フランスのマルシェを日本に|VISONが届ける新たな食文化

#地方創生#持続可能#環境#食品 2022.02.16

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【更新日:2022年4月8日 by 三浦莉奈

日本の生鮮食品の流通の核となる「豊洲」。豊洲のような場所が、西の三重県に誕生したことはご存知だろうか。

VISON」だ。日本が誇る食・文化・アート・テクノロジーが三重県多気町に集結し、地方創生を図るプロジェクトであり、レストラン、温浴施設、宿泊施設などがあり、VISON全体が一つの村のようになっている。

【提供】VISON

今回は、VISON内にある「マルシェ ヴィソン」を監修した手島シェフにインタビューを実施し、マルシェ ヴィソンに込める想いやこれからの展望について伺った。

フランスの文化が落とし込まれた「マルシェ ヴィソン」

ーーまずはじめに、自己紹介をお願いいたします。

手島:手島竜司と申します。

19歳から、地元である熊本のフランス料理店で修行を始め、料理人としてのスタートを切りました。

26歳でフランスに渡った後は、地方の星付きレストランや、パリで当時三ツ星であったレストランでの修行、そのほか、さまざまなレストランでシェフとしての経験を積んできました。

37歳のときに「Restaurant PAGES」をオープンし、オープンから1年半で、フランスのミシュランガイドにて1つ星を獲得しています。

ーーマルシェ ヴィソンを監修することになったきっかけを教えてください。

手島:現在、VISONでイタリアンレストランを監修されている奥田シェフとパリのイベントで出会ったことがきっかけでした。

当時はVISONが企画段階にあり、日本でこんなことを考えているとご紹介いただきました。5、6年前に日本に帰国した際に、VISONの立花社長とお話する機会があり、その後定期的に熱く語り合いながら計画し、現在にいたります。

【提供】VISON

ーーマルシェ ヴィソンは企画から携わってきたのでしょうか。

手島:パリにいながらではあったので、細かいディテールよりかは大きな軸のイメージを伝えさせていただきながら、ここはこんな風にしていこうといった提案をしてきました。

ヨーロッパで主体となっているマルシェを日本でお届けできるように企画しました。

ーー10代の頃から料理人として活動されていたとのことですが、マルシェ ヴィソンにどのような想いが反映されているのでしょうか?

手島:料理人の方一人ひとりにさまざまなスタイルがあると思いますが、私は生産者の方々に会いに行くことを大切にしています。私が使う食材がどのような土地で、どのように育てられているか知ることをとても大切にしてきました。そのため、マルシェ ヴィソンでは生産者の顔が浮かんでくるようなところにしたいです。VISON内にある軽トラマルシェのように、生産者との距離が近い場所を目指しています。

フランスでは生産者の方々の中にスーパースターがいるんです。この食材といったらこの人!という、飲食業の人だけでなく一般の人も知っている方がいらっしゃいます。VISONでは、ヨーロッパのマルシェで見るようなこうしたスーパースターが出てほしいとも思っています。日本では、生活のために「やらなきゃいけない」と思って農業をしていらっしゃる農家さんが圧倒的に多いです。もちろん、農業が本当に好きでやられている方もいらっしゃると思いますが、農業を楽しんでくださる方が増えてほしいと思います。売れる商品しか作らないのではなく、「こんな野菜もあっていいよね」というように食のバリエーションを増やしていければ良いですね。

また、日本には食材が豊洲に集中してしまう問題があります。例えば、三重の良い食材でも、一度豊洲を介して戻ってくることがよくあるんです。フランスのマルシェのように、良い食材を近くの市場に落とすことのできるシステムが増えていくと、日本の食が豊かになると思います。

私はフランスの文化で生きてきたので、このような文化をマルシェ ヴィソンに落とし込んでいきたいです。

軽トラマルシェ 【提供】VISON

ーー一部のレストランなどは産地直送を行っていたりしますが、家庭レベルでは太いパイプを通ってきた食材しかないのでしょうか?

