食品ロスによる環境への問題点-食品ロスの問題点、原因、対策を紹介

#持続可能#環境#食品#食品ロス#食料の廃棄 2022.12.27

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【更新日:2022年12月27日 by 大川 智也

食品ロスが環境に与えている問題点は年々増えています。

世界でも問題となっている食品ロスには、さまざまな原因があります。食品ロスが環境に与えている問題とは何なのでしょうか。

この記事では、食品ロスに関する環境問題・社会問題、食品ロスの原因や対策を徹底解説していきます。

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【この記事でわかること】

食品ロスとは

「食品ロス」とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことを指します。

食品ロスを大きく分けると、二つに分けることができます。一つ目は、スーパーマーケットなどで発生する売れ残り、食べ残し、規格外品などの「事業系食品ロス」。二つ目は家庭で作った料理の残りや、食べられる部分まで捨ててしまう「家庭系食品ロス」です。

世界と日本の食品ロスの現状

日々食べられるのに捨てられてしまう食品の量は世界的な問題になっています。世界中で、年間約13億トンの食品が廃棄されています。

日本も例外ではなく、年間で612万トンの食品が捨てられています。この量を1人分に換算すると1日でご飯茶碗一杯分の量を捨てていることになります。

食品ロスに関係する環境問題

食品ロスの影響で、環境に問題が出ている事例があります。食品ロス増加による影響と問題点について解説します。

地球温暖化の原因になる

食品ロスとして廃棄された食品は、飲食店や家庭などからごみとして出されます。そして最終的に廃棄物処理場に運ばれていき、焼却処分されます。焼却処分する際に発生するのが二酸化炭素です。

温室効果ガスである二酸化炭素は地球温暖化の原因の一つです。世界中で二酸化炭素排出量を減らす取り組みが進められていますが、食品ロスを廃棄することで二酸化炭素排出量は増加します。地球温暖化を止めるためにも食品ロス削減の対策をしなければなりません。

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廃棄物処理が出来なくなる

廃棄されることで焼却処分された食品ロスは、最終的に埋め立て処分場に向かいます。しかし埋め立て処分場の需要は残り20年と言われています。埋め立て処分場がなくなってしまうと、食品ロスは行先を失うのです。

資源が無駄になる

食品ロスの影響で資源が無駄になっています。ここで示す「資源」とは食品を生産する過程で使用された資源のことを指します。

米を生産する場合、成長するまでに使用された水、米を作った農家、育てた土地、運搬した費用などを資源といいます。

特に資源の中で重要視されているのが「水」です。世界で利用されている水の7割が食料を生産するために使われています。つまり、食品を捨てることで、食料を育てるまでに費やした費用や土地まで無駄にしていることと同じです。食品ロスにより、限りある資源が無駄になることで世界中で問題になっています。

食品ロスに関する社会問題

食品ロスの影響で問題が出ているのは環境だけではありません。食品ロスのによる社会問題への影響を解説していきます。

食料の不均衡による飢餓

世界で飢餓に苦しんでいる人は年々増えています。2018年には世界中で約8億2000万人いると言われています。

日本では年間約600万トン近くの食品が捨てられています。これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に行った食糧支援量の1.6倍に相当します。

日本だけでなく世界中でも同じように食品ロスが起きています。世界中で大量の食料が生産される一方で、発展途上国の飢餓は改善されていません。今後、食品ロスが増えていくほど世界の食料が無駄になり、飢餓で苦しむ人は増加します。

食品ロスが減らない限り食料格差が広がっていくのです。そのために今から私たちが食品ロスを意識して生活を見直すことが大切です。

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食糧不足に陥る可能性がある

世界の穀物生産量は毎年26億トン以上です。これは、世界中の全ての人が十分に食べられる食料が生産されていると言われています。しかし、現在飢餓に苦しんでいる人は多く、10人に1人が栄養不足です。2005年から飢餓に苦しむ人は減っていましたが、2016年から徐々に増加しています。

世界中で見ると食料は十分にありますが、地域別にみると食料が不足している地域も存在します。輸入に頼っている国や農業で生計を立てている人々は、国際市場の食料価格の変化に生活が左右されます。食料価格の高騰は家計を圧迫し、上記のような人たちを貧困に追いやるのです。食品ロスによって、食料の値段が高騰していき、より深刻な食糧不足を引き起こします。食品ロスを減らす意識を1人1人が持つことが重要です。

