1日限りの“SDGsの学校”が開校|「SDGs169ターゲットアイコン日本版の発表会」レポート

2021.04.02

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【更新日:2021年4月2日 by おざけん

引用:SDGs169ターゲットアイコン日本版制作委員会 事務局 (株式会社朝日新聞社)プレスリリース

SDGs169ターゲットアイコン日本版制作委員会は3月26日、朝日新聞DIALOG公式YouTubeアカウントで「SDGs169ターゲットアイコン日本版の発表会」の様子を生配信した。配信アーカイブはこちらから視聴可能。

■登壇者

  • お笑い芸人 古坂大魔王さん
  • 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授  蟹江 憲史さん
  • 博報堂DYホールディングス グループ広報・IR室CSRグループ推進担当部長  川廷 昌弘さん
  • 博報堂 クリエイティブディレクター  井口 雄大さん
  • 朝日新聞SDGs ACTION!編集長  高橋 万見子さん
  • 朝日新聞DIALOG副編集長  前田 育穂さん
  • 住友林業 取締役 常務執行役員 川田 辰己さん
  • 大和証券グループ本社 取締役 兼 執行役副社長 海外担当 兼 SDGs担当 田代 桂子 さん
  • フラグスポート(マニフレックス) 社長室 室長  矢崎 理さん

日本版オリジナルのSDGs169ターゲットアイコンを発表

SDGsで掲げられている17のゴールには短い日本語コピーがあるのに対し、169のターゲットにはそれがなかった。そこで朝日新聞社などが立ち上げた同委員会は、2020年6月22日から11月30日まで全国の学校団体や教育団体、社会人学生を対象に「SDGs169ターゲットアイコン日本版制作プロジェクト」を開催した。

学生や子どもたちは、169のターゲットにも日本語コピーをつけるべく、SDGsの原文やその日本語訳を参考にして、ターゲットアイコンを短い言葉で言い表す日本語コピーを考えた。今回発表されたのは、募集した日本語コピーをもとに、慶應義塾大学大学院教授・蟹江憲史氏、博報堂クリエイティブディレクター・井口雄大氏らが作成したものだ。(以下の画像を参照)

蟹江教授はイベント冒頭で、「SDGsのターゲットにアイコンがあることをなんとか日本でも広げていきたいという話からこのプロジェクトが始まりました。そんなときに高校野球の運営もされていて、全国に学校のネットワークがある朝日新聞が取り上げてくださって。169のターゲットは短い日本語コピーになっていないですし、原文は読んでいくと非常に複雑なんですよね。それをいかに短くするかを考えることが、SDGsを理解するひとつのステップになるんじゃないかということで始めてみました」とコメントした。


引用:SDGs169ターゲットアイコン日本版制作委員会 事務局 (株式会社朝日新聞社)プレスリリース

1日限りの“SDGsの学校”で特別授業も開催

今回のイベントでは、授業形式でSDGsについてともに考える1日限りの“SDGsの学校”として、SDGs推進大使を務めた「ピコ太郎」のプロデューサーでありお笑い芸人の古坂大魔王さんが考えたターゲットの日本語版コピーの発表や、企業の代表者による特別授業も行われた。

夢を得たい人が得られる教育環境を|古坂大魔王さん

古坂大魔王さんはターゲット4.1の日本語コピーを「夢を持つ力と叶える力を得る」として、誰もが夢を得られる教育環境整備の必要性を訴えた。


引用:「SDGs169ターゲットアイコン日本版の発表会」YouTubeアーカイブ

夢を持つ力については、夢を持たなきゃダメということではないです。夢を得たい人が得られるようにすればいい。叶える力を身につけさせるのには教育が1番大事だと思います。

7年位前にネパールのカッティギ村という電気も通っていない村に行ったら、「鉛筆を持ちたい」という夢を持つ子どもたちがいました。その子たちに鉛筆を配ったら、次は「ノートが欲しい」という夢を持つようになったんです。その次は「書いてみたい」、最終的には「文字を覚えたい」という夢を持ちました。夢を持つためにはまず、鉛筆を手に入れることが大事です。

夢とは自分のやりたいことを叶えること。ターゲット4.1のコピーには、夢を持つ力と叶える力の両方を入れておく必要があるんじゃないかと考えました。

SDGsも林業も「循環」がキーワード|川田辰己さん

住友林業の川田辰己さんが、SDGsゴール15「陸の豊かさも守ろう」のターゲットに関する会社としての取り組みを紹介した。同社は住宅以外の建築物の「木化事業」やバイオマス発電事業も手掛けるなど、一貫して「木」を軸にして事業を展開している。昨年には慶應義塾中等部にて出張授業も行った。


引用:「SDGs169ターゲットアイコン日本版の発表会」YouTubeアーカイブ

陸と海は循環して繋がっています。海の水が蒸発して雲になって、それが山に当たって雨を降らす。そして森を育む。降った雨が土壌を通り、豊富な栄養分を含んだものが川に流れ込んで、また海へ戻る。陸の豊かさと海の豊かさは大きな循環の中で繋がっているということになります。循環を守ることが持続可能な社会の実現に非常に大事です。

当社は国内では約48000ha、海外では230000haの山林を保有して事業を行っています。林業においてもやはり循環がキーワードで、植える・育てる・伐るの循環が必要です。私たちは永続的に植林と木材の生産を繰り返すことを「保続林業」と呼んでいます。

