フェアトレード商品を購入することで途上国の人々を支援するフェアトレードですが、実際はどのような仕組みで行われているのでしょうか。
また、フェアトレードが目指す成果は何でしょうか。
今回は、フェアトレードの仕組みや背景にある問題、目指す成果を分かりやすく解説します。さらに、フェアトレード認証マークと私たちができることも紹介します。
フェアトレードの仕組みとは
「フェアトレード」とは貧困のない公正な社会をつくるために、経済的・社会的に弱い立場にある途上国の生産者と、経済的・社会的に強い立場にある先進国の消費者が対等な立場で取り引きを行い、途上国で暮らす労働者の生活改善と自立を目指す運動です。
たとえば日本では、コーヒーやカカオなど途上国で生産された日用品や食料品の大半は、とても安い価格で販売されています。そのため、生産者に正当な対価が支払われていないため、利益が十分に得られず、貧困などさまざまな問題が生じています。
一方で「フェアトレード」は、労働環境や生活水準を保証し、自然環境を配慮した持続可能な取り引きです。フェアトレードによって、生産者や労働者が品質のよいものを作り続けることができます。
フェアトレードの背景にある4つの問題
「フェアトレード」は発展途上国で暮らす生産者や労働者の生活改善と自立を目指す活動です。
続いて「フェアトレード」における4つの問題点を説明します。
生産国の児童労働
「児童労働」とは義務教育を妨げる労働や、法律で禁止されている18歳未満の危険・有害な労働です。UNICEFと国際労働機関(ILO)が2021年に発表した報告書によると、世界全体の児童労働に従事する子どもの数は1億6000万人であり、2016年と比べて800万人増加しています。
この数は、世界の子どもたち(5歳〜17歳)のほぼ10人に1人が働いていることに相当します。とくにサハラ砂漠以南アフリカに住む子どもたちの児童労働の問題は深刻です。
児童労働の根本的な原因は貧困問題で、家族を養うためのお金が不足しているという現状があります。とりわけ農村では、子どもが都会に出稼ぎに行くことも少なくありません。
サハラ砂漠以南のアフリカでは、人口の増加や貧困、不十分な社会的保護措置が起こっているため、児童労働に従事する子どもが多くなっているのです。
生産国の強制労働
「強制労働」とはある者が処罰の脅威下に置かれ、自らの自由意志ではない労働のことです。1930年に国際労働機関が定めた強制労働に関する条約にて、強制労働を基本的人権の侵害と定めているものの、現在も強制的に働かされている人(現代奴隷)が多く存在します。
2017年に国際労働機関とオーストラリアNGOが発表したレポートによると、現代奴隷の数が世界で4000万人を超えており、全体の71%が成人女性・女児、25%が子どもでした。
このレポートでは、本人の意志に関係なく両親など身内が結婚を決める「強制結婚」も含まれており、人身取引とみなされています。
強制労働の原因は、貧困による借金や人種・宗教の違いによる差別、国や自治体による規制の欠如などが挙げられます。
労働者の劣悪な労働環境
引用:世界経済協力開発機構(OECD)公式サイトアフリカ大陸や東南アジア、南アメリカに位置する国の多くでは、長時間労働や不安定な雇用状況のもとで働く人が多く存在します。
世界経済協力開発機構(OECD)によると、2021年における世界の年平均労働時間は、1人当たり1716時間でした。
一方、メキシコやコスタリカ、チリなどの発展途上国では1年で1人当たり2000時間前後働いています。労働時間が最も長いメキシコでは、世界の年平均労働時間と比較して、1.2倍も働いています。
また、南アフリカやスーダンなどの発展途上国では、失業率も高い状態が続いています。世界の経済・統計情報サイトによると、2021年においておもにアフリカ大陸の国々で失業率が20%を超えています。
中間業者に頼らざるを得ない小規模農家
原材料などを生産する労働者は、生産した商品を中間業者に販売を委託しています。しかし、販売を委託することで、得られる利益が少なくなることも多々あります。
たとえば、国際市場ではコーヒー豆の買取価格が、高騰したり暴落したり頻繁に変化します。そのため、生産者の多くがマーケット動向の情報や市場への販売手段をもつ中間業者に頼っています。
ただ、中間業者に販売を委託しているため、利益の大半を渡さなければなりません。そのため、時には十分な利益を得られずに不安定な生活となり、子どもを学校に通わせることも難しくなっています。