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家庭内食品ロスの要因3選

意外にも飲食店や事業者からの食品ロス量よりも家庭からの量の方が上回っています。

環境省による令和2年度までの食品ロス量を以下に示します。

食品ロスの発生量(単位:万トン) 事業系 家庭系 合計
令和2年度 275 247 522
令和元年度 309 261 570
平成30年度 324 276 600
平成29年度 328 284 612
平成28年度 352 291 643
平成27年度 357 289 646
平成26年度 339 282 621
平成25年度 330 302 632
平成24年度 331 312 642

令和2年度の食品ロス、522万トンのうち約47%が家庭系食品ロスです。全体でみると減少傾向ですが、それでも多くの食品ロスが発生しているのが現状です。

家庭から出る食品ロスは何が原因なのでしょうか。具体例を3つ説明していきます。

①食べ残した料理を廃棄する

食品ロスの原因の中で一番多いのが食べ残しを捨てることです。食べ残しは、家庭で食事するときにどうしても出てしまいます。しかし、家庭から出る食品ロスは全体の三割を占めているため減らすことができれば大幅な食品ロス削減につながります。

②消費期限を過ぎてしまい廃棄する

賞味期限切れや消費期限切れによって廃棄してしまう食品ロスがあります。これは「直接廃棄」と呼ばれ、食事として提供されることなく捨てられてしまいます。

直接廃棄の原因は、「食品の買いすぎ」や「消費期限を忘れてしまっている」ことです。「食品の買いすぎ」は食べきれない可能性が高く、食べられることなく捨てられ「もったいない」という状態になります。「消費期限を過ぎてしまう」場合、食材を冷蔵庫に入れたまま忘れてしまうことが多いです。冷蔵庫を開けたとき視界に入らない食材や、引き出しに入れられているものは忘れられてしまい、消費期限を過ぎてしまいます。冷蔵庫の中に忘れられている食材がないか、今一度確認することが大事です。

➂食材の過剰除去

家庭内食品ロスで一番多い原因は、食材の過剰除去です。野菜の皮むき、ヘタなどの過剰除去は家庭から出る食品ロスの半分を占めています。過剰除去とは調理の際に食べられる部分まで捨ててしまうことです。多くの人が無意識に過剰除去をしているのではないでしょうか。例えば、野菜のヘタを包丁で切った場合、ヘタと一緒に食べられる部分も切り落としてしまうと過剰除去になります。

皮を薄くむいたり、食べれないヘタの部分だけを取り除くなど、意識的に食品ロス対策をすることが大事です。

事業者食品ロスの原因4選

つづいて、事業者の食品ロスの原因について紹介します。

①製造工程の食品ロス

製造工程で発生する食品ロスは、規格外商品や商品の破損などがあげられます。規格外商品は定期的に発生してしまいますが、商品の破損は未然に防ぐことができます。商品を運ぶ際に落とさないよう気を付けることや、破損しやすい商品は丁重に扱うなど販売される前に食品ロスになってしまうことを防ぎます。

②売れ残りや破損品

スーパーなど食品を取り扱う店舗では、商品の売れ残りや商品が破損してしまった場合、店舗に並べることが困難になります。

商品が売れ残ってしまう原因の一つは、仕込みすぎてしまうことです。店内調理で提供している飲食店では、その日のうちに仕込みをしますが、一日の利用者以上に仕込んでしまうと売れ残りが発生してしまいます。これは、スーパーの商品陳列を埋めることで商品を手に取られる機会が増えるという商品を売り上げる方法ですが、陳列することを意識しすぎて、売れ残りをつくってしまいます。

また、商品を運ぶ際に落としてしまったりパッケージが汚れてしまった場合、破損してしまった商品は販売できなくなります。中の商品が無事でもパッケージが汚れてしまっただけで廃棄される食品も多いです。現在では、食品だけを別の商品に作り替えて、新たに売り出す食品ロス削減方法が進められています。

➂食品の仕込みロス

飲食店などで食品ロスとして廃棄される食品は、仕込み時点で廃棄されてしまうことがあります。

主な原因は、必要以上に仕込みすぎてしまうことです。完全予約制の飲食店でない限り一日にどれだけ必要なのか正確には予測できません。そのため、料理の過剰な仕込みが食品ロスに繋がってしまいます。

大量に食品を余らせてしまうことのないよう、天気や時間帯など人がどれだけ入るのかデータをとることで、食品ロスを減らせます。仕込みすぎてしまった場合は、野菜や果物など保存方法を徹底することで食品ロス削減に繋がります。

④3分の1ルール

日本の食品業界には、「3分の1ルール」というものがあります。

「3分の1ルール」とは、賞味期限を3分割し、最初の1/3の期限までに卸売業者や小売業者に納品する習慣のことです。次の1/3の期間では、店舗に食品が並べられ、最後の1/3の期間で余った食品は店舗から撤退します。そのため、ここで回収された食品は賞味期限まで余裕がある状態です。

