【更新日:2022年7月13日 by 三浦莉奈】
スキンケア用品などの化粧品事業やエステ事業を展開する株式会社ポーラ(以下、ポーラ)は「2029年ビジョン」を設定するなど、積極的にSDGsに取り組んでいる企業だ。
ポーラは、化粧品事業を通し、どのような切り口で持続可能な社会を目指しているのだろうか。
今回はTB営業企画の駒氏(2021年当時)と馬庭氏を取材した。具体的なSDGsへの施策などを伺い、実現したい社会への思いを探る。
1対1の繋がりが原点|ポーラのSDGs
ーー自己紹介をお願いします。
駒:ポーラTB営業企画の駒と申します。本日はよろしくお願いします。2006年に入社し、トータルビューティー事業に15年間関わってきました。
ポーラは創業から訪問販売業を展開していますが、そこからトータルビューティ事業に名前が変わり、訪問だけでなく店舗を中心とした事業も行っています。現在、ポーラと委託販売契約を結び個人事業主として活躍する販売員・ビューティーディレクターが全国に約33,000人います。
入社してから15年間、現場でお客様と1対1で接客する中で、ポーラのDNAを感じながらキャリアを積んできました。2018年からは本部に移り、全体の営業設計を行いながらSDGsの取り組みも行っています。
馬庭:TB営業企画部の馬庭と申します。本日はよろしくおねがいします。
2019年に入社し、3年目になるのですが、SDGs TIMESという社員とビジネスパートナーであるビューティーディレクターに向けた媒体の運営に関わらせていただいています。全国のショップオーナー様に取材しながらSDGsについて発信しています。
ーーポーラのサステナビリティビジョンやミッションなどについて教えて下さい。
駒:ポーラは2020年6月にサステナビリティ方針を発表しました。2029年に向けて、経済や社会、環境の切り口で、注力するSDGsの9つの目標を策定しました。
ポーラはビジョンとして「私と社会の可能性を感じられる、つながりであふれる社会へ。」を掲げています。このビジョンに向けたサステナビリティの行動指針が「We Care More.」です。「We Care More.」はポーラで働く全員が社会を良くしていくために必要な言葉です。
ーー創業精神にもあるように人、社会、地球のすべてをケアすることを大切にしているのですね。
駒:ポーラの事業は、創業者の鈴木忍が、荒れた妻の手をケアしてあげたいという思いからハンドクリームをつくり、それを量り売りしたところから始まっています。それが訪問販売事業に移っていき、今のポーラの事業に変化しました。
原点は人と人との1対1の繋がりです。この原点を中心に、人の可能性、人の可能性を信じる人が社会で繋がっていき、環境にも貢献していく。この原点を大切にすることが私たちポーラの考え方の根本にあると考えています。SDGsの「誰一人取り残さない」という考え方との親和性がとても高いと感じています。
ーーどのような体制でSDGsを推進していますか?
駒:2021年1月にサステナビリティ推進室という社長直下の部署が設立されましたが、それ以前からSDGsを推進しています。一部のSDGsの取り組みはトータルビューティー事業が足がかりを作りつつも、サステナビリティ推進室が独自に取り組みも開始している形です。
2015年にSDGsが採択されてからポーラの中でもSDGsについて勉強する人が徐々に増え始めました。そんな中、2019年に具体的にこんなことをやっていきたいという話が生まれ、アクションを取り始めました。
2020年の9月にSDGs TIMESを立ち上げ、トータルビューティ事業をSDGsの切り口で見たときに、どんな活動があるのかを発信していくことで、SDGsに対する理解や認知を向上させるために活動を開始しています。
ーーSDGs TIMESが最初のアクションと伺いましたが、SDGsの取り組みを発信から始めた理由は何でしょうか?
