《徹底解説》SDGsウォッシュとは?3つの事例や気をつけるべきポイントを紹介

#SDGs目標9#サスティナブル#ビジネス#経営 2021.04.09

この記事をSNSでシェア!

 

【更新日:2022年4月4日 by user

SDGsの注目度が高まっている近年、実際にSDGsに取り組む企業が増加しています。

しかし、SDGsに取り組んでいても実態が伴っていない企業事例も散見されるようになり、「SDGsウォッシュ」として問題視されています。多くの企業担当者が「SDGsウォッシュ」を回避し、SDGsに真に貢献していきたいと考えているでしょう。

この記事では、SDGsウォッシュの意味や企業に与える影響、企業事例、SDGsウォッシュを回避する5つポイントなどをわかりやすく解説していきます。

SDGsウォッシュとは

SDGsウォッシュとは「SDGs」と英語「whitewash(ごまかす、うわべを取り繕う)」を組み合わせた造語で、SDGsへの取り組みを行っているように見えて、その実態が伴っていないビジネスを揶揄する言葉です。英語では「SDGs Wash」と表記され、世界で問題視されています。
例えば、二酸化炭素削減を掲げている一方で、火力発電関係の企業に投資している状態も、SDGsウォッシュの事例として指摘されています。

近年、企業がステークホルダーに配慮し、売上だけでなく、地球環境や社会にいかに貢献しているのかが評価されるようになっています。あわせて、多くの企業がSDGsレポートやCSRレポート、統合報告書などをリリースしています。また、企業のホームページでもSDGsをテーマにした特設ページを公開する企業も増加しています。

このようにSDGsの取り組みを社外に積極的に発信する企業が増えると同時に、SDGsウォッシュと指摘される事例も多くなることが懸念されます。

だからこそ、SDGsをアピール材料にするだけではなく、自社の存在意義や強みを整理し、その上でSDGsの本質を理解して取り組む心がけが重要です。

SDGsウォッシュとグリーンウォッシュの違い

SDGsウォッシュはもともとグリーンウォッシュという言葉をもとに作られました。
グリーンウォッシュとは、1980年代半ばから使われ始めた言葉であり、「環境にやさしい」「地球に優しい」「グリーン」などのイメージをアピールしている一方で実態が伴わず、消費者に誤解を与えるような状態を指します。
SDGsは環境問題以外にも多様なテーマを取り入れており、SDGsウォッシュの中でも環境問題に基づくものは、グリーンウォッシュとも言えます。

▶関連記事|《徹底解説》「SDGsは胡散臭い」と言われる理由|原因から解決法まで徹底解説>>

SDGsウォッシュが企業に与える3つの悪影響

ユーザー、顧客、社会

SDGsウォッシュが起こることで企業のイメージダウンに繋がってしまいます。
いくらSDGsの取り組みを発信しても、その実態が伴っていなければ、ユーザーや顧客からは表面的な企業だと認識され、炎上してしまいます。

イメージダウンは企業だけでなく、その企業が発売している商品に対しても不買運動にまで繋がる恐れがあります。

企業はSDGsウォッシュによるユーザーや顧客からのイメージダウン、世間からの炎上を防ぐためにも理念と実態の一致をしていかなければいけません。

投資家、株主

SDGsウォッシュが起こると投資家や株主などのステークホルダーからの信頼が落ちてしまうため、経営面にも多大な影響が起こります。
近年ESG投資などが注目されており、投資家や株主も企業のSDGsの取り組みやCSR活動に大変注目しています。

そのため企業への信頼が落ちてしまうと、株価に影響が起こり、それに伴うイメージダウンで新規株主も増えにくくなり、経営面にも大きく影響してしまいます。

経営面にも多大な影響が起こるという観点から見てもやはりSDGsウォッシュは避けなければなりません。

従業員

SDGsウォッシュが起きることで従業員のモチベーションが下がってしまいます。
株主などのステークホルダーからのイメージが下がってしまうことで、従業員たちは企業の価値が落ちたと感じてしまいます。

また従業員の中には、企業のブランドに対して愛着を持って働いている人もいるため、SDGsウォッシュと指摘されることで企業に対しての愛着や信頼度が下がるので、従業員のモチベーション低下につながります。
もし、SDGsウォッシュであると批判されてしまえば、愛着が薄れ、退職してしまう従業員もいるかもしれません。

このようにSDGsウォッシュにより従業員のモチベーションの低下を引き起こしてしまうのです。

SDGsウォッシュと指摘された企業事例3選|失敗例

株式会社ユニクロ

【出典】ユニクロ

ユニクロを運営するファーストリテーリングは、2020年に新疆ウイグル自治区に住むウイグル人を強制労働させていると指摘されました。

いわゆる「ウイグル問題」は近年多くメディアにも取り上げられ、世間からの関心も高まっています。

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウによると、中国に工場をもつグローバル企業83社がウイグル人を強制労働させており、このうち日本企業は12社あると報告しました。

