グリーントランスフォーメーション(GX)とは?政府や企業の取り組みも紹介

#GX#再生可能エネルギー#持続可能#気候変動#環境#脱炭素(カーボンニュートラル) 2023.07.25

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「グリーントランスフォーメーション」(GX)とは、脱炭素社会の実現のため、温室効果ガスを発生させる化石燃料等の使用をクリーンエネルギーに変革していく取り組みのことです。

近年、世界各国で温室効果ガスによる異常気象が発生しています。この問題を解決するため、政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を0にするカーボンニュートラルを目指しています。また、企業もカーボンニュートラル達成に向け様々な取り組みを行っています。では、グリーントランスフォーメーションではどのような取り組みが行われているのでしょうか。

この記事ではグリーントランスフォーメーションとはなにかについて解説しています。また企業の取り組み事例や課題についても紹介しています。

【この記事でわかること】

グリーントランスフォーメーション(GX)とは?|GXの意義と成長ポテンシャルも紹介

グリーントランスフォーメーション(GX)とは、脱炭素社会の実現のため、温室効果ガスを発生させる化石燃料等の使用をクリーンエネルギーに変革していく取り組みのことです。温室効果ガスは異常気象をもたらす原因とされており、グリーントランスフォーメーションで温室効果ガスを減らすことが世界中での課題となっています。カーボンニュートラル目標を表明している国・地域は、GDP総計で世界全体の約90%に達しています。

また、グリーントランスフォーメーションは国家の経済成長に欠かせない重要な目標です。各国で大規模な投資や支援策を行っており、日本でも長らくの間停滞していた経済を再び成長軌道に乗せ、将来の経済成長や雇用・所得の拡大につなげていくための最重要課題に位置付けられています。

こうした中、日本はGX分野の成長ポテンシャルが高い国として注目されています。例えば、各国の事業収益全体に占めるGX関連の収益割合はドイツに次いで2位です。また、各国企業のGX関連特許スコアでは日本がトップであり、自動車関連の割合が多く占めています。このように日本は成長ポテンシャルを有しているため、今後GX分野に力を入れ発展させることで競争力強化と排出削減を同時に実現できるといわれています。

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なぜGXが必要とされるのか|GXが求められる背景を紹介

なぜGXが必要とされているのでしょうか?主に3つの理由があります。

1つ目は気候変動対策です。1985年から2020年までの35年間で、地球全体のCO2濃度は1.2倍まで上昇しました。これにより地球では干ばつや水害、猛暑などが頻繁に起こるようになりました。こうした気候変動問題を解決するには地球全体でGXに取り組む必要があります。

2つ目は経済成長と国際社会における地位確立のためです。主要各国は脱炭素社会を実現するために積極的な投資を行っています。アメリカでは10年間で約50兆円程度の国による対策を決定しました。このように、GXへの投資は経済成長に欠かせない課題であり、世界にリードすることで競争力を高めることができます。

3つ目はESG投資のためです。ESG投資は持続可能な社会の実現に貢献できるため、近年注目されています。GXを行うことで脱炭素が進みESG投資家へのアピールにもつながるため、必要とされています。

ESG投資

…Environment(環境)Social(社会)Governance(ガバナンス)の頭文字をとった言葉。財務情報だけでなく、これら3つの要素に配慮している企業へ投資をすることで、持続可能な社会を目指せる。

GX実現に向けた政府の基本方針|経済産業省や環境省の発表資料を元に紹介

GX実現に向け、政府はどのような方針を固めているのでしょうか。政府が目指す基本方針は、「GXを加速させることで、エネルギーの安定供給と脱炭素分野で新たな需要・市場を創出し、日本経済の産業競争力を強化・経済成長につなげていく。」という点です。そのための主な方法を3つ紹介します。

1つ目は今後10年間で20兆円規模の先行投資支援を行うことです。また、民間投資額全体では150兆円超を目指します。

2つ目は新たな金融手法を活用することです。GXを達成するには莫大な資金が必要です。そこで、トランジション・ファイナンスという脱炭素を目指す企業に対し投融資を行うことで、企業の取り組みを促進します。また、GXへの取り組みはリスクが高いため債務を保証する制度も検討しています。