駒:長い現場時代を通して、森を再建したり、バリアフリーのサロンを作ろうとするなど、SDGsに通ずる取り組みを行っている人が多くいることはわかっていました。
SDGsは魔法の言葉ではなく、標語として広げたいわけでもありません。SDGsにポーラならではの文脈をつけることによって、取り組みがさらに広がっていくと考えました。ショップオーナーのみなさんの思想などを根本を理解して共感してもらう工夫が1番大切だと思ったんです。
馬庭:今は私がSDGs TIMESを引き継いでいます。新型コロナウイルスの関係で、取材はオンラインが中心なのですが、リアルで会わなくてもショップオーナーのみなさんの気持ちが伝わってきます。
SDGs TIMESの発信をきっかけに、オーナーがやりたいという要望を、どのように実現させるのかをスタッフが考え、地域との包括連携協定を結ぶことに至るなど、想いを重ねていくことを大切にしています。
女性活躍が地域共創にもつながる|ポーラのSDGsの取り組み
ーーその他にポーラ全体としてはSDGs達成に向けて、具体的にはどのような取り組みがありますか?
駒:例えば、ポーラは例年3月8日の国際女性デーに女性や地域の可能性を広げるためにさまざまな取り組みを開始しています。例えば2021年は、シワ改善ブランドの「リンクルショット」の売上の一部を女性支援団体へ寄付するなどの取り組みを行う他、新聞広告でも大きくメッセージを打ち出しました。アクションとともにメッセージの発信も重視しています。
馬庭:そのほかには「幸せ研究」というプロジェクトが立ち上がっています。幸福学の専門家の方とともに、従業員やビジネスパートナーとその家族、お客さま、ステークホルダーなどのウェルビーイングを考えていくプロジェクトです。
研究所が設立されたのではなく、社内で組織が立ち上がり、全社横断でメンバーが参画し、社長の及川が研究所長を担っています。また、ジェンダー平等や、地域格差の解消などは及川を筆頭に全社で注力している部分です。
ーー地域格差の解消やジェンダー平等実現に向けてはどのように取り組んでいくのでしょうか。
駒:ポーラは全国に個人事業主のショップオーナーを抱えていますが、今後は月商500万円以上のショップオーナーを1200人まで増やしていきたいと考えています。ポーラのショップオーナーは95%以上が女性なのですが、個としても独立し、ショップが各ショップオーナーの自己表現の場となり、自信を持って活躍していける組織を拡大していきたいと思っています。
この取り組みがゆくゆくは地方共創にも繋がっていくと考えています。さまざまなショップオーナーが地域のビジネスリーダーとして輝くことで、社会の一つのロールモデルとなると考えています。個人事業主として各地域で地に足をつけ、活躍できる人を増やしていきたいと考えています。
ーー社内ではジェンダー平等に向けた取り組みはありますか?
馬庭:ジェンダー平等はサステナビリティ方針でも特に力を入れています。管理職や役員など、性別に囚われずリーダーを登用し、抜擢人事も行いながら改革を進めています。
休職期間を考慮せずに昇格試験を実施するなど制度の改革も進め、女性管理職比率も30%以上になっています。
ーー今後の展望を教えて下さい。
駒:身近な人や地域が持つ課題を何とかしたいという思いがアクションを引き出し、アクションから共感が生まれて、ポーラがその地になくてはならない存在になっていくことが大きな目標です。
その結果として地域社会も発展していく、女性活躍と地域共創の好循環をさらに加速させていきたいです。2029年には、地域とともに好循環を生み出している企業として認知されるように取り組んでいきたいと考えています。
馬庭:入社してからの3年間の中で、世の中が変わったと感じています。それと同時にポーラも変わり、前進してきたと思っています。
今まで以上にスピード感をもって、さらに「We Care More.」のMoreの部分を広げていくことに今後も注力していきたいと感じています。
さいごに
今回の取材を通して、いくつかのキーワードが出てきたが、すべてに、ポーラに関わる全員で社会をよりよくしていこうという意味が込められていると感じた。
その最たるものが、地域共創ではないだろうか。「共」に「生」きるだけでなく、「共」に未来を「創」っていく。
今後のポーラの活躍に目が離せない。