豊かで快適な住まいを実現する|LIXILのSDGs

#居住#持続可能#生活#衛生 2022.11.30

この記事をSNSでシェア!

 

株式会社LIXILは、トイレやお風呂・窓などの住宅設備機器・建材製品を通して毎日の豊かで快適な暮らしを支える企業だ。
居住生活において誰もが欠かさず使用する製品を生み出すLIXILは、SDGsに対してどのように向き合っているのだろうか。

今回はコーポレートレスポンシビリティ室(CR室)の室長を務める長島様に具体的な取り組みを通してLIXILが目指す、SDGsの在り方について伺ってきた。

CR戦略を実現していくことが、SDGsにつながる

ーー自己紹介をお願いします。

長島:2019年に入社しました、長島です。環境に関して小学生の頃から興味があり、もともと外資系メーカーのシステムエンジニアとして、自動車業界の環境部門を担当し、その後、自社の環境推進の部署を経て、LIXILに入社しました。

ーー社内のサステナビリティを担う、コーポレートレスポンシビリティ室はいつからあるのですか?

長島:LIXILの合併前から存在する、歴史のある部署です。LIXILは2011年に5社が統合し、現在の形になりました。

統合前から各社で社会貢献活動をしており、統合後に今のコーポレートレスポンシビリティ室ができました。現在の形になった2016年には、LIXILが事業を通して社会に貢献していくためのコーポレート・レスポンシビリティ(CR)戦略を打ち出しました。

ーーCR戦略を全社で推進していくにあたり、委員会の開催などはありますか?

長島:現在、コーポレートガバナンス・コード* に沿って体制を作っており、CR委員会を年4回開催しています。執行役を中心に参加し、CR戦略の進捗状況や今後の方向性について議論しています。

コーポレートガバナンス・コード*:上場企業が行う企業統治(コーポレートガバナンス)においてガイドラインとして参照すべき原則・指針を示したもの。
【引用:コーポレートガバナンス・コード | 用語解説 | 野村総合研究所(NRI)

推進体制

 

ーーCR戦略はどのような議論を経て決められたのでしょうか。

長島:2015年から執行役も含めて、世界の社会課題を見つめ直し、「LIXILが影響を与えられることは何か」ということを深く議論しました。議論では、世界的に重要かつ緊急性が高い課題であるという観点から、グローバルな衛生課題の解決・水の保全と環境保護・多様性の尊重の3つの優先取り組み分野を選びました。

優先取り組み分野を選ぶにあたって、さまざまなグローバルスタンダードや世界のトレンドを参考にしました。その中で参考にしたものの1つがSDGsです。

2015年はSDGsが採択された年でもあるため、最近の流行としてSDGsに取り組んでいるわけではなく、採択時からCR戦略の参考としていました。

つまり、CR戦略を実現していくことがそのままSDGsへの貢献に繋がっていくと考えて、推進しています。

ーーCR戦略について、どのように捉えられていますか?

長島:CR戦略は、会社の存在意義である「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」という「LIXIL’s Purpose」を実現するための重要な手段の一つであると考えています。
社会にLIXILが存在する意味をCR戦略を通して体現しています。

SDGsがLIXILと消費者をつないでくれる

ーー社内コミュニケーションで工夫している取り組みはありますか?

長島:全国の小学校を従業員が訪問し、子どもたちに暮らしにまつわる知識をお伝えする出前授業を行っています。たとえば、トイレ・水・家の断熱・ユニバーサルデザイン・製品の安全をテーマとしています。

授業を子どもたちに行うためには、自分自身で教えるための勉強をすることになりますよね。「伝えるために学ぶ」なかで社員の知識が増えるだけではなく、子どもたちの反応を身近に感じ、自分自身の仕事に誇りを持てるようにもなります。

現時点でも、従業員のCRへの関心が非常に高くなっており、その点もLIXILの強みだと感じています。

ーー「LIXIL × SDGs NEXT STAGE」をはじめとして、社外発信の工夫も魅力に感じています。社外発信に注力したきっかけはありますか?

長島:消費者への認知度を高めていきたいと考えたことがきっかけです。

もともと投資家や株主向けの情報開示は行っていたため、法人の方にはLIXILの幅広い活動についてお褒めいただく機会がありました。その一方で、消費者の方の活動への認知度は未だに少ないのではないかと感じていたのです。

近年、SDGsに対する関心も高まっていることから、SDGsを消費者の方とのコミュニケーションの媒体とし、LIXILを知るきっかけにしてもらうため「LIXIL ×SDGs NEXT STAGE」もはじめました。

トイレへのアクセスは基本的人権。事業として暮らしを支える

ーーCR戦略のひとつである「グローバルな衛生課題の解決」の取り組みについて、具体的にどのような取り組みをなさっていますか?

長島:SDGsの目標6「すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」を解決していく取り組みを進めています。

目標6の内容をみると、多くの人は飲み水の衛生を最初にイメージするのではないでしょうか。ですが、実はトイレと手洗いも人の命に直結する非常に重要な課題であり、世界で17億人が安全で衛生的なトイレがない環境にあるんです。

また、23億人が家庭に手洗い設備がないという状況にあります。

この課題に対してソリューションを提供しているのが衛生課題の分野です。

ーートイレが安全ではなく、不衛生という状況は、そのほかの問題にも繋がっていきますよね。

長島:その通りです。トイレが安全で衛生的ではないというだけで、子どもが下痢性疾患にかかって亡くなってしまうこともあります。

また、そういったトイレが女性や子どもの性的暴行被害の現場になる危険性もあります。

教育の面では、学校にトイレがないことで生理が来た際に、トイレに行くことができず退学してしまうこともあるそうです。

ーートイレに関して、製品開発などはあるのでしょうか?