手島:基本的にはそうですね。

これはすこし大袈裟かもしれないですが、「東の豊洲」だったら「西の多気」のようなもう1つの流通の形を目指しています。豊洲のような規模で、業者の方々もたくさん訪れるような場所にすることが理想です。

ーーマルシェ ヴィソンのおすすめポイントを教えてください。

手島:三重を代表する生産者の方々が集まっているところです。

VISONの立花社長を筆頭に、たくさんの方々に野菜をつくる農家や、松阪牛の肥育農家さんなどご紹介いただき、海女さんや唯一底引き網漁をされている漁師さん、代表的なマグロの卸売業者の方など、三重を代表する方々に集まっていただいたことがマルシェ ヴィソンならではの強みです。

ーーお客様の反応や生産者の方々の反応を教えてください。

手島:コロナが流行したこともあって戸惑いはたくさんあったと思いますが、お客様は喜んでくださってますし、生産者の方々も前向きです。地元の良い品物を発信しているという自信も感じられます。

たくさんの前向きなパワーが集まって、良い空気感がありますね。

パリに戻る直前まで三重を訪れて農家や漁師の方々のところに行ったのですが、本当に良いものがありました。

しかし、お話をしてみると「こんなに良いものがあっても誰も買ってくれない」とおっしゃるんです。ある方は、オーガニックが好きでオーガニックのお野菜を作っているのですが、周りからは「普通にやれば良いのに」と言われることもあるそうです。

こうした問題は、一般の方たちの意識が変化しないと解決できないと思います。フランスでは、農薬を使ってまっすぐ育ったキュウリは人気がありません。曲がったキュウリのようなお野菜の方が美味しくて、人が集まります。必ずオーガニックにしなければならないということではなくて、美味しいお野菜を作ったり、海のことを考えて獲るものを制限することが地球規模で考えたときに大切だと思っていて。日本ではこうした意識がまだまだ低いと感じます。

【提供】VISON

ーー生活の中で使う食材にこんなバックストーリーがあるんだよと紹介できれば良いかもしれないですね。

手島:料理人は、ただ料理を作る人ではなく、最後に生産者の方々の想いを伝えられる人だと思っています。

珍しい野菜や魚などどんどん生産者の方々に作っていって欲しいですし、私がそういった食材を料理してさまざまな使い方があるということを発信していきたいですね。いろいろなバリエーションがあると料理が楽しくなりますし、反対に、使い方が分からない食材や珍しい食材には手が伸びにくいと思います。「この食材にはこのお酒」のようにパッケージングをしてあげることで選択肢を増やしていきたいですね。食材とお酒のセットのようなものもVISONで段階的に販売していこうと思っています。

日本では、糖度が高いから良いというような風習がありますが、野菜は苦くて、酸っぱくて美味しくて、その個性がお野菜だと思っています。すべての食材が似通ってしまって、個性をなくす農家さんが増えるのは嫌だなと思います。

ーー普段から、料理人としてSDGsの重要性を感じていますか?

手島:重要ではなく、常識だと思っています。

当たり前の行動として環境や地球のことを考えて料理をしていく未来になってほしいです。

パリでは、プラスチックはほとんど使用できず、プラスチックを使用しているお弁当などを販売していると企業が契約してくれないほどです。リサイクルのものを使用したり、環境に優しいものを使用したり、環境に配慮してない人はフランスでは仕事できないほど常識になっています。

マルシェ ヴィソンでは近い将来、パリのようになってほしいですし、パリのようにならなくてはいけないと思っています。

「西の豊洲」のような存在を目指して

【提供】VISON

ーーこれからの展望を教えてください。

手島:長期的に考えているのは先ほどもお話したように、西の豊洲のようになってほしいと思っています。日本の中でさまざまな流通のカタチが生まれてほしいですね。

また、日本がこの先、環境に向き合っている国として世界からも認めてもらえるような存在になりたいです。達成できるのが10年後か20年後なのかもっと先か分からないですが、大きなテーマとして掲げていきます。

ーー三重のVISONがモデルケースのようになって47都道府県で、例えば千葉VISONや東京VISONのように誕生していったら面白そうですね。

手島:その通りです。

この取り組みは、生産者の方々のためにもなるんです。さまざまな理由から苦労されていると生産者の方々からよくお話を伺います。決して豊かではない状況でも頑張っている方々がたくさんいるので、衰退化しているところを盛り上げていきたいですね。

さいごに

普段私たちが何気なく食べている料理。その背景には、生産者の方々や料理人の方々の想いが込められていることを忘れてはならないと思った。

全国的にこうした流通が生まれれば、食の豊かさの発展や地域の活性化にも繋がっていくだろう。

その第一歩をVISONとして、全国的にこうした取り組みが広まってほしい。

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