「美」の領域である化粧品事業と「健康」の領域であるサプリメント事業で、私たちの豊かな生活を支えている株式会社ファンケル(以下、ファンケル)。
私たちの美しさと健康を支えるファンケルは、SDGsに対してどのような思いで取り組んでいるのでしょうか。
今回は、ファンケルでSDGs推進室 室長を務める山本さんに、具体的な取り組みや実現したい社会について伺いました。
世の中の「不」を解消するために創業されたファンケル
ーー自己紹介をお願いします。
山本:SDGs推進室 室長を務めております、山本真帆です。2000年に入社して以来、主要事業である通信販売事業にて販促・CRM(顧客関係管理)・ネット通信販売のECサイト運営に携わってきました。2年半前からSDGs推進室に所属しています。
ーーもともと通信販売事業に携わられていた山本さんがSDGs推進室 室長を担うことになったきっかけは何ですか?
山本:就任した2年半前は経営陣の中で「以前からあるCSRをもとに、全社でのSDGsの取り組みを始めよう」と決まったタイミングでした。その際に、今までに通信販売などの幅広い領域に従事していた私の推進力を期待してもらったのではないかと考えています。
多様なチャネルや事業との連携を行ってきた経験を生かし、内外のSDGs推進においても「橋渡し」のような役目を果たせたらと考えています。
ーーSDGsの推進においては、企業理念やビジョンといった部分が根幹になってくると思います。大切にされているビジョンは何ですか?
山本:弊社がSDGs推進に限らず、事業を推進する上で大切にしているのは「正義感を持って世の中の『不』を解消しよう」という創業理念です。創業者の池森は、世の中の「不」となる社会課題を解決するために事業を始めました。「無添加化粧品」も1970年代後半に化粧品公害が大きな社会課題になっていた背景を受け、お肌に悩みや不安を抱えている消費者に向けて開発されたものです。
理念を大切にする気持ちは従業員全体に浸透していますし、現在のあらゆる事業も理念をもとに広がっていっています。
ーー1980年の創業当時から、CSRをはじめとする社会的な活動に取り組まれていたのですか?
山本:当時から、多くの活動に取り組んでいた会社でした。例えば、弊社のメイク製品を使って、高齢者や障がい者向けの無料のセミナーなどを行っていました。また、重度・重複障害の通所施設である社会福祉法人「訪問の家」をはじめ、さまざまなNPOの方との交流を行うようにもなりました。1999年には、障がい者の自立支援や雇用の場を提供する特例子会社の株式会社ファンケルスマイルを設立しています。
ーー「社会課題を解決していく」という点で、理念とSDGsの目指す方向性が共通していますね。
山本:そうですね。SDGs推進にあたり、社内で議論を進めた際にも「私たちの創業理念を実践していくことこそがSDGsの実現に繋がるよね」という意見が多く出ました。
3つの重点テーマ。ファンケル独自のセミナーで相互理解の和を広げている
ーーSDGs推進室の概要や推進体制について教えてください。
山本:SDGs推進室は12名のメンバーで構成される社長直轄の組織です。社内のSDGs推進に関する基本的な方針や戦略を策定・推進しています。また、取締役執行役員・執行役員で構成するサステナビリティ委員会に案件を通して内容を議論しています。その後、議論の結果を各組織に共有し、取り組みに繋げています。
個別の施策を実行する上では、SDGs推進室が中心になったタスクチームが沢山あります。例えば、CO2削減・プラスチック・人権などです。こちらには、部門横断でさまざまな人が参画し、推進しています。
ーーファンケルのSDGsの取り組みには「環境」「健やかな暮らし」「地域社会と従業員」の3つの重点取り組みテーマがあります。特に「地域社会と従業員」について、具体的な取り組みなどはありますか?
山本:地域社会に関する取り組みとしては、創業当時から積極的に行ってきた無償セミナー活動があります。
具体的には、ファンケルセミナーというハンディキャップがある方に向けたメイクやスキンケアのセミナーや、最近では、神奈川県の小学校や高校を対象にした「神奈川SDGs講座」を行い、学生と一緒にSDGsについて考える機会を作っています。
ーーセミナー活動を地域社会との交流にも繋げているのですね。社内の「従業員」に関する取り組みはありますか?
