【更新日:2022年12月15日 by 市川 佳歩】
「食品ロスって何だろう?」「どうして問題になっているんだろう?」「私たちに出来る食品ロス対策はあるのかな?」
そんな疑問を持っている方に向けて、この記事では、食品ロスが何なのか、家庭でできる食品ロス対策、現在の食品ロスの現状を徹底解説していきます。さらに、食品ロス削減の取り組みや効果を紹介します。
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食品ロスとは
はじめに、食品ロスとは何か説明していきます。
食品ロス
「食品ロス」とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことを指します。食品ロスを大きく分けると、二つに分けることができます。
一つ目は、スーパーマーケットなどで発生する売れ残り、食べ残し、規格外品などの「事業系食品ロス」。二つ目は家庭で作った料理の残りや、食べられる部分まで捨ててしまう「家庭系食品ロス」です。
▼参照記事
食品廃棄物との違い
続いて、食品ロスと食品廃棄物の違いについて説明していきます。
どちらも食品を捨てるというイメージがついていて、混同して使われることが多いですが、それぞれの言葉の定義が異なります。
食品廃棄物とは、不可食部分を含めた廃棄されてしまう食品全般を指します。
そのため、食べることのできない魚の骨や野菜の芯なども含まれます。
食品ロスとは、可食部分が廃棄されてしまう食品を指します。食べられる状態である食べ残しや、賞味期限切れの食品を捨てることが食品ロスに該当します。
食品ロスの現状
続いて、日本と世界の食品ロスの現状について説明していきます。
日本の食品ロス
農林水産省によると、2020年に日本で捨てられた「食品ロス」の量は年間612万トンとなっています。これは、東京ドーム5杯分となります。
量が膨大なので、身近なものに例えると、お風呂1杯で250Lです。
1㎥が1000Lなのでお風呂4杯で1㎥になります。
東京ドームは1杯124万㎥です。
ということは、約500万杯のお風呂が5回分必要ということになります。
この食品ロス量を1人分に換算すると、1人当たり1日でご飯茶碗一杯分(約113g)となります。1人1人の量が少なくても、日本だけでこれだけの量が捨てられているという事実には驚きを隠せません。
世界の食品ロス
世界中で捨てられている食品の量は、年間13億トンです。先進国で多い食品ロスの理由は食品の売れ残りや食べ残しです。日本も同様の理由で食品ロスが発生しています。食品ロスは、先進国だけでなく発展途上国でも発生しています。しかし、理由は先進国とは異なり、食べ物をつくっても環境が整っていないため、市場に出回る前に腐り、やむを得ず捨てることが多いです。
なぜ食品ロスをしてはいけないのか
食品ロスをそのままにしてしまうと、環境や将来に悪影響を及ぼします。また、廃棄される食品を大量に処分することで埋め立て処分場の不足や、廃棄物処理費用が増えてしまいます。さらに、食品を処分する過程で焼却、埋め立てすることでCO2を排出してしまいます。これは、地球温暖化につながるため環境に悪影響を及ぼします。環境省によると、最終処分場の寿命はあと20年ほどであるとされています。
▼参照記事
環境省_令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第2部第3章第1節 廃棄物等の発生、循環的な利用及び処分の現状 (env.go.jp)
また、食品ロスは食品を生産するときに使用した資源、材料などを無駄にしてしまうことが問題とになっています。例えば、米を作るときに成長するまでに使用した水、米を作った農家、米を育てた土地、米を運搬した費用などです。消費されずに廃棄されてしまう食品が多いことで生産しても無駄になってしまいます。
家庭でできる食品ロスの対策
ここでは、家庭でできる食品ロスの対策について説明していきます。
1.食品を買いすぎない
食品を食べきれず出てしまう廃棄を防ぐには、まず食べきれる分だけ食品を買うことが重要です。スーパーに行くと、ついつい安くなっている食材が目に入ってたくさん買ってしまいがちです。しかし、安くなっているからといって安易にたくさん買ってしまっては、食べきることができず食品ロスが起こる可能性が高くなります。必要な分だけ食材を買いましょう。
また、食品を買いに行く際、空腹の状態で買い物をしていませんか?
