現在、日本ではカーボンニュートラルへの取り組みが増加しています。
地球温暖化の抑制や環境保護のためにカーボンニュートラルが求められており、政府・企業ともに取り組みの幅が広がっています。
今回はカーボンニュートラルに取り組んでいる日本の政府と企業の取り組み事例を10個を紹介するとともに、私たちにできることも解説します。
【この記事でわかること】 |
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カーボンニュートラルとは
みなさんは「カーボンニュートラル」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
カーボンニュートラルの意味や求められている理由について紹介します。
カーボンニュートラルの意味を紹介-脱炭素との違いも解説
カーボンニュートラルとは温室効果ガスの実質的な排出量をゼロにすることを意味しています。
「実質的な温室効果ガスの排出量をゼロにする」とは、人間の活動によって排出される二酸化炭素などの温室効果ガスから、植物などがCO2を吸収する量を差引ひいて実質的な二酸化炭素の排出量をゼロにすることを意味します。
カーボンニュートラルと意味を混同しがちな「脱炭素」という言葉もありますが、脱炭素とは二酸化炭素の排出量をゼロにすることが目的です。
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なぜカーボンニュートラルは必要なのか
私たちの生活は豊かになった一方で、日々大量の温室効果ガスが排出されています。そして、排出された温室効果ガスによって地球温暖化が進んでいます。
地球温暖化によって生態系に影響を与えるのはもちろん、私たち人間も過ごしにくくなってしまいます。ここ数年、夏の気温が大きく上昇して多くの人が暑さに苦しんでいます。 未来の地球を守るために、早急にこの問題に取り組む必要があるのです。
日本政府のカーボンニュートラルの取り組み事例5選
日本政府はカーボンニュートラルを実現するために、多くのことに取り組んでいます。
今回は、日本政府のカーボンニュートラルの取り組み事例を5つ紹介します。
脱炭素事業への新たな出資制度
1つ目に紹介する取り組みは、脱炭素事業への新たな出資制度を作ったことです。
環境省は、脱炭素事業に積極的に取り組む民間の事業者を支援するため、財政投融資を活用した出資制度の創出に尽力しています。
2021年には、「令和4年度財政投融資計画」が閣議に提出され、200億円もの投資額が盛り込まれました。
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国の取組 – 脱炭素ポータル|環境省 – Cool Choice
地球温暖化対策計画の見直し
2つ目に紹介する取り組みは、地球温暖化対策計画を見直したことです。
環境省は2021年に、「地球温暖化対策計画」や「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」などの5つの計画を閣議決定しました。
これらの会議には環境省と経済産業省が参加し、地球温暖化対策計画の見直しを含めた気候変動対策について審議を進めました。
特に、地球温暖化対策計画では、「2050年カーボンニュートラル宣言」や「2030年度46%削減目標」などの実現に向け、計画を改定しました。
2050年カーボンニュートラル宣言 2050年カーボンニュートラル宣言とは、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指して宣言したものです。2020年10月26日に菅義偉首相が臨時国会の所信表明演説で表明しました。 |
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カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
3つ目に紹介する取り組みは、カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を作成したことです。
経済産業省を中心に作成された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が2021年に報告されました。
2050年カーボンニュートラルの実現には、エネルギーや産業部門の構造転換を加速することが必要です。
グリーン成長戦略は、成長が期待される14もの産業において高い目標を設定しています。
具体的には、次のような領域で成長が期待されています。
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▼参考
国の取組 – 脱炭素ポータル|環境省 – Cool Choice
ゼロカーボンシティの実現に向けて
4つ目に紹介する取り組みは、ゼロカーボンシティの実現に向けて計画を立てていることです。
カーボンゼロシティとは、二酸化炭素実質排出量ゼロに取り組む街のことを指しています。実際にカーボンゼロを実現した自治体はありませんが、今では400を超えるの地方公共団体がカーボンゼロを表明しています。例えば、静岡県の三島市や沼津市がカーボンゼロを表明しています。
環境省は、地方公共団体の脱炭素化への取り組みに対し、情報基盤整備や計画策定を支援しています。
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国の取組 – 脱炭素ポータル|環境省 – Cool Choice
サステナブルファッション
