スーパーの食品ロス削減への対策7選-食品ロスの原因や削減事例も解説

#ビジネス#環境#食品#食品ロス 2022.08.19

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【更新日:2022年11月9日 by 田所莉沙

年間約570万トンの食料が捨てられている今、スーパーでも食品ロスを減らすための対策が必要です。

食品ロスを減らすために、スーパーではどのような取り組みができるでしょうか。

今回は、食品ロスの概要から現状、食品ロスが発生する4つの原因と引き起こす問題まで詳しく解説します。さらにスーパーの食品ロス削減に向けた7つの取り組みと削減事例も見ていきます。

食品ロスとは

食品ロスとは、本来であればまだ食べられるにも関わらず破棄されてしまう食品のことを言います。

農林水産省によると、令和元年度における日本の食品ロスは570万トンに上りました。この量を人ひとり分に換算すると、おおよそ茶碗一杯分の食事に当たります。
570万トンの中でも飲食店での食べ残し、スーパーやコンビニで売れ残った食品など、事業活動の中から生まれた食品ロスは309万トンを占めました。残る216万トンは、各家庭から出た食品ロスです。

食品ロスは、生産者が費やした時間と労力そして消費者のお金を無駄にしてしまうだけでなく、食品の廃棄には費用と環境の面で多くの負担をかけてしまいます。そのため、食品を最後まで消費することは生産者と消費者、経済と環境それぞれの無駄と負担を削減することに繋がります。

食品ロスの現状|約13億トンの食品ロス

ゴミ箱からあふれ出るごみ袋

世界の食品ロスは年間で約13億トンになります。これほどまでの食品が破棄されていく一方で、世界では9人に1人が十分な食事をとれない状況にあり、栄養不足に陥っています。

先進国では、災害や凶作による食糧不足を防ぐために行われる過剰生産や、食品の見た目に対する厳しい基準などが理由で食品ロスを生んでいます。しかし途上国では、収穫における技術と設備の不足やインフラの整備が原因で食品ロスを引き起こしています。

破棄に至る過程の中で見えてくる課題もあります。たとえば、買い物時における消費者の意識とマーケティングの工夫、生産者の技術とインフラなど、食品ロスを減らすためにできる取り組みは複数あります。

 

食品ロスが発生する4つの原因

規格外品の大量廃棄

なるべく商品が均一な見た目になるよう、商品ごとに規格があります。

丸いトマト、まっすぐに伸びたキュウリ、販売店で取り扱う商品の見た目がよいほどお客さんの手が伸びるため、規格に合わない商品は「規格外品」として店頭から排除されます。

生産者から直接買う、また規格外品を取り扱うお店で買うなど、商品を買う場所を少しだけ変えてみるだけでお財布にも環境にも優しいショッピングが楽しめると思います。

家庭内や外食時の大量の食べ残し

ご飯の作りすぎや好き嫌いによる「食べ残し」は家庭から出る食品ロスの中で最も多く挙げられる理由です。

家庭内はもちろん、飲食店での過剰な注文も「食べ残し」を生む原因として考えられます。複数人で食事をする際には1人当たりどのくらい食べるのか、好き嫌いはあるのかなど事前の確認をしてから注文すると良いかもしれません。

売れ残り食品の大量発生

スーパーでは常に多彩な商品が十分に用意されています。

しかしながら、消費者の需要を上回る供給は多くの食品ロスを生むだけでなく、お店の売り上げを下げる要因ともなります。

お客さんの需要に合わせたマーケティングを行い、商品の種類と量を必要な分に留めることが売れ残りに対する工夫として考えられます。

賞味・消費期限切れによる食品の廃棄

消費・賞味期限切れによる廃棄も、家庭から出る食品ロスの1つです。

冷蔵庫の奥にしまったまま忘れてしまうなど、食べるタイミングを逃してしまうことが理由として挙げられます。しかし単純に買い過ぎてしまったために消費が間に合わず、期限が切れてしまうことも考えられます。

自分で消費できる量を意識したお買い物、または食品の消費計画を持つことが重要です。

関連記事:SDGs目標2達成するための取り組み|世界と日本の取り組みや個人でできる取り組みも紹介

食品ロスが引き起こす問題

地球の模型とお金

食品の廃棄に膨大なコストがかかる|ゴミの処理に2兆885億円

環境省によると、一般廃棄物の処理事業経費は令和元年度で2兆885億円に上りました。1人当たりの経費で見ると、年間約1万6400円です。

生ごみは、その約80%に水分が含まれているため焼却するときに水分が蒸発します。そのため生ごみの焼却は燃焼効率が悪く、多くの費用がかかってしまうのです。

地球温暖化などの環境問題

廃棄物を燃焼し、また破棄する際に排出される二酸化炭素が地球温暖化を加速させています。

日本では食品ロスによって生じた廃棄物を焼却によって処理しますが、国によっては埋め立てて処理することもあります。しかし、埋め立てることで発生するメタンガスは二酸化炭素の約25倍もの温室効果を持っているため、焼却・埋め立てともに環境問題を加速させる要因と言えます。