空腹の状態で買い物をすることも買いすぎてしまう原因の一つです。空腹状態のため、食材を見ると食べたくなってしまいます。そして、いつもより買いすぎてしまいます。買いすぎてしまうと、食品ロスも増えてしまいます。空腹時には買い物に行かない、どうしても行かなければいけない場合は、飴玉を一つ口に入れていくと衝動買いすることも少なくなり、食品ロスも減らすことができます。
2.残った料理をリメイク
食品ロスの要因の一つ、食べ残しを減らすにはリメイクをするという方法があります。しかし、出来上がった料理からリメイクをつくるというのは難しいです。そこで紹介したいのが、南極発のリメイクレシピです。南極では、「南極条約」によって廃棄物の規定が厳しく決められています。そのため、廃棄物を出すことができません。しかし、厳しい条件の中でも料理をおいしくリメイクし廃棄物を出さない工夫をしています。そんな南極で1年間料理人を務めた渡貫淳子さんのリメイク料理本を参考に食品ロスを減らすことを意識してみてはどうでしょうか。
▼参照記事
悪魔のおにぎりと南極流リメイク料理 | 渡貫淳子 | クッキング・レシピ | Kindleストア | Amazon
悪魔のおにぎりシリーズ増殖中!|ローソン研究所 (lawson.co.jp)
3.食べ残しを減らす
家で食事をとるとき、料理を残していませんか?食べ残しは少なくても、積み重ねていけばその量はとても膨大です。
環境省によると、令和2年度までの食品ロス量はこのようになっています。
食品ロスの発生量(単位:万トン) | 事業系 | 家庭系 | 合計 |
令和2年度 | 275 | 247 | 522 |
令和元年度 | 309 | 261 | 570 |
平成30年度 | 324 | 276 | 600 |
平成29年度 | 328 | 284 | 612 |
平成28年度 | 352 | 291 | 643 |
平成27年度 | 357 | 289 | 646 |
平成26年度 | 339 | 282 | 621 |
平成25年度 | 330 | 302 | 632 |
平成24年度 | 331 | 312 | 642 |
令和2年度の食品ロス、522万トンのうち約47%は家庭から出ていることが分かります。食品ロスは事業だけでなく、家庭から出る食品ロス量の半分を占めています。全体でみると減少傾向ですが、それでもたくさんの食品ロスが起きているのが現状です。
食品ロスを削減するためには、食べ残しを少なくすることが大切です。食事の際に料理を残さないことで簡単に食品ロス削減に繋げられます。しかし、どうしても料理を残してしまうときがあると思います。
そんなときは、残した料理を捨てることなく、保存をすることをお勧めします。しっかり冷蔵庫で保存をすれば、季節に関わらず2〜3日は日持ちします。密閉容器に入れて保存をしておけば捨てることなく食べきることができます。
食べ残しを減らす方法として、最初から取り分けておく、という方法もあります。あらかじめ「食卓に出す分」と「保存する分」を分けておくことで、食べ残しの量も減ります。冷蔵庫に保存する場合は、粗熱をとってから冷蔵庫に入れましょう。
▼参照記事
我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和2年度)の公表について | 報道発表資料 | 環境省 (env.go.jp)
4.食べる量を把握する
食品ロスを減らすために家庭で出来ることとして、食べる量を把握するという方法もあります。食べる量を把握することで、作りすぎを防ぐこともできます。自分の食べられる量を目安に食事の量をつくると、残る量も格段に減ります。
5.食材の食べられる部分を知る
料理を作るとき、余分な部分まで捨てていませんか?
野菜の皮や食べられない部分の除去で、食べられる部分まで捨ててしまう過剰除去も食品ロスに繋がります。例えば、野菜の皮をむくとき包丁でむくことで皮が厚くなってしまい、食べる量が減ってしまうことがあります。そんな時は、ピーラーを使って皮を薄くむいたり、人参やジャガイモなど皮に栄養を多く含む野菜は皮ごとみじん切りにして調理してもいいですね。
▼参照記事
今日からはじめる食品ロス削減のためのヒント:農林水産省 (maff.go.jp)
6.適切に保存する
食品をたくさん買ってしまった場合、全て料理に使っていませんか?
「すぐ傷んでもったいない」と料理に使ってしまっては食べきれなくて食品ロスを起こす可能性があります。正しく保存をすることで、食材を長持ちさせ、最後までおいしく食べきることができます。
7.賞味・消費期限を把握する
スーパーで売られている食材には、生鮮食品があります。生鮮食品には賞味期限と消費期限が記載されています。安くなっている食材は賞味期限と消費期限が近いため安くなっている可能性が高いです。そのため、安くなっていない商品と同じように保存していると早く傷んでしまいます。賞味・消費期限を把握し、どの食材を優先的に使わなければいけないか順序を決めましょう。そして、優先的に使う食材を元に料理を決め、食材を無駄にせず美味しく料理を食べきりましょう。
8.寄付をする
まだ食べられる食品を寄付できる「フードバンク」をご存じでしょうか?
食べられるけれど破棄される食べ物の寄付を受け付け、困窮した家庭や福祉施設に食品を提供する事業団体です。
地域によってさまざまですが、事業から寄付を受け付けたり、個人で寄付をすることも可能です。余った食品を提供することで食品ロスを減らし、困窮した家庭や福祉施設を助けることに繋がります。
▼参照記事
フードバンク:農林水産省 (maff.go.jp)
現状食品ロス対策でできていること・効果
令和元年10月1日に食品ロス削減推進法が施行されました。国民運動として食品ロスを削減することを推進していくことを宣言しています。具体的には、「3010運動」や食品事業者に無駄のない食品の利用を呼び掛けています。
「3010(さんまるいちまる)運動」とは、宴会や打ち上げなどの外食をした際の食べ残しを減らす運動のことです。
乾杯後30分間、席を立たないで料理を楽しみ、
解散する10分前に、自分の席に戻って料理を楽しむ。
そして、料理を残さないように美味しく食べきるという運動です。
この運動の呼びかけは飲食店などでよく見かけられます。ポスターや卓上三角柱で呼びかけを行っています。1人1人が食品ロス削減に意識を向けることが大事です。1人1人が「もったいない」心がけをすることが食品ロス削減に繋がってきます。
▼参照記事
食品ロスってなに?|[消費者庁]めざせ!食品ロス・ゼロ (caa.go.jp)
食品ロスの削減の推進に関する法律 | 消費者庁 (caa.go.jp)
3010運動普及啓発用三角柱POP ダウンロードページ | 環境再生・資源循環 | 環境省 (env.go.jp)
まとめ
食品ロスを減らすための家庭でできる取り組みを紹介しました。
環境や将来を大切にするために、1人1人が少しずつ食品ロスを意識していくことで社会全体も変えていくことが大事だと思います。
そのためには、身近な事からやってみることが必要です。
食品ロスのない持続可能な社会を作っていくことを期待します。
大学ではAIについて学んでいます。趣味でイラストを描いています。
SDGsの知識を深めて、わかりやすくて面白い記事をお届けしたいと思います!