SDGs目標9の課題とは-産業基盤と技術革新の国内外の課題まで解説

#SDGs目標9#持続可能 2021.12.17

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【更新日:2022年9月29日 by さわちゃん

SDGs目標9の課題にはどのようなものがあるのでしょうか。
日本に住む私たちにとって電気や水道などのインフラは必要不可欠です。さらに近年では、スマートフォンの普及により情報社会となる中でインターネット環境の整備も欠かせません。

しかし、世界にはいまだにこのような環境が整備されていない地域が数多くあります。

今回はSDGs目標9の視点から見た、産業基盤と技術革新の国内外の課題まで、事例を交えて徹底解説していきます

SDGs 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは

目標9は「強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る」ことをテーマに、インフラ構築・持続可能な産業化・イノベーションの3つの要素を促進させることを目的としています。

これら3つの要素を促進すると、国・各地域の生活基盤が確立し、新規産業の誕生やテクノロジーの導入がされます。その結果、国同士の格差を小さくすることに繋がります。

世界におけるSDGs目標9の課題

課題1 電力・水道などのインフラ整備が整っていない

OECDによると世界で電気が供給されていない地域の人口は約13億人だと言われています。またJMPレポートによれば、毎日、25億人もの人々が不十分な衛生施設で苦しんでいるといわれています。
また国連広報センターによると、25カ国で暮らす農村地域の住民5億2000万人のうち、約3億人が道路網に簡単にアクセスできていないとされています。「インフラを整備するためのインフラ」でさえ整備されていない地域があります。

電力や水道というような、先進国では当たり前のインフラが開発途上国では、金銭的事情や道路整備の未実行により実施されていないという現状があります。

課題2 インターネット環境が整備されていない

今日では、インターネットの重要性が一層増しており、一日の大半をインターネットで費やしている人も多くなっているのではないでしょうか。
そんな中、ITU-Dによると世界の約37億人がインターネットにアクセスできておらず、特に開発が遅れている地域では、17%の人が携帯電話の電波が届かないところに暮らしていると言われています。

インターネット環境を整備しなければ、国や地域間における情報格差は拡大し、グローバル化の妨げにつながってしまいます。

課題3 研究開発に投資する資金がない

UNESCOが掲載しているGDP(縦軸)と研究開発費(横軸)、研究者数(円の大きさ)の相関グラフでは、GDPの低い開発途上国では研究開発費・研究者数が少ないことが分かります。

データ

http://uis.unesco.org/apps/visualisations/research-and-development-spending/

(出典:How much does your country invest in R&D?)

特に2021年においては、新型コロナウイルス感染症の危機を乗り越えるという視点から見ても、研究開発への投資拡大の必要性が増しています。

研究開発に投資することは産業技術の向上やイノベーションに繋がります。研究開発への資金を産出することはその点非常に重要です。

日本におけるSDGs 目標9の課題

課題1 災害時におけるインフラが脆弱

2011年の東日本大震災では、多くのインフラが壊滅的な被害を受けました。
その他にも、近年起こる地震や豪雨災害によって電気や水道など生活に欠かせないインフラが被害を受けることによって、被災者のその後の生活に大きな影響を与えてきました。

地震大国である日本にとって、今後も起こるであろう災害に対して必要なのは「回復力のあるインフラ」です。

しっかりとした基盤を作り、回復力のあるインフラを作り上げることが重要です。

課題2 橋梁や水道管などの老朽化

日本の橋梁や水道管が老朽化を迎えていることが、現在大きな課題として挙げられています。
国内のインフラの多くは、高度経済成長期である1960年代に一斉に整備されたものです。インフラの耐用年数は約50年とされているため、現在多くのインフラに建替や補修の必要があります。

しかし各自治体の予算には制限があり、インフラ整備への資金を捻出できないのが現実です。

check:橋梁とは
河川、渓谷、湖沼、海峡、運河、道路、鉄道などの上方に輸送路を設けるためにつくられる構造物の総称のこと

 

課題3 AI/IoT導入などの技術革新

近年AIやIoT(Internet of Things)と呼ばれる仕組みが国内でも普及しています。
IoTとは住宅や家電などの「モノ」がインターネットに接続され、ユーザーの情報を分析し、活用するものです。

総務省の「令和元年版 情報通信白書」によると、日本のIoT導入状況は全体で23.1%となっています。また、AI導入率に関しては39%と中国やアメリカに比べまだまだ普及してない現状があります。

データ

https://www.bcg.com/ja-jp/press/20february2019-digitalbcg-ai-report

(出典:ボストンコンサルティンググループ(2018)「企業の人工知能(AI)の導入状況に関する各国調査」)

デジタル化を推進することで業務効率の向上が期待でき、産業技術の向上やイノベーションに繋がります。

AI/IoT導入の推進はSDGs9の目標達成を目指す上で欠かせません。

SDGs目標9の達成状況

前年から変化なし

2021年度SDGs達成度ランキングの日本の順位は前年からワンランクダウンしましたが、SDGs目標9の達成度は前年と比べ現状維持という結果になっています。
また、SDGs目標9に使われる研究開発費用は、2000年と比べると約1.2倍と増加していますが、他の先進国と比べると増加率が少ないのが現状です。