世界の食料不足

世界では9人に1人が食糧不足による栄養不良にあります。

世界ではこのような人たちに向けた食料援助が行われていますが、世界の食品ロスの量と比較すると少なく、必要なところに必要な量の食品が行き届いていない状況です。

加えて2050年までに世界の人口は約97億人までに増加すると予測されており、食料不足による貧困と飢餓の深刻化が課題となっています。

関連記事:食品ロスが問題である3つの理由-原因から食品ロスを減らすための対策を紹介

スーパーの食品ロス削減に向けた取り組み7選

ショッピングカートと大量の食品

商慣習「3分の1ルール」の見直し

3分の1ルールとは、賞味期限の3分の1以内に小売店に商品を納入するというサプライチェーンの商習慣です。

賞味期間の3分の1以内に商品を納品できなかった場合、その商品は店頭に並ぶことなく撤去されることとなります。消費者は賞味期限の長い商品を手に取るため、お店側もそれに対応し、賞味期限の長い商品を揃えようとしているのです。

この3分の1ルールを緩和することで、食品ロスの危機にあった商品を消費者に届けることができます。

実際に、京都市内のスーパーで3分の1ルールを緩和し、賞味期限や消費期限ギリギリまで販売を行ったところ食品ロスが10%削減されました。

販売数に上限を設ける

豊富な商品を取り扱う程、商品販売の機会は増加します。しかし種類と個数の充実は、食品ロスの増加に繋がってしまいます。

食品ロス削減に向けた取り組みの1つに、販売数を限定するものがあります。

あらかじめ販売数に上限を設定することでお店の食品ロスを削減しています。この取り組みを実践している飲食店の中には数々の顕彰制度で受賞しているものもあり、他にもパン屋やスーパーなど、様々なお店で取り入れられています。

欠品を許容し食品ロスをなくす

欠品は、お店にとって販売機会の損失となるだけでなく、顧客の流れを止めてしまうリスクも秘めています。

そのため食品メーカーがお店に対し、受注された分の商品を納品できなかった場合「欠品ペナルティ」と呼ばれる商習慣に従い、補償金を支払うことがあります。この欠品ペナルティを回避するため、多くの食品メーカーが商品を多く作ることとなり、その分食品ロスを加速させています。

商品の過剰生産による食品ロスを減らすため、欠品を許容するという取り組みがあります。欠品ペナルティを取り入れず、売れてしまった商品をそのままとすることで、破棄される商品を削減しているスーパーがあります。

ロス間近の食品を地域コミュニティやこども食堂へ寄付

見栄えが悪くなった・鮮度が落ちてしまった商品は棚から下げられてしまうことが多いです。

そのような食品は商品としての価値は失ったものの、もちろんのことながら美味しく食べることができます。そのため、食品ロスの危機にある野菜などを惣菜として活用するほか、地域コミュニティや子ども食堂、福祉施設に寄付しているスーパーもあります。

値引きにより売り切りを推奨

同じ商品であっても、見た目や賞味期限・消費期限によって選ばれやすさが変わります。

例えば野菜はより形の良いものが手に取られやすく、牛乳やパンなど多くの商品は棚の奥にある期限の長いものが選ばれやすいです。

比較し、棚に戻される商品は食品ロスとなってしまう可能性があるため、積極的に値引きを行うなど商品を売り切るための工夫が推進されています。

少量販売・小口販売の促進

4分の1にカットされたキャベツや1本から販売されるニンジンなど、少量から販売されている食品があります。

食品の少量販売・小口販売は家庭での「食べ残し」を減らす効果があります。食べきれる量だけの販売・購入を心がけることで、食品ロスの可能性を削減しています。

Iotの活用により発注の効率化

電子タグの導入による食品ロス削減に期待が寄せられています。

従来のバーコードによる商品管理に比べ、電子タグの導入は読み取れる情報量が多く、また在庫管理がしやすいといったメリットが挙げられます。

電子タグ以外にも、期限に応じた商品値引きの自動化などIoTを取り入れることで業務の効率化を図り、食品ロスの削減に取り組んでいます。

スーパーの食品ロス削減事例4選

野菜の皮などを調理する画像

支援団体へ直接寄付|株式会社ハローズ

株式会社ハローズでは新しいフードバンクのかたち「ハローズモデル」を開発・提唱しています。
「ハローズモデル」とは、支援団体の方が直接店舗からフードバンク食品を直接受け取るというものです。フードバンクを介さないことで、乳製品など消費期限が短く提供が困難であった商品の提供を可能としています。

基準未達や余剰食品を値下げして販売|成城石井

成城石井では、表面に皺が付いているなどから基準を満たさなかった商品を割安で販売しています。(店舗限定)

そのほかにも、自社製造の食パンの耳をラスクとして商品化し販売しています。

捨てる部位を有効活用|ヤオコー

ヤオコーでは、商品を製造する際に出た食品の切れ端など、本来であれば破棄されてしまっていた部位を商品化しています。

また、賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する「3分の1ルール」を緩和することで、納品されず破棄されていた食品を削減しています。

余った青果をスムージへ|ウジエスーパー

ウジエスーパーでは、2021年9月から店舗内にスムージーを販売するカフェをオープンしました。このカフェでは売り上げの落ちた青果や野菜をスムージーとして商品化・販売することで、商品ロスを削減しています。

関連記事:《徹底解説》フードバンクとは|フードバンクのSDGsにおける位置付けとは?

まとめ

本記事では、スーパーでの食品ロス対策を中心に紹介しました。

年間約570万トンの食品ロスを減らすためには、消費者だけでなく販売側の取り組みも必要となってきています。

食品ロスを減らすためのさまざまな工夫が、私たちの周辺で起こりつつあります。今回紹介した事例紹介を踏まえ、ショッピングの際にはお店の取り組みに注目して見ると新しい発見があるかもしれません。

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