【更新日:2022年11月9日 by 田所莉沙】
食品ロスは国内外で問題視されているため、データをもとに対策を行うことが不可欠です。
日本や世界ではどのくらいの食品ロスが出ているのでしょうか。また、世界の生産量に対して食品ロスの割合はどれくらいに当たるのでしょうか。
今回はデータを活用しながら、世界や日本の食品ロスの現状を解説します。さらに、食品ロスが発生する6つの原因と対策も紹介します。
日本の食品ロスの現状
捨てられてしまいそうな食品を安く購入できる仕組みや、そのような食品と消費者を繋ぐアプリの登場など、近年では食品ロス・フードロスを減らすための取り組みが積極的に行われています。
では現在の日本の食品ロスはどれくらいなのでしょうか。具体的な数値とともに食品ロスの現状を見ていきましょう。
食品ロス量の現状と内訳
農林水産省によると、2020年度における食品ロスの量は522万トンでした。前年度の食品ロス量と比較すると48万トン減少しており、推計を開始した2012年度以降で最小の値となりました。
食品ロスの中でも、飲食店での食べ残しや小売店の売れ残りなど、事業活動の中から発生する食品ロスを「事業事業系食品ロス」といいます。対して、食卓での食べ残しや調理中に取り除かれる野菜の茎など、家庭から発生する食品ロスのことを「家庭系食品ロス」といいます。
522万トンのうち事業事業系食品ロスは247万トン、家庭系食品ロスは247万トンでした。いずれも推計を開始以来、最小となりました。
食品ロス量の推移
日本の食品ロス量は平成27年度の646万トンをピークに減少を続け、令和2年度の522万トンで最小となっています。コロナウィルスによる外食需要の低下が理由として考えられます。
しかし最少とは言え、日本の食料自給率は低く、食料の約6割を海外からの輸入に頼っている現状です。
一人当たりの年間食品ロス量
平成27年より減少傾向にある日本の食品ロスですが、日本の家庭から排出される食品ロスは年間で約8,159,891トン(2021年)でした。
世界の食品ロスランキングでみると第14位となっていますが、それでも1人当たり、年間約64キロの食品を破棄している計算になります。
引用:UNEP Food Waste Index Report 2021
関連記事:《SDGs基礎》目標12「つくる責任 つかう責任」を徹底解説
世界の食品ロスの現状
ここまで日本の食品ロスを中心に見てきました。続いて世界の現状について解説していきます。
食品ロスの発生量【世界ランキング2021】
UNEP Food Waste Index Report 2021では世界の食品ロス量が発表されています。2021年度における世界の食品ロスランキングは以下のようになりました。(※16位~50位省略)
日本の家庭からの食品廃棄量は、世界で14番目に多いことが分かります。
順位 | 国名 | 家庭の食品廃棄量(kg/人/年) | 家庭の食品廃棄量(トン/年) |
1 | 中国 | 64 | 91,646,213 |
2 | インド | 50 | 68,760,163 |
3 | ナイジェリア | 189 | 37,941,470 |
4 | インドネシア | 77 | 20,938,252 |
5 | アメリカ合衆国 | 59 | 19,359,951 |
6 | パキスタン | 74 | 15,947,645 |
7 | ブラジル | 60 | 12,578,308 |
8 | メキシコ | 94 | 11,979,364 |
9 | バングラデシュ | 65 | 10,618,233 |
10 | エチオピア | 92 | 10,327,236 |
11 | フィリピン | 86 | 9,334,477 |
12 | エジプト | 91 | 9,136,941 |
13 | コンゴ | 103 | 8,912,903 |
14 | 日本 | 64 | 8,159,891 |
15 | トルコ | 93 | 7,762,575 |
引用:UNEP Food Waste Index Report 2021
引用:【2021年】食品ロス世界ランキング 日本の順位と世界各国の現状とは | ELEMINIST(エレミニスト)
世界の食品ロス量と問題
世界では年間約13億トンもの食料が廃棄されています。そのうち日本では、約612万トンの食料が廃棄されているといいます。
しかし、時間と労力を割いて生産してきた食料を破棄する一方、世界では約9人に1人が十分な食事をとることが出来ず、栄養不足に陥っています。
途上国では収穫に関する技術不足以外にも、食料の流通環境や交通インフラが未整備であるために食品が途中で腐ってしまうなどといった理由があります。しかし先進国では、食料の過剰生産や食品の見た目などが理由で破棄されています。
関連記事:食品ロスが問題である3つの理由-原因から食品ロスを減らすための対策を紹介
食品ロスの6つの原因