引用元:SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の現状(世界と日本)

出典:Sustainable Development Report 2021

▼現状はこちら
SDGs目標9の現状とは?|現状から課題解決のための取り組み事例まで徹底解説 | SDGs CONNECT

SDGs 目標9を達成する3つのポイント

ポイント1|インフラへの投資

インフラ整備では国内外問わず莫大な資金が掛かってしまうことが、促進妨害の理由の一つです。
しかし、インフラ整備を行うことで生産性の向上を促進し、各国・各地域の成長につながります。

インフラの基盤を確立することで、その後の成長に大きく影響することからも、インフラへの投資は率先すべきタスクです。

ポイント2|情報格差の収縮

世の中には、膨大な情報が溢れています。
多種多様な情報を入手する1番のツールはインターネットです。

インターネットを世界中どこでも使える環境にすることは、国・地域間での情報格差収縮につながります。

情報格差が拡大してしまうと、技術発展にも大きな差ができ、包括的で持続可能な世界をつくることができません。

どこにいても最低限の情報量を入手できる環境づくりを目指すことは、目標9達成のための非常に重要なポイントです。

ポイント3|他のSDGs目標との組み合わせ

SDGs 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は他のSDGsの目標とともに達成を目指すことでより具体的に解決できます。
例えばSDGs目標8「働きがいも経済成長も」と組み合わせることで雇用機会の創出と言う視点においてより具体的な施策を提案できます。

また、SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」は、まさにインフラ普及の観点から施策を提案できます。

このように他のSDGsの目標と組み合わせることで、より具体的且つ方向性の定まった解決法を実行できます。

▼解決策はこちら
SDGs目標9達成のための解決策とは|具体的な解決策から企業の事例まで網羅

SDGs 目標9の課題に取り組む企業3選

企業1|株式会社富士通

富士通研究所と東京医科歯科大学は、文部科学省のスーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラムにおいて、「大規模データ解析と人工知能技術によるがんの起源と多様性の解明」をテーマに共同研究を進めています。
(出典:SDGsへの取り組み : 富士通)

この共同開発では、AIを用いて新たなガンのメカニズムの発見に取り組んでいます。
実際ガンの感染や浸潤や転移と遺伝子の関連性について富岳を用いて計算したところ、これまでなら数ヶ月かかるような計算がわずか一日以内で実現しました。

このように株式会社富士通はAIやコンピュータなどの技術を用いることによって、人々の健康な暮らしを守る活動を推進しています。

企業2|NECネッツエスアイ株式会社

NECネッツエスアイ株式会社では、ミャンマー市場において、携帯基地局の設置をはじめとした通信インフラ事業を中心に太陽光発電所建設など、各種のICTインフラ事業を展開しています。
現地の企業2社との合弁会社「iSGM社」を設立し、現地と連携した事業展開を図っています。

現地の通信インフラの拡大のみならず、新規雇用の産出や人材育成にも繋がるこの活動は、まさに「産業と技術革新」を推進している活動です。

企業3|東京ガス株式会社

東京ガス株式会社では「安全と防災」というマテアリティに関する2022年度までの目標として、ガス本支管耐震化率89.3%を目指しています.
2020年度時点でガス本支管耐震化率88.8%を達成しており、徐々にインフラの老朽化対策の実行を図っています。

その他にも海外液化天然ガス(LNG)インフラ事業の開発を通じたCO2削減も図っています。フィリピン共和国においては、現地企業のファーストジェン社と相互協力契約をし、浮体式LNG基地の建設を進めています。またインドネシア共和国のガス配給事業会社への出資を行うなど、グローバルな視点での取り組みを行っています。

▼その他の取り組みはこちら
【SDGs目標9】企業の取り組み事例7選|世界や日本の取り組みまで網羅

SDGs目標9の達成に向けて私たちにできること

インフラ設備についての理解を深める

みなさんは、普段使用しているインフラ設備についてどれくらい理解していますか?公共交通機関や水、電気、ガスなど私たちの生活において必要不可欠となるインフラ設備について、自分の中の理解を深めるだけでもSDGs目標9の達成に繋がります。

世界のインフラ設備について知る

次に私たちができることは、日本だけでなく海外に目を向けることです。
日本のインフラは世界各国に比べて交通インフラが発展しており、2022年に行われた調査では日本は一位を獲得しています。
しかし、SDGsというのは世界各国が協力して達成する持続可能な開発目標です。
日本だけでなく海外のSDGs目標9の状況について理解を深めることで目標の達成につながります。
引用元:観光地としての魅力 日本が初の世界1位 交通インフラなど評価 | NHK

災害復旧への募金

災害が発生した際には、一時的に今まで使用していたインフラの機能はすべてストップしてしまいます。これらが復旧するには莫大な費用を必要とします。
インフラの整備がSDGs目標9の達成につながるため、積極的に災害復旧への募金に参加してみてください。

まとめ

世界にはさまざまな環境に置かれた人々がいます。
普段私たちが何気なく使用している水道や電気などインフラがない生活を想像できるでしょうか。

国内においてもインフラ設備の老朽化などはまだまだ深刻です。

政府などの公的機関に任せるのではなく、民間企業からのこれらの課題解決に向けたアプローチをしていくことが非常に重要です。

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