リスキリングとは|学べる資格や政府の支援制度について簡単に紹介

#教育#経営#職業訓練 2024.04.01

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「リスキリング」とは、業務を行う際に必要なスキルや知識を主体的に身につけることです。近年、海外ではさまざまな企業が積極的に導入しています。

一方で日本ではあまり普及しておらず、導入している企業も少ないのが現状です。なぜ日本国内ではあまりリスキリングが浸透していないのでしょうか。

この記事では、リスキリングの概要や普及する背景、実際に企業が取り入れている事例をまとめていきます。加えて日本政府がリスキリング推進を目指して行っている支援制度も紹介します。

リスキリングとは|意味や語源、リカレントとの違いを紹介

まずはリスキリングの意味やリカレント教育との違いについて、説明していきます。

リスキリングとは

リスキリング」とは、社員が新しい業務を行う際に求められるスキルや知識を習得することを指します。またリスキリングでは、企業側が社員のために教育の場を設けることです。

リスキリングの語源は、英単語の「re-skilling」であり、学び直しという意味を持ちます。アメリカの企業であるAT&Tが2008年にリスキリングを導入し、世界各国に普及しました。

リカレント教育との違いとは

リスキリングに似た言葉として「リカレント教育」があります。「リカレント教育」とは、社員が現在行っている業務や職種に対して、さらに効率を高めるためにスキルを習得することを指します。

リスキリングとリカレント教育の違いは、取り組む主体が異なります。「リスキリング」は、企業が社員に対して、新しいスキルや知識を身につけてもらうために学びの場を提供します。一方で「リカレント教育」では、社員が個人で知識や能力を得るために学ぶことです。

リスキリングとリカレント教育は似た意味を持っていますが、意味が異なるため、導入する際はどんな教育を行うべきか考える必要があります。

関連記事:リスキリングとリカレントの違いとは?|政府が行っている政策も紹介

リスキリングが注目される背景とは

つぎに近年リスキリングが注目されている理由について、説明していきます。

オフィス業務におけるDX化の浸透

リスキリングが普及している理由の一つは、オフィス業務のDX化です。「DX」とは、デジタルトランスフォーメーションの略語であり、企業がデジタル技術を活用して業務をより効率化し、社会や生活スタイルを変化させることを意味します。

経済産業省は、2018年にDX化を推進する「産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進」を発表しました。これにより、多くの企業がオフィス業務のシステムをDX化し始めています。たとえば紙の書類を電子化したりクラウドで管理したりなどです。

業務におけるDX化はさらに浸透し、より効率良く働ける環境が整っていきます。リスキリングは、DX化を推進するうえで、業務に必要な知識やスキルを学べるため、注目されています。

リモートワークなど新型コロナウイルスによる働き方の変化

近年では、働き方が多様化されたこともリスキリングが導入された要因の一つです。とくに2019年に蔓延した新型コロナウイルスの影響で、「在宅勤務」が数多くの企業に導入されました。

在宅勤務ではオフィスで働く時とは異なり、パソコンの操作力ITスキルが必要となります。中でもデータ管理は、他の人との共有やセキュリティ対策など、求められる知識やスキルがたくさん存在します。

リスキリングを実施することで、在宅勤務で必要な知識やスキルを身につけることができます。また新たな働き方が導入された際にも、リスキリングを実施することで柔軟に対応することができます。

少子高齢化による企業の人材不足

日本では子どもの数が減り、高齢者が増加する「少子高齢化」の問題に直面しています。これにより年々働き手が少なくなり、人材不足に陥っています。

厚生労働省は、2025年に75歳以上の人口が全人口の約18%に達すると発表しました。また2040年には65歳以上の割合が約35%、2070年には約39%であると推測しています。

今後働き手が減ることで、企業における業務効率も低下する可能性があります。人手が不足する中で効率よく業務を行うためにリスキリングを導入することで、社員一人あたりの生産性が高まります。

