気候変動が世界各地で猛威を振るう中、温室効果ガス削減に向けて個人や企業ができることから取り組みを行うことが重要です。
しかし、身近な取り組みと言っても何から始めれば良いのか分かりにくいですよね。
そこで今回は、温室効果ガスの影響や原因を解説した上で、個人や企業ができる具体的な取り組みを7つご紹介します。
地球温暖化の大きな要因とされる温室効果ガスを減らすために何ができるのか、一緒に考えてみましょう。
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温室効果ガスによる地球温暖化の現状
地球温暖化によって日本や世界各地ではどのような問題が起きているのでしょうか。この章では温室効果ガスによる地球温暖化について紹介します。
二酸化炭素やメタンといった「温室効果ガス」の増加が、地球の気温を上昇させています。中でも産業革命以降、私たちの経済活動や普段の生活からは多くの温室効果ガスが排出されています。その結果、産業革命以前と比べ大気中のCO2濃度は40%増加しました。
また地球温暖化も加速しており、IPCCの第6次評価報告書によると、世界平均気温は工業化前と比べ1.09℃上昇(2011年〜2020年)しました。
このような地球温暖化の影響を受け、世界では海面上昇や砂漠化、また生態系への影響、食料への影響など将来に関わる課題が懸念されています。四方が海に囲まれた日本では、温暖化による海面上昇が問題となっています。気象庁によると、2020年の日本沿岸の平均海面水位は平年と比べ8.7cm高くなっており、これは統計を開始した1906年以降も高い記録となりました。
海面上昇は他にも高潮や塩害といった被害を招き、私たちの住む場所と食糧の両方に被害を及ぼす可能性があります。このような被害を防ぐため、日本では2030年に温室効果ガスを46%削減(2013年度比)を目指し、2050年にカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げました。
脱炭素社会を実現するため、政府を始め企業や地方自治体などが節電・節水・再生可能エネルギー導入など温室効果ガス削減に貢献する取り組みを実施しています。しかし化石燃料への依存度が高い日本では、エネルギーの安定供給や設備コストの面から再生可能エネルギーの導入に対し多くの問題があります。
温室効果ガスによる環境や社会への影響
続いて、温室効果ガスが環境や社会に与える影響について紹介します。
温室効果ガスが増加すると、地球の表面から放出される赤外線が大気中に留まり、熱として地表に返ってきます。これは地球温暖化と呼ばれ、温室効果ガスがもたらす影響の1つです。
地球温暖化が起きることで生じる影響は多岐にわたります。例えば地球規模での気温上昇が海水を膨張させ、海面上昇や沿岸水没といった被害を生みます。また気温上昇により海水や地表で蒸発する水分が増え、台風やハリケーンの巨大化をもたらします。他にも異常気象による水不足や気候変動による絶滅する種の増加などが挙げられます。
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関連記事:温室効果ガスと地球温暖化の関係と影響-温室効果ガスの増加原因も解説
【ランキング】温室効果ガスが発生する原因3選
ここまで温室効果ガスが与える影響を中心に見てきましたが、そもそも温室効果ガスはどこから発生するのでしょうか。この章では温室効果ガスが発生する原因について、日本の部門別CO2排出量(2019年度)より上位3部門を紹介します。
1位は「エネルギー転換部門」でした。主に石油・石炭などを「電力」といった扱いやすい二次エネルギーに転換する部門です。CO2の排出量は4.3億tに上り、全体の約39%を占めました。原子力発電の積極的な稼働および再生可能エネルギーの普及が進んでおらず、依然として化石燃料を使用した発電が多く使用されていることが要因として考えられます。
2位は「産業部門」でした。主に鉄鋼・化学・機械などの製造業で用いられたエネルギー量を表す部門です。CO2の排出量は2.8億tに上り、全体の約25%を占めました。排出量を減らす工夫としては省エネルギー性能の高い設備の導入など、産業で使用するエネルギーを効率よく活用する設備や製品の活用が挙げられます。
3位は「運輸部門」でした。主に自動車や鉄道など、輸送・運搬に用いられたエネルギー量を表す部門です。CO2の排出量は2.0億tに上り、全体の約18%を占めました。公共交通機関の積極的な使用や、環境負荷の少ない自動車の開発と普及が削減のカギとなります。
関連記事:温室効果ガスと地球温暖化の関係と影響-温室効果ガスの増加原因も解説
関連記事:温室効果ガスには種類がある?-割合から発生源、削減方法も徹底解説
温室効果ガス削減のために私たちにできること3選
この章では温室効果ガス削減のために私たちにできることを紹介します。
家庭での節電・節水
節電・節水を意識することで消費されるエネルギーを削減することができます。
使用しない電気はこまめに消す、エアコンの温度を適切に設定するなど家電を効率よく活用することで省エネルギーに取り組むことができます。
私たちが普段使用する水においても同様です。浄水場から蛇口まで、水を使用する過程では多くのエネルギーが使用されています。そのため、シャワーや洗い物で水を出しっ放しにしないなど、節水を意識することで省エネルギーに貢献できます。
節電 | 節水 |
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公共交通機関の使用