5つ目に紹介する取り組みは、サステナブルファッションを推進していることです。
サステナブルファッションとは、衣服の製造から廃棄までのプロセスにおいて持続可能であることを目指した取り組みを指しています。
例えば、服を一着製造するために、二酸化炭素をおよそ25.5kg、水をおよそ2300L使用します。
このような現状を解決するためにサステナブルファッションが求められており、環境省が主体となって様々な取り組みを行っています。
環境省は主に次のようなことに取り組んでいます。
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▼参考
国の取組 – 脱炭素ポータル|環境省 – Cool Choice
日本企業のカーボンニュートラルの取り組み事例5選
日本政府だけでなく、日本企業もカーボンニュートラルを実現するために多くのことに取り組んでいます。
今回は、日本企業のカーボンニュートラルの取り組み事例を5つ紹介します。
花王株式会社の取り組み
1つ目に紹介する日本企業は、花王株式会社です。
花王株式会社は、脱炭素社会の実現に向け新たな目標を立てており、2040年までにカーボンゼロ、2050年までにカーボンネガティブを目指しています。
カーボンゼロの目標を達成する手段として以下のことに取り組んでいます。
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しかし、これらの対策だけではカーボンネガティブの達成のためには不十分です。そこで、カーボンネガティブを達成する手段としてCO2を原料にする技術の開発に取り組んでいます。
カーボンネガティブ カーボンネガティブとは、経済活動によって排出される温室効果ガスよりも吸収する温室効果ガスが多い状態を意味します。つまり、カーボンネガティブはカーボンゼロよりも環境に良いのです。 |
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セコム株式会社の取り組み
2つ目に紹介する日本企業は、セコム株式会社です。
セコム株式会社はホームセキュリティや家庭向け防犯・防災商品の販売を行なっている会社です。
2021年に従来の温室効果ガス削減目標を見直し、新たな中長期目標である「セコムグループ カーボンゼロ2045」を公表しました。
セコムグループ カーボンゼロ2045は、2045年までに排出ゼロを目指すとともに、2030年度までに2018年度と比べて45%削減することを目標にしています。
この目標は世界の気温上昇抑制に向けた対策として妥当なものであるとして、「SBTイニシアチブ」から認められました。
パナソニックグループの取り組み
3つ目に紹介する日本企業は、パナソニックグループです。
パナソニックグループは「Panasonic GREEN IMPACT」の実現に向けて2030年までに全事業会社でCO2排出の実質ゼロ化を社内外に発信し、CO2ゼロの工場づくりを推進しています。
「エネルギー」を重点課題の1つと捉え、工場全体で「CO2ゼロモデル工場の推進」、「再⽣可能エネルギー利用拡大」、「エネルギーミニマム⽣産の推進」に取り組んでいます。
例えば、タイにある工場では工場全体で使用するエネルギー量を分析した上で、エネルギーの見える化・分析システムを構築し利用率向上や品質ロス削減に取り組みました。
他にも次のような取り組みを行なっています。
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▼参考
環境:工場のCO2削減
三井不動産株式会社の取り組み
4つ目に紹介する日本企業は、三井不動産株式会社です。
三井不動産株式会社は、東京ミッドタウンや柏の葉スマートシティなどの街づくりに取り組んでいる会社です。
グループ全体の温室効果ガス排出量を2019年と比べて2030年度までに40%削減、2050年度までにカーボンニュートラルを実現するという目標を立てています。
具体的には次のような5つの目標を立てています。
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他にも、高層木造ビルや木造住宅などに保有林を積極的に活用するなど、多くの活動を行っています。
▼参考
脱炭素社会実現への取り組み|ESG/サステナビリティ
国本工業株式会社の取り組み
5つ目に紹介する日本企業は、岡本工業株式会社です。
国本工業株式会社はパイプ加工品などの自動車部品製造や、金型の設計・製作などを手がけている中小企業です。
カーボンニュートラルを実現するために、工場に太陽光発電パネルを設置するだけでなく、グリーン電力を購入しています。
グリーン電力とは、二酸化炭素を排出しない発電方法で作られた電気エネルギーのことで、太陽光や風力・水力・地熱といった自然エネルギーを活用したものや、バイオマス発電などが含まれています。
また、作業効率の効率化にも取り組み、生産性の向上を目指しています。
▼参考
カーボンニュートラルに向けた2030年目標とは?国や企業の活動
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット3選
カーボンニュートラルへの取り組みは地球環境を守るために非常に重要なことです。
その他にも企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットを3つ紹介します。
投資の対象になる
1つ目のメリットは、投資の対象になるということです。
みなさんはESG投資という言葉を聞いたことはありますでしょうか?