木は成長するときに二酸化炭素を吸収して炭素をその身に固定しています。炭素の動きに注目すると、林業を通して得た木材で街に木造建築物を造ることは、都市の中に森を作るのとまったく同じことになります。木造建築物の廃材は、木質バイオマス発電の燃料として活用します。そこで排出される二酸化炭素は木が成長するときに吸収したものなので、炭素の循環が成り立つのです。

住友林業は「木の活用を通じて持続可能で豊かな社会に貢献していく」を経営理念として掲げています。地方と都市の経済の循環を作り出すことが、ターゲット15.2の達成に繋がると思っています。ターゲットの日本語版コピーを考えてくれた慶應義塾中等部の皆さんをはじめ、若い学生の皆さんとともにサステナブルな社会の実現に貢献していきたいです。

資産形成とSDGsを同時に達成できる商品を世の中に|田代桂子さん

大和証券グループ本社の田代桂子さんが、社会課題への投資促進を図る「SDGs債」の発行や、それに紐づくゴール3、5、6、7など、証券会社として取り組むSDGsについて語った。青山学院中等部での出張授業では、ターゲット3.8の日本語版コピー作成に生徒とともに取り組んだ。


引用:
「SDGs169ターゲットアイコン日本版の発表会」YouTubeアーカイブ

出張授業では「大和証券と一緒に「未来をより良くするおカネの流れ」について考えよう」というテーマについてお話ししました。青山学院中等部のみなさんには、ターゲット3.8(英語版のコピーは”ACHIEVE UNIVERSAL HEALTH COVERAGE”)の日本語版コピーを考えていただきました。

また、証券会社のSDGs達成のためにやれる役割についてもお話ししました。証券会社は、お金を必要とする企業やプロジェクトと投資家を繋ぐという役割を果たしています。SDGsへの注目が集まる最近では、投資家の皆様は出資したお金をSDGs達成のために使って欲しいと考えています。SDGs債は、このような投資家のみなさんのニーズに応えるものです。

実は、SDGs債が生まれる前から同じような趣旨に沿ったものはありました。大和証券は2008年に「ワクチン債」の発行に協力しています。10年以上前、特に発展途上国の子供たちは、本来ならワクチンで防げる病気によって毎年100万人が命を落としていたんです。ワクチン債を発行することで、多くの子どもたちにワクチンを打つことができました。

再生可能エネルギー関連投資や預金を通じた「応援」など、グループビジネスを通じた取り組みも進めています。大和証券の「ジブンゴト化」計画の一環として、女性が働きやすい職場環境を作る「働きがい改革」にも取り組んできました。

これからは人生100年時代。お客様の資産形成とSDGsを同時に達成できる商品を世の中に提供できるような証券会社にしたいと思っております。これを達成できるように考えるのが企業の役割ではないでしょうか。

企業には取り組みを「伝えていく責任」がある|矢先理さん

イタリアの寝具ブランド「マニフレックス」の日本・アジアにおける総代理店を務めるフラグスポートの矢崎理さんが、マニフレックスのSDGsへの取り組みについてと和洋九段女子中学校・高等学校での出張授業について語った。


引用:
「SDGs169ターゲットアイコン日本版の発表会」YouTubeアーカイブ

マニフレックスは1962年の創業以来、一貫して地球環境に配慮したマットレスを作り続けてきました。一般的なマットレスの芯材には、金属スプリングやプラスチックファイバーが使われることが非常に多いのですが、これらは廃棄する際にかかる環境への負荷が懸念されています。一方、マニフレックスが使用する素材には水で発泡させる特殊な製法で作られた「エリオセル」という素材が使われており、これは製造から廃棄まで有毒ガスをほとんど出しません。

マニフレックスのマットレスはドイツの工業規格<LGA-GERMANY>による耐久性試験をクリアしており、寝具では稀な長期保証を実現しています。長く、大事に使えるので、廃棄の頻度を減らすことができるのです。加えて、「真空ロールアップ製法」を確立することで積載量・輸送量の効率化し、CO2の排出量を1/8にまで削減することに成功しました。

こういった特徴から、マニフレックスのマットレスは環境に配慮した製法・製品技術によってゴール14・15に、輸送コスト・温室効果ガス排出の削減でゴール7・13に貢献しているプロダクトだと言えます。それらの取り組みを1つにまとめるものとして、私たちが特に重視しているのがゴール12「つくる責任 つかう責任」です。エシカル消費という言葉は広く使われていますが、ゴール12の考え方が消費者に浸透していけば、メーカーも環境に配慮した商品を積極的に生産するようになると思います。

和洋九段女子中学校高等学校の皆さんとの特別授業では、一人ひとりが今日から取り組める「つかう責任」とエシカル消費についてご説明させていただきました。皆さんは既にSDGsについて自分事として取り組んでいたので、さまざまな刺激や気づきをいただきました。今後、ゴール12への取り組みを「伝えていく責任」を果たすために、さらに企業努力を進めていきたいと思っています。

まとめ

各業界のリーディングカンパニーは既に、SDGsで掲げられているゴールやそのターゲットの達成、そして顧客の生活をより豊かにすることを念頭に置いてビジネスを展開している。

2030年の社会を担う若い学生たちによってSDGsの169個にも及ぶターゲットアイコンの日本語版コピーが作成され、17ゴールだけでは抽象的だった目標を日本語で明確に把握できるようになった。これを広く周知することは、より多くの人や企業が具体的なアクションを起こすことに繋がるに違いない。

これまで積極的にSDGs達成のために取り組んできた方も今一度、世界の共通認識となりつつあるSDGsが目指す社会の姿を見つめ直してみるのはいかがだろうか。

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