3つ目は成長志向型カーボンプライシング構想です。成長志向型カーボンプライシング構想とは、「先行投資支援」と税金や排出量取引制度などで実施する「排出削減を促進する措置」の2つを組み合わせてGX投資を目指す取り組みです。支援金や排出される炭素に対して値付けをすることで炭素の排出を抑えようとする狙いがあります。具体的には、排出される炭素への課税や、企業ごとに排出量の上限を定め、それを超える企業と下回る企業の間で取引すること、クレジット取引などが挙げられます。

GX実現に向けた政府の取り組み

続いて、GX実現に向けた政府の取り組みを紹介します。

GX実行会議|GX推進の為の各取り組み

GX実行会議はGX推進のため令和4年度より行われています。第6回開催ではロシアのウクライナ侵略後の世界のGXついて話し合われました。また、日本の具体的な取り組みは「成長志向型カーボンプライシング構想」で議論されました。

例えば、先行投資支援では、一年ごとの予算設定であるため先が見通せないという課題がありました。そこで10年後を見据えた施策と、初期投資に加えて生産量に応じたインセンティブを与えることが検討されました。

さらに、科学や住宅、鉄鋼など各分野の産業ごとにどのような投資を行うのか、ロードマップ等もまとめられています。

GXリーグ|企業との共同活動

GXリーグとはGXの達成のため企業と一体になり社会を変えていく取り組みを指します。企業にとってもGXは企業価値を高めるための重要な取り組みです。前回の募集では440社もの企業が集まりました。

GXリーグが始められた理由は、日本がGX市場を獲得し独自の標準を形成していくことと、GXを推進する企業の取り組みを評価するためです。そのためにも以下の4つの機会が提供されています。

① 自主的な排出量取引の場 カーボンニュートラルに向け高い排出量削減目標を掲げ、※カーボン・クレジット市場で排出量の取引を促進する。
② 市場ルール形成の場 カーボンニュートラルのため新たなビジネスモデルを検討し、市場創造のためのルール作りを行う。
③ ビジネス機会の創造・共有の場 カーボンニュートラルが達成された後の「ビジネス機会」を議論する場を作る。
④ 参画企業間の交流の場 カーボンニュートラルを実現するために様々な話し合いや情報交換をする場を作る。

 

カーボン・クレジット市場

…CO2排出量の削減分を国がクレジットとして認証し、自主的に売買する市場のこと。通常の株式市場と同じように、両企業の希望金額が合致すれば取引される。

国内企業が行うGXの取り組み事例5選

国内企業が行うGXの取り組み事例を5つ紹介します。

  • トヨタ自動車|トヨタ環境チャレンジ2050
  • 東京ガス株式会社|Compass2030
  • みずほフィナンシャルグループ|再エネへの転換
  • セコム株式会社|カーボンゼロ2045
  • 小田急電鉄株式会社|ゼロカーボン ロマンスカー

トヨタ自動車|トヨタ環境チャレンジ2050

トヨタ自動車では「トヨタ環境チャレンジ2050」という取り組みを行っています。この取り組みは6つのチャレンジによって構成されており、クルマの持つマイナス要因を限りなくゼロに近づけるとともに、社会にプラスをもたらすことを目指しています。

主な内容は①ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ、②新車CO2ゼロチャレンジ、③工場CO2ゼロチャレンジ、④水環境インパクト最小化チャレンジ、⑤循環型社会・システム構築チャレンジ、⑥人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジです。このようにゼロへのチャレンジとプラスのチャレンジの2軸で進めています。

東京ガス株式会社|Compass2030

東京ガス株式会社では「Compass2030」という取り組みを行っています。この取り組みは「再生可能エネルギー」、「e-methane(イーメタン)」、「RNG(Renewable Natural Gas)」、「水素」、「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」、「クレジット創出・活用」を生かしてGXを達成しようとするものです。

例えばクリーンな成分であるe-methaneを都市ガスに導入するプロジェクトによって、脱炭素化を推進します。また、空気中のCO2を取り込んで分離し、CO2だけを地中に埋める技術にも取り組んでいます。

みずほフィナンシャルグループ|再エネへの転換

みずほフィナンシャルグループでは契約電力を再生可能エネルギーへ転換する取り組みを行っています。まずはグループ7社において転換を図っており、テナントとして入居している物件に関しても切り替えを目指しています。

