【更新日:2022年11月30日 by 田所莉沙】
世界では貧困や飢餓で多くの人が苦しんでいる一方、多くの食料が捨てられています。全国で毎日、多くの食品を販売するコンビニも、食品ロス削減に向けて様々な取り組みを行っています。
そもそも、なぜコンビニでは食品ロスが発生しているのでしょうか。
また大手コンビニ3社(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート)は食品ロス削減に向けてどのような取り組みを行っているのでしょうか。
この記事では、コンビニで発生する食品ロスの現状・原因から、コンビニの取り組み(製造・輸送・販売・流通時)についてわかりやすく解説します。コンビニを利用する私たちができることも一緒に考えていきましょう。
【この記事でわかること】
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コンビニで発生する食品ロスの現状
「食品ロス」とは本来食べられるのに、捨てられてしまう食品のことです。農林水産省によると、2020年における日本の食品ロスの量は年間522万トンであり、一人あたり毎日お茶わん一杯分のご飯に相当します。
「食品ロス」には家庭系食品ロスと事業系食品ロスの二つに分類されており、コンビニは事業系食品ロスの食品小売業に該当します。農林水産業が発表した資料によると、2020年における事業系食品ロスのうち食品小売業は約20%と、多くの食品を捨てている状況です。
たとえば近年では、2月頃に迎える節分の日に食べる「恵方巻き」が大量に捨てられており、問題となっています。株式会社フードエコロジーセンターによると、2019年から2022年にかけて廃棄量は減少しているものの、毎年5,000キログラム以上もの恵方巻きが無駄になっています。
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コンビニで食品ロスが発生する原因4選
ここまで日本における食品ロスの現状について、説明していきました。
続いてコンビニで食品ロスが発生する原因について、4つ解説していきます。
商品を必要以上に仕入れている
コンビニではおにぎりやお弁当などの食品を季節や時期、お店の場所や客層などさまざまな情報を参考にしながら仕入れをしています。そのため各店舗によって、一日の仕入れ量が異なります。
しかしながら商品棚に商品がなくなってしまっては、コンビニは利益を生み出すことができません。そのためコンビニでは、少し多めに仕入れることで品切れを防いでいます。
必要以上に仕入れた結果商品が余ってしまい、食品ロスとなってしまいます。
揚げ物・惣菜の作りすぎている
コンビニにはレジの横にチキンや唐揚げなどの揚げ物や、焼き串などの惣菜が陳列されています。商品棚に陳列するお弁当やおにぎりのように、揚げ物や惣菜も店舗での売り上げ個数に応じて店舗内で生産しています。
コンビニの揚げ物や惣菜は売り切れ次第、新しく作っています。たとえばお昼ごはんを買い求めに人が多く来る時間に合わせて揚げ物・惣菜をつくるものの、予想していた数を売ることができない場合があります。これらの食品は売れなかった場合、廃棄物として処分されてしまいます。
商品棚の奥から商品を取っている
基本的にコンビニやスーパーのような食品を取り扱うお店は、「先入れ先出し」陳列を採用しています。「先入れ先出し」陳列とは、日付の古い商品を手前に寄せながら、新しい商品を後ろに並べる方法のことです。この方法を活用することで、賞味期限内に食品が売れ、食品廃棄物を最小限にとどめることができます。
しかし中には手前ではなく、後ろから商品を取るお客さんがいます。後ろから商品を取ってしまった場合日付の古い商品が残ってしまい、賞味・消費期限が過ぎてしまう可能性があります。これにより、食品ロスが増加していきます。
食品の販売可能な期間が短い
コンビニではおにぎりやお弁当などの食品を販売する際、「3分の1ルール」に従って販売をしています。「3分の1ルール」とは、食品の鮮度を維持したまま消費者へ届けるために企業が独自に定めたルールのことです。このルールは法律として定められているわけではないものの、これに従わないと取り引きが難しくなっています。
「3分の1ルール」では食品を製造した日から賞味期限までの日数を3つに分割し、それぞれ納品期限・販売期限・賞味期限と分類します。定められた期限までに食品を納品・販売し、期限をすぎたものはすべて廃棄物として処理しているため、本来まだ食べられる食品が捨てられています。
【商品開発・製造時】コンビニ3社の食品ロス削減への取り組み
ここまでコンビニで食品ロスが発生する原因について、説明していきました。
