LGBTの世界の現状を紹介-政府の取り組みや教育、日本との違いも解説

##性・生殖#LGBTQ#ジェンダー 2023.03.14

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世界ではLGBTに対してどのような取り組みが行われているのでしょうか。

近年LGBTへの理解が進んでおり、多くの国や企業でLGBTへの取り組みが行われています。また、同性婚などの法整備や学校教育も盛んになっています。

今回はLGBTの世界の現状を紹介するだけでなく、政府の取り組みや教育事情、日本との違いについても紹介します。

【この記事でわかること】

LGBTとは-世界の現状と課題について解説

世界のLGBTの現状と課題についてそれぞれ紹介します。

LGBTとは-それぞれの頭文字が意味するものとは

LGBTとは「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー」の4つのアルファベットの頭文字をとったものです。

それぞれ「女性の同性愛者」・「男性の同性愛者」・「男性も女性も好きになる人」・「身体的な性と性自認が違う人」を指しています。

身体的な性とは性器などの身体的特徴に基づく性別を、性自認とは自身の性をどのように捉えるかを表した言葉です。

LGBT以外のマイノリティ-多くのマイノリティが存在

以前までは、性的マイノリティの人のことをLGBTと表現していました。

しかし、レズビアンやゲイ、バイセクシュアルやトランスジェンダー以外の性的マイノリティを表す言葉が必要になったことでLGBTQLGBTQ+と表現されるようになりました。

LGBTQ

LGBTQの「Q」とはQuestioning(クエスチョニング)とQueer(クィア )を表しています。

クエスチョニングとは自分のセクシュアリティを定義していない人を指します。

一方、クィアとは性的マイノリティを包括的に表す言葉として用いられています。

LGBTQ+

LGBTQ+はLGBTQでは表現しきれない性的マイノリティを表しています。

例えば、他者に対して恋愛感情や性的欲求を抱かない人を表す「アセクシュアル」や、性自認が流動的に変わる人を表す「ジェンダーフルイド」があります。

LGBTの割合-世界と日本で違いはあるのか

日本も含め、世界各国でLGBTの割合の調査が行われています。

例えば、アメリカの大学が行った調査によると、およそ908万人の性的マイノリティの方が米国にいることがわかりました。この数値はアメリカの人口の約3.8%に該当します。

また、イギリスの国家統計局の調査によると、およそ84万人がLGBTであることがわかりました。これはイギリスの人口の約2%にあたります。

一方で、日本の民間団体による調査では、人口の8%〜10%前後がLGBTと言われています。つまり人口の10から13人に1人がLGBTという計算になります。

LGBTと答える人の割合に差が生じる理由として、LGBTであることのカミングアウトのしやすさが挙げられます。

▼参考
LGBTの割合は?日本と世界でグラフ化。[2020年最新の調査結果]