長島:2013年に「SATOトイレシステム」というトイレを開発しました。開発途上国では、汲み取り式のトイレや地面に穴を堀っただけのトイレ、屋外で排泄をしている方々がまだまだ多い現状があります。

「SATO」の初代モデルは和式トイレのような形で、下水道には繋がっておらず部品をはめるだけでタンクに繋がるため取り付けも簡単です。

開発途上国向け簡易式トイレシステム「SATO」製品イメージ

ーー事業として展開しているのでしょうか?

長島:チャリティーや寄付ではなく、事業として展開しています。

現地のプラスチックメーカーや個人が製造・輸送などを担当し、SATO事業部の従業員も世界中で広めており、最新の数字では世界で45カ国・650万台以上が出荷されています。(2022年6月時点)

ーーCR戦略の「環境」についてはどのような取り組みを進めていますか?

長島:環境といってもとても幅広いですが、LIXILでは住宅設備や水回りの製品等を製造しているので、これらに関係の深い「気候変動対策を通じた緩和と適応水の持続可能性の追求資源の循環利用を促進」の3つの分野に力を入れています。

ーー具体的に製品などを通した取り組みはありますか?

長島:例えば、住宅の断熱に力を入れています。

CO2の削減というと、交通手段の工夫や家電の節電についてイメージすると思います。それ以外にも実は、住宅の断熱によってエネルギーの消費を大きく抑えることができるんです。

実際にLIXILには、住宅の断熱性能を高める製品があります。

窓などの開口部を二重や三重にする等によって、熱が出入りしにくくなります。また、夏場は窓の外に外付けの日よけをつけることで熱が入ってこなくなります。

トリプルガラスの高性能ハイブリッド窓「TW」施工イメージ

外付け日よけ「スタイルシェード」施工イメージ

ひとりにいい、みんなにいい、ずっといい、LIXILのユニバーサルデザイン

ーー最後に、CR戦略の一つである「多様性の尊重」について、会社としてはどのようなことを目指されていますか?

長島:多様性に関しても多くの取り組みがありますが、従業員自体の多様性を高める活動を大切にしています。

多様性のある従業員が色々な意見を持って生き生きと働けるような会社にしていくことで、多様な消費者の方々のニーズにお応えしようというのが会社の目指す方向です。

ーー具体的な取り組みはありますか?

長島:ユニバーサルデザイン*が代表的な取り組みです。弊社が扱う商品にもユニバーサルデザインコンセプトに基づいた製品が多数存在します。

新しい事例としては、「KINUAMI U」という製品です。通常はシャワーとして使えますし、ハンドルを操作して石鹸モードに変えるときめ細かい泡が肌に広がります。自分で泡立てをしなくてよく、やさしくなでるだけで洗い流せるため体を洗う作業が楽になります。

実は、「KINUAMI U」は介護業界からも喜ばれている商品なんです。介護施設で利用者の方の体を職員が洗う際に、ボディーソープを泡立てる作業がいらなくなり、入浴の介助がやりやすくなる点や、利用者側としても泡で体が包まれることで肌を見られにくくなるという良い点があります。

*ユニバーサルデザイン
年齢・性別・文化・身体の状況など、人々が持つさまざまな個性や違いにかかわらず、最初から誰もが利用しやすく、暮らしやすい社会となるよう、まちや建物・もの・しくみ・サービスなどを提供していこうとする考え方のこと。
【引用】神戸市:ユニバーサルデザインとは?

介助者の作業負担を軽減する泡シャワー「KINUAMI U」

ーーあらゆる方が使いやすいという点で、ユニバーサルデザインを体現していますね。

長島:LIXILではユニバーサルデザインについて、「ひとりにいい、みんなにいい、ずっといい」というコンセプトを持っています。

つまり、障がいのある方に専用の製品を作るのではなく、障がいのない方もご高齢の方も、年齢や性別・言語に関係なく、誰もが使いやすい製品を作ろうとしています。

LIXILユニバーサルデザインコンセプト

ーー今後の展望について教えてください。

長島:住宅におけるSDGsについて、より多くの消費者の方に知ってもらいたいと考えています。

そのためにも、各分野ごとに掲げている2030年・2050年に向けた目標を、ビジネスの力を活かして進めていきたいと思っています。

さいごに

日々の生活に欠かせない存在だからこそ、「事業そのものを広げていくことがSDGsに繋がっていく」というメッセージに共感した。

消費者一人ひとりの使いやすさを大切にしつつ、それがあらゆる人の使いやすさに繋がりやすいようにという想いが込められた製品にLIXILの温かさを感じた。

今回のお話を伺って、消費者が実際にショールームに足を運んで、LIXILの製品に込めた想いを知ることもSDGsに繋がるのではないだろうか。暮らしで社会を変える最初の一歩として、あらゆる製品の魅力を聞きにいってみようと思う。

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    新着記事

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ

    共感力とアントレプレナーシップが重要|国際協力に求められる力

    「ただのレクリエーション施設ではない」すみだ水族館が追い求める「水族館の使命」とSDGsに向けたアクション

    消費者の選択が世界を変える。何気ない日々の選択が地球を守る世界を目指して。ーー環境活動家 露木志奈

    これからPRの鍵はひとりよがりにならないこと|サニーサイドアップがPRを超えて取り組むソーシャルグッド

    1000トンの廃棄バナナをゼロに|ドールのもったいないバナナプロジェクト

    「労働力ではなく生活者」|外国人の受け入れは「生活者視点での制度づくりが鍵」