フェアトレードによって目指す成果5選
「フェアトレード」には、児童・強制労働や劣悪な労働環境などの問題点があります。
続いて、「フェアトレード」を通じて達成を目指す目標を5つ説明していきます。
格差や不平等をなくす
原材料や製品をつくる発展途上国の生産者・労働者は差別的な目で見られたり、劣悪な環境に置かれることも珍しくありません。
一方で、「フェアトレード」は小規模生産者や労働者が50%の意思決定権を持っているため、彼らの意思をフェアトレードの基準・方針・策定に反映させ、差別撤廃を促すことができます。
また、小規模生産者・労働者が自ら政策を考察して提言する体制を整えており、格差や不平等をなくすことを目指して取り組んでいます。
生産者へ自立を促す
生産者は自身が生産した原材料や製品を直接販売するのではなく、中間業者に委託することで販売しています。しかし中間業者を経由することで、生産者の利益は少なくなり、生活が不安定になる場合も少なくありません。
しかし「フェアトレード」によって、正当な価格で作られた製品や原材料が買い取られ、生産者や労働者にも安定した利益を得られます。
安定した利益を得ることで、生産者や労働者の生活も安定し、子どもたちも学校に行き教育を受けられるようになります。
女性の権利を守る
依然として多くの途上国では、女性の立場や権利が認められていません。
「フェアトレード」では指導的ポジションに就きづらい女性にも機会を与えるというメリットがあります。そのため、女性にも男性と同等の対価を支払い、女性も社会的立場や権利を保障することができます。
フェアトレードジャパンでは、ジェンダー平等とエンパワーメント(自律性を促進し、能力を開花すること)を目指し、女性の負荷軽減と社会的立場の向上のためフェアトレード・プレミアム(生産地域の社会発展のための資金)を活用しています。
労働者の労働環境を改善する
発展途上国に住む生産者や労働者の多くは生活が安定していないことから、子どもが学校にいかず労働しています。
「フェアトレード」は発展途上国で暮らす生産者・労働者の生活を支援し、自立を目指すものです。この活動を通じて過酷な労働環境ではなく、持続可能で働きがいのある雇用を促します。
フェアトレードジャパンでは、国際労働機関憲章(ILO)に基づいたフェアトレード基準を設定し、発展途上国の生産者・労働者の権利の尊重や、よりよい労働条件・労働環境の保証、生活賃金の保証をしています。
途上国における持続可能な農業を促進する
アメリカやイギリスのような先進国では、大量の原材料や製品を発展途上国で生産し、輸入をしていますが、環境に悪影響を与えるような生産方法を活用している企業もあります。
国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)によって設定される「国際フェアトレード基準」では、環境を考慮した原則のもとで基準が定められています。
基準として経済・社会・環境の三原則が共通しており、農薬や薬品の使用削減と適正使用、有機栽培の奨励、土壌や水源、生物多様性の保全などが盛り込まれています。
これらの目標は、発展途上国の小規模生産者や労働者の持続可能な開発を促進することです。
フェアトレード認証3選
不平等の撤廃や女性の権利確立、労働環境の改善など「フェアトレード」を行う上での目標を説明していきました。
続いて、フェアトレード認証マークを3つご紹介します。
国際フェアトレード認証ラベル
「国際フェアトレード認証ラベル」とは、国際フェアトレードラベル機関が設けた国際フェアトレード基準が守られていることを証明するラベルです。
「国際フェアトレード認証ラベル」は、国際的なフェアトレードスキームのシンボルであり、広く知られている認証マークです。このラベルが付いた製品は農場から認証製品として出荷されるまで、完全に追跡ができる仕組みになっています。
フェアトレード団体(WFTO)マーク
「世界フェアトレード連盟(WFTO)マーク」とは、発展途上国の立場の弱い人々の自立と生活環境の改善を目指す世界中のフェアトレード組織が、1989年に結成した国際的なネットワークです。欧米や日本の輸入団体、アジア・アフリカ・中南米の生産者団体が加盟し、情報を共有しながら公正な貿易の普及を目指しています。
「世界フェアトレード連盟(WFTO)保証ラベル」が付いた製品は、原材料から生産まで世界フェアトレード連盟が定めたフェアトレード10の指針に基づいています。世界フェアトレード連盟が定めた10指針は、次のとおりです。
