温室効果ガスの測定方法をご存知でしょうか。
世界の温室効果ガス総排出量は約335億トン(CO2換算)、日本は11億5000万トンです。
温室効果ガスの排出量は直接測定するのではなく、「活動量」(例えば、ガソリン、電気、ガスなどの使用量)に、「排出係数」をかけて算出します。
今回は温室効果ガスの測定方法について、排出量の現状や測定方法の課題・解決策とともに分かりやすく解説します。
【この記事でわかること】
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温室効果ガスとは?
温室効果ガスの測定方法を紹介する前に温室効果ガスについて簡単に解説します。
温室効果ガス定義と種類
地球の大気中に含まれる二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロンガス類を温室効果ガスと呼びます。
環境省によると温室効果ガスは以下のように分類可能です。
温室効果ガスには、太陽から放出される熱を地球に閉じ込めて、地表を温める働きがあります。
これらは大気中にわずかに存在しており、地球の平均気温は約14℃に保たれています。仮にこのガスがないと地球の平均気温は-19℃になってしまいます。つまり、温室効果ガスはある程度必要なものなのです。
しかし、近年の人間活動によって温室効果ガスが必要以上に急増しています。この温室効果ガスの増加は地球温暖化の主な原因とされています。
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温室効果ガス排出量の現状-世界の温室効果ガス約335億トン
2019年度のJCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)の報告によると、世界の温室効果ガス総排出量は約335億トンでした。
世界の総排出量のうち日本は約3.2%を占めており、世界第5位となっています。
2020年度の環境省と国立環境の報告によると、日本の温室効果ガス総排出量は11億5000万トンです。
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温室効果ガスの測定方法とは?
2015年に採択された「パリ協定」では以下のような目標が掲げられました。
「世界の平均気温上昇を、産業革命以前にくらべて2℃より低くたもち、1.5℃に抑える努力をすること。」
地球温暖化を防止するためには、温室効果ガス総排出量を継続的に測定し、現状を把握することが必須です。
では、目に見えない温室効果ガスはどのようにして測定されているのでしょうか。
ここでは温室効果ガスの測定方法について分かりやすく解説します。
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測定方法は世界共通-IPCCがガイドラインを作成
温室効果ガスの測定(算定)方法についてはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)がガイドラインを定めています。測定方法は世界で標準化されているのです。
温室効果ガスの排出量は直接測定するのではなく、経済統計などで用いられる「活動量」(例えば、ガソリン、電気、ガスなどの使用量)に、「排出係数」をかけて算出します。
温室効果ガスの排出量=活動量×排出係数
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日本の測定方法-「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」
日本ではIPCCのガイドラインを踏まえ、「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」が定められています。
「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」とは、温室効果ガスを相当程度多く排出する者(特定排出者)に、自らの温室効果ガスの排出量を算定した上で国に報告することを義務付ける制度で、平成18年4月1日に策定されました。
温室効果ガス排出量の算定式は以下の通りです。
活動量×排出係数=温室効果ガス排出量
活動量とは、生産量、使用量、焼却量など排出活動の規模を表す指標のことを言い、
排出係数とは、活動量当たりの排出量を言います。
例えば電力を1kwh使用した場合、電力の排出係数は0.378(KgCO2/Kwh)なので、
活動量(1kwh)×排出係数(0.378KgCO2/Kwh)=温室効果ガス総排出量(0.38KgCO2)
となります。
この式を用いて特定排出者に当たる自治体や企業の算出フローを以下にまとめました。
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GWPとはある一定期間にそれぞれの温室効果ガスがおよぼす地球温暖化の影響について、CO2の影響を1としたときの係数を用いて計算した数値です。
GWPの一覧を以下に示します。
特定排出者の報告を環境省がとりまとめることで、日本の温室効果ガス総排出量が算出されているのです。
▼「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」について詳しくはこちら
環境省_ホーム |「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度
現状の測定方法による課題と解決策
現行の温室効果ガスの測定法にはどのような課題があるのでしょうか。
解決策と一緒に紹介します。
1.活用しにくい-報告から集計公表まで2年
「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」には、報告から集計結果の公表までに約2年かかっており、活用しにくいという課題があります。
時間がかかっている原因は、特定排出者からの報告が紙媒体中心で行われているからです。
解決策-電子化を導入
2021年に環境省の「地球温暖化対策の更なる推進に向けた今後の制度的対応の方向性について」で述べられた解決策を以下にまとめました。
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参照:温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度をめぐる 最近の
2.「生産ベースCO2排出」によって生まれる先進国と新興国の格差
IPCCによる現行のCO2排出量(先に紹介した「活動量」×「排出係数」)は、「生産ベースCO2排出」と呼ばれる推計を用いて測られています。
この「生産ベースCO2排出」は、実情よりも過剰に「先進国は減少傾向・新興国は増加傾向」を演出してしまうという課題があります。
なぜなら、自国外に輸出されるモノの生産過程で排出されるCO2も、自国の排出量としてカウントされるためです。
新興国では国内のインフラ整備などのためにエネルギー需要が増えており、CO2排出が増加傾向にあるのは事実です。しかしそれに加えて、先進国から移転してきた工場等からの排出も新興国のものとして算出されてしまうのです。
解決策-「消費ベース」という考え方
OECD(経済協力開発機構)等は「生産ベースCO2排出」への解決策として「消費ベースCO2排出」という考え方を提案しています。
これは製品が生産された際に排出されたCO2を、その製品が最終的に消費される国の排出量としてカウントするというものです。
これによりエネルギー使用の実態がより明確になり、先進国と新興国間での不平等も解消されると考えられています。
ただ、緻密なデータが必要になることから「消費ベースCO2排出量」の統計には5年を要します。これではいくらか正確性が増しても、先に紹介した課題のように活用しにくいのでは意味がありません。
よって、大枠でCO2排出量を一番早く算出できる「生産ベースCO2排出量」が現状ではベストだと言えます。
まとめ
今回は、温室効果ガスの測定方法について分かりやすく解説しました。
温室効果ガスの測定方法は温室効果ガスの排出量は直接測定するのではなく、
「活動量」×「排出係数」で算出しているのでした。
そして算出方法はIPCCによって世界で統一されています。
現行の算出方法にはいくつかの課題もありましたが、現状の算出方法からも温室効果ガスが著しく増加していることは明らかです。
温室効果ガス排出量を測定する目的は、現状を知り、そこから解決策を考える手がかりとすることです。
測定方法の改善も大切ですが、今の算出データから温室効果ガス削減へ対策を考え、実行することが最優先だと考えます。
SDGs CONNECT ディレクター。ポイ捨ては許さない。ポイ捨てを持ち帰る少年だった。
現在はCO2の約300倍もの温室効果をもつと言われている一酸化二窒素(N2O)を削減できる微生物について研究。将来は環境×ITの第一人者になりたい
▶https://www.instagram.com/reireireijinjin6