この報告を受けファーストリテイリングの柳井正会長は、4月の決算記者会見で「政治問題なのでノーコメント」とだけ述べました。

公式サイトで服の生産過程で人権・労働環境への配慮を明言しているユニクロは、まさに実態とのズレからSDGsウォッシュだと批判されています。

みずほ銀行

【出典】みずほ銀行

みずほ銀行は2019年に、環境方針として主要グループ会社全体のCO2削減を策定しています。しかし、環境方針で見せる態度とは異なり、みずほ銀行は同年に石炭産業に投資しており、その融資額は世界トップとなりました。

石炭による火力発電は、二酸化炭素を排出する主な原因の一つであり、多くの企業が電気使用量を減らしたり、再生可能エネルギーへと移行したりすることで二酸化炭素削減を目指しています。

みずほ銀行も、国内事業所における電気使用由来の二酸化炭素を削減することを目標に掲げていましたが、環境方針と異なり、二酸化炭素を多く排出する石炭産業へ巨額の融資を行っていたのです。

一連のみずほ銀行の姿勢は、日本ではSDGsに貢献している姿勢を見せながら、遠方の国の石炭産業に投資をしているということで強い非難を浴びました。
これを受けてみずほ銀行は、2020年に環境に配慮した投融資の取り組み方針の抜本的な変革に踏み切り、環境方針と事業をすり合わせるための取り組みをはじめています。

Nestle

【出典】ネスレ日本

Nestleはキットカットなどの製品で有名な世界的食品メーカーです。Nestleは2010年に森林破壊に寄与するパーム油業者との取引をやめると宣言したものの、2018年になってもそれらの生産者をサプライチェーンのうちに抱えたままでした。

パーム油は世界中で最も使用されている油の一つで、その生産のために東南アジアを中心に多くの森林が伐採されています。そしてその環境破壊を引き起こしている背景から、パーム油の使用はサステナビリティを考える上で減少させなければならないとされています。

▶関連記事|《徹底解説》SDGsの取り組み事例51選|企業と個人の事例を17のゴール別に徹底網羅>>

なぜSDGsウォッシュが起きてしまうのか

誰もが知っているような有名企業でもSDGsウォッシュが起きてしまっていることが分かったかと思います。
おそらく多くの企業が注意しているにも関わらず、どうしてSDGsウォッシュはなぜ起きてしまうのでしょうか。
ここではその理由と考えられる3つの理由を解説していきます。

サプライチェーンの管理・把握不足している

企業がサプライチェーンの実態を把握できていないとSDGsウォッシュが起こりやすくなります。
ユニクロが原材料調達地での行動がSDGsウォッシュと批判されてしまったように、顧客の目に直接届かない製造段階でSDGsウォッシュが起こっている例は非常に多くあります。

株式会社日本能率協会コンサルティングが実施した調査によると、経営方針等にサプライチェーンマネジメントに関する具体的な事項にまで落とし込んで明記している企業は約4割に留まっているといいます。
企業が原材料調達地の実態を管理・把握できていないことで、結果的に企業としてSDGsに取り組んでいても顧客から根本問題を解決していないと判断され、批判や炎上を受けてしまいます。

サプライチェーンの管理・把握不足はSDGsウォッシュが起こってしまう根源となり得るのです。

社内コミュニケーションが不足している

SDGsへの取り組みを始めても、社内コミュニケーションが不足しているとSDGsウォッシュが起こりやすくなってしまいます。

企業がSDGsの取組やCSR活動を行うにあたって、社内コミュニケーションが行われずに実施されてしまうと、従業員は一見利益と関係のないような活動をなぜ取り組んでいるのかと疑問に感じてしまいます。

その結果従業員は取り組みに理解を示せず、積極的な活動ができず、外部からは掲げているだけで積極的な取り組みを行っていないと判断されてしまいます。

社内コミュニケーションの不足がSDGsウォッシュを引き起こしてしまうのです。

SDGsを企業に落とし込めていない

SDGsを自社の事業や理念に落とし込まず、SDGsを単体のものとして扱っているとSDGsウォッシュが起こりやすくなってしまいます。
SDGsが世間からの注目度の高さだけに着目して中途半端にSDGsを取り入れてしまうと、表面上でしかSDGsを扱わないためかえって胡散臭い取り組みと判断されてしまい、結果的にステークホルダーから非難されてしまいます。

例えば教育分野に関わる企業が突拍子もなくCO2削減の目標を掲げたとしても、企業理念と取り組みの一貫性がなく、「ただ掲げているだけ」と認識されてしまいます。

企業に関連性のある取り組みを行わなければ、SDGsウォッシュと批判されてしまう可能性があります。

SDGsウォッシュを避けるためには?今日からできる5つの対策

SDGコンパスを活用する(アウトサイド・イン・アプローチ)

SDGsウォッシュを避けるためには、SDGsへの理解を深めるほか、事業へのアプローチを熟慮する必要もあります。
アウトサイド・イン(Outside-In)とは、2015年9月に国連サミット採択されたSDGs(持続可能な開発目標)のビジネス指南書「SDGコンパス」にも記載されている公式のアプローチ方法です。

