《SDGs事例集》化学エネルギーでサステナビリティの実現を。住友化学株式会社

#SDGs目標12#SDGs目標13#SDGs目標17#SDGs目標7#SDGs目標9 2021.11.19

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住友化学株式会社(以下、住友化学)は、総合化学メーカーとして国内第2位のシェアを誇る企業です。また、住友グループの中核企業であり、中でも海外事業に注力していることで有名です。

住友化学はサステナブルな社会づくりにも着目しており、2021年9月にリサイクル技術を活用した再生プラスチック製品の新ブランドの「Meguri(メグリ)」の立ち上げを発表しました。また、2030年までに温室効果ガスを13年比で半減させるという目標達成に向けた取り組みの一環として、循環型社会の実現を目指しています。

【引用】https://www.sumitomo-chem.co.jp/sustainability/news/detail/?key=8260

住友化学はさまざまな研究・開発によって培った技術や知識をSDGs戦略にどのように活かしているのでしょうか。

このページでは、住友化学の事業内容をはじめ、SDGs戦略や活動、外部からの評価まで、幅広く紹介していきます。

住友化学のビジョン/事業

住友化学の概要

住友化学は1913年に住友総本店の直営事業として肥料製造所を設置されたことが創業のきっかけとなりました。

この頃、別子銅山から銅を産出し、加工する銅産業が盛んでした。

しかし、新居浜工場で精錬する過程で亜硫酸ガスが発生することが判明し、公害を防ぐため亜硫酸ガスの処理を目的とした施設が住友化学の前身であったと言えます。

すべての事業の国際化を1970年頃から進め、1984年には、シンガポール石油化学コンビナートの操業が開始されたことで、グローバル経営の大きな足がかりになりました。アジアをはじめ、アメリカやサウジアラビアなど海外拠点にも注力しており、2021年現在、79拠点を有しています。

*シンガポール石油化学コンビナート|【引用】略年史

また、住友化学はそれぞれの事業の研究所を有しており、新製品開発や機能性・安全性を重視した製品をつくるために、研究所が連携して技術を広げています。

住友化学は国内外問わず、世界のニーズを意識して、ヘルスケアや環境負荷低減などの新規事業にも取り組んでいます。上記のような、次世代技術への挑戦が大きな役割を果たしています。

設立年 1925年6月1日
従業員数 6,277名(単体)
資本金 89,699百万円
事業 ①石油化学事業②エネルギー・機能材料事業③情報電子化学事業④健康・農業関連事業⑤医薬品事業

*2021年3月現在

【引用】会社概要

住友化学の主な事業

住友化学の主な事業は、①石油化学事業、②エネルギー・機能材料事業、③情報電子化学部門、④健康・農業関連事業、⑤医薬品事業の5つに分けられます。

石油化学事業

石油化学事業では、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂などの合成樹脂や、合成繊維原料、各種工業薬品など、幅広い化学製品を提供しています。

石油化学の技術はさまざまな産業の礎となる化学製品づくりを担っています。

▼主な製品

プロピレンオキサイド:ポリウレタンやプロピレングリコールの原料。ポリウレタンは断熱材やクッション材に、プロピレングリコールは医薬品や化粧品に使用されている。

カプロラクタム:ナイロンの原料で、衣料品やカーペットなどのインテリア製品、タイヤコードなどに使用されている。紡糸しないナイロンは、樹脂として、自動車、電気製品、食品包装用フィルムなどに使用されている。

ポリプロピレン:自動車のバンパーやインストルメントパネル、食品用トレイ、家電、医療器具などに、使用されている。

ポリエチレン:ラップフィルムや食品用チューブなどの包装材や電線被覆、農業用ハウスに使われるフィルムなどに、使用されている。

メタクリル樹脂:自動車のテールランプや看板、水族館の水槽、液晶ディスプレイの光学部品などに使用されている。

【引用】石油化学部門

エネルギー・機能材料事業

エネルギー・機能材料事業では、省エネルギー製品に多く使用されるアルミナ、アルミニウムの開発・研究が行われています。

さらに、電子部品・次世代自動車に用いられるスーパーエンジニアリングプラスチックスやリチウムイオン二次電池用部材まで、環境負荷の低減や省資源・省エネルギーに貢献する機能化学品を幅広く提供しています。

▼主な製品

アルミナ:99.99%以上の純度の高純度アルミナと低ソーダアルミナの2種を供給している。高純度アルミナは、リチウムイオン二次電池部材、半導体製造装置のセラミックス製部材などに使用されている。低ソーダアルミナは、ICパッケージや自動車プラグなどに使用されている。

