温室効果ガスのうち水蒸気は最大の寄与をもつことをご存じでしょうか。
現在の大気の温室効果のうち約6割が水蒸気によるもので、約3割が二酸化炭素によるものですが、水蒸気ではなく二酸化炭素を減らすべくさまざまな目標が設定されています。
今回は、温室効果ガスの水蒸気について特徴や割合、なぜ水蒸気ではなく二酸化炭素を減らすべきなのか理由も合わせて解説します。
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温室効果ガスとは
地球の大気に含まれる二酸化炭素やメタンなどのガスを温室効果ガスと呼びます。
温室効果ガスには赤外線を吸収・放出する性質があり、太陽によって温められた地表から赤外線が逃れてしまうことを防いでいます。この性質によって地球の表面付近の大気は暖められ、地球の平均気温をおおよそ14℃に保っています。
温室効果ガスとは、地球を温室のように温める効果を持っています。
(参考:気象庁 Japan Meteorological Agency)
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温室効果ガスの種類
温室効果ガスの種類は以下の通りです。
温室効果ガス | 用途・排出源 |
二酸化炭素 | 石炭や石油の消費など。 |
メタン | 稲作、牛のゲップなど。 |
一酸化二窒素 | 農業活動(肥料・堆肥)、工業プロセスなど。 |
ハイドロフルオロカーボン類 | エアコンや冷蔵庫などの冷媒など。 |
パーフルオロカーボン類 | 半導体の製造プロセスなど。 |
六フッ化硫黄 | 電気の絶縁体など。 |
三フッ化窒素 | 半導体の製造プロセスなど。 |
(参考:1-2 温室効果ガスの特徴 | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター)
(参考:地球温暖化対策の推進に関する法律 | e-Gov法令検索)
関連記事:温室効果ガスのメタンによる地球温暖化への影響-発生源から削減方法を徹底解説
水蒸気の特徴・割合
水蒸気は温室効果ガスとはみなされない
水蒸気も二酸化炭素と同様、赤外線を吸収する性質を持つことから大気の温室効果に大きく寄与していますが、水蒸気は温室効果ガスとはみなされていません。
理由は、水蒸気の大気中の濃度が人間活動に直接左右されないためです。
水蒸気の発生量は私たちの活動によって直接コントロールできるものではなく、大気と海上・陸上との間に起こる降水および蒸発によって左右されます。
水蒸気が発生する原因はフィードバック
温室効果により地球の温度が上昇すると、海などが蒸発し、大気中の水蒸気の量が増加します。
さらに水蒸気は温室効果を持つため、地球の温度はさらに上がることとなります。すると蒸発が進み大気中の水蒸気が増す、といった様に環境の変化と気候変動が相互に影響し合うことを「水蒸気フィードバック」と呼びます。
二酸化炭素の排出量は私たちの活動によって増減できますが、水蒸気は自然の活動によって決められます。
冒頭で述べた通り、大気の温室効果のうち約6割が水蒸気であるにも関わらず約3割を占める二酸化炭素に焦点を当てる理由は、こうした自然界からのフィードバックを抑えるためです。
(参考:気象庁 Japan Meteorological Agency)
(参考:温暖化の科学 Q15 温暖化は暴走する? – ココが知りたい地球温暖化 | 地球環境研究センター)
(参考:温暖化の科学 Q9 水蒸気の温室効果 – ココが知りたい地球温暖化 | 地球環境研究センター)
温室効果ガスのうち水蒸気は最大?地球温暖化への影響
水蒸気量の増加は温暖化をさらに深刻化させる?
水蒸気の増加による気温上昇と、気温上昇による水蒸気の発生が交互に繰り返され続ければ、地球温暖化を深刻化させてしまうことは想像できます。
しかし、フィードバックの中にも反応を強めるフィードバック(正のフィードバック)と反応を弱めるフィードバック(負のフィードバック)が存在します。
水蒸気の増加と温暖化の加速は、正のフィードバックによるもののように思えます。しかし負のフィードバックも同時に働いているため、温暖化へ向けた暴走が制御されています。
正のフィードバック
温室効果による自然への影響は、水蒸気フィードバックだけではありません。
地球の温度が上がると蒸発は勿論のこと、雪や氷も融けます。
雪や氷は土壌と比べ太陽光をよく反射するため、これらが地表面から減少してしまうと地球が吸収する太陽光が増し、地球の温度が上がってしまうのです。
これを「雪氷アルベドフィードバック」と言います。
負のフィードバック
気温上昇によって発生した雲(水蒸気)は温室効果をもたらしますが、一方で太陽光を遮るため地球の温度を下げるという働きもあります。
その他にも、温度が上昇すると赤外線を放出することで温度を下げ、安定を維持するという地球の性質があります。
これらが温室効果を弱める負のフィードバックとして働くことで、地球の温度が保たれています。
(参考:温暖化の科学 Q15 温暖化は暴走する? – ココが知りたい地球温暖化 | 地球環境研究センター)
関連記事:SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」の現状や取り組みを徹底解説
なぜ水蒸気ではなく二酸化炭素を減らすの?2つの理由
私たちの活動によって調整ができる
二酸化炭素は水蒸気と異なり、私たちの生活や活動によって調整ができるものの1つです。
そのため水蒸気フィードバックなど自然に対する影響を食い止めるためには、その根本ともいえる温室効果ガスの削減に注力することが有効です。
温室効果ガスの中でも多くの割合を占めている
温室効果のなかでも二酸化炭素は約3割という水蒸気に次ぐ割合を占める要素です。
また人為起源の温室効果ガスに注目すると、二酸化炭素の排出量は温室効果ガスの総排出量のうち約65%と半数以上を占めています。
(参考:最大の温室効果ガスは水蒸気だと聞きましたが、本当でしょうか?:温暖化のサイエンス:温暖化FAQ|日刊 温暖化新聞)
関連記事:《徹底解説》今注目の脱炭素社会(カーボンニュートラル)とは?|SDGsとの関係も解説
温室効果ガスの削減方法3選
公共交通機関の利用
自動車の運転は二酸化炭素を排出します。
長時間の停車の際にはエンジンを切るなど、エコドライブを心がけた運転が有効です。
また近場への外出の際には自動車ではなく、徒歩や自転車、公共交通機関を利用するとより二酸化炭素の排出量を削減できます。
待機電力の削減
使わない照明や家電であっても、待機電力は発生します。
利用しない機器の電源プラグをこまめに抜くことで待機電力の削減が期待できます。
比較的実践がしやすい方法の1つだと思います。
マイバックの持参
お買い物の際にはマイバックを持参してみてはいかがでしょう。
マイバックまたはマイボトルを持参することで、消費されるレジ袋やペットボトルを減らすことができます。
まとめ
今回は、温室効果ガスの水蒸気を中心に解説をしました。
温室効果に大きく影響を与える水蒸気ですが、直接的な調整が行えない分、温室効果を与える他の要因を解決していく必要があります。
今回の記事を参考に、他にはどのような要因があるのか調べるきっかけにしてみてはいかがでしょう。