【出典】SDGs の企業行動指針

アウトとは「社会」を、インは「企業や組織」を意味します。つまりアウトサイド・インとは、社会から企業に向かうアプローチということで、「社会課題の解決を起点にしたビジネス創出」を意味しています。

これからのビジネスは、収益をあげることだけを目的にするのではなく社会課題を解決しつつ収益を得られるモデルに、考え方を変えていく必要があります。

このようなSDGs思考を事業に織り込んでいくことがSDGsウォッシュを回避するためには重要です。

▶関連記事|《徹底解説》SDGコンパスとは|概要からSDGsとの関係性までわかりやすく解説>>

電通 SDGsコミュニケーションガイドを活用する

電通は企業に向けたSDGsに関するガイドラインとして、『SDGsコミュニケーションガイド』を作成しています。

ここではSDGsと企業経営のトピックのほか、大手広告代理店の電通だからこそ提起できる、SDGsと企業の広告コミュニケーション方法など、企業がいかにSDGsと関わっていくべきかが紹介されています。

SDGsがもたらす企業経営へのメリットや、SDGsに取り組む際の留意点などが書かれているため、SDGsを事業に取り入れたいと考えている人は一度目を通しておくことをおすすめします。

【出典】SDGs Communication Guide

パートナーシップ連携

SDGs17番目の「パートナーシップで目標を達成しよう」にもある通り、SDGs達成にはパートナーシップの存在が重要視されています。
自社だけでSDGsを考えるのではなく、関連する企業や団体(パートナー)との連携を深めて、包括的なアプローチをしていこうという考え方です。

そもそもSDGsはさまざまな分野を掛け合わせた包括的なアプローチで持続可能な社会を目指しているため、特定分野に偏った考え方でSDGsに取り組むと本来の目的からずれてしまうことも考えられます。

パートナーとの連携をしっかりと構築していくことが大切です。

SDGsは答え合わせと捉える

「SDGsは答え合わせ」と捉えることもSDGsウォッシュを回避することにつながります。
SDGsと聞くと新しい取り組みや活動を行わなければならないと感じてしまう人も多いでしょう。しかしSDGsのために何か新しい取り組みを始めると、ただのアピールとしか捉えられず、SDGsウォッシュの危険性も高まります。

多くの企業は、ビジョンを掲げ、課題を解決し、理想の社会をつくるために事業を展開しています。またSDGsの注目が集まる前からCSRやCSVの重要性を理解し、取り組んでいる企業も多いでしょう。

例えば、SDGsが提唱される以前から環境問題に取り組んでいる企業からすると、今までの取り組みがSDGsのどの目標に貢献するのかを考えることで、自社が取り組んできたことが持続的な社会に繋がるかどうかの”答え合わせ”になるのです。

SDGsのために新しく取り組みを始めるだけでなく、自社の存在意義や強みに立ち返り、その上でチェックリストのようにSDGsを活用することでSDGsウォッシュを回避しやすくなります。

As IsとTo Beを整理する

SDGsにやみくもに取り組むのではなく、自社の強みを考え、to be(理想の姿)を描き、その上で、as is(現状)を確認し、ギャップを埋めるべく、施策を考えていくことが重要です。
SDGsに関する新しい施策を提案する際、自社の理念や強みを今一度振り返ってみてください。SDGsの取り組みだからといって特別に自社とかけ離れた事業を行う必要はありません。
むしろ今後の企業の理想の姿に即したうえで、SDGsの観点では何が足りず、何が必要かなど現状を整理することが重要です。

自社の強みがSDGsではどのように活かせるのかを考えることで、一過性の取り組みではなく持続的に取り組めるので、結果としてSDGsウォッシュを回避することにつながります。

▶関連記事|《徹底解説》SDGsの取り組み事例51選|企業と個人の事例を17のゴール別に徹底網羅>>

▶関連記事|《徹底解説》ESG経営とは?|今注目される持続可能な企業経営を解説>>

▶関連記事|《徹底解説》SXとは|DXとの違いやESGとの関係性まで徹底網羅>>

▶関連記事|《知らなきゃ損》SDGsのおすすめ書籍12選|大人向け・学生向け・児童向けを年代別に紹介>>

▶関連記事|企業がSDGsに取り組む4つのメリットを徹底解説|日本企業の取り組みやデメリットも>>

まとめ

いかがだったでしょうか。
SDGsに関するビジネスは社会に貢献できる取り組みであり、トレンドとしても大きくなってきているため、企業にとっては非常に魅力的なテーマでしょう。

しかしそこには注意すべき点も多く存在するため、SDGsの最終目的は何なのか、自社のどう関わってくるのかをしっかり理解した上で取り組んでいくことが大切です。

SDGsとは

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。

SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。

SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。

▼各目標の詳細は以下の画像をクリック

▼SDGsについて詳しくはこちら

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    新着記事

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