山本:人材への取り組みは弊社の強みだと認識しています。
多様性のダイバーシティ&インクルージョンに関する取り組みでいうと、女性の活躍に力を入れています。もともと女性の比率が非常に高い会社だったので、今も女性従業員比率が6割以上・管理職比率も約50%と、男女平等の環境を構築できています。女性の活躍に関しての社内外での発信も大切にしています。
また、障がい者の活躍も積極的に推進しており、特例子会社の株式会社ファンケルスマイルの運営をはじめ、ファンケルグループ全体での障がい者雇用も進めており、今後、2030年までにファンケルグループ全体で障がい者雇用率5%を目指しています。
ーーシニアの活躍推進にも力を入れていらっしゃいますよね。
山本:そうなんです。まず、正社員の定年年齢を60歳から65歳に延長し、そこから、「アクティブシニア社員」として、65歳を超えても健康であれば、いつまででも働ける制度を導入しました。すでに多くの従業員が利用し、活躍していますよ。
ーー多様な人材が働ける環境づくりが行われているのですね。人材育成などでの取り組みはありますか?
山本:「ファンケル大学」という専門の教育機関を持っています。SDGsやIT・デジタルとテーマを設定し、社内での学習をサポートしています。新しい時代に柔軟に対応できる、未来の経営層育成のための研修も充実しています。
こちらでも、理念を踏まえて教育することを大切にしています。会社の理念を体現できる人材の育成が最も重要で、それが全てビジネスチャンスに繋がっていくという認識を持っています。
ーー「地域社会と従業員」の取り組みはどんな想いのもとに活動されているのですか?
山本:「誰もが生き生き輝く社会を作りたい」という想いのもと、活動しています。
ファンケルの独自性のある製品やサービスを通じて、従業員や地域の方々、消費者、すべての方がいつまでも美しく健やかに過ごしていただきたいという想いが強いです。
化粧品容器のリサイクルが社会に素敵な循環を生む
ーー「環境」分野で具体的に取り組まれていることはありますか?
山本:一番力を入れているのが、2021年7月から開始した容器回収サイクルの取り組みです。
化粧品の使用済み容器を一部の直営店舗で回収し、植木鉢にリサイクルする流れになります。
ーーどのような特徴がありますか?
山本:回収した容器の洗浄・分別・乾燥作業を、特例子会社のファンケルスマイルの社員が担当することです。そうすることで、障害者の雇用と活躍を促進しています。最後は植木鉢にして、横浜市の方に寄贈しており、花と緑溢れるまち作りの地域貢献も図っています。「化粧品の容器リサイクル」という1つの取り組みが、障害者の雇用・環境への貢献・地域社会への貢献と多くのプラスを生み出しているんです。
ーーSDGs推進における今後の展望を教えてください。
山本:お客様と共に行うサステナビリティに関する活動を積極的に行っていきたいです。例えば、容器回収のリサイクル活動もお客様の力なくして成り立ちません。お客様の消費の中で一緒に取り組んでいくような活動を今後もさらに増やしていけたらと思っています。
実現のために、お客様の声を常にきいて社内での共有を強化しています。最近では、お客様のエシカル消費に対する興味を感じます。消費者のニーズに応えるような独自性のある製品やサービスをスピーディーに出していくことが、間違いなく私たちのビジネスチャンスだと考えています。
BtoCのビジネスを行う中で、お客様の声を常に聴き、日々の暮らしに寄り添える企業であり続けたいです。
さいごに
「正義感を持って世の中の不を解消しよう」という創業理念を大切にしながら取り組みを広げられている姿が印象的でした。
また、化粧品の植木鉢リサイクルが生み出す素敵な循環のお話も印象的でした。リサイクルという一つの行動が、あらゆる場面でプラスの影響を生んでいると思うと、消費者も最初の一歩を踏み出しやすくなると思います。
正直かつあらゆる人の思いを大切にしながら事業を展開するファンケルのSDGsに今後も注目です。