【更新日:2023年6月6日 by 中安淳平】
ハースト婦人画報社は「いつの時代も変わらない 『本物・真実・美しいもの』を世に伝えること。 価値あるものを発掘し、時代に応じた新しいコンテンツ、ソリューションを提供すること」を企業理念とし、1905年に創刊した『婦人画報』をはじめ、『ELLE(エル)』、『25ans(ヴァンサンカン)』、『Harper’s BAZAAR(ハーパーズ バザー)』、『MEN’S CLUB(メンズクラブ)』などを中心とする、ファッション、カルチャー、デザイン、フード、ウエディングなどに関する多数のデジタルメディアの運営と雑誌の発行を手掛けています。
今回は、経営管理本部兼製作部ジェネラルマネージャーの山本大輔氏と社長室サステナビリティマネージャーの大竹紘子氏に企業理念やSDGsに関する具体的な取り組みについて伺いました。
ドラスティックな改革と業界に先駆けた取り組み
ー自己紹介をお願いします
山本:経営管理本部兼製作部ジェネラルマネージャーの山本大輔です。私は、印刷業界が従来の製版からデジタル製版へ移行する転換期の第一号生でした。2004年に当社に入社し、画像処理の課長、製作部の副部長を経て2019年から現職を務めています。
大竹:社長室サステナビリティマネージャーの大竹紘子です。以前は、ファッション業界で働いていました。生産MDとして生産現場を視察する中で環境コンシャスが芽生え、アパレル会社の中でも、サステナビリティ部門が強い会社に転職しました。その後、ご縁があり、2022年の7月ハースト婦人画報社に入社しました。
ーサステナビリティ3本柱について教えてください
大竹:1つ目が、Educating the Public(エデュケーティング・パブリック)です。メディア運営を通して読者・オーディエンスにポジティブな行動変容を促すことを指します。
2つ目は、Taking Actions(テイキング・アクションズ)。私たち自身が行動を取って行くことで自社の活動もより、持続可能なものにしていく、 私たち自身がきちんと行動で示していくことです。
3つ目は、Offering B2B Solutions(オファーリング・B2Bソリューションズ)。ビジネスパートナーに環境課題や社会課題の解決に向けたソリューションを提供していきたいと考えています。
ーそれぞれの指針について具体的な取り組みについてお聞かせください
大竹:1つ目のEducating the Publicは、創業当時から私たちは女性活躍のみならず、 環境・社会課題にも注目して情報発信をしてきました。『ELLE』では2007年から環境を特集する号「グリーンイシュー」を、『25ans(ヴァンサンカン)』では2010年から「サステナ白書」という別冊を毎年1月に発行していたりと、10年以上前からサステナビリティに力を入れています。私たちは、ライフスタイルメディアとして、ポジティブなトーンで情報を伝えていくことによって、読者の皆さんに環境・社会課題に関心を持っていただけたらと考えています。
2つ目のTaking Actionsに関しては、かなり大きな取り組みから小さな取り組みまであります。私たちは気候変動の中でも特に脱炭素に力を入れていこうと考えておりまして、そのうちの1つが全定期刊行誌への再生可能エネルギーの導入です。昨年の夏に会社全体のビジネスでどのくらい温室効果ガスが出ているのかを算定しました。この算定結果をまず1つの大きな柱として、脱炭素の取り組みを推し進めるスタートラインに立ちました。また、脱プラスチックも掲げていまして、製作部では印刷や配送に関わるプラスチックの使用量を減らすことに2019年から取り組んでいて、約80%のプラスチック量を減らしています。
山本:今までは表紙などを薄いサランラップみたいなもので加工するPP加工をしていました。現在は、より環境負荷の少ないプレス加工を採用しています。当然品質はキープしつつ、多方面に配慮しながらの移行はすごく難しかったですね。
