【更新日:2023年4月14日 by たいせー】
北欧に位置し、自然や人々の豊かさ・幸福度がトップクラスの国として知られるノルウェー。クラシック音楽のバイオリニスト、山瀬理桜(やませ・りお)さんは、ノルウェーの幻の楽器ともいわれる「ハルダンゲルバイオリン」に魅せられ、そこから北欧流の「幸せ」のあり方について深く考えるようになりました。国連が掲げるSDGsにも大きな関心を寄せ、その実現にも貢献しています。今回はそんな山瀬さんとノルウェー流の幸福について紹介していきます。
プロフィール
山瀬理桜(やませ・りお)
職業:バイオリニスト、ハルダンゲルバイオリニスト。作曲・編曲家。
桐朋学園大学音楽学部演奏学科弦楽器専攻(バイオリン)卒業。バイオリンを江藤俊哉氏、江藤アンジェラ氏に師事。1992年より国内外のオーケストラと共演(チャイコフスキーのバイオリン協奏曲、モーツァルトのバイオリン協奏曲第3番など)。98年からノルウェーのムンク美術館内ホールをはじめ、日本と北欧を中心にコンサートツアーを開始。2006年、宮崎駿監督の短編アニメ「水グモもんもん」の音楽監督(作曲&演奏)を担当し、同年のスタジオジブリ「ゲド戦記」にもハルダンゲルバイオリンで演奏参加。07年、ハルダンゲルバイオリンを使った音楽劇「ペール・ギュント」全曲をオーケストラと共演し好評を博す。18年にノルウェーのハルダンゲル自治区から「Good-will Ambassador of Hardanger(ハルダンゲル親善大使)」に任命された。2023年1月、
山瀬さんとハルダンゲルバイオリン
山瀬さんがノルウェーに興味を持ったきっかけはピアニストの姉がノルウェー人と結婚したことでした。そして大学卒業をきっかけに、ノルウェーのムンク美術館で姉とコンサートを開きます。そのコンサートが好評で、その後10年間におよび開催をしました。山瀬さんはコンサート活動を続ける中で、ノルウェーの民族楽器「ハルダンゲルバイオリン」と出会いました。「初めて見たハルダンゲルバイオリンは、とても美しく、私は雷に打たれたような衝撃を受けました。数百年かけて守られてきた楽器の伝統を強く感じました。」と語っています。
ノルウェーの平等観
山瀬さんはハルダンゲルバイオリンに魅せられていく中で、ノルウェー流の平等を学んだと語っています。そんなノルウェーの平等観を代表するものの一つとして、敬語が存在しないことが挙げられます。
長いことデンマークとスウェーデンに支配されていたため、ノルウェー人はヒエラルキーを嫌います。そのような背景があるので、ノルウェーは独立した時、国民の意思で敬語を廃止しました。敬語をなくすことで、年上の人と話す時でも、「HI,Henrich.~~,bye」と簡潔に済ませられます。丁寧語はありますが、日本語の「先生」に当たる言葉はなく、みんなファーストネームで呼び合うのです。
ノルウェーの平等観は1970年代に発見された北海油田の使い道にも表れています。大きな資源が発見されると、権力者の利権になってしまう国が多いですが、ノルウェーではそうせずに、国民みんなの財産になりました。石油を販売して得た金額で政府の年金基金を作ったのです。基金の資金は資金運用のプロたちが世界中の道徳的な企業に投資しており、新潟の町工場にも投資しています。
つねに正しい投資がなされるように、資金の使われ方はすべて国民に開示されています。今では巨大な年金基金となり、ノルウェー国民1人あたりの資産は2,000万円以上になるそうです(※)。
※ノルウェー政府年金基金の運用残高は、2021年には約11兆クローネ(日本円で約203兆円/2022年8月29日現在で1ノルウェー・クローネ=18.5円で換算)を超えた。
山瀬さんのSDGsへの姿勢
山瀬さんは音楽家としてだけでなく北欧SDGs研究家としても活動しています。これからの山瀬さんのSDGsへの取り組みを紹介していきます。
一つ目に挙げられるのは、SDGsの若い人たちへの講演です。「しなくちゃいけない」ではなく、「あなたたちの未来につながっている、私たちの幸せにもつながっている」という考えを軸に、SDGsの大切さを未来を担う若者に伝えたいと語っています。ノルウェーではペットボトルに「3(2)ノルウェー・クローネ」と印刷してあります。子どもたちは3クローネ券に替えてから換金することで、楽しみながらペットボトルを回収しリサイクルを学びます。
二つ目は子ども食堂のお手伝い。その内容は農業高校でつくられた野菜を子ども食堂に届けることです。衆議院議員だった曽祖父の山瀬幸人氏(1855〜1935年)が鳥取県の倉吉農学校(現在の県立倉吉農業高校)の校長を務めたということが影響しています。
3つ目はノルウェーのサプリメントの紹介です。南極で採れたクリル(オキアミの英語名)を使ったサプリメントを、ノルウェーの会社が世界中に輸出しています。
ノルウェーの幸福の考え方、つかみ方について詳細を知りたい方は、山瀬さんのご著書『悪いのはお天気ではなく、着ている服だ(出版文化社)』をご覧ください。ノルウェーの第一線で活躍する文化人、学者、政治家など17人にインタビューしたものをエッセイ風にまとめてあります。北欧の福祉・教育・文化、サステナブルなど、これからの人生を豊かにしなやかに生きるためのヒントが盛りだくさんの一冊です。
また、山瀬さんは「リオン音楽学院」という、クラシック音楽から北欧音楽まで学べる音楽教室を、中目黒と代官山で運営しています。ピアノやバイオリンなど初心者から上級者まで、それぞれのレベルにあったレッスンを行っており、英語でのレッスンも可能です。
会社概要
商号:株式会社リオンコーポレーション
本店所在地:〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1丁目34-17 za HOUSE 6F
代表:太田理桜
設立年月日:平成17年1月11日
資本金:1,000万円
取引銀行:みずほ銀行 中目黒支店
おわりに
人々の豊かさや幸福度、またはジェンダー先進国として知られる北欧の国々ですが、日本がそれらの国々に見習うべきことは多くあるはずです。北欧での介護における持続可能な考え方は特に参考にすべきであると思います。今回は企業の取り組みではなく、山瀬理桜さんという個人にフォーカスを当ててきました。山瀬さんのような文化人もSDGs達成に向けて活動をしています。改めてSDGsは企業や個人の属性に関係なく、誰もが取り組むべきものなのだと感じました。
参照ページ
- SDGs BOOK
https://www.sdgsbook.jp/interview/interview-07/
- アクティオノート
https://note.aktio.co.jp/music/20221213-1720.html
- 山瀬理桜オフィシャルウェブサイト
SDGs CONNECTライター。大学では都市政策系のゼミに所属し、都市を経済学的な視点から捉えながら学んでいる。Mr.Children大好き。歌うのも好き。