次に食品ロス削減のために製造・運送過程において、コンビニが取り組んでいる事例を紹介していきます。
関連記事:スーパーの食品ロス削減への対策7選-食品ロスの原因や削減事例も解説
セブンイレブン
セブンイレブンでは食品ロスの低減や廃棄物の減量化に向けて素材や製造工程、温度管理を見直すことで、味や品質を保ったまま従来よりも長い消費期限にしたチルド弁当を製造しています。
現在はチルド弁当だけではなく、パン類やお惣菜も消費期限が長く設定できるように商品開発を進めています。
そのほかにもセブンイレブンのオリジナル商品「セブンプレミアム」シリーズの商品は、手間と時間をかけずに食事ができる「近くて便利」な商品として開発され、小容量で少人数でも食べ切れる量に設定することで、食べ残し削減に貢献しています。
チルド弁当 …5℃前後の温度で保管されているお弁当。商品製造後、運搬時から5℃前後を保って輸送することで鮮度が長持ちし、半熟卵や生野菜をたっぷり使用できるようになっている。 |
ローソン
ローソンでは廃棄物の発生を抑制するため、製造段階で原材料の投入量や出来高量、盛り付け量など、すべてを細かく計算して商品を製造する「生産加工管理システム」を導入しています。
また2019年8月より一般社会法人全国フードバンク推進協議会へ納品期限の切れたお菓子や加工食品、日用品を寄付する取り組みも行っています。寄付した商品は、全国各地のフードバンク団体へ送られ、日用品や食品を必要としている家庭・児童養護施設・障がい者福祉施設などに提供されています。
12月のクリスマスの時期にはクリスマスケーキ、年末年始にはおせちの寄付も行います。ローソンの寄付活動先は年々拡大しており、2021年の段階で寄付した商品数は約240万個となっています。
フードバンク …安全に食べられるのに包装の破損や印字ミスなどの理由によって販売されない商品を寄付してもらい、必要としている団体や家庭に提供すること。 一般社会法人全国フードバンク推進協議会では国内でのフードバンク活動を推進し、食品ロスの削減や貧困問題の解決を目指している。 |
ファミリーマート
ファミリーマートでは食品ロス削減に向けた取り組みとして、サラダや惣菜などの一部商品に特殊な包装技術「ガス置換包装」を採用しています。「ガス置換包装」とは包装内の空気量を減らさずに酸素の量を減らすことで、食品の突き刺しや見栄えを損なわずに包装できる方法です。
この包装技術は食品だけではなく医薬品などにも活用されており、「ガス置換包装」と似た包装技術としてエージレスパック・真空包装などがあります。
そのほかにも今まで規格外食品として廃棄されていた食材を、ファミリーマートのオリジナル商品の原材料として使用することで、食品ロスの削減に貢献しています。
【店舗での販売時・販売後】コンビニ3社の食品ロス削減への取り組み
ここまで各コンビニの商品開発・製造時における食品ロス削減に向けた取り組みを説明していきました。
続いてコンビニの店舗での販売時・販売後の食品ロス削減に対する取り組みについて解説していきます。
関連記事:食品ロスの解決策とは?-企業・家庭・学校での取り組みを徹底解説
関連記事:企業の食品ロス削減への取り組み10選-食品ロスの現状や原因も解説
セブンイレブン
セブンイレブンを経営する株式会社セブン&アイでは「GREEN CHARENGE 2050」を宣言し、食品ロス・食品リサイクル対策に向けて取り組みを行っています。
「GREEN CHARENGE 2050」では、2030年までに食品リサイクル率を70%、2050年までに100%にすることと、食品廃棄物量を2013年度比で2030年までに50%削減、2050年までに75%削減することを目指しています。
取り組み例として、食品の「てまえどり」の推奨や小分けのパック・カット野菜の販売などがあります。
そのほかにも株式会社セブン&アイは2008年8月より、食品リサイクル率の向上と地域農業活性化を目指して、千葉県富里市に「セブンファーム富里」を設立しました。
「セブンファーム」ではイトーヨーカドーやセブンイレブンで廃棄となった食品や生ゴミを、堆肥として再利用しています。
2022年2月の段階で「セブンファーム」の取り組みは、全国12か所に拡大しており、無駄となる食品を減らすために取り組んでいます。また「セブンファーム」はJGAP認証の取得を積極的に目指しており、2022年2月の時点で11か所がJGAP認証を獲得しています。
食品リサイクル …食品の売れ残り・食べ残しや食品の製造過程で発生する食品廃棄物量を削減・減量するために、飼料や肥料などに再生利用していくこと。平成13年に施行されており、さらなる食品リサイクルを促進するため、平成19年に改定されている。 |
