従業員のモチベーションを高める、理想実業の人事制度改革

#人事#働きやすい環境#女性#子ども#就労支援#飲食 2022.10.17

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大阪・道頓堀に4坪9畳からスタートした、どうとんぼり神座は、今では1店舗あたり1日600杯以上を売り上げる人気店だ。

創業当時からの看板メニュー「おいしいラーメン」はフレンチレストランのオーナーシェフを勤められていた創業者、布施正人氏が生み出した秘伝のスープを使った伝説のラーメンである。

現在は東京・関西を中心に68店舗を展開しており、女性が1人で入っても、安心して食事ができるような明るく清潔な店内を保っている。

今回は株式会社理想実業の経営企画室部長を務められている西部拓平氏を取材した。本格的に始動したSDGsプロジェクトと、スタッフに寄り添った人事制度改革を伺った。

日本一のラーメンチェーンを目指して

ーー自己紹介をお願いします。

西部:株式会社理想実業の経営企画室の部長を務めています、西部と申します。

これまで関東を中心に仕事をしていたのですが、2005年にゆかりのある大阪に戻ってきて、2021年の8月から理想実業の経営計画室で仕事をしています。

ーー株式会社理想実業について教えてください。

西部:創業者の布施正人が1986年、道頓堀に4坪9席で始めたお店です。もともとはフレンチのシェフ志望で、修行をするために東京に上京しました。しかし、大阪の道頓堀のあるラーメンチェーンの人だかりを見て、フレンチは修行に何年も時間がかかるし、お店を構えても行列ができるような店舗はなかなかない。ラーメンを極めれば、行列ができる店舗になるのではないかと思い、縁のある奈良でラーメン作りを始めました。

フレンチで修行したノウハウを活かしてスープ作りに専念しながら、最終的には幼児や小学生低学年などの、小さなお子さんの口にも合う味わいを目指していました。子どもや女性に優しく、美味しいと感じるラーメンを作ったところがどうとんぼり神座最大の魅力ですね。また、外から見て明るく清潔で女性が1人でも安心して入れるような店を目指し実現したのが一番の強みだと思っています。

ーー理想実業が掲げるビジョンについて教えてください。

西部:日本一・世界一のラーメンチェーン店になることです。
ラーメン市場のシェアは、ナンバー1~3の企業が各々2~3%を占めています。一般的な他の業界では、トップの企業だけで少なくとも5%のシェアを獲得しているため、ラーメンチェーン店はまだナンバー1が決まっていない市場だと我々は考えています。

従って、業界で5%以上、できれば10%のシェアを獲得し、売上1000億円を目指して参ります。

4つの柱 SDGsプロジェクトをキックオフ

ーーいつ頃から、どのような体制でSDGsを推進していますか。

西部:今までは各部署が個別にSDGsに取り組んでいたのですが、2022年の7月下旬にSDGsを推進するにあたって、プロジェクトをキックオフしました。

具体的には、4つの柱で考えています。

1つ目は、子ども食堂です。今回は子どもレストランという形で2022年の7月、8月に奈良県の養護施設の子どもたちに、どうとんぼり神座の柏木店と大和高田店に来ていただき、ラーメンをお腹いっぱい食べていただくイベントを開催しました。2022年の秋か冬に大阪府でも開催する予定です。

2つ目は、ラーメンチケットの配布です。世帯収入200万円以下の生活に困っている方々が登録しているNPO法人キッズドアを通して、1425世帯にラーメンチケットを配布しています。ラーメンセットなど、アルコール類を除くメニューをなんでも食べていただけるチケットです。どうとんぼり神座のラーメンは全体的に野菜がたっぷりですので、ヘルシーで食べやすく、お子様からお年寄りまで一緒に食べて頂いています。

3つ目は、職業支援・職業体験です。高校生を中心にインターンシップとして、店舗での受け入れを行っています。今後はハンディキャップがある方やシングルマザーの方の職業支援や職業体験を実施していきたいと考えております。

最後はフードロスの削減です。私たちはプロデュースカンパニーという生産会社、生産工場を所有してます。これらの会社・工場でもSDGsにしっかり取り組み、地域と連携する形でプロジェクトを進めています。

ーー子どもたちに対する取り組みが多いですね。

西部:私たちは、支援を必要としている子供たちに支援を届けたいと思っています。

食事も満足に食べることができない子供がたくさんいると聞いていますし、社会的にそういった子供たちに支援が届いていないのが現状です。ここには、困っている人が、困っていますと言いにくい社会の仕組みがあるのではないかと思っています。そのため、最終的には、どうとんぼり神座の店舗自体が子ども食堂になりたいと考えています。

お腹が空いている子どもが、「お腹が空いて困っているんです。ラーメンが食べたいです。」と言うと、「いいよ、いらっしゃい。」と、いつでも歓迎して、美味しいラーメンをお腹いっぱい食べてもらって、帰っていく。代表は、子どもたちがまた明日から頑張っていけるようなラーメンチェーンにしていきたいと考えています。

財務的にきちんとした基盤を作った上でこの夢を実現したいですし、実現するためには、私たちが掲げているビジョンである、業界ナンバー1を達成することが必要だと考えています。