大竹:デジタルトランスフォーメーションの一環でもあるんですけれども、2019年に17台あったコピー機を2台まで減らしたり、出張方針として国内では鉄道で4.5時間以上かかる場所以外は原則飛行機を使わないという方針をたてたり、 多岐に渡っています。他にも、オフィスのリフレッシュコーナーに設置しているコーヒーがフェアトレードであったり、紙製のティーパックにしたり、オフィスで私たちが普段使うものも、環境に配慮をされてるものが用意されています。
ーグリーン電力での印刷に関して教えてください
山本:去年の7月に、『25ans(ヴァンサンカン)』で再生エネルギーの特集があったんですが、 その時に誌面の企画だけじゃなくて雑誌自体も何かできないかを検討する中で、グリーン電力で印刷をするという話が上がりました。まずは7月号をトライアルとして実施すべく、2,3ヶ月かけて様々な準備をし、再生エネルギーを使って印刷・製本しました。その後、全誌を再生エネルギーでの印刷・製本に切り替えるには1年ぐらいかかりました。全14誌もあり、それぞれの媒体で印刷を発注する企業さんも違ったりするので、再生エネルギーを導入する過程に一貫性を持たせる為の確認などに気を付けました。
全誌でのグリーン電力の導入について、社内においては、そこまで驚きはなかったですね。元々SDGsであったり、環境への意識や興味がある人が多かったので、「とうとううちの会社もここまで来たか」という感じでしたね。
ドミノの様なポジティブな連鎖へ
ー大きな改革ができる要因について教えてください
山本:反対意見があっても、話しあうと「そうだよね、 そういう風にやんなきゃいけないよね」という方向にいきます。やはり環境問題は差し迫っている問題ですし、次の世代に最低限今の環境を バトンタッチしなければいけないと思うので、まずはできるところからやってみようという雰囲気が当社にはあります。1つ案が出れば他にもいろいろな案が出てきて、ポジティブな連鎖が続くのがこの会社の特徴だと思います。
ーメディアとしてサステナビリティに関する取り組みを行うことや、発信していく意義を教えてください
大竹:私たちの存在意義や、私たち自身の強みは、情報を発信することだと思います。 ポジティブなトーンで発信することによって、読者の皆様に考えるきっかけや、気づきを発信していけるんじゃないかなと思っています。読者・オーディエンスの意識が変わることによって、社会や環境が変わっていくので、当社の取り組んでいることは本当に大きな意味があることだと思います。また、 当社は「感動を編集して時代を創る」というミッションを掲げているので、サステナブルな社会への移行に貢献することが、当社の責任だという風にも捉えています。
環境負荷の見える化で判断材料に
ーこれからのサステナビリティ推進の戦略、展望について教えてください
大竹:大きく2つビジョンがあります。まず1つ目は、2026年までにクライアント様が広告やイベントを依頼くださる時に、その宣伝活動で排出される温室効果ガスを最終的には0にできるような広告プランを提供することです。これがすなわち当社のサステナビリティ3本目の柱Offering B2B Solutionsで、宣伝活動の各過程をきちんと算定をして、削減できるところは削減をするというソリューションを提供していきたいと思ってます。もうひとつのこの先の大きな夢は、例えば、食品のカロリー表示のように環境負荷の数値を見て、皆さんが「あ、こんなに環境負荷が低いイベントがあるんだ、行ってみようかな」とか、もしくは雑誌や商品を買う時に「この雑誌・商品を作るのにどれだけの環境負荷が出ているのだろう」と購買行動を判断をする際の1つの基準にして自分事になるように情報提供や発信をできればいいなと思っています。
最後に
今回の取材を通して、社員の方一人一人が環境や社会課題を自分事と考えていることがわかりました。歴史ある大きな企業で、こんなにも現場の声を尊重している事が社内のSDGsを推し進めている要因なのではないでしょうか。一人一人の声を尊重し、成長を続けているハースト婦人画報社は次にどのような一歩を踏み出すのでしょう。これからの快進撃に目が離せません。
SDGsCONNECTのライターとして活動しています!
四葉のクローバー探しが得意です
多くの方に興味を持っていただけるような記事を書けるように頑張ります!