本来であれば食べられるはずが破棄されてしまう食品は、世界各国で一定数発生しています。そもそもなぜ、食品ロスが発生するのでしょうか。この章では食品ロスの6つの要因について紹介します。
料理の食べ残し
「食べ残し」は家庭系食品ロスの約45%に当たり、家庭系食品ロスの原因として挙げられることが多いです。
料理に対する好き嫌い、また飽きといった家庭内で起こる食べ残しが考えられます。他にも飲食店などでは、1人では食べきれない量の料理を注文し過ぎてしまうといった食べ残しも考えられます。
食べきれる量を意識した注文・食事が「食べ残し」を減らす第一歩です。
手付かず食品の廃棄
食品ロスの中には、消費者に手を加えられることなく破棄されてしまう食べ物も存在します。
例えば、食品の大量買いなどは自分で消費できず食べ残しや消費期限切れに繋がる可能性があります。あるいは食品そのものの存在を忘れてしまい、未開封のまま破棄される場合があります。
食べきりサイズや小分けにされた食品を選ぶことで、手つかずの食品ロスを減らすことができます。
野菜などの過剰除去
厚く切り取った野菜の皮や、茎、芯なども食品ロスに数えられます。
とくに農作物は、食べられるにも関わらず大きく取り除かれてしまう部位が多いです。このような可食部分の破棄を「過剰除去」といい、主に調理中で起こります。
調理の際は皮を薄く剥くなど、可食部分を意識してみると家庭の食品ロスが削減できると言えます。
売れ残り食品の大量廃棄
コンビニやスーパーでは豊富な品揃えを維持するため、多くの食品が用意されています。しかし、入荷量が消費者の需要を大きく超えた量となってしまった際、その分多くの食品が売れ残ってしまいます。
とくに小売店では賞味期限の3分の1以内に商品を納入する「3分の1ルール」と呼ばれる商習慣があります。この「3分の1ルール」により、店頭に並ぶことなく撤去される食品も存在します。
消費者のニーズに沿う商品の種類・量を見極めることが食品ロス削減に繋がります。
規格外品の大量廃棄
真直ぐかつ大きさの揃ったキュウリなど、消費者の手元に届く野菜は見た目が整っているものが多いです。
農作物など特に、その見た目やサイズに差が生じます。しかし市場では見た目に対する厳格な基準が設けられているため、規定に満たない商品は「規格外品」と見なされ、店頭に並ぶことなく破棄されてしまうことがあります。
生産者から直接購入する、または規格外品を取り扱うお店から積極的に購入することが対策として考えられます。
賞味・消費期限切れによる食品の廃棄
冷蔵庫に入れたまま忘れてしまう、大量に買い込んでしまい期限以内に消費できないなどの理由から破棄されてしまうケースもあります。
こちらも食べ残しと同様、消費できる分を意識することで対策が可能です。買い物メモを作成するなど、必要な物を洗い出し・購入することで環境にもお財布にも優しい買い物が出来ます。
関連記事:スーパーの食品ロス削減への対策7選-食品ロスの原因や削減事例も解説
食品ロスを減らすための対策5選
ここまで食品ロスの現状とその原因について紹介してきました。ここからはロスを減らすために私たちができる行動・対策について紹介します。
必要なものを書き出してから食材を買う
買い物メモをつくることで、食品の過剰購入を抑制することができます。
家庭内で発生しうる食品ロスを予め防ぐだけでなく、必要なものが整理されるため余分な購入を抑えることができます。
食品の期限表示を確認し、食材を使い切る
なるべく期限の近いものから調理することで、効率よく食材を使い切ることが出来ます。ほかにも先に調理をしてから小分けにするなど、調理におけるひと工夫が大切です。
食べ切れる量を作る・お皿によそう
食事の食べ残しはもったいないと感じたことはありませんか。
食べきれる量だけ作る、またお皿によそうことで家庭内・外での食べ残しを減らすことできます。また自分にとって適切な量を意識することで、生産者が作った食材を無駄にせず、美味しくいただくことができます。
外食時は食べられる量を注文する
外食での食べ残しを減らすためには、食べきれる量を意識した注文が重要です。
注文してみると予想以上にボリュームがあったという事も考えられるので、一度に大量に注文する際には注意が必要です。
外食で残った料理は持ち帰る
店内で料理を食べきることが出来ない場合は、持ち帰るという選択肢があります。
しかし衛生上の問題から持ち帰りに対応できない飲食店もあるので、食べきる自信がない場合は、食事を始める前にお持ち帰りの可否を確認すると良いかもしれません。
関連記事:食品ロス削減のおすすめアプリ5選-アプリ活用のメリットから特徴を徹底比較
まとめ
今回は日本や世界の食品ロスについて、データを活用しながら現状を解説しました。
各国は持続可能な社会に向け食品ロスの削減に取り組んでいます。今回紹介した内容の他にも、例えば食品ロスを減らすアプリなどがあります。
SDGsCONNECTでは食品ロスに関連する記事が他にもたくさん掲載されています。気になるキーワードを調べてみると、より食品ロスについて理解が深まるのではないでしょうか。