リスキリング関係の資格とスキル

続いてリスキリングを実施することで社員が得られる資格について、紹介していきます。

IT関連資格|プログラマーやウェブデザイナー

まずは、プログラマーWebデザイナーなどのIT関連資格です。とくにIT業界が急成長している中で、プログラミングとWebデザイナーは人気の資格となっています。

プログラマー」は、エンジニアが設計したプログラムに基づいてシステムを組み立てるプログラミングを行う職種です。プログラマーになるために必ず必要な資格はありません。しかし「基本情報技術者試験(FE)」や「プログラミング能力認定試験(SCJP)」を取得することでより効率的に業務を行うことができます。

また「ウェブデザイナー」はWebサイトのデザインや構成をつくる職種です。これらの資格を取得することで、IT分野の仕事に携わることができます。

関連記事:IT分野のリスキリングの現状-1兆円のリスキリング支援策も紹介

語学資格|英語や第二外国語

リスキリングの一環として、語学資格の取得も注目されています。とくにTOEICTOEFLなどの試験は、語学資格の中でも人気です。

たとえばTOIECでは、ビジネスシーンや日常生活で活用できるような内容となっています。そのため単語やリスキング練習を行うことで、実際に仕事の中で活かせることができます。

また英語の他にも中国語スペイン語などの第二外国語の学習もできます。とくに中国語やスペイン語を話す人が増加傾向にあるため、ビジネスチャンスを広げるきっかけとなります。

経理関連資格|FPや税理士

リスキリングの資格として、FP税理士なども人気な資格の一つです。経理に関する資格は、専門性が高くどの企業でも必要なスキルのため、転職を試みている人にもおすすめな資格です。

具体的に「ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)」では、住宅ローンや保険など生計の立て方をサポートしていきます。FPは3級から1級まであり、資格を取得することで幅広い知識を身につけられます。

一方で「税理士」は、納税のアドバイスや申告書を作成する職種です。税理士の試験は難易度が高いですが、取得することで年収が向上したり、さまざまな知識が身につけられたりと、メリットがあります。

日本政府によるリスキリングの助成金や補助金3選

つぎに日本政府が企業のリスキリングを促進するために行っている助成金や補助金について、説明していきます。

関連記事:公務員にも求められるリスキリングとは-資格や補助金を紹介

関連記事:リスキリングの補助金・助成金6選-政府や自治体の支援策を紹介

経済産業省|創業支援補助金

まず経済産業省では、「創業支援補助金」制度を実施しています。「創業支援補助金」は、会社を立ち上げる際に発生する費用の一部を国や地方自治体が補助してくれるものです。リスキリングを通じて新たな事業を展開する人を支援しています。

創業支援補助金は、補助金の返済をする必要がないというメリットがあります。さらに企業の設立前にも申請ができるため、費用を軽減させることが可能です。

創業支援補助金は、毎年約1ヶ月の期間に受け付けています。申請期間は年度によって異なるため、公式サイトをチェックすることが重要です。

厚生労働省①|雇用調整助成金

厚生労働省が提供する「雇用調整助成金」は、企業の事業者を対象とした助成金です。具体的には、経営が悪化し、社員を雇い続けることが難しくなった際に得られる制度となっています。

この助成金では、休業している社員が対象です。そのため内勤で業務を行っていたり、規模を縮小したまま営業したりしている場合は、休業の対象とはなりません。助成金を申請する場合は、助成金の申請に該当するかどうか、きちんと確認することが必要です。

現在は、2024年1月に発生した能登半島地震の災害被害で生じた雇用問題のために、特例措置が実施されています。詳細は厚生労働省のホームページをご覧ください。

>>雇用調整補助金の詳細はこちら

厚生労働省②|キャリアップ助成金

 

雇用調整助成金のほかにも、非正規労働者に向けた制度を整えています。それが「キャリアアップ助成金」です。非正規労働者の正社員化や、待遇改善を目指して支援を行います。

この制度では、5つのコースが設けられており、それぞれ会社に適したコースを選ぶことができます。各コースの詳細は、厚生労働省が公表している資料をご覧ください。

また制度を活用するためには、事前にキャリアアップの計画を提出することが必要です。記入の仕方は資料に記載されているため、申請する会社は調べたうえで申請を行いましょう。