アルミニウム:99.99%以上の純度を有した高純度なアルミニウムを供給している。アルミニウム電解コンデンサー用箔や液晶ディスプレイ、半導体の配線材料など、高機能分野で使用されている。

合成ゴム:タイヤをはじめ、窓枠やドアのシール材、ホース類、パッキン類などの自動車部品のほか、建材、シューズなどにも使用されている。

レゾルシン:タイヤや木材用の接着剤、難燃剤や紫外線吸収剤の原料として使用されている。

【引用】エネルギー・機能材料部門

情報電子化学事業

情報電子化学事業では、液晶や有機ELなどのフラットパネルディスプレイに使用されている、光学機能性フィルムやタッチセンサーパネル、カラーレジスト、高分子有機EL材料を製造しています。

その他にも、半導体製造工程で用いられるフォトレジストや高純度薬品や通信端末に搭載するアンテナスイッチなどに使用される化合物半導体材料も手掛けています。

電子機器が生活必需品であるこの時代に対応した、幅広い製品を供給しており、高機能かつ高付加価値製品をタイムリーに提供するために、住友化学全体の化学品技術を基盤として、次世代技術・材料開発にも精力的に取り組んでいます。

▼主な製品

偏光フィルム:偏光フィルムは、液晶や有機ELなどのフラットパネルディスプレイに不可欠な部材であり、高輝度、高コントラスト、高視野角などディスプレイの性能向上に寄与している製品である。

タッチセンサーパネル:モバイル製品の主要部材として使用されている。指で触れたことを電気信号として検知するタッチセンサーパネルは、位置の正確性や、感度の高さが要求される。

化合物半導体材料:IoT時代を支える通信端末のアンテナスイッチや、レーザーダイオード等に用いられる化合物半導体。ガリウムヒ素、窒化ガリウムをはじめとする化合物半導体材料を提供している。

【引用】情報電子化学部門

健康・農業関連事業

健康・農業関連事業では、農作物の安定的な供給、世界の人口増加に対応するための食糧増産、感染症の蔓延防止、また、衛生的で健康な生活の実現などに貢献するために農薬や肥料、飼料添加物を提供しています。

その他にも家庭用殺虫剤、感染症対策製品、医薬品原薬・中間体などを製造・販売しています。

【引用】健康・農業関連事業部門

医薬品事業

医薬品事業では、高度な有機合成技術を基盤に、日本で初めて合成医薬品の製造に成功しました。

現在は、医療用医薬品事業を中心とする大日本住友製薬株式会社と、診断用医薬品事業を中心とする日本メジフィジックス株式会社の両社を軸に事業を展開しています。

【引用】医薬品部門

住友化学の経営理念

住友化学は住友グループの事業精神を踏まえて経営理念を掲げています。

住友化学の経営理念は下記の3つの文章から構成されおり、それぞれ、「基本精神」「使命、存在目的」「価値観」を表しています。

これらの経営理念からは、経済的な目標達成と同時に、理想とする社会的な役割を果たすことが示されています。

【引用】経営理念 | 企業理念

住友化学とSDGs

直接関係するSDGs

住友化学はSDGsの17の目標に寄与した取り組みを積極的に行っています。

ここでは、住友化学が重要としているSDGsを紹介します。

3.すべての人に健康と福祉を

日本だけではなく、世界の人々の健康を守るために、気候変動による人体への影響を考慮した対策に取り組んでいます。また、マラリアなどの感染症の低減にも貢献しています。

目標3番についての詳しい記事はこちら▼

9.産業と技術革新の基盤をつくろう

産業を持続可能化させるために、次世代自動車(電気自動車等)の普及やガソリン車からハイブリッド車などへの乗り換えによる燃費向上に貢献し、代替素材や次世代製品の仕様が主流になるように努めています。

目標9番についての詳しい記事はこちら▼

12.つくる責任つかう責任

天然由来などの有効成分を利用し、有毒ガスや温室効果ガスなどの排出量削減に貢献しています。その他にも持続可能な農業の推進や、安全・安心な農作物の安定供給や食糧生産における環境負荷の低減に着目しています。

目標12番についての詳しい記事はこちら▼

13.気候変動に具体的な対策を

リデュース・リユース・リサイクルを正しく使い分けることによって、節水効果や省資源化に成功しました。また、EUのサーキュラー・エコノミー政策への対応も可能になりました。