このルールは、食品を新鮮で安全な状態で消費者に届ける一方で、店舗での販売期間の短縮により消費者に届かない問題が発生します。さらに賞味期限前であっても回収され、売れ残った商品は捨てられてしまいます。

食品ロス削減取り組みや食品ロスの認知が広まってきた現在は、「3分の1ルール」の影響で廃棄される食品を減らす行動が増えています。賞味期限を従来より長く作った商品や、撤去された食品を安く売ることで食品ロスを減らします。

日本の食品ロス対策3選

つづいて、日本の食品ロス対策について説明します。

①食品ロス削減促進法の施行

食品ロス削減推進法とは、正式には「食品ロス削減の推進に関する法律」で2019年10月に施行された法律です。この法律には、食品ロスの定義や食品ロスの推進、基本的な方針が記載されています。

同法律では、食品ロスに対する自治体や国の責務や目的を明記しています。法律として定めることで、食品ロスに興味を持って取り組む人やイベントなどが増加傾向です。

②食品リサイクル法の施行

食品リサイクル法とは、正式には「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」で、2000年に制定された法律です。同法律には食品ロスを削減するために、食品の廃棄を抑えて資源の再生利用に取り組む方法が記載されています。

食品関連事業者が、製造過程で発生する食品廃棄物の削減や、飼料への再生利用など食品ロスを減らすリサイクルについて書かれています。この法律をもとに事業者内で食品廃棄物を再利用する方法や廃棄そのものを出さないリサイクルの処置が必要です。

➂フードバンクの設置

フードバンクとは、寄付された食品を困窮している家庭に無償で食品を届ける活動のことです。フードバンクは食品ロスを減らし、困窮している人の支援も行える仕組みです。

フードバンクで食品を受け取れる人は、片親世帯、高齢者世帯、障がいのある方など、生活困窮者が中心です。フードバンクによっては、上記の条件に当てはまらない方でも利用できます。

日本では、フードバンクを運営している「日本フードバンク連盟」があります。日本に信頼できるフードバンクを普及するために認証団体の管理や研究を進めています。2020年時点の日本のフードバンク数は142団体です。事業者の方だけでなく一般の方が寄付できるフードバンクもあります。

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個人でできる食品ロス対策4選

つづいて、個人でできる食品ロス対策を紹介します。

①必要な食材だけを買う

食品ロスを減らすために、必要な分だけ食品を購入しましょう。

商品の安さゆえの買いすぎには注意が必要です。買い物に行く際は予め必要な食材をメモすることで、食品ロスを減らしましょう。

②正しい保存方法を知る

野菜や果物など、傷みやすい食材も適切な保存処理をすることで、1~2週間おいしさを保つことができます。「すぐ傷んでもったいない」と料理に使ってしまい、食べきれなくて食品ロスを起こす可能性があります。正しく保存をすることで、食材を長持ちさせ、最後までおいしく食べきることができます。

➂リメイク料理を活用する

どうしても料理を食べきれなかった場合、時間が経ってから食べると味が落ちてしまいがちです。そんな時は、残ったものを別の料理にリメイクするのがおすすめです。同じ料理ではなく別の料理を食べることで、飽きることなく温かい料理を美味しく食べきることができます。リメイク料理で食べ残しが減ることで、家計ロスにもつながります。

④捨てる部分を減らす

野菜には、可食部・不可食部の2つがあります。可食部は食べられる部分、不可食部は種やヘタなど食べられない部分を指します。野菜の可食部を知ることで、食べられるはずだった可食部の廃棄を防げます。

さらに不可食部や、食べられない部分を活用することもできます。ここでは「ベジブロス」を紹介します。

「ベジブロス」とは、ベジタブル(野菜)とブロス(だし汁)を組み合わせた言葉で、野菜を煮てとる出汁のことを言います。ベジブロスは、通常の出汁ではなく野菜の皮やヘタ、種などを使用した出汁です。不可食部を最大限有効活用できます。出来たベジブロスは、野菜の出汁なのでスープや鍋のベースとして使ったり、煮込み料理に使用します。普段の料理に野菜のうまみがプラスされ、食品ロスも削減できます。

まとめ

食品ロスに関する環境問題・社会問題を紹介しました。

呼びかけや家庭で意識することで食品ロスの取り組みは広がってきています。しかし、食品ロスはすぐに解決する問題ではありません。小さなことから意識して、食品ロス削減に取り組んでみてください。

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