ESGとは、環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の3つの頭文字をとったものを表しています。つまり、ESG投資とは、この3つの要素に配慮した経営をしている会社に投資することを意味しています。
2020年には日本のESG投資額は320兆円にものぼり、運用資産全体の約24%を占めています。運用資産全体に占めるESG投資の割合の推移は下のグラフのとおりです。
また、年によって変動はあるものの、アメリカやカナダではESG投資の割合が上昇し続けています。
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カーボンニュートラル市場規模は大幅拡大-市場規模や成長、企業の投資事例まで紹介
企業のイメージアップにつながる
2つ目のメリットは、企業のイメージアップにつながるということです。
環境に優しい商品を扱っていると聞いてみなさんはどのようなイメージを持っていますでしょうか?
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このように、肯定的な意見を持つ人が多いのではないでしょうか。
カーボンニュートラルが重要視されている現在、環境に優しい商品を扱っている会社はより良い印象を与えることができるのです。
コストを削減できる
3つ目のメリットは、コストを削減できるということです。
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これら3つのことは簡単に取り組むことができますが、カーボンニュートラルの推進とコスト削減の両方を達成することができます。
私たちにできること2選
政府や企業だけでなく、カーボンニュートラルを実現するために私たちにもできることがあります。
今回は私たちにできることを2つ紹介します。
自動車を使わないようにする
1つ目にできることは、自転車を使わないようにすることです。
外出する際に自動車を使用することで二酸化炭素を大量に排出してしまいます。
近場に出かけるときは自動車ではなく自転車を使用することで、二酸化炭素の排出量を抑えることができるのです。
また、自動車の代わりに自転車を使用することで次のようなメリットがあります。
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このように自転車を使用することは、環境にも私たちにもメリットがあるのです。
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カーボンニュートラルへ向けてできること6選-私たちが取り組むべき理由を解説
積極的に省エネ家電を購入する
2つ目にできることは、積極的に省エネ家電を購入することです。
例えば、電球をLEDのものに変更することで省エネに貢献することができます。
株式会社エスコの調査によると、電球型蛍光灯をLEDにすることで年間で約34%もの省エネ効果があります。
さらに、LEDに変更することで省エネ効果だけでなく、1年間の電気代を約7293円安くすることができます。
まとめ
日本で行われているカーボンニュートラルへの取り組みについて、新しく知ったことはありましたでしょうか?
法整備などの政府の取り組みだけでなく、企業での取り組みも紹介しました。さらに、私たちが日常生活の中で取り組めることも紹介しました。
また、今回紹介した「自転車の積極的な利用」や「省エネ家電の購入」は環境に良いだけでなく、私たちの財布にも優しく、多くのメリットがあります。
しかし、カーボンニュートラルを実現するためにはより一層の取り組みが求められています。
まずは目標を達成するために、節電や節水などの小さな努力をすることが求められています。
大学では国際デザイン経営学科に所属し、解決が困難な問題をあらゆる角度から解決できるようにするため、日々勉学に努めている。