省エネ設備を設置する際の初期費用はかかるものの、その後のエネルギー消費量が抑えられるためコスト削減につながり、企業にとってもメリットとなります。

再生可能エネルギーの導入

「再生可能エネルギー」とは、石油や石炭などの化石燃料ではなく、太陽光や風力など自然界に存在する資源を活用したエネルギーです。

再生可能エネルギーは地球温暖化の原因である二酸化炭素を排出しないため、活用することで気温上昇を抑えられます。

再生可能エネルギーにはいくつか種類があります。とくに太陽光エネルギーは、建物の屋根にソーラーパネルを設置することで発電できるため、簡単に取り組むことができます。

エネルギーの消費量を「見える化」する

エネルギーの「見える化」とは、電力をはじめとするエネルギーの消費量を数値として表示し、全体で共有できるようにすることです。電力消費量を具体的な数字として把握出来ることで、課題を発見したり、その解決策を検討したりできます。

たとえば電気代が大幅に上昇してしまった時、エネルギーの「見える化」をしていなければ、エネルギーコストを削減するための効果的な対策をとれません。

毎月電力会社から届く明細書をグラフ化することで、毎月の電力消費量などを簡単に可視化できるため、対策がしやすくなります。

企業が気候変動対策に取り組む6つのメリット

ここまで企業が世界の環境問題に対して取り組める方法を説明していきました。

続いて、企業が気候変動対策に取り組むうえでのメリットを6つ紹介します。

自社の競争力を高められる

SDGsやフェアトレードなど、持続可能な社会を目指した取り組みを行う現代において、気候変動への対策は企業のアピールにつながります。

気候変動対策への積極的な取り組みは、企業の取引先だけではなく消費者にもよいイメージを与え、企業が他企業に比べてより競争力を高める方法です。

光熱費・燃料費の削減

気候変動対策の取り組みは、企業の光熱費や燃料費などのコストを削減する際にも大きく貢献します。

省エネ設備は、通常の設備より使用エネルギーが少なくなっているため光熱費が削減されます。

また太陽光などの再生可能エネルギーにおいても、企業の建物などに発電装置を設置することで自社内でエネルギーを発電できます。

どちらも初期費用がかかるものの、長期活用するうえでは大きなメリットとなります。

資金調達の条件が良くなる・調達しやすくなる

現在、「ESG投資」という環境・社会・企業統治の3要素にも配慮した投資が行われています。この投資は欧米を中心に広く浸透しており、投資額も拡大傾向にあります。

企業の経営は、経済・自然環境などの変化や法律・規則などの変更、労働・人権などに対する価値観の変化による影響を大きく受けます。

しかしESG投資は、環境・社会・企業統治の3要素も重視していることから、これらのリスクに対する対応力が高いといえます。そのため、多くの投資家から資金を得られます。

企業の社会的評価が上がる

日本のみならず世界各国で、地球温暖化などの気候変動に向けた対策を講じています。多くの企業も同様に、社会問題の解決に向けて取り組みを行っています。

企業が地球温暖化などの気候変動に対し取り組むことは、企業のイメージや知名度の向上につながります。

さらに、積極的に気候変動対策に取り組むことで国や自治体から表彰を得る可能性もあります。

補助金や支援が受けられる

企業の気候変動に向けた取り組みの一部は、国からの補助金や支援が得られます。

環境省では、民間企業や地方自治体が屋根・駐車場に太陽光発電を設置し、再生可能エネルギーを発電・活用する、自家消費型の太陽光発電の導入を推進しています。

持続可能な社会の形成に向けて、太陽光発電の設備にかかる価格を低減するなど、さまざまな取り組みを行っています。これらの支援を利用することで、企業も負担を軽減させながら気候変動対策を行えます。

SDGsの達成につながる

気候変動対策はSDGs13の目標達成に貢献する取り組みです。

さらに、気候変動対策に取り組むことで、SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」などの項目も達成に近づけることができます。

企業による気候変動対策への取り組み4選

ここまで、企業が気候変動対策に取り組むメリットを6つ説明していきました。

最後に、日本企業が気候変動対策として取り組んでいる事例を4つ紹介します。

ボイド(吹き抜け)構造|近鉄グループホールディングス株式会社

近鉄グループホールディングス株式会社では、あべのハルカスという高層複合ビルにて、ボイド(吹き抜け)構造という自然エネルギーを効率よく利用する方法を活用しています。

この構造によってビルの縦と横に「光の道」や「風の道」ができ、季節・時間に応じて太陽光や風などの自然を利用して、二酸化炭素排出量の削減に貢献します。

そのほかにも、広く光を取り込むダブルスキンウィンドウやLED照明の活用などの取り組みも行っています。

地中熱利用ヒートポンプシステム|学校法人森村学園

学校法人森村学園では二酸化炭素排出量削減政策として、地中熱利用ヒートポンプシステムの設置を推奨しています。

「地中熱利用ヒートポンプシステム」とは、比較的浅い地盤に存在する低温の再生可能エネルギーを、空調や給湯システムに活用するものです。設備設置に時間がかかるものの、年間のランニングコストが安くなります。

現在は、渋谷区立渋谷本町学園の温水プールの加温・床暖房・シャワーの給湯時に地中熱利用ヒートポンプシステムを活用しており、システムのさらなる普及を目指しています。

ドアの開け閉め|栄光製作所

栄光製作所では、省エネ政策の第一歩としてドアの開け閉めから始めました。きっかけは1991年のバブル崩壊や、生産拠点の空洞化などによる倒産危機でした。

固定費や人件費、電気代などの出費が重なる中で、電気代をいかに減らすかという課題に対し、できることから始めたのがドアの開け閉めです。開けたドアを自分で閉めることを徹底させることで、2013年度以降は売上を伸ばしつつ電気代を3割減らしました。

このようにただ省エネ設備を導入するだけではなく、ドアを閉めるなど一人ひとりが小さなことから徹底することで、気候変動対策につながります。

省エネ設備の設置|宮崎県農協果汁株式会社

宮崎県農協果汁株式会社では省エネ活動を推進するために、従来の設備を省エネタイプの機器へと更新しました。これにより、エネルギー消費量を削減しています。

省エネ機器導入だけではなく、エネルギー消費量・二酸化炭素発生量・コストなどの情報を可視化できるシステムを利用することで、気候変動対策を強化しています。

そのほかにも100%リサイクルペットボトルを使用したり、野菜や果物の搾り粕を再利用したりして、環境負荷軽減に向けた取り組みを行っています。

まとめ

世界では気温の上昇や海面温度・海面水位の上昇など多くの社会問題があります。

社会問題が深刻化しないために、省エネ設備を導入したり、再生可能エネルギーを利用したりと、環境に配慮した取り組みが必要不可欠です。

さらに設備導入だけではなく、日々の生活の中でドアを閉めるなどの小さなことに気を配るのも、気候変動対策の一つです。

気候変動対策として何をしたらいいかわからない時、まずは身の回りでできることから始めてみるのはいかがでしょうか。

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