LGBTの割合がバラつく理由【13人に1人? 100人に1人?】

LGBT差別問題の現状-まだまだ消えない差別と偏見

LGBTへの差別は様々な国で起こっています。

例えば、エジプトやジャマイカなど、同性婚が認められていない国は多く存在しています。

また、ガーナやセネガルなど、パートナーシップ制度が導入されていない国も多く存在しています。

LGBTスポーツについて賛否が分かれており、思い通りにスポーツに取り組めないLGBT選手もいます。

▼参考
同性婚ができる国は世界で何カ国?死刑になる国も存在します。

▼関連記事
LGBTとスポーツの関係性-問題点や選手事例、日本の現状まで紹介

世界政府のLGBTへの取り組み事例4選-LGBTに関連する法律も紹介

世界政府のLGBTへの取り組み事例を4つ紹介します。

アメリカ-同性婚に関する法律の可決

1つ目に紹介する国はアメリカです。

アメリカ連邦議会は、2022年に同性婚を立法で合法化する「結婚尊重法案」を可決しました。

この法案によって、性的マイノリティで自由に結婚できなかった人たちは新たな選択肢を得ることができました。

▼参考
米で同性婚を法制化、「結婚尊重法案」が可決 バイデン大統領が署名へ

▼関連記事
《徹底解説》LGBTQとは|SDGsとの関係から、現状や課題まで徹底網羅

イギリス-LGBTアクションプランの発表

2つ目に紹介する国はイギリスです。

イギリス政府は、LGBTの人の生活向上に向けた「LGBTアクションプラン」を発表しました。

このプランはイギリス政府が行ったアンケート結果を基に、「生活満足度と安全の確保」「教育」「健康」「職場環境」の4つの項目で政府が作り出したものです。

例えば、「生活満足度と安全の確保」の分野では、ヘイトクライムに対する警察の対応を強化する方針を固めました。

▼参考
【イギリス】政府、「LGBTアクションプラン」発表。インターネット調査を基に対策打ち出す

オランダ-「性の多様性」についての必修授業

3つ目に紹介する国はオランダです。

オランダは世界で初めて同性婚を合法化したことで知られています。

また、オランダでは2012年から学校教育で「性の多様性」を扱うことが義務づけられています。

例えば、初等教育の「社会・環境学習」の科目には「セクシュアリティと性的多様性」という学習項目があり、セクシュアリティや文化の違いを尊重することの重要性について学びます。

▼参考
【EU諸国と日本でどう違う?】学校の性教育におけるLGBTs

フランス-LGBTヘイト対策アプリの開発を援助

4つ目に紹介する国はフランスです。

フランス政府はLGBTに取り組む団体を支援しており、差別を通報するためのアプリの開発を援助しました。

開発されたアプリは「Flag!」という名前がつけられており、LGBTに対する差別的な言動を匿名で通報することができます。

▼参考
「差別はそのままにしない」─フランス政府が支援するLGBTヘイト対策アプリ

世界のLGBT教育3選

世界のLGBT教育を3つ紹介します。

スウェーデン-未就学児へのLGBT教育

1つ目に紹介する国はスウェーデンです。

スウェーデンでは学校教育の中で性の多様性を理解するための価値観や知識を教えることが義務づけられています。

性の多様性について子供たちが初めて学ぶ機会は、義務教育開始前の「就学前学校(フォースコーラ)」です。スウェーデンでは両親が育児休暇を終了する1歳、または1歳半から就学前に学校に通い始める人が多数を占めています。

この施設では遊びや本の読み聞かせを通じて性的マイノリティが身近にいることを学べます。

スウェーデンでは日常のあらゆるところで「性のあり方は多様である」ということを学ぶことができるのです。

▼スウェーデンのLGBT教育について詳しくはこちら
【世界から】スウェーデン、就学前から多様な性について学ぶ意味

▼関連記事
LGBT教育に必要な取り組み5選-現在の問題点と海外の取り組みも紹介

アメリカ-州ごとに異なるLGBT教育のあり方

2つ目に紹介する国はアメリカです。

アメリカでは、2017年にカリフォルニア州教育委員会が中学校までの教科書にLGBTに関する内容を記載することを認めました。

一方、ルイジアナ州、ミシシッピ州、オクラホマ州、テキサス州の4つの州はLGBT教育に消極的で、性教育を異性との関係に限定するといった法律が制定されています。また、2022年にはフロリダ州で小学校での性自認や性的指向などの話し合いを禁じる法律が成立しました。

▼アメリカのLGBT教育について詳しくはこちら
小学校での「性的指向の議論禁止」法案、フロリダ州で可決の見通し 米政府は非難 | BBC NEWS JAPAN

フランス-多くの科目で学習するLGBT教育

3つ目に紹介する国はフランスです。

フランスのLGBT教育の特徴は、科学の授業の中でも「生物領域」という科目でLGBTについて教えることです。

また、生命倫理、歴史、社会制度といった様々な角度からLGBT教育が行われることにより、LGBTフレンドリーな風潮に結びついています。

▼フランスのLGBT教育について詳しくはこちら
LGBT教育に必要なこととは?課題や取り組み事例を紹介

世界企業のLGBTへの取り組み事例4選

世界企業のLGBTへの取り組み事例を4つ紹介します。

マイクロソフト-他社よりも早いLGBTへの取り組み

1つ目に紹介する企業はマイクロソフトです。

マイクロソフトは1989年に差別禁止規定の中に性的マイノリティによる差別を禁止することを盛り込みました。

さらに、マイクロソフトの日本支社では、誰もが平等に扱われる職場づくりを実現するために「ビジネスによる LGBT 平等サポート宣言」を採択しています。

世界中に支社があるマイクロソフトでは、それぞれの地域に適した取り組みを行っています。

▼参考
日本と世界のLGBT取り組み事例を紹介 – LGBTs不動産のIRIS

日本マイクロソフト、「ビジネスによる LGBT 平等サポート宣言」に賛同

Adobe-社会全体のLGBTコミュニティを目指す

2つ目に紹介する企業はAdobeです。

AdobeはIllustratorやLightroomなどのデジタルクリエイター向けのアプリケーションを提供している会社です。

AdobeはLGBTQに優しい会社として認識されており、LGBTQにとって最も働きやすい場所の「Best Place to Work for LGBTQ」リストにランクインしています。

Adobeの取り組みは社内だけでなく、社会全体に目を向けられています。

同社では、LGBTの支援団体に寄付をしたり、団体でのボランティア活動をしたりしています。

▼参考
LGBTQ+の働きやすい環境づくり アメリカ先進企業4社の取り組みと特色は?