目標13番についての詳しい記事はこちら▼

【引用】サステナビリティ データブック 2021

住友化学のSDGs戦略

住友化学は、サステナビリティ推進基本原則を設けており、「T・S・P」トップマネジメントのコミットメント(T:Top Commitment)、ソリューション(S:Solutions)、全員参加(P:Participation)の原則を掲げています。

住友グループの全職員一人ひとりが、「住友の事業精神」「経営理念」「サステナビリティ推進基本原則」「住友化学企業行動憲章」からなる企業理念を共有し、グループ一体となり、行動していくことを目指しています。

サステナビリティの実現に経営として取り組むこと、事業を通じた貢献、住友グループ全体での参画を同時に行うことが、持続可能な社会への取り組みを効果的に推進していくために最も重要だと定義しています。

【引用】サステナビリティ データブック 2021

【引用】サステナビリティ推進の取り組み | サステナビリティの実現に向けて(For a Sustainable Future)

住友化学のSDGs取り組み

一部ではありますが、住友化学のSDGsの取り組みを紹介します。

取り組み事例:①「オリセット®ネット」事業

対応するSDGs:目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

アフリカにおいて、マラリアは深刻な病気です。2019年には、世界で年間約2億人がマラリアを発症し、約40万9000人が死に至りました。その90%がサハラ以南のアフリカで発生しており、犠牲者の多くを5歳以下の子供たちが占めています。

現在、先進国ではほぼ撲滅されたマラリアですが、アフリカでは貧困や財政難のために十分な対策がとれていません。さらに、マラリアに感染することにより、就業や教育の機会を失うことで貧困から脱却できないという悪循環に苦しんでいます。

アフリカの経済発展のためには、マラリアの撲滅が必要不可欠です。

この問題に着目した住友化学は、ポリエチレンにピレスロイドという防虫剤を練りこみ、薬剤を徐々に表面に染み出させる技術「コントロール・リリース」という工場の虫除けの網戸に使われていた技術を応用した、防虫剤処理蚊帳「オリセット®ネット」を開発しました。

2001年には世界保健機関(WHO)から世界で初めて長期残効型蚊帳としての効果が認められ、使用が推奨されています。

【引用】住友化学のマラリアへの取り組み | 社会貢献活動

外部からの評価

エコバディス サステナビリティレーティング評価「ゴールド」

住友化学は2020年と2021年にエコバディス社によるサステナビリティ調査において、2年連続で「ゴールド」評価を獲得しました。「ゴールド」評価は、対象企業全体の上位5%の水準に相当する企業が認定されるものです。

フランスのエコバディス社は、グローバルサプライチェーンを通じた企業の環境・社会的慣行の改善を目指して2007年に設立された、企業のESG関連の取り組みを評価する機関です。

各事業部がそれぞれの強みを活かして、さまざまななイノベーションを進めていることが評価されたと考えられます。

【引用】エコバディス社のサステナビリティ調査において「ゴールド」評価を獲得 | サステナビリティ

第24回環境コミュニケーション大賞 環境報告部門「優良賞」

「住友化学レポート2020」および「サステナビリティデータブック2020」が環境省と一般財団法人地球・人間環境フォーラムが共催する「第24回環境コミュニケーション大賞」の環境報告部門において優良賞を受賞しました。

「環境コミュニケーション大賞」は、優れた環境報告や環境活動レポートを表彰することにより、事業者などの環境コミュニケーションへの取り組みを促進するとともに、環境情報開示の質の向上を図ることを目的とする表彰制度です。

本データブックにおいて、新たにマテリアリティを特定しKPIを設定した点や、気候変動対応に関して2050年度に向けた長期目標を掲げ、Science Based Targets(SBT)達成に向けたさまざまな取り組みや気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のシナリオ分析の結果などを開示している点、プラスチック資源循環への対応に関しても豊富な取り組み事例を開示している点が評価されました。

【引用】「第24回環境コミュニケーション大賞」環境報告部門で優良賞を受賞 | サステナビリティ

おわりに

わたしたちの便利で快適な日常は、化学の力を大きく借りて成り立っています。

しかし、その犠牲に資源調達による環境悪化や健康被害などの結果を招いてきました。

今まで化学の恩恵を受けてきた分、今度はわたしたちが地球へ恩返しをしなければなりません。

住友化学の活躍がどのような恩返しとなるのか楽しみです。

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