>>キャリアアップ助成金の詳細はこちら

企業によるリスキリングの取り組み事例5選

最後にリスキリングを導入した企業の事例を、5つ紹介していきます。

関連記事:リスキリングに取り組む企業事例7選-中小企業の事例も紹介

ソフトバンク|多様性を尊重した人材育成の実施

ソフトバンクは、通信やインターネットメディア、キャッシュレス決済サービスなどさまざまな事業を展開している会社です。ソフトバンクでは、すべての従業員に対して新しい職種に就くためではなく、AIなどを用いて今の業務を効率化させることを目指しています。

具体的な取り組み例は、「ソフトバンクユニバーシティ(USB)」です。ソフトバンクユニバーシティ(SBU)では、会社が主導となってキャリア形成を行うのではなく、社員一人ひとりの選択に沿って形成していく仕組みとなっています。

また研修をパソコンやスマートフォンを活用したオンライン学習の場を提供しており、自律的に学べる環境が整っています。

パナソニック|グローバルで活躍する人材の育成

パナソニックは、家電製品や設備機器などの電化製品を幅広く提供している電機メーカーです。パナソニックでは、世界中のお客様に商品やサービスを提供するため、グローバルで活躍できる人材の育成に力を入れています。

取り組みとして「Panasonic Global Mobility Policy」があります。この取り組みでは、海外社員の日本勤務や、地域間の異動を行っています。さらにアメリカでは2年間のプログラムを実施することで社会の課題について学び、プログラムで得た知識や経験を商品開発に活かしています。

そのほかにも個々の挑戦を支援するキャリアクリエイト制度も設けており、社員一人ひとりのキャリア形成を支えています。

ヤフー|プログラミング未経験者に対するエンジニア育成の支援

ヤフーは、インターネットなどの検索や広告などの事業を行うIT企業です。ヤフーではリスキリングの一環として、AI人材の育成に力を入れています。

具体的な取り組みとして「Z AIアカデミア」があります。この取り組みでは、グループ会社であるLINE株式会社や、ZOZOグループが合同で学ぶ場を提供しています

実際の学習では、AI技術のアルゴリズムや活用事例を学習し、知識力の向上を目指しています。目標としては、5年間で5,000名の増員を目指しています。

AI人材

…人工知能や機械学習などのデータ解析に関する知識やスキルを持つ人材のこと。

グーグル|日本リスキリングコンソーシアムを設立

グーグルは、インターネット関連のサービスや製品を取り扱っている会社です。グーグルでは個々が持つ能力を最大限に発揮するための環境整備を目指しています。

日本リスキリングコンソーシアム」は、日本社会が抱える問題を解決するために設立されました。具体的には、地方と都市部のデジタル格差や、デジタル人材不足などです。日本リスキリングコンソーシアムに登録することで、最適なトレーニングプログラムを見つけることができ、効率的に学びの場を提供できます。

ほかにもデジタルスキルを向上するためのプロジェクトである「Grow with Google」を立ち上げ、デジタル人材の育成を行っています。

NTT東日本|社外副業プラットフォームを構築

NTT東日本は、電話や回線、インターネットなどのサービスを提供している通信業界のリーディングカンパニーです。NTT東日本では「地域循環型社会の共創」を目的に定め、社員一人ひとりが多様性に富んだ働き方ができる仕組みを作っています。

具体的には、キャリア形成とリスキリングを支える仕組みづくりとして、副業のプラットフォームを構築しました。これにより、社員それぞれが副業案件を探せるようになるだけではなく、地域の価値創造に貢献していきます。

さらに時短勤務スーパーフレックス制度など、働く時間を選択できる制度も整えています。2022年7月からは、在宅ワークと会社への出社を組み合わせたハイブリットワークを積極的に推進していきます。

まとめ

リスキリング」は、仕事をするうえで必要なスキルや知識をみにつけるために企業側が社員の学びの場を提供するものです。リカレント教育とは異なり、新しい業務に対する仕事に焦点を当てています。

現在リスキリングが注目されている理由は、DX化の浸透人材不足などです。一方で日本の企業はあまり導入していません。そのため政府が創業支援補助金キャリアアップ助成金などの支援制度を通じて、積極的な導入を後押ししています。

学びの場を整える方法は、さまざまな種類があります。それぞれの企業が必要なものを導入するようにしましょう。

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