PHV-ファッションを通じてLGBTを訴える

3つ目に紹介する企業はPHVです。

PHVは、世界的なアパレルブランドのCalvin KleinやTommy Hilfigerなどの親会社です。

若い世代を顧客に持つアパレル会社として、その強みを活かした取り組みを行っています。

例えば、性的マイノリティのインフルエンサーがCalvin Kleinのプライドコレクションのモデルを務めました。

▼参考
LGBTQ+の働きやすい環境づくり アメリカ先進企業4社の取り組みと特色は?

IKEA-従業員のマイノリティを尊重

4つ目に紹介する企業はIKEAです。

IKEAは、性的マイノリティの従業員に対して手厚い支援を行っています。

例えば、LGBTの従業員とその家族に配慮した保険プランが用意されています。

また、性転換手術代の一部負担や性自認に悩む人のカウンセリングにも取り組んでいることが特徴的です。

▼参考
LGBTQ+の働きやすい環境づくり アメリカ先進企業4社の取り組みと特色は?

日本のLGBTへの取り組み事例

日本のLGBTへの取り組み事例を紹介します。

日本政府の取り組み-LGBTの生徒への取り組み

日本政府の取り組みの一例として文部科学省の取り組みを紹介します。

文部科学省は特に教育関係の施策をしており、各自治体の学校に対してLGBTの生徒が生活しやすくなるような対応を求めています。。

2015年には「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」を発出し、性同一性障害の児童生徒への支援について具体的にやるべきことを取りまとめました。

2016年には教職員向け手引きを公表し、教員に対してLGBTを理解することを求めています。

▼参考
性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について | 文部科学省

▼関連記事
日本のLGBTの現状-教育や仕事など分野別に課題を紹介

学校での取り組み事例-オールジェンダートイレの設置

学校での取り組み事例として、愛知県豊川市にある長沢小学校の取り組みを紹介します。

長沢小学校には「みんなのトイレ」が設置されており、男女別のトイレの他に男女共用のトイレもあります。

共通の入り口を入った先に男女別トイレや男女共用トイレがあり、外からはどちらのトイレに入ったかわからないように配慮されています。

▼参考
男女共用・個室化・洋式多数…進化する「学校のトイレ」

▼関連記事
LGBTのトイレのマークについて考える-オールジェンダートイレの提案や導入事例も紹介

日本企業の取り組み事例-資生堂の取り組み

日本企業の取り組み事例として資生堂の取り組みを紹介します。

資生堂では、性的マイノリティの人に対する差別禁止のためにLGBTをテーマにした社員向けセミナーを開催するなど、積極的にLGBTへの理解促進に取り組んでいます。

資生堂の取り組みは社外にも及んでいます。資生堂は渋谷区が主催する「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA」や「Tokyo Rainbow Pride」に賛同しているのです。

また、LGBTの人々に化粧を楽しんでもらうイベントを企画するなど、コミュニティに対して積極的に活動しています。

▼参考
日本と世界のLGBT取り組み事例を紹介 – LGBTs不動産のIRIS

日本と世界のLGBTへの取り組みの違い-日本に求められることとは

紹介したように、LGBTの人に対して世界中で様々な取り組みが行われています。

しかし、解決すべき課題はたくさん残っています。

例えば、オランダやベルギーなど同性婚ができる国がある一方で、日本では同性婚に関する法律は整備されていません。

また、パートナーシップ制度に関しても日本全体としては認められていません。

国が主体となって、LGBTの人たちの権利を守っていくことが求められます。

まとめ

世界で行われているLGBTへの取り組みについて新しく知ったことはありましたでしょうか。

同性婚やパートナーシップ制度などの法律を作るだけでなく、LGBTヘイトを禁止するアプリの開発に携わった国もあります。

国全体に関わることは政府しか取り組めませんが、教育現場や会社などの小さなコミュニティでは自治体が柔軟に対応することができます。

LGBTの方々が過ごしやすい社会になるために、一刻も早い対応が求められます。

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