JGAP認証 …食品の安全、労働の安全、環境の保全、人権福祉など持続可能な農業経営への取り組みに向けて必要な基準を定めたもの。規定された基準をもとに記録・点検・評価を繰り返すことで、農産物における生産工程の管理や改善を行う。 |
ローソン
ローソンでは各店舗がお弁当やおにぎり、惣菜パンなどの食品を発注する際に、「セミオート(自動)発注システム」を導入しています。このシステムは、各店舗ごとの売上状況や客層の情報、天気などさまざまな情報を分析して各店舗に最適な品揃えと、商品別の発注数を推奨するものです。
発注者が「セミオート発注システム」のデータを参考にしつつ、地域行事などを考慮して商品を発注するため、消費者にとって欲しい商品がいつもあるように品揃えしつつ、無駄になる食品数をおさえています。
そのほかにも売れ残り商品を削減するために、消費期限が短かったり消費期限が近い商品を値引き価格で販売しています。
ファミリーマート
ファミリーマートは店舗での食品ロス発生を防ぐために、2019年からうなぎやクリスマスケーキ、おせつなどの季節ならではの商品を予約販売としています。
事前予約制にすることで消費者のニーズに合わせて商品を製造しつつ、無駄な食品の発生を防いでいます。
そのほかにもファミチキのようなファミリーマートの各店舗で製造し、販売している揚げ物を揚げた際に使用した廃食油を、養鶏用飼料の添加剤やインク、石鹸などに100%リサイクルしています。また一部の石鹸は、「薬用ハンドソープ」として店舗でも販売しています。
コンビニを利用する私たちができること4選
ここまで、各コンビニのおける販売時・流通後の食品ロス対策について説明していきました。
最後に、コンビニで買い物をする中でわたしたちができることについて紹介していきます。
コンビニに行く前に冷蔵庫の中身を確認する
まず昼食や夕食をコンビニに買いに行く前に、冷蔵庫の中身を確認することが大切です。事前に確認せずに買い物に行ってしまうと、冷蔵庫に入っているものを再度買ってしまう可能性があります。
同じものを買うと食べ物が余り、結果として賞味期限・消費期限が過ぎ、捨てなければなりません。このような無駄な減らすために、事前に買うものを確認しましょう。
手前から商品を取る
実際にコンビニで商品を買う際は奥から取るのではなく、手前から取るようにしましょう。とくにお弁当やおにぎり、惣菜パンは手前に賞味期限・消費期限が近いものが置いてあります。
手前ではなく奥から取ってしまうと賞味期限・消費期限がすぎてしまい、無駄にならなかったはずの食品が廃棄物として処理されてしまいます。すぐに食べるために買う際は、奥からではなく手前から商品を取るようにしましょう。
食べられる量だけ購入する
コンビニにはさまざまな商品があり、スーパーには売っていないようなお弁当が置いてあったり、他の企業やアニメなどとコラボした商品が販売されていたりします。とくに期間限定の商品や数量限定の商品は、とても魅力的に感じる人が多くいると思います。
美味しそうだから、コラボしているからという安直な考えで食品をたくさん買ってしまうと、賞味・消費期限以内に食べきれず捨てざるをえない状況となってしまいます。気になる商品をたくさん買うのではなく、自身が食べ切れる量を購入するようにしましょう。
エシカルシールが貼ってある商品を購入する
「エシカル」とは「倫理的な」という意味ですが、「エシカル消費」や「エシカル商品」という形で使用される場合、地球環境・人・社会に対して配慮されたことを指します。
コンビニでは賞味期限・消費期限が近づいている商品にシールを貼ることで、食品ロスの削減に取り組んでいます。
昼食や夕食など、購入後すぐに食べる場合は積極的にエシカル商品を購入してみてはいかがでしょうか。
まとめ
食品ロスは日本において大きな問題の一つであり、大量の食べられる食品が無駄となっています。コンビニにおいても廃棄量は著しいです。
とくにコンビニでは消費者のニーズに合わせて仕入れた結果、必要以上に食品を発注してしまったり、売れ行きが悪かったりなどの原因により賞味期限・消費期限が過ぎてしまいます。これにより、食品ロスが増えています。
食品ロスのさらなる増加を防ぐために、セブンイレブンやローソン、ファミリーマートでは食品のてまえどりを推進したり、廃棄となった食品を飼料としてリサイクルしたりなど、さまざまな取り組みを行っています。
私たちも実際にコンビニで食品を買う際は、手前からとるように意識するなど、食品ロス削減に貢献するためにできることから始めてみませんか。
SDGsCONNECT SEOライター。大学では文学を通じて、ジェンダーについて学んでいます。SDGsについて詳しくない人にとってもわかりやすく、かつ情報が正確な記事を書けるよう、心がけています。