また、営業で使用する車もCO2排出量が少ないものに切り替えています。オートバイは全面的に禁止され、電動機付自転車も検討されています。

セコム株式会社|カーボンゼロ2045

セコム株式会社では「カーボンゼロ2045」という取り組みを行っています。この取り組みは2045年までにCO2排出量ゼロを目指すとともに、その通過点である2030年度までに2018年度比で45%削減しようとするものです。パリ協定で締結された「世界の気温上昇を産業革命前より2℃未満に抑える」目標が達成できると科学的に証明されたことを記した「SBT認定」も取得しています。

具体的な手法として、太陽光発電設備の設置や再エネへの切り替え、空調設備やコピー機などのオフィス機器を省エネ仕様に切り替える取り組みを行っています。

小田急電鉄株式会社|ゼロカーボン ロマンスカー

小田急電鉄株式会社では「ゼロカーボン ロマンスカー」という取り組みを行いました。これは期間中の電力を、東京電力エナジーパートナー株式会社の「FIT非化石証書付電力メニュー」に変更して使用することで、CO2排出量を実質ゼロにする取り組みです。

FIT非化石証書付電力メニュー

…再生可能エネルギーに価値を持たせた証明書のこと。電気に証明書を充てることでCO2を相殺することができる。

また、他車両も省エネ仕様のものに変更しており、新型ロマンスカーGSEは旧型車両と比べ約80%消費電力を削減しています。

企業がGXに取り組むメリット2選

企業がGXに取り組むメリットを2つ紹介します。

1.企業イメージや社会的評価の向上

企業がGXに取り組むことで、企業イメージや社会的評価の向上が期待できます。環境問題が活発に議論されるようになり、消費者の環境意識も高まっています。そのためESG投資を考える投資家のみならず、消費者からのイメージも向上させることができます。また、環境課題に貢献したい求職者からのニーズにも答えられます。

2.エネルギーコスト削減やリスク対策につながる

GXでクリーンエネルギーを使用するようになることで、エネルギーコスト削減やリスク対策につながります。初期投資は必要になりますが、企業内でエネルギーを供給できるようになり、コストが抑えられます。さらに、余った分のCO2を他企業に売ることも可能です。また独自でエネルギーの確保ができるため、震災による急なエネルギー不足といったリスクも分散できます。

企業がGXを進めるための課題2選

続いて、企業がGXを進めるための課題を2つ紹介します。

1.初期投資のコストが高い

化石エネルギーからクリーンエネルギーに変更するにはコストがかかります。特に初期投資にはリスクも伴うため企業のGX投資が進まない問題があります。そのため補助金等を利用して進めることで参入障壁を下げることができます。

2.技術的に導入が難しいものがある

GXには専門的な知識が必要なため企業が独自に行うには困難な場合が多いです。そのためGXリーグに参加して意見を交換する場を設けたり、外部から専門的な人材を雇う必要があります。また、政府の支援策を活用し計画案を策定するのも良いでしょう。

GX課題への解決策|企業が活用できる補助金3選

ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業

初期費用ゼロでの自家消費型太陽光発電・蓄電池の導入支援ができる制度です。実施期間は令和3年度~令和7年度までで、補助率は 太陽光発電設備が定額、蓄電池は定額(上限:補助対象経費の1/3)です。

上下水道・ダム施設の省CO2改修支援事業

上下水道・ダム施設で二酸化炭素排出量が少ない設備を導入する際に使用できる制度です。実施期間は平成28年度~令和5年度までで、補助率は1/2(太陽光発電設備のみ1/3)です。

工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業

工場・事業場で脱炭素設備を導入する際に使用できる制度です。計画の策定からCO2排出量測定システムの提供まで支援されます。実施期間は令和3年度~令和7年度までで、計画策定の補助率は3/4、補助上限は100万円です。

まとめ 

今回はグリーントランスフォーメーションとはについて解説してきました。GXは世界各国が重要課題としている目標であり、経済成長のためにもいち早く促進していく必要があります。

国内企業の取り組み事例や補助金制度を参考にして、ぜひGXの計画作りから取り組んでみてください。

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