1.生産者に仕事の機会を提供する 2.事業の透明性を保つ 3.公正な取り引きを実践する 4.生産者に公正な対価を支払う 5.児童労働および強制労働を排除する 6.差別をせず、男女平等と結社の自由を守る 7.安全で健康的な労働条件を守る 8.生産者のキャパシティ・ビルディングを支援する 9.フェアトレードを推進する 10.環境に配慮する |
その他のフェアトレーマーク
「国際フェアトレード認証ラベル」や「世界フェアトレード連盟(WFTO)マーク」のほかにも、各企業や団体が独自に基準を設定したフェアトレード商品があります。
企業は独自に定めた基準に則ってフェアトレード商品を販売できます。多くの場合、フェアトレード基準を作って生産者と直接取り引きを行い、生産者を支援しています。
しかし、フェアトレードの基準となる法律がないため、フェアトレードではない商品をフェアトレード商品と偽って販売できてしまいます。本当にフェアトレード商品かどうか判断する際には注意が必要です。
私たちができること
国際フェアトレード認証ラベルや世界フェアトレードマークなど、さまざまな認証マークがあることがわかりました。
最後に、私たちが身近にできるフェアトレードの取り組みを4つ紹介します。
フェアトレード商品を選んで購入する
私たちが一番身近で出来る、フェアトレードの取り組みはフェアトレード認証マークが付いた製品を購入することです。
フェアトレードジャパン公式サイトには、フェアトレードとして認証された商品が一覧となって掲載されています。
そのほかにも、各企業の公式サイトにて取り扱っているフェアトレード商品を掲載しているため、買い物前に確認することがおすすめです。
フェアトレードジャパン公式サイト▼
https://www.fairtrade-jp.org/
フェアトレードや国際協力について調べてみる
現在、日本のみならず世界各国でフェアトレードに取り組んでいます。とくにアメリカやドイツ、イギリスなど欧州の国々がフェアトレードを積極的に行っています。
フェアトレードに積極的な国の取り組みや、身近にあるフェアトレードについて調べることでより簡単に取り組めるフェアトレードを見つけられます。
また、フェアトレードについて調べることで、さらに詳しく理解できます。
国際協力に関するイベントに参加する
フェアトレードに関するイベントに参加することも、フェアトレードの取り組みの1つです。
一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム公式サイトでは、日本各地で開催されるフェアトレードに関連したイベントの情報を発信しています。
ぜひ一度、興味のあるイベントに参加してみてはいかがでしょうか。
一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム公式サイト▼
https://fairtrade-forum-japan.org/
記念日にフェアトレード商品を贈る
バレンタインデーやホワイトデーのようなイベントや、母の日のようなお祝いにチョコレートを贈る際、フェアトレード商品を贈ることでフェアトレードに貢献できます。
チョコレートに限らず、フェアトレード・フラワーなど多様な商品があるため、ぜひプレセントとして贈ってみてください。
まとめ
「フェアトレード」とは、貧困のない公正な社会形成のために発展途上国で暮らす生産者や労働者と、先進国との間で持続的に取り引きを行い、発展途上国の生産者・労働者の生活改善と自立を目指す運動です。
現在、途上国では児童労働や強制労働、劣悪な労働環境などさまざまな問題点があります。しかし、「フェアトレード」を通じて差別の撤廃や女性の権利確立、労働環境の改善を目指しています。
「フェアトレード」として認証された製品は、きちんとした基準に基づいて認証された「国際フェアトレード認証ラベル」や「世界フェアトレード連盟(WFTO)マーク」などのラベルが付いていますが、企業が独自に定めたフェアトレード商品はフェアトレードでない場合もあるため、注意が必要です。
買い物をする際に積極的にフェアトレード商品を購入したり、フェアトレードに関連するイベントに参加したりするなど、私たちが身近にできることはたくさんあります。ぜひみなさんも取り組んでみてください。
SDGsCONNECT SEOライター。大学では文学を通じて、ジェンダーについて学んでいます。SDGsについて詳しくない人にとってもわかりやすく、かつ情報が正確な記事を書けるよう、心がけています。