バスや電車を積極的に使用することで二酸化炭素の排出量削減に貢献できます。
1kmの移動で排出される二酸化炭素量を自動車と比較した場合、バスの排出量は自動車の1/2、鉄道は1/7です。このように一度に多くの人を運ぶことのできる公共交通機関を使用することで、1人当たりの二酸化炭素排出量を抑えることができます。
また近くの移動には徒歩や自転車を使用することで、環境にも健康にも優しい移動が行えます。
マイバック持参
マイバックを持参することで、ごみの削減に貢献できます。
ごみの燃料時には多くの二酸化炭素が排出されるため、ごみを排出しないための取り組みも温室効果ガスを削減するうえで重要です。
マイバックによるレジ袋の削減以外にもマイボトルやマイ箸など、繰り返し使用できるアイテムを活用することで使い捨てを予防し、ごみの排出を抑えることができます。
関連記事:温室効果ガスを減らすには?-企業・家庭・個人の取り組みも解説
温室効果ガス削減のために企業にできること2選
この章では温室効果ガス削減のために企業にできることを紹介します。
使用する電力を再生可能エネルギー由来のものに変える
太陽光発電や水力発電など、再生可能エネルギー由来の電力を導入することで、二酸化炭素を排出しないエネルギーを事業に使用することができます。
企業の壁や屋根を活用した太陽光パネルの導入では、電気料金の削減にも繋がります。ほかにも、環境を意識した運営の例として「再エネ導入」は企業イメージを向上させるためのアピールポイントとなります。
設備メンテナンスによる省エネ
省エネルギーを意識した活動を行うことで、排出される二酸化炭素を削減することができます。
空調の設定温度の見直しやテレワークの実施など、消費されるエネルギーを削減することでランニングコストを抑えることができます。他にもLED照明といった省エネ性能の高い家電・設備の導入や空調のフィルター清掃など、省エネに伴うメンテナンスを通して設備の安定稼働を支えることができます。
温室効果ガス削減に向けた企業の対策事例2選
ここまで温室効果ガス削減のため私たち個人から企業にできることを紹介してきました。次に、具体例として温室効果ガス削減に向けた企業の対策事例を紹介します。
再生可能エネルギーの活用|キッコーマン株式会社
キッコーマングループでは、CO2の排出量を2030年度までに2018年度比で30%以上削減するという目標のもと、15の拠点が100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えているなど、(2022年7月時点)再生可能エネルギーの活用を進めています。
またキッコーマン株式会社はカーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンスに加盟しており、一部拠点では使用するガスにカーボンニュートラルLNGを活用しています。
カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス:カーボンニュートラルLNG(液化天然ガス)を調達・供給する東京ガスと購入・利用する企業が一丸となり、LNGの普及拡大と利用価値向上を目指す団体のこと。 |
加えて、工場の屋根などに設置した太陽光パネルから電力を作りだし、生産活動に活用するといった取り組みからCO2排出量削減を行っています。
関連記事:カーボンニュートラルLNGの仕組みと課題-販売企業3社も紹介
パッケージの製品のCO2排出量削減|凸版印刷株式会社
凸版印刷株式会社では、LCA(Life Cycle Assessment)を用いた環境負荷の評価と、環境配慮の提案からCO2排出量削減に貢献しています。
LCA:原材料の調達から製造、廃棄、リサイクルに至るまでの製品のライフサイクル全体を対象とし、環境負荷を定量的に評価する手法のこと。 |
CO2削減事例としては、PETボトルをメカニカルリサイクルした再生PET樹脂など、再生材の活用があります。再生材の有効活用によりCO2の排出量は約24%削減され、また石油化学資源の消費量をも抑えることができました。他にもアルミ不使用のパッケージや紙素材を活用したパッケージなど、製造時のCO2排出量が少ないパッケージを提案しています。
日本の温室効果ガス削減目標達成への課題
温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指すためには、企業そして私たち個人が使用するエネルギーを見直す必要があります。
LED照明やその他省エネ製品、マイバックなど環境問題に貢献する商品が活躍するなか、日本の再生可能エネルギーの普及率は諸外国と比較すると遅れています。その背景には平野部が少なく地震も多いという日本の特徴や、安定した電力の確保が難しいという課題があります。
企業による太陽光パネルの設置や再エネ導入が進む一方で、こうした再エネの導入コストと日本の化石燃料への依存が今後の課題といえます。
関連記事:日本の再生可能エネルギーの割合は?-低い理由や世界の現状も解説
まとめ
本記事では温室効果ガス削減のためにできることを解説しました。
経済活動などから排出された温室効果ガスは、地球温暖化など今後の自然環境に関わる影響を与えます。
そのため温室効果ガスを削減する取り組みが急がれ、省エネや節電・節水など身近なものから再生可能エネルギーの導入など企業単位での工夫が見られるようになりました。
私たち一人ひとりの関心と行動が、温室効果ガス削減のために必要です。SDGsCONNECTでは温室効果ガス以外にも再エネ、地球温暖化についても詳しく解説しています。関連記事のリンクから併せて読んでみてください。