人事制度改革から考える将来への展望

ーー人事制度改革について伺いたいと思います。具体的にどのような取り組みをしていますか。

西部:2021年に新人事制度を導入しました。

新人事制度では、プロフェッショナル志向とマネージャー志向という2つのキャリアタイプの選択制度を導入しています。例えば、仕事のためだったら住居を移動してもいいという従業員もいますし、一方で転勤は難しい人もいます。転勤を望んでいない人に転勤を命じることがないようにこの選択制度を設けています。

また、評価制度も導入しています。店舗ごとに評価にばらつきがでないように、アルバイト、正社員問わず、カルテを使用しています。カルテは、各役職ごとに分かれておりネクタイの色に応じて一番下からブルー、イエロー、グリーン、オレンジ、レッドとなっています。オレンジは基本的に店長です。カルテを作成することによって、各役職に求められているスキルや、何ができないといけないのかが明確化できますし、評価の客観性を高めることができます。

さらにパートやアルバイトの方々を増やしていくこと、働きやすい環境を作るために女性活躍プロジェクトを発足させています。今までは店舗周りが男性目線で作られていました。そのため、お湯を沸かす寸胴の軽量化や調理場の台の高さを少し低くするなど、バックオフィスにいる女性社員と現役で店舗で働いている女性店長とで意見交換をしながら新たな基準を作っています。

ーーシングルマザーへの働き方支援を教えてください。

西部:シングルマザー協会の方と協力して取り組みを進めております。現在は、会員の方に向けたメルマガでどうとんぼり神座の仕事内容などを紹介しています。今後は実際に店舗で働く姿の動画をどうとんぼり神座で作りシングルマザーの方々に見て頂く予定です。

子どもの教育にかかる助成金などの兼ね合いで、一旦は収入を200万円程度にとどめてキャリアを追及しない。その後子どもが18歳になると助成金がもらえなくなり、収入を増やしたいがキャリアを追及していない為、収入を増やせなくて困るという現象があり、シングルマザー協会側もこの問題に頭を抱えているというお話を伺っています。今後はこうした問題にに対応できるように準社員的な制度を作っていこうと考えています。ある一定の期間に関しては時間を抑えながらも、店長や同程度の役職になれるるようにきちんとキャリア形成していただき、お子さんが18歳になった時に、今までの経験が礎になるような形で活躍できる制度を作っていこうと話を進めています。

ーー社内教育でこだわっているポイントはありますか。

西部:ドリームブックを導入しているところですね。

ドリームブックとは、面談を通しながら、1人ひとりの夢をロードマップにしていくことです。自らが主体者となり、目標に向かって行動することでモチベーションを維持できるため、ドリームブックを導入しています。ドリームブックを作るだけだと、作って満足してしまう場合もあるので、定期的に教育係と面談をし、予定通り進んでいるのかを確認したり、ロードマップを修正したりしています。自分の夢をしっかり成し遂げられる人をどんどん増やしていきたいと思っておりますので、ある意味でドリームブックは会社自体の達成目標だと思っています。

ーーパートやアルバイトの方々でも店長になれるのでしょうか。

西部:今までは、基本的に正社員でないと店長になれないという縛りがありましたが、今後はこの縛りを一切なくす方向で考えています。パートやアルバイトの方でも店長になれるし、さらにその上を目指すことも可能という形にどんどん変えていきたいですね。

正社員しか店長になれないのは、アルバイトの方や大学生の方には勿体無いように感じます。アルバイトでいろいろな経験を積んで、社会に出るべきだと思いますし、また、学生の視点からでしか分からない気づきやアイデアを出していただけると我々としても勉強になります。ぜひいろいろな方にチャレンジしていただきたいです。

ーー柔軟性を持って会社を変えられているんですね。

西部:そうですね。創業時代からいわゆる男性社会的、体育会系的な1人で店舗を仕切っていく店長像というものがあったと思います。こうした伝統も、良いものは残そうと思っていますが、ラーメンチェーン店ナンバー1を目指したとき、伝統にこだわるのではなく時代の流れなどに合わせて柔軟に変えて行きたいと思います。女性やお子さん等のお客様に心地よい店舗を目指す上で変えていくべき事は、勇気をもって変えて行く考えです。

ーーこれからのSDGs推進の戦略、展望について教えてください。

西部:困っている子どもたちへの支援を充実させていきたいです。

2022年の7月、8月に奈良県の養護施設の子どもたちをどうとんぼり神座の店舗に招待し「おいしいラーメン」を食べていただくイベントを行いました。

私も立ち合ったのですが、子どもたちがお腹いっぱい食べている姿や「おいしい」と笑顔になる姿を見て、とても温かい気持ちになりました。

今後はNPO法人の方やいろいろな方の知見を拝借しながら、子どもたちの支援を充実させ、この国の未来を担っていく子供たちが少しでも笑顔になって、日本が活気を取り戻していってほしいと考えています。

さいごに

4つの柱を中心にSDGsを進め、食を通じた取り組みの中で人事制度を核に変革を行っている理想実業。

子ども食堂は「ラーメンを食べて元気になってほしい」という強い思いが形となってできたプログラムである。これからも多くの子どもたちが、どうとんぼり神座のラーメンを食べて笑顔になってほしい。

ひとりひとりの夢に寄り添いながら、目標を達成するために始まったドリームマップ。夢に向かって一生懸命取り組んでいるスタッフを増やしていきたいという理想実業の想いは、会社だけではなく社会全体にとって大きな変化をもたらすだろう。

これからも理想実業のSDGsプロジェクトと斬新な人事制度改革に注目していきたい。

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