ホテルは地方創生の拠点|旅をサポートするグリーンズのSDGs

#インフラ#エネルギー#地方創生#環境 2022.02.02

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【更新日:2022年4月8日 by 三浦莉奈

グリーンズは三重県に本社を構える創業64年のホテルチェーンだ。1957年に駅前旅館「新四日市ホテル」を創業したことから始まり、現在は全国に100店舗近いビジネスホテルを構える。

長年に渡り出張や観光といった利用者の旅を支えてきたグリーンズは、2018年にグリーンズグループ2030年CSR宣言「『環境にも人にも優しいホスピタリティあふれる企業』を目指します。」を策定し、SDGs目標の達成に向けて積極的な取り組みを行なっている。

今回は株式会社グリーンズの代表取締役社長、村木雄哉様を取材した。グリーンズが見据える2030年のホテルのあり方と、SDGs目標達成に向けた具体的な取り組みや想いを伺う。

使命は旅の目的をサポートすること

ーー自己紹介をお願いします。

村木:グリーンズの代表取締役社長の村木です。大学卒業後にホテル業界に入り、フロントといった現場での業務からホテル開発・立ち上げまで幅広い分野に携わってきました。

ーーグリーンズはどんなビジョンを掲げていますか?

村木:2019年に新たな経営ビジョン「TRY! NEXT JOURNEY ~新たな旅に踏み出そう~」を策定しました。当初は東京オリンピックがホテル業界に大きな変化をもたらすことを想定したビジョンでしたが、結果的に現在のコロナ禍によりホテル業界には急激な変化が起こっています。この経営ビジョンには事業領域の拡大・改革をはじめとした新しい仕組みを取り入れることで変化の波を楽しもうという想いを込めました。

ーービジョンを体現していくために大切にしていることはなんですか。

村木:経営ビジョンの前提には、子会社であるチョイスホテルズジャパンの主力ブランド「コンフォート」の日本でのブランドコンセプト「Color your Journey.旅に、実りを。」があります。自分らしく自由気ままに過ごせる、ちょっとした非日常感を味わえるホテルを実現することで、お客様の旅がより実りの多いものになるように、という想いが込められています。

弊社のような宿泊特化型ホテルの使命は、リゾートホテルのように旅の目的になることではなく、出張やレジャー、観光といった旅の目的をサポートすることです。事業領域を的確におさえ、旅に彩りを添えることを大切にしています。

地域と人に寄り添うことで持続的な企業に|「グリーンズグループ2030年CSR宣言」への想い

ーー2018年にはSDGs目標にも対応した「グリーンズグループ2030年CSR宣言」を策定していますね。

村木:「グリーンズグループ2030年CSR宣言」策定の1つのきっかけは上場です。リーマンショックの厳しい経験から、より持続的な企業となるために上場を決意しました。上場に伴い、企業としての社会貢献への立場をより鮮明にするということを目指して策定しました。

CSRについて検討する中で、これからは社会と共通の価値を創造していくCSVの観点も取り入れる必要性を強く感じました。自社の強みを活かし従来の事業にCSRやCSVといった視点を取り込むことが重要だと考えています。

ーーCSRの取り組みについて教えて下さい。

村木:私たちは、2030年に向け、「環境配慮」「コミュニティ支援」「人づくり」「特長あるサービス」という、4つの重点課題を設定しています。

「環境配慮」ではクリーンな電力の導入によるCO2排出量削減の取り組みや、トイレットペーパーの使い切りによる廃棄物削減の取り組みを行っています。

「コミュニティ支援」の取り組みでは地産地消メニューの導入による地域の活性化や、店舗展開地域での災害協定の締結などによる安心・安全なまちづくりを行っています。

地域の環境を保全し、より直接的にコミュニティに関わっていくことは持続可能な社会を作る第一歩です。

「人づくり」では多様な人材の活躍推進を目的にスタッフの育成と「健康経営」の取り組み、地域への教育支援を行っています。

「特長あるサービス」では、私たちのホテルを利用していただくお客様が健康になっていただけるようなサービスを作っていくことを目標に掲げています。

ーーCSRやCSVに取り組む背景にはどんな想いがありますか。

村木:根底には、地域社会に貢献したいという創業当時からの強い想いがあります。企業目的の中でもうたっている「地域社会への奉仕と貢献」とCSVの考えが合致するところがあります。

これを最初に実現したのが「Choice Guest Club™」という、チョイスホテルズジャパンの会員制度での取り組みです。

「Choice Guest Club™」を通じた売上の0.5 %を、「環境」「雇用」「教育」といった地域社会の課題解決に取り組む団体に継続的に寄付をする仕組みを作りました。

「旅で世界とまちを元気に。」というコンセプトのもと、ホテルを支えてくださる「地域」「人」に貢献することを目標とした取り組みです。

ーーCSRから進んで、SDGsを意識し始めたきっかけを教えてください。

村木:「Choice Guest Club™」の寄付先の1つに、ザンビアでバナナペーパーを作る「One Planet Café Zambia」という団体があります。この団体を運営するご夫婦に出会ったことがきっかけでした。

「One Planet Café Zambia」は、日本の越前和紙の製法を参考に、バナナの茎や葉からバナナペーパーを作り、村の雇用創出と市場流通をサポートする団体です。2017年6月にアフリカまで現地視察旅行に行き、「One Planet Café Zambia」のお2人にお会いしました。

環境問題への感度が大変高い方々で、「これからは世界が一丸となってSDGsに取り組んでいく時代だ」ということをザンビアの地で教わりました。

ーーCSR、CSV、そしてSDGsとキーワードがありますが、それぞれどのような体制で取り組んでいますか?

村木:私たちは「グリーンズグループ2030年CSR宣言」以前から今まで述べてきた「Choice Guest Club™」を通じた社会貢献のように、CSV的な考えを全面に押し出した展開をしてきました。

その後、2017年の上場と同時にCSR推進委員会を立ち上げました。これまでのCSV的な姿勢は継続しつつ、より社会に定着しているCSRを大きく掲げ推進していく体制を取っています。

CSR推進委員会は4半期に1回開かれます。さらに、「グリーンズグループ2030年CSR宣言」の4つの重点課題にそれぞれ対応した下部委員会が活動しています。

ーー特に環境配慮という重点課題に対しては本社のある三重県に根ざした取り組みをされていますよね?

村木:2021年9月1日から、三重県にあるコンフォートホテル鈴鹿に「三重美し国Greenでんき」を導入しました。「三重美し国Greenでんき」は三重県産のCO2フリー電力で、この導入により年間約113tのCO2排出量を削減することができます。

本社を構える三重県では長年のホテル運営により、地域やコミュニティとの関係が構築されています。コロナ禍で厳しい環境ではありますが、まずは関わりの深い三重県で環境にも地域にも貢献していくような取り組みをひとつずつ展開していければと思います。

地方創生の拠点としてのホテル|社会の変化と役割

ーーホテルは社会の中でどのような役割を担っていると思いますか?

村木:私たちのような宿泊特化型ホテルは、その地域に安心して人が訪れ、交流を促進するための拠点だと考えています。

人が移動し宿泊が必要になった場合、安心して泊まれる快適な場を提供することがホテルの使命です。安心して泊まってもらえることで人との交流がより活性化されてくると思います。

また、ホテルはインフラのひとつであり、社会に対して担う役割は大きいと思います。自治体からも、イベントを誘致するにあたってご相談を頂くことがあります。ホテルのインフラとしての役割の大きさを痛感したのが、三重とこわか国体・三重とこわか大会への準備とその後の中止です。

選手はもちろん、運営に携わる人やボランティアなど多くの人が関わり、何年も前から準備をしてきたものが一日にして崩壊したショックは大きかったです。

やむを得ない判断ではありますが、イベント開催に向けて準備をする中で、人々の交流の場としての宿泊施設の役割は大変大きいものだと感じました。

ーーホテルは地方創生に深く関わる事業ですが、課題はありますか?

村木:地方では、地元の人達が集まって交流できる場として宴会場を併設したホテルがよく求められますが、今のご時世での運営は難しい現状にあります。ホテルのインフラ的な側面とビジネス的な側面の両立の難しさは感じています。

ーー今後の展望を教えてください。

村木:「グリーンズグループ2030年CSR宣言」を掲げてから、気づきや課題が見えてきました。さまざまな取り組みの中で最も重要だと感じたのがSDGs目標17番「パートナーシップで目標を達成しよう」です。

大切なことは社会が一丸となってSDGs目標達成に向けて盛り上がること。「三重美し国Greenでんき」を導入したことも、電力会社との協力によって実現できたことです。

私たち自身がその地域の交流の場となり、人や企業を結びつけるということが持続可能な社会を目指す上で重要だと思います。

ビジネスホテル業界は横の繋がりが希薄で独立的です。これからホテル業界がまとまる場が実現できれば異なるアプローチもできるのではないでしょうか。

まとめ

今回の取材を通して、グリーンズは地域社会において求められる役割を的確に果たしながらも、企業や人が交流し結びつく場として街にも人にも貢献していることがわかった。

パートナーシップを結び協力してSDGs目標に取り組むことに苦戦する企業も多い中、創業当時から変わらぬ「地域社会に貢献したい」という想いを着実に実現していくグリーンズの取り組みには学ぶところも多かった。

地域や人への感謝を忘れず、ひたむきに一歩ずつSDGs目標達成へ進み続けるグリーンズ。これからも目が離せない注目の企業だ。

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