店舗体験を通じて地球に還元を|スターバックスのSDGs

#ダイバーシティ 2022.03.25

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【更新日:2022年7月13日 by 三浦莉奈

2015年に国連でSDGsが採択されてから、世界でSDGsの注目が年々高まっています。

株式会社電通のSDGsの認知度調査によると、2020年には29.1%だった認知度は、2021年には54.2%と、ほぼ倍増しています。

そんな中、1995年に日本に進出して以来、環境問題にフォーカスしてきたスターバックスでは今日に至るまでさまざまな活動を行ってきました。

日本全国に1700店舗以上を構え、約40,000人の従業員を抱えるスターバックスでは、環境問題をどのように捉え、どのような思いで環境問題に向き合っているのでしょうか。

今回はスターバックスのサステナビリティ担当の古川さんにお話を伺いました。

つながりの力で地球に還元|スターバックスが目指す社会

ーー自己紹介をお願いします。

古川大輔と申します。

2001年にスターバックス コーヒー ジャパンに入社し、2019年頃にサステナビリティ&資材購買部に配属されました。

サステナビリティ&資材購買部は主に全社とサプライチェーンのサステナビリティをリードする部署です。

スターバックスは創業当初からサステナビリティの活動に取り組んでいますが、世の中の急激な変化などを受けて、スターバックス全体がさらに一歩踏み込んで力を入れる方向性になり、2019年に新設されました。

ーースターバックスではどのようなビジョンを掲げてサステナビリティの取り組みを推進されているのでしょうか。

スターバックスはリソースポジティブカンパニーを目指し、地球から得た資源以上のものを還元していく資源の循環や廃棄物削減につながる取り組みを推進してきました。

その上で、スターバックスでは「People」「Planet」「Community」を大切にした活動に取り組んでいます。

スターバックスでは、従業員のことを「パートナー」と呼びます。

「People」の分野では、パートナーとパートナーのつながり、パートナーとお客様とのつながり、そのお店とその地域とのつながりを重視した取り組みを行っています。店づくりだけでなく、人の部分でもそれぞれの存在意義が何なのかということを重視しているところです。

「Planet」の分野では、環境面や、エシカル・ソーシング(倫理的調達)をカバーしています。

「Community」の分野では、地域の方々とのつながりに関する取り組みが重要です。

スターバックスのブランドの根底には、チェーンストアだからといって全国の店舗をすべて同じ形にするのではなく、地域とのつながりを強めながら、ブランドの個性を出していきたいという想いがあります。

例えば、地域ごとの特徴や地域の特産品などを店舗建築やデザインに取り入れたり、イベントを通して地域の方々とのコミュニケーションの機会をつくったりするなど、出店させていただいている地域に敬意を払い、あらゆる方法でコミュニティへの貢献に努めております。

ーーサステナビリティに関する社内発信は積極的に行われているのでしょうか?

月に1回、CEOの水口から、全国のパートナーにオンラインで直接想いを発信をするパートナーコミュニケーションという全社ミーティングの場があるのですが、その中でもサステナビリティに関するトピックは頻繁に取り上げられています。

また社内報や全社メールで定期的に、コミュニケーションを取る機会も設けており、さまざまなチャネルでなにかしらの形で直接メッセージが届いているようにしております。

しかし、CEOからだけでなく各店舗の店長が店舗のパートナーに何を話すのかが今は重要だと認識しています。パートナーにとっても身近な存在である店長が話すことで共感を得やすかったりするので、店長からメッセージを伝えることも意識しています。

個人に合った「選択肢」の拡張|スターバックスの環境への取り組み

ーー環境の取り組みの全体感を教えてください。

スターバックスでは2030年までに、「CO2」「廃棄物」「水」を50%削減することをゴールとしていてます。

例えばCO2の削減では、店舗で使用する電力を再生可能エネルギーにシフトする取り組みを行っています。

2021年10月末には、電力を直接契約しているすべての店舗(約350店舗)で使用する電力を再生可能エネルギーに変え、ショッピングセンターなどに入っている店舗なども今後切り替えてまいります。

廃棄物の削減では、プラスチックから紙製ストローへの切り替えだけでなく、使い捨て資材全体の削減に取り組んでいます。1996年に日本に1号店を出してから約25年間、フラペチーノやエスプレッソビバレッジをお客様に紹介をしてきましたが、それに並行して使い捨てカップも多く排出してしまっていたという課題もありました。

この先の2025年までのビジョンとしては、ゴミを出さないスターバックス体験を創造していきたいと考えています。そのビジョンへの第1歩が紙ストローでした。

また、これまでアイスドリンクはプラスチックカップで提供していましたが、2021年2月からホットドリンクアイスドリンクに関わらず、紙のカップで提供して、化石燃料由来のプラスチックを少しでも減らしていく取り組みも行っています。

今後はカップの貸し出しのサービスなども取り入れていけたらと考えており、都内の一部店舗でプログラムを実証実験中です。

また、店内をご利用の方に関しては、マグカップの提供率を高める工夫や、ギフトの資材をプラスチックから他の素材に切り替えるなどの取り組みも行っています。

近年さまざまな生活スタイルが確立されているなかで、より多くの方に合ったオプションを提供することが重要になっていると考えています。

より多くの選択肢を用意して、お客様の生活スタイルやシーンに合わせてチョイスできるようにしていきたいと思います。

スターバックスのリユーザブルストロー(2021年アースデーでの限定販売品)【提供:スターバックス】

スターバックスのリユーザブルストロー(2021年アースデーでの限定販売品)【提供:スターバックス】

スターバックスの樹脂製リユーザブルカップ【提供:スターバックス】

ーー創業時から変わらず取り組んでいることはありますか。

コーヒー豆の適正価格での購入です。

コーヒーの生産地は多くが途上国にありますが、せっかく品質の良い豆を生産しても、低価格で取引されてしまうことがあります。

しかし、スターバックスではコーヒー豆を適正価格、もしくはそれ以上の価格で購入し、その利潤で農家の方は必要な農機具や肥料を購入し、より品質の良い豆を作ることができます。その豆をまたスターバックスが購入することで好循環が生まれます。

このような環境に対するケアとコーヒー農家の方の働きやすい環境の提供は、結局それが質のいい豆をお客様に提供することに繋がるので、ビジネスにも繋がるのです。

環境とビジネスは相反する部分があるとよく言われますが、「コーヒー豆の取り組み」は、この2つが同居した取り組みであることが、働いていても感じます。実際私もこの部分に魅了されてスターバックスに入社したところもあります。

ーー新しくサプライチェーンで意識している取り組みなどがありましたら教えてください。

店舗において、フードロスの新たなプログラムやリサイクルなどによって廃棄物削減に取り組んでいます。

店舗の食品廃棄物の7割がコーヒーを抽出した後の豆かすになります。その豆かすを回収して畑のたい肥に混ぜて野菜を収穫し、店舗で販売しているサンドイッチ具材に使用したり、牛の飼料に混ぜ、育った牛のミルクが店舗に返ってくるような循環を生み出す取り組みをしています。

ーーさまざまな取り組みを行うスターバックスですが、どのように新しいアイデアを創出しているのでしょうか。

本社メンバーが議論してアイデアを出す場合や、店舗のパートナーのアイデアを取り入れる場合があります。また、大学教授などの外部の専門家の方を招いてラウンドテーブルのような形で議論する場合もあります。

例えば店舗パートナーの声が後押しになったケースでは、フードロスのプログラムがあります。

まだ食べられるのに閉店後に食材を廃棄することに心を痛めているパートナーの思いを何とかしたいということもあって、2021年の夏にようやく実現できたプログラムがあります。閉店する数時間前から少し価格を下げて販売し、廃棄を減らす取り組みを始めました。

これまでスターバックスでは「パートナーのレンズ」「お客様のレンズ」「ビジネスのレンズ」の3つのレンズを通して議論や判断をしてきました。今はそこに「サステナビリティのレンズ」つまり環境に対してどうなのかという意識を持ち、最終意思決定をするようにしています。

そして自分たちの世界だけではなくて、世の中何が起きているのかを知り、そこから刺激を得ることが重要だと感じています。

ーーSDGsを推進する上で苦労した点について教えてください。

たくさんありますが、1番はパートナーに「なぜ」を伝えることです。

会社からの指示に対して、パートナーも「なぜ行うのか」「取り組む意味は何なのか」がわからないと共感を生むことができません。自分がここにいる理由や成し遂げたいビジョンとと合致し、エンゲージメントが高まった時に大きな原動力となって動き始めるのです。

全国の4万人のパートナーに、どのようにすれば「なぜ」を伝えられるかを考えることは、たくさんある課題の中で1番重要で、1番難しいものと感じています。

冒頭お伝えしたからの月1回の発信も1つのアプローチですし、取り組みを本格的に始める際に、店舗やサポートセンター(本社)のマネージャーに対して「世の中で何が起きているのか」「なぜスターバックスがこの取り組みをするのか」「どの方向に進もうとしているのか」「どういうゴールをセットしているのか」などのセッションを10回以上しながら伝えてきました。

マネージャー層からしっかりと伝えていくことで、新しく入ったアルバイトパートナーに対しても、しっかりと伝わっていくように、というような仕組みを作っています。

店舗経験から伝える環境配慮|スターバックス 皇居外苑 和田倉噴水公園店

2021年12月1日、スターバックス初となる環境配慮型の店舗「スターバックス コーヒー 皇居外苑 和田倉噴水公園店」がオープンしました。

廃棄量を減らすために、店内ではマグや樹脂製のグラスでドリンクが提供されるほか、持ち帰りでは、リユーザブルカップ(110円)を購入できます。また、「借りるカップ」を選択することもでき、廃棄を減らしながらドリンクを楽しめるようになっています。

皇居外苑 和田倉噴水公園店の外観【提供:スターバックス】

また、デジタルフードメニューの導入や北海道、東北地方の国産木材の活用、アップサイクルされたアートや照明など、環境への配慮が全面的に打ち出され、同店は、より環境負荷の低い店舗に対しての国際認証「Greener Stores Framework」も取得しています。

ーー皇居外苑 和田倉噴水公園店をつくろうと思ったきっかけを教えてください。

スターバックスでは、CMなどで思いを伝えるのではなく、店舗がお客様との接点です。そこが自分たちの想いや考えを伝えていく、何より重要な場所であると考えています。

これまで以上に環境に対するブランドのメッセージを伝えていきたいという意味を込め、スターバックス全体で展開を進めるグリーナーストアの日本1号店となったのが、この皇居外苑 和田倉噴水公園店です。

この店舗でのいろいろな取り組みを通じて多くのお客様に、何かを感じてもらって、何かの行動に移すきっかけになれたらいいなと思っています。

ーー特にここは力入れたという部分はどこかありますか?

廃棄物の削減です。

通常店舗の約4割の使い捨て資材の削減を目標にしています。店内ご利用の方はホットはマグカップ、アイスは樹脂製のグラスで提供しています。

また先ほど申し上げた、繰り返し使用できるリユーザブルカップの特別価格での販売や、借りるカップの取り組みを提案しながら、お客様と一緒に廃棄物の削減をしています。

皇居外苑 和田倉噴水公園店の店内【提供:スターバックス】

ーー実際にご来店いただいているお客様からの反響などはありますか。

店内ご利用のお客様は、使い捨てのカップで飲むより、温かみを感じるマグや繰り返し利用できるカップで楽しんでいらっしゃって、逆にその方が飲み物をおいしく感じるという声をよく聞きます。

あくまでも店舗を通して提供する体験の価値がメインで、その後に環境への配慮がくるのかもしれないなと思います。

基本スタンスとして、真面目に環境、環境と言うのではなく、「環境」を翻訳して「楽しい」に変換していくことが重要だと思っています。

4万人のパートナーがそれぞれがお客様と接する中で、そういったコミュニケーションをしていきながら、ちょっとずつ変化を起こしていきたいです。

ーー今後は同様の店舗を徐々に拡大させていきたいということですか?

今はまだテストフェーズなので、この店舗での検証を重ねながら、近い将来新しくオープンするお店については、基準にしていく計画ですし、既存店も少しずつ転換していく方向です。

改善点も見えてはいますが、大まかには順調です。

ブラッシュアップされ続ける環境への取り組み|スターバックスの今後の展望

ーー今後の展望について教えてください。

1つは使い捨てからリユースにシフトしていくことです。

マグカップやタンブラーなどの比率を高め、現在実証実験をしている借りるカップのプログラムも1つの重要な取り組みになっていくと思います。

環境の取り組みを広げるには、コストなどのビジネス的な観点も押さえ、持続性も担保できなければなりません。ビジョンを達成しながら、スターバックスらしい体験を提供できるのかを大切にしています。

また1度作って終わりではなく、環境への取り組みをブラッシュアップし続けることも大事だと思います。

取り組みのブラッシュアップとコストマネジメントは同居するものです。これは永遠の課題かもしれないです。

さいごに

スターバックスは国内のカフェチェーンの中でも、いち早く紙ストローを導入し、環境問題を解決するべくさまざまな取り組みを行ってきた。

しかし、スターバックスが目指しているのは、地球環境だけでなく、人々や地域コミュニティにまで配慮した店舗体験を作り上げることだ。

そのために必要なのは店舗と地球環境、人々、地域コミュニティの「つながり」をさらに強固にしていくことだ。

スターバックスの店舗を訪れた際には、ぜひ